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会談である!固い頭は必要無い

え~~、今更ながら、三点リーダーの存在を発見しまして……

そんな訳で、今までの話しの『・』を『…』に変えました。


地味に辛かった……

「ふぉっふぉっふぉっ――」


 突然笑い出す初老の女性。片手で口元を抑えているが、こらえきれずに肩が震えている。


「――エルから聞いてはいたが、ホントに変わったスライムじゃのう……本能で動いてる様には見えん。むしろ『知能』を持っているかの様に……いや、長生きはするもんじゃのう……『シルバースライム』なだけで無く、こんな面白いモノまで見れるとは。ふぉっふぉっふぉっ」


 それを聞いてもう一人の女性は、もう、とばかりに溜め息をつき、男性の方は――


「イヤッ! 何言ってんですか! 村長ーー!!」


――吠えていた。思わず立ち上がって、テーブルをバンと叩く……ぶっちゃけ五月蝿い……


「……騒々しいのぉ。落ち着いて座らんか……」

「しかしっ!! コイツは歴としたモンス「静まらんか!」――はい…」


 激昂していた男性を一睨みで静かにさせる村長様……お見事である。流石、年の功「あ゛!?」イヤ何でもないですハイ……

 一喝された男性は渋々、椅子に座る……鋭い目つきでスライムを睨んだままだが……

 男が座るのを見て、村長がこちらに向き直る。


「もう大丈夫じゃぞ、エル」


 テーブルに前のめりになって、両手で抱え込む様にスライムを守っている女の子に告げる。


(うん。ありがとう。もう大丈夫だよ)


 身体の一部を伸ばして、彼女の腕をチョンチョンとつついて大丈夫だとアピール。それが伝わったのか、エルは椅子に普通に座り直す……まだ、ちょっと男に対して警戒しているが……


「さて、まず最初に確認しておきたいのじゃが……お主、わしらの言っている事が理解出来とるのか?」


 興味津々な顔でスライムに尋ねる村長。隣の女性も似た感じである。男は変わらずに睨んでいるが……


(うん、理解は出来てるよ……喋れないけど……)


 喋れない代わりに、身体の一部を伸ばして縦に振ってみる。首をコクコクと振るかの様に。

 それを見て、エル以外の三人が驚く。


「ほう! やっぱり、わしらの言って「ちょっと待った!!」……今度は何じゃ? ヤルバン……」


 村長の言葉を遮って、再び男――ヤルバンが吠える。その声に反応して、エルがまたスライムを守ろうとするが、当のスライムが伸ばした身体で待ったを掛ける。大丈夫と言う様に。そんなスライムを見てエルも、上げかけた腰を降ろす。

 そんな一人と一体の言葉無き掛け合いを気にもせず、ヤルバンは吠え続ける。


「何度も言ってますがコイツはモンスターです! しかもスライムですよスライムっ! いくら銀色だろうがスライムである事に間違いは無いんですよ?! こんな雑魚モンスターに知能なんて有る訳無いでしょう!!」

「……じゃが、こちらの言葉に対して反応して「偶然ですよ! 偶然!」……」


……何と言うか、言いたい放題である。村長の言葉を歯牙にも掛けず吠えまくりである。

 そんなヤルバンの傍若無人振りに、彼は内心で呆れていた。


(……ねえ、君さあ、さっきから村長さんの言葉を遮ってる上に、上から目線な態度を取ってるけど……それって、スゴイ失礼な事だって気づいてる? 不敬罪って知ってる? 後が怖いよ?……まあ、ボクには関係ないけどね……と言うか、いい加減黙ってよ)


