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6-9:コルトの森編9

結構展開が一気に進んでしまいました。


コルトの塔があと少しで視認できる場所で一旦下馬して、そこからは徒歩で周りを警戒しながら移動しました。

今回は、以前接近した事がばれている為、罠の有無など用心をしながら、前回とは別の方向から近づきます。

そして、塔を一望できる位置へと全員で移動をしました。


「どう?」


一見した所魔物がいないように見えるのですが、目視ではこれが限界です。

あたしは、望遠鏡で確認しているコジロウさんに塔の周辺の状況を尋ねます。


「これといった魔物は見当たらないな」


「エネミーサーチでも特に反応は無いかな」


コジロウさんの言葉に同意するようにトモエさんを見て、あたしは頷きました。

そして、みんなで塔へと距離を詰めていきます。


そして、あたし達の予想に反して、塔の周辺には魔物はすでに何もいなくなっていました。


「さすがに魔物0は想像していなかったですね」


あたしの言葉にみんな一斉に頷きます。

そして、塔の入口へと視線を向けました。


「特に扉が開いている様子はないけど、でも扉あんまり意味がないしねぇ」


トモエさんの言うように塔は上半分が崩壊して、ジャンプや飛行スキルをもっていれば容易に侵入が可能な状況になっています。


「とりあえず塔の中も確認するか」


「だね」


そう言ってみんなで塔の入口へと入ろうとしました。


「あれ?ここ入れない、結界が張ってある?」


先頭にいたトモエさんが塔から1mくらいの距離で何かに押し戻されるように進めなくなりました。

コジロウさんやエリィさん、レイムーンさん、サイアスさんと順番に試してみますが同様に1mの距離から近づく事ができません。


「あ、これって塔自体の侵入防止かもしれないです」


あたしは自分がMMO時代にも設定していた機能を思い出しました。


「今の塔のマスターって誰なんでしょう?」


そう言いながらあたしが近づくと、なんの抵抗も無く扉の前に到着する事が出来ました。

あたしと一緒についてきたルンも問題なく一緒に結界を抜けることが出来ました。


「あれ?」「クゥン?」


「「「おお」」」


「「行けた!」」


ルンはあたしが何に疑問の声をあげたのか解らなかったