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新天地である!難易度上がってない?

予約投稿してたら、知らない内に初めての感想が来てた!

この場を借りてお礼を言わせていただきます。

有難うございました。

(ん~。今日も良い天気。という訳で、今日も元気にイってみよー♪)


 朝日の眩しさに満足して、彼は木を滑り降りて日課の体操を始める……毎日毎日良くやるよ……


(もう、スッカリ秋だね)


 紅く染まった森の木々を見て、この世界にも紅葉が有るんだと彼はしみじみ思う。



――前の森を離れてから約二ヶ月の時が経っていた。

 あの後、木の盾をサーフボードにして川を下る事数時間。川が大きく蛇行した所で木の盾が岸に引っ掛かり止まってしまったのだが、彼は近くに森が有った事と、もう日が暮れる事からその森の中に入り木の上で一夜を明かした後、(しば)し様子を見てからその森で暮らし始めたのである。

 この二ヶ月間、切り株ハウスの様な定住する場所を持たず、アッチへウロウロ、コッチへウロウロとさまよう様に生活しながら、この森を調べてもいたのだが……


(この森、前の森と比べると色々とスゴイんだよね)


 とりあえず、この森が前の森と違う所は大まかに言って二つ。

 まず、森の恵みの多さである。前の森でも見かけた赤や青の果実の他に、黄色、緑色、薄紫色の果実が実った木がそこらじゅうに有るのだから……どこの果樹園だ?、と言いたくなる。

 更にその上、例の薬草の群生地も所々に存在するのだから、食事に関しては全くもって問題ナシ。

……問題が有るのは二つ目。この森に住むモンスター達である。

 この森に住むモンスター達は、前の森のモンスター達よりも強く、そして大きいモノが多いのだ。スライムな自分はやっぱり襲われる事は無いのだが、モンスター同士の争いに巻き込まれる事が時々有るので、それが悩みのタネである。


(結局、慣れちゃったけどね……ハァ)


 溜め息をつく彼。まあ、それでも利点も有るのでこの森に居るのだが。


(ん~~。今日はどうしようかな? とりあえずご飯にしよ♪)


 手近な木に登り、果実を消化しながら辺りを見回す。こうして高い所から見渡すと、果実が実った木がどれだけ多いのかがわかり、森の豊かさが伺える。


(ホント多いよね。まあ、これだけないと足りないのかもしれないけど……)


 彼が視線を向ける先には一本の木がある。ただしその木はさっきから激しく揺れていた――と言うか打撃音も聞こえている。ついでに言うと、唸り声も……


(今日も元気だね。ただやり過ぎないでよ? 木が倒れるから)


 唸り声を上げているのは巨大なクマである。体長3メートル程の赤茶色の体毛のクマが、木に平手打ちやショルダータックルをぶちかまして、落ちてきた果実を貪り食っている。

 最初の時はその音に驚いたが、毎日見ればイヤでも慣れる。


(普通、クマと言ったらハチミツなんだけど……アレに関しては違うみたいだよ)


 そもそも、この世界にハチミツが有るのか彼にはわからない。わかっているのはあのクマが甘いもの好きだという事である。当然、果実だけで無く他のモンスターを襲っている事もあるが、スライムな自分は襲われずに済んでいる……済んでいるのだが……


(果実に目が無さ過ぎるのは、どうにかして欲しいよ……)


 時々、自分が登っている木を揺さぶられる事があるのだから、たまったものじゃない。果実と一緒に自分も落ちそうになるので必死にへばり付くハメになるし、最初は自分を襲っているのかとヒヤヒヤしたものである。


(キミもそう思わない?)


 そう心の中で呟き、視線を横にずらす。彼の居る木の、すぐ隣の木の枝に居る体長1メートル半程のトカゲに向けて。

 そのトカゲは口を開けるとその舌を伸ばし、果実を突き刺して口へと運んできて丸呑みする。

 出会った当初は、その舌で自分の核を貫かれたらオシマイだと警戒していたけど、やっぱり襲われないのはスライム故にであろう。

……ちなみに、このトカゲも時々あのクマの被害者となる……何時ぞやに枝から落とされた時、見事なヘッドバッドを食らわせた時は、内心で拍手をしたものである。


(あ。終わったみたい)


 静かになったので視線を戻せば、クマがどこかへ去ろうとしていた。おそらく、満腹になったのだろう。


(ボクもそろそろ移動しよ)


 木を滑り降りて地面へ到着。二ヶ月もウロウロしていれば、自分が今どの辺りに居て、どこへ向かっているのかは大体わかるので、気分で目的地を決めて動き出す。


(~~♪、~♪、~~~♪)