 伸ばした身体の先に溶解液では無く、治癒液を滲ませ遠距離攻撃の用意をする……前に、伸ばした部分を軽く振ってみる。身体の強度が上がっているので鞭の様にしなりがある。

 それを確認すると、改めて治癒液をヤルバンの顔目掛けて放つ――


「だから! 今すぐn――ガハッ! ゲホッ! グフッ!」


――見事に命中……どころか、タイミング良く空いていた口の中に入り、思いっきり咽せていた。


「ゴホッ! ガフッ!――何しやがる、テメェ!!」

「――うるさいから、だまって……だって」


 ヤルバンの怒声に、静かだが力強い声でエルが答える。それを見て、村長では無くもう一人の女性が驚いて聞く。


「エル……貴女そのスライムの考えてる事がわかるの?」

「……ん!」


 女性の言葉に、自信満々に頷くエル。


「何でわかるのよ?」

「ん?……何となく?」


――ただし、続いた答えに他の皆がガクッとする。唯一スライムだけは身体を縦に振って、肯定の意を示しているが……


「……って! そんなデマカセ信じられるか!!」

「……ウソじゃない……スライム、かんがえてること、わかる」

「だから! スライムなんぞに知能は無い――グフゥッ! ゲホォッ!」


 エルの言葉を頭ごなしに否定しようとした矢先、再びスライムが治癒液を放ち、咽せるヤルバン。


(大人気ないよ、全く……)


 いっそ、溶解液の方が良かったかもしれないと思う彼。

 そして、ヤルバンの言葉が途切れたので、その隙にエルに村長が問いかける。


「そのスライムが、今は何を考えておるのか、わかるかのエル?」

「ん……おとなげない、だって」

「「納得」」

(当たり)


 エルの言葉に、思わず頷く村長ともう一人の女性。彼の方も身体を縦にコクコク振って肯定。実に、ほのぼのとした雰囲気である


「――何、納得してんだ! アンタらぁぁーーーーっ!!」


……その雰囲気を木っ端微塵にぶち壊す馬鹿一人……イヤKYと言うべきか?


「……のう、気のせいか。お主、意地になっとらんか?」

「そんな訳ないでしょうが!」

「なら、いったいどうすれば納得するんじゃ……このスライムが普通のスライムでは無い事はいい加減わかっておるのじゃろう?……現に、己の体液を飛ばす等、スライムがするかのぉ」

「――! それは……」


 長老の指摘に口ごもる馬鹿……もといヤルバン。少しの逡巡の後、長老に提案する。


「――ならっ! 確かめさせて下さい! コイツが俺達の言葉を完全に理解しているかをっ!!」

「(……さっきの反応で十分じゃろうが……)それで構わんかの? スライムや」

(別に、問題無いよ)


 伸ばした身体を縦にコクコク振る彼……正直、このリアクションで十分だろうと、ヤルバン以外の全員が思う。


「ふんっ! すぐに化けの皮を剥がしてやるぜ!」

(……いったい、何が君をそこまで駆り立てるの?)


 彼の内心での呆れと、周囲の冷めた視線に気付かずにヤルバンはビシッと指を突きつける。


「俺の言ってる事がわかるか?!」

(だから、わかってるって……)


 身体を縦にコクコク振る。


「俺は女か?!」

(イヤ、違うでしょ)


 身体を横に振る――『チガウチガウ』と言う様に。


「オマエはスライムか?!」


 縦にコクコク。


「……この部屋に居るのは五人か?!」


 横にフリフリ。


「……どっちが多い?」


 右手はチョキ、左手はパー。

 左手の方を指す。


「……この部屋で一番若いエルフは?」


 エルの方を指す。


「……俺はイケてるか?」


 伸ばした身体をエルの方へ――エルは腰のポーチから手鏡を取り出してそこに乗せる――そして、彼はそれをヤルバンに向ける。

 『鏡を見て言え!』とばかりに。


「「――くっ!!」」


 それが理解出来て、思わず吹き出す村長ともう一人の女性。

 当の本人――ヤルバンはと言うと……


「――テメエェェーーーーー!!」


……キレてました。これ以上無いってぐらいに顔を真っ赤にして腕を振り上げて――


「もう、黙らんか」

「――ギャホッ!」


――村長に止められました。よく見えなかったが、村長が腕を振るとローブの裾から鞭のような物が伸びて、ヤルバンの喉を直撃した。

 そのまま後ろにひっくり返ったヤルバンは起き上がって来ない……気を失ったようである。


(……ちょっと、やり過ぎてない?)

