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6-10:コルトの森編10

異界への扉はこれで終了です。

今まで読んで頂いてありがとうございました。

初めて書いた小説なので拙い部分が多数あり、色々とご指摘をいただけて大変助かりました。

幸いにも多数の方にお気に入り登録していただけて、書く事への励みになりました。

改めて御礼を最大の感謝をさせていただきます。

ありがとうございました。


誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

周りの風景が突然変わり、そこは確かに以前から馴染みのある塔の風景でした。そして、あわせて感じた違和感が何かと周りを見回すと、先程まで壊れていた壁、天井などが綺麗に修復されています。

そして、壁に設置されていた制御用水晶は先程までなかった青い光を煌々と放っていました。

あたしは、若干戸惑いながらも制御用水晶に手を触れました。


「特に変な所はないな」


恐々として水晶に触ったのですが、特に何も発生する気配はありません。そこで、システム画面を立ち上げようとします。

以前はこの水晶をクリックする事で開く事ができた塔の設定画面が開く気配はまったくありません。

試しにダブルクリックのように2回軽く水晶を叩いてみます。でも、まったく反応する気配がありません。


「むぅぅ、設定画面の起動が解んない。どうやったら設定変更できるんだろう?」


そんな事を思っていると、塔のどこかからシステムアナウンスのような声が聞こえ始めました。


”調停者のアクセスを確認、設定画面を立ち上げられますか?”


「あ、はい!」


突然の声に驚きながらもシステム画面を立ち上げるように依頼します。

すると、目の前に昔から馴染みのある画面が立ち上がりました。


”あと、無闇に水晶を叩く事はお勧めいたしません。ご注意ください”


感情が感じ取れないはずのアナウンスなのに、若干ご機嫌斜めに聞こえるのは気のせいでしょうか?