 呑気に頭の中で鼻歌を歌いながら、マイペースで進む。




――――スライム行進中――――


(到~着~♪)


 すでに日が高々と登った頃。彼は目的地である、森の外にある彼が下ってきた川へとたどり着いた。川下りに使用した木の盾はとっくの昔に流されてしまって無い。しかし、彼はある理由から定期的にここを訪れている。

 視線を川の向こう側へと向ける。そこにはだだっ広い平原が広がり、遥か先には小高い丘が見える。しかし、彼が見ているのはその丘の上、微かに見える煙――それも、一つではなく複数。


(……あれって、たぶん炊煙(すいえん)だと思うんだけどね……)


 最初に見つけてから毎日ここに来て確認した。あの煙は同じ方角、同じ場所に毎日上がっている。つまり、あの煙の下には町か村が存在する筈なのである。


(だからって、行く気は無いけどね)


 ただでさえスライムな上に色が『紅』。警告色を通り越して危険色な身体じゃ自殺しに行く様なモノ。

 それよりも、今不思議に思うのは――


(――何で、この森には誰もやって来ないんだろ?)


 彼がこの森に住みついて約二ヶ月の間、人が全く訪れないのである。最初は完全に人里と離れてると思ったが、あの煙を見てそれは違うとわかった。しかしそうなると、今度は何故誰も来ないのか? と考えてしまう。

 あの煙の場所から大まかに計算しても、1~2時間あればこの森へ来る事が出来る距離なのだから、誰かが訪れてもおかしくない気がする。と言うか、この森の果実と、特に薬草の量から見ても冒険者なら間違い無く採取に来るハズである。

 確かにこの森のモンスター達は前の森よりも強いであろうが、それだけ素材の価値も高くなるのではないか? なら、狩猟目当ての冒険者が来ても良いハズである。誰も来ないと言うのはオカシイ。


(やっぱり、()()が関係してるのかな~?)


――思い出すのは、彼がこの森に来て数日後の事。

 その時、彼は森の奥に向かって進んでいた。特に考えての行動では無く、ただそっちへと進んでいただけだったが……進めば進む程、心の中にイヤな感覚が湧き上がってくるのである。

――そして、その感覚は突然に凄い勢いで強まった。次の瞬間には考える間もなく全力後退している程に……

 距離を取っても(しばら)くは動けなかった……もし、人間の身体だったならば、心臓バクバク、顔面蒼白、冷や汗ダラダラだっただろう。

 落ち着いてから再び進んでみたが、ある一線を超えると再び感覚は強まり、どうしてもそれ以上進めない。何と言うか自分の――モンスターとしての本能がこれ以上先に進むなと言ってるみたいで、どうにも出来無い。別に変わった所など無いのに……

 しかも、それは他のモンスター達も同じ様なのである。例の甘いもの好きのクマが、転がっていく果実を途中で追いかけるのを止めたのを、たまたま見てわかった。


(結局、理由はわからずじまいだけど、無理に調べる必要も無いし……触らぬ神に祟り無し、眠れる獅子に目覚まし無し無し……ん?)


 気配を感じて後ろに視線を向ければ、森から一組のモンスターが丁度出て来た所だった。


(あれ? 珍しい。キミ達がコッチの方まで来るなんて)


 出て来たのは30センチ程の大きさの蟻。それが2匹並んで向かって来る。


(コッチの方までエサを探しに来たの? ご苦労さま)


 近付いてくる蟻に対して逃げる素振りを見せない彼。この蟻は森で一番出会うモンスターなので、対処の仕方も心得ている。常に2匹で行動しているが基本的に、巣に近づかない、攻撃しないの2点を守れば大丈夫である……ただし、ある事をしてしまった時は最悪の事態になるが……


(じゃあね~)


 自分の前を横切って去って行く蟻に別れを告げて、彼は森へと戻って行く。




――――スライム散策中――――


(……喧嘩は他所でやってよ……)


 森の中を適当にブラブラ進んでいた彼は、イヤ~な所に出くわしていた。

 眼前では2種類のモンスターが互いに睨み合っている。一方は例のクマ、もう一方は蛇である。前の森に居た蛇では無い。あれよりも大きく全長5メートル程で、太さも男性の太ももぐらいある。その蛇が枝の上で舌を出して威嚇しているのに対して、クマも両手を上げて唸り声を上げている。


(巻き込まれる前に――)


――さっさと逃げようする前に、争いが始まってしまった。木をぶっ叩いて落とそうとしたのか、不用意に近づいたクマに蛇が飛び付いたのである。蛇はそのまま首を絞めようとするが、クマ自身の体毛が邪魔して絞めきれていない。対してクマの方は、完全にとはいかなくとも首を絞められて苦しいので、蛇を引き剥がす事が出来ずに大きく身体を揺すりながらフラついて、アチコチの木に身体をぶつけている。


(あ~~、あの蛇のウロコって意外に硬いから、爪が通じ難いんだよね)


 それ故に、クマは引き裂くといった強引な手が使えず苦しんでいる。


(と言うか、そろそろ離れよ……ん?)