「……スライム、やりすぎ、いってる……」

「ふん! スライムを素手で殴ろうとしたんじゃぞ? 手を溶かされるのを止めてやったんじゃ。むしろ、感謝してほしいわい」

(納得)


 自分の言いたい事を代わりに言ってくれたエルの言葉に、理由を告げる村長……それにしては、強くやり過ぎな気がするが……


「――と、余計な茶々が入ったが、お主がわしらの言葉を理解している事がわかった事じゃし…改めて、自己紹介と行くかの。ワシはアムリナ――この村落の長を務めておる。そこに居るエル――エルリナの祖母じゃ」

「私はカレリナ。アムリナの娘で、エルリナの母親よ」

「ん……エルは、エルリナ」


 村長――アムリナから順に紹介してもらい、三人が家族だと知る彼。


(お母さんとお祖母ちゃんだったんだ……言われてみれば顔立ちが似てるね――じゃあ、そこでひっくり返ってる彼は?)


 そこの男も家族の一員なのかと、身体を伸ばしてヤルバンの方を指してみる。それを見て、アムリナが答える。


「あ~~、こやつはヤルバン。ワシらの家族では無いからの……この村の男衆の纏め役であるこやつの父親が今、留守なのでこやつが代わりに来たんじゃ……正直、人選ミスじゃった」

(成程ね)


 これは後で父親から大目玉を喰らいそうだな~、と彼が内心で考えているとカレリナが頭を下げる。


「あなたにはまだお礼を言ってなかったわね……ありがとう。そして、ごめんなさい」

(えっ? いきなり何?)


 驚いてる彼――外見ではわからないが――を他所に、アムリナも頭を下げる。


「わしからも礼を言わせてくれ……人間達からエルを助けてくれてありがとう。そんなお主を殺そうとしてすまなかった」

(あ~、その事か~……まあ、ボクとしてはお礼はともかく、矢で射られた事は済んだ事なんだけどね~……それよりも、その後何があったかを知りたいんだけど……)


 取り敢えず、伸ばした身体を『イイカライイカラ』とばかりに揺らしておく彼。そして、エルが口を開く。


「……スライム、そのあと、おきたこと、きいてる……」

「その後はね――」


 エルの言葉にカレリナが起きたことを離す――エルの暴走を止める為、秘薬を与えた事――急に身体から湯気が出てきた事――その後にはもう銀色に変わっていた事――そして、この村に連れて来た事……ついでに、近くに倒れていた人間達はこちらの方で『処罰』した事――


「――と言う訳よ。それから十日間ずっとエルがあなたの事を守ってたのよ……大変だったのよ? 私達でさえ近づかせなかったんだから……」

(十日も経ってたんだ……しかも、秘薬って……それの所為なのかな? 『進化』の原因は……)


 何せ、自分の意識が無い状態での出来事だったので、自分でもハッキリとした所はわからない。

 考えていると、アムリナが話し掛けてくる。


「ところで、お主はこれからどうするんじゃ?」

(どうするって言われても……今まで通り?)


 スライムな自分に(あて)なんて無いのだから……と考える彼にアムリナが続ける。


「なんなら、このままこの村に居ても良いんじゃ「チョォ~~~っと、待ったあぁ~~~!!!」……もう復活しおったのか」


 アムリナの言葉の途中でガバッと起き上がるヤルバン。そのままの勢いでまくし立てる。


「俺は断固反対です!!」

「……理由は何じゃ?」

「何度も言いますが、コイツはスライムです! 歴としたモンスターです! 知能が有ろうがモンスターである事には変わりないんです! こんなモンスターが村の皆に受け入れられる訳無いでしょう! 絶対に追い出されます! もし、そうならなかった時は丸坊主にでもなりますよ! 賭けても良いです!」




   *   *   *


――十日後、とあるエルフの村の、とある場所にて……


「うおおぉーーー!! 待てーーー!! 止めろぉーーー!! 止めてぇーーー!!」


……とある馬鹿の悲鳴が響き、誰も聞く耳を持たなかった……むしろ、皆ノリノリで丸坊主にしたとか……

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑は準備中につきお休みです。

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