「ごめんなさい」


一先ず謝っておいたほうが無難な気がしたので、謝罪しながら起動したシステム画面を確認していきます。


「あ、やっぱり塔の立入りは所有者のみになってる。塔周辺の結界範囲は塔から半径10mかぁ」


設定を確認後あたしはとりあえず立入り許可設定をギルド単位へと変更しました。


「これでいいかな?ギルドの加入は以前そのままになってればトモエさん達は入れるはずだしね」


あたしは、そんな事を思いながら塔の入口へと向かいました。

すると、あたしが扉を開ける前に扉が勢いよく開きました。


「やっと入れた~~キュアちゃん!無事!?怪我は無い!?」


トモエさんが勢い込んで飛び込んできます。そして、あたしの腕やら肩やらをバシバシ叩きはじめました。


「トモエさんい、痛いです!」


あたしの抗議をそっちのけでトモエさんは心配そうに怪我がないか確認してきます。


「キュアちゃんが入ってから、塔が突然光って綺麗になったり、アナウンスでログアウト出来るようになったりで吃驚したんだよ!何があったの!?」


その間にもコジロウさん、エリィさんが塔の中に入ってきます。でもレイムーンさん、サイアスさんは塔に入れないみたいです。


「あ、そうか!レイムーンさんとサイアスさんは推定淑女の所属じゃないから入れないんだ!」


「ふむ、ちょっと行ってくる」


あたしの言葉に、トモエさんはすぐに何が言いたいか理解して、外へと飛んでいきました。


「簡易了承だけど何とか入れたみたい」


そう告げるトモエさんに続いてレイムーンさんとサイアスさんが塔の中に入ってきました。

そして、あたしはその間に塔の道具箱に入れてあった椅子を人数に足りない分取り出して並べていきます。

そして、みんなが椅子に座ったのを確認してから、塔の中に入ってから起きたことを説明していきました。


「すると、俺達の使命は達成したってことか?」


「まぁそういう事なんでしょうね、でも、魔王を倒した訳でもないし、ユーステリアを倒した訳でもないし、中途半端な感じが強い?」


トモエさんの意見にあたしを含めみんなが頷きます。


「ここに、ユパさんでもいれば何か適切なアドバイスくれそうですけど」


エリィさんの言葉に、やっぱりみんなが頷きます。


「皆さんは帰られるのですか?」


あたし達の会話を黙って聞いていたサイアスさんが静かに尋ねます。そして、その言葉にみんなが一斉に顔を見合わせました。


「まぁ帰るよね」


「あぁ、帰るな」


「ですね」


「うん」


サイアスさんとレイムーンさんはあたし達の言葉に、複雑そうな顔をします。


「長老やイグリアの国王陛下、ラビットラブリーの人達も帰られるのでしょうか?」


その顔はまさに真剣な表情でした。


「わかんないかな?あたしらはまだこっちの世界に来て一ヶ月も過ぎてないし、でも、秋津州さん達は違うからさ」


「ああ、国王なんかになっちまってるしな」


「遙さん達もそうですよね、本人達しか判らないと思います」


「そうですか・・・」


二人はその言葉に、更に複雑そうな顔をします。


「この世界に転移してきた人は総数で120名程だった?」


「ああ、その中でもこっちで結婚したり家族や恋人が出来たりした奴も居る。その連中は残るかもな、それでも30名程だと思うが」


「でも、残り時間4時間弱って結構酷いですね、そんな短い時間で判断しないといけないなんて」


あたしは、エリィさんの言葉に逆にそうなんだろうか?って思います。

短い時間の方が勢いで決断する事が出来ると思います。そして、勢いでないと逆に決断が出来ない気がします。


「どの道王都に戻るには時間が無さすぎかな」


「私達も森に戻って長老と話す時間はありませんね」


みんながその言葉に顔を見合わせます。


「この塔はどうなるのかな?」


あたしが疑問を口にすると、塔から声が聞こえました。


”コルトの塔はこの後3時間45分後に結界にて封鎖されます。一般の方の立ち入りは不可能になります”


「ねぇ貴方はAI?」


”わたしは、塔の維持管理を司る事を目的に作られた人工精霊です”


「人工精霊?聞いたこと無い名前ね」


「ゲームの設定では存在してないな」


トモエさんとコジロウさんも不思議そうな顔をしています。

でも、特に人工精霊は話を続けるつもりはないようで、それ以降は特に話をする気配はありません。


「まぁせっかく再起動させた塔を又破壊されるような愚は犯さないだろう。封鎖もある意味当たり前だな」


っていう事は、あたしもこの塔を手放さないといけないのか、そんな事を思いながら、でも前の世界へ帰るのだから関係ないのかって考えました。そして、そこから前の世界での事を改めて思い出していました。


「トモエ、コジロウ、残り3時間くらいの間ですがサイアスさんとレイムーンさんを手伝いましょう。まだまだオーガ他の魔物がいないとも限りませんし」


あたし達はサイアスさん達と連れ立って塔の外へと移動しました。そして、エルフの森へと戻る為の準備を手伝います。


「このままエルフの森へと直接戻るのですか?」


「はい、みなさんから貰った食料などがあれば充分にエルフの森まで直接帰れますから。それに、貴方達がいなくなった後のエルフの森が心配です。まだ戦争は終わったとは言えませんから」