 取り敢えず移動しようとした彼の視線の先、今もフラついているクマのすぐ近くの草むらから、さっき川で会った蟻がやはり二匹一組で現れた。蟻達も草むらを抜けたらいきなり争いの場に出くわした所為か、気持ちアタフタしている。

 そんな蟻達に気付かずに、クマは一際大きく身体を揺すり――木の根につまづき、背中から地面に倒れ――そこには蟻の()()が――


(――って! それはダメェェッ! せめて()()!!)


 その願いは届かず、蟻は片方だけ倒れたクマの下敷きになり――


「――――キシャァァァァァァ!!!!」



 残されたもう片方の蟻が、ガラスを引っ掻く様な甲高い声を上げた。


(うわわわわぁぁ――――!!)


 今まで争っていた蛇とクマが、掌を返した様に思い思いの方向に逃げ出すのと同時に、彼も狼狽えながらも一番近い木を全力のスピードで登る。

――と、鳴き声が森に響いて約一分。周囲の草むらや茂みから、次から次へと蟻が現れ――あっという間に見える範囲の地面を埋め尽くしてしまった。そして蟻達は、ある方向へ……クマが逃げて行った方向へと進軍していった。


(……ギリギリセーフだったよ)


 僅かな時間で登った、地上、わずか50センチの所で木にへばりついていた彼は安堵の息を漏らした。蟻が全ていなくなると彼は地面に降りてその場を後にした。


(無事に逃げきれれば良いけど……あのクマ)



――――スライム放浪中――――


(ん~~。もう夜か……)


 あれから森の中を適当にウロチョロした彼は、徐々に暗くなっていく森を見て、そろそろ今日の寝る場所を探し始めて、すぐに手頃な木を見つけ枝に登る。


(それじゃ、前世の皆、オヤス……あれ?)


 元の世界の『家族』達を心に思いながら、彼は眠りにつこうとした所で……彼は予想外のモノを見つける。

 彼が見つけたのはボロボロになったクマだった。腕や脚のいたる所から血を流して、しかも蟻の顎っぽいモノが刺さっている……どう見ても昼間に蟻から逃げたクマに間違い無い……そのクマが音を立てて倒れた……


(生きてたんだ……見ちゃったからには、ほっとけないよね……)


 木から地面に降りた彼は倒れているクマの元へ行くと、クマの全身を這いずりまわりながら治癒液を塗りつける――ついでに、血と蟻の顎は消化――出来る範囲を終わらせて、再び木の枝に登る。


(それじゃ今度こそ、前世の皆、オヤスミ~)


 元の世界の『家族』達を心に思いながら、彼は眠りにつく。

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑


――――舌を伸ばすトカゲ(スピアタング)――――


体長1メートル半程のトカゲ。雑食の為何でも食べる。

舌をカメレオンの様に伸ばすことが出来て、約4メートルまで伸ばせる。舌の先端はとても硬く、革の鎧なら簡単に貫ける。

自分から襲うのでは無く、獲物が来るのを待つタイプなので、周囲の探索を怠らなければ先制攻撃を取れる。


――――双子な蟻(ツヴァイアント)――――


体長30センチ程の巨大な蟻。土に穴を掘って巣を作り、女王蟻、親衛蟻、兵隊蟻、働き蟻の4種類の蟻で構成されている。

女王蟻は卵を産み、親衛蟻は常に女王蟻の近くに居て、兵隊蟻は巣の入口を守り、働き蟻は子供の世話をしたり餌を探しに行く。

女王蟻以外の蟻は全て二匹一組で行動する。兵隊蟻はともかく、働き蟻は出会っても敵対行動を取らなければ襲って来ないが、敵対行動を取るとすぐに襲ってくる。

もし戦闘になった場合片方の蟻を殺すと、もう片方の蟻が鳴き声をあげ仲間を呼ぶので、殺す時は二匹同時に。それが出来なかったら、すぐに逃げないと大量の働き蟻に襲われる。

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