その言葉に、ちょっと後ろめたい気持ちになったのかトモエさんが複雑そうに顔を顰めます。


「あ、別に貴方達を責めているわけではありません。誤解しないでいただきたい」


そう言葉を続けるレイムーンさんに、コジロウさんが自分の倉庫から剣や防具を取り出しました。


「餞別だ受け取ってくれ。まぁ余り物で申し訳ないが耐久は減ってないし一応レア物だぞ」


その姿を見て、みんなが思い思いに装備を取り出しました。


「こ、これほどの物受け取れません!」


「これはあたし達の贖罪の気持ちでもあるの。貴方達を見捨てて帰ることには違いが無いから」


慌てる二人に静かな声でトモエさんが告げました。そして、その目を見返していた二人はただ頭を下げます。


「ありがとうございます。ありがたく頂いておきます」


そして、その後みんなで四苦八苦しながら装備を馬に括り付けていきます。


よく考えたらこっちの人たちってアイテム収納機能って持ってないのですよね、ましてや今回は馬車なんて乗ってきてないですし。


それでも、みんなで乗ってきた馬に装備を無事に括り付けました。


「これだと、途中まで同行することは出来ないね」


「そうですね、ここでお別れをしましょう。まだ2時間あるとはいえ、それも確かではないかもしれないですし、これ以上ご一緒していただくのも気が引けます」


そう言うと、サイアスさん達はあたし達へと手を出しました。


「ここでお別れです。短い間でしたがありがとうございました」


そう告げる二人に、みんながそれぞれ握手を交わし、その後二人は騎乗してこちらを振り返る事も無く走り去っていきました。


「何か中途半端っぽくて気にくわねぇなぁ」


そうコジロウさんが呟きました。


「仕方が無いって、あたしらはあくまで助っ人でしかない、この世界の人から見れば異邦人なんだからさ」


「ですね、でもきっとみんなが語り伝えてくれるかもしれませんよ?そう考えると少し勇気が湧きます。あっちでも頑張ろうって気持ちになります」


みんなで少しこっちの世界の事、あっちの世界に帰った時の事を話しました。そして、本当に偶々話が止まり沈黙が訪れました。そして、誰からとも無くこの世界への離別の言葉を紡ぎます。そして、そのタイミングを見計らったようにシステムアナウンスが流れます。


”ログアウト可能時間終了まで残り30分です”


「さぁ、帰るか」


「ですね、帰りましょう」


「だね、まぁ楽しかったよ、色々あったけど」


みんながそう告げる中、あたしも言葉を続けます。


「あたしはそんなに長い間いたわけじゃないです。でも、みんながいてくれて良かった。もし一人でこの世界に飛ばされてたらって思うと、みんなありがとう」


あたしの言葉にみんなが笑います。


「「「「システムウインドオープン」」」」


4人の声が重なります。


「またな」


「またね」


「また遊びましょう」


「またいつか」


みんながシステムログアウトをしていきます。そして、MMOと同様に光を残して消えていきました。

あたしは、その姿をみながら言葉を続けます。


「出会えたら、そしたら謝りますね。そして、みんなと遊べて楽しかったです」


あたしは静かに足元に蹲るルンに視線を戻しました。

何が起きていたのか恐らく理解していなかっただろうルンは、あたしの視線を受けて鳴きます。


「クゥン?」


そして、ルンの頭を撫でてあげようと屈み込んだあたしの顔を静かに舐め始めます。

そして、あたしは自分がいつの間にか泣いている事に気がつきました。


「みんなと遊べて楽しかった。このまま続けばいいなって思ってたんだよ?でもね、あっちの世界にはあたしの帰る場所は無いの。でも、こっちにはルンがいるから」


そう泣き笑いを浮かべながらルンの首を抱きしめます。


”ログアウト可能時間終了まで残り15分です”


”ログアウト可能時間終了まで残り10分です”


”ログアウト可能時間終了まで残り5分です”


”ログアウト可能時間が終了いたしました。これよりシステムはVer2へ移行されます。今後のログアウトは不可能となりました。ご注意ください”


あたしは、ルンの首に抱きついたままただアナウンスを聞きつづけていました。

そして、ログアウト可能時間終了を告げられてからどれだけの時間が過ぎたのか、いつの間にか周りは真っ暗になっていました。あたしは、ライトの魔法を唱えて辺りを照らし出します。

そして、目の前に立つ塔を眺めました。


「ここがあたしの始まりの場所かぁ」


「ヴォン!」


「うん、とりあえず野宿の用意!」


アイテムツリーからテントセットと結界石を取り出し、まず起動した後あたしはテントを作ります。

焚き火を起こし、食事のスープとパンを準備して、そしてふと空を見上げると真っ暗な空に不意にいくつもの流れ星が流れるのが見えました。



最後まで読んで下さってありがとうございます。

異界への扉はこのお話で終了します。なぜかというと主人公が異界へ旅立って、その世界に残るまでがストーリーになっているからです。

で、この続きもストーリーを考えていますが、主人公を変えるか、三人称に挑戦するか、それともって色々悩んでいます。

ただ、それほど時間を掛けずにお話を始めれたらいいなと思っています。

その際はまた読んでいただければ嬉しいです。

今までありがとうございました。

PS:もしかしたらこちらでも少し他の人の視点の幕間を書くかもしれません。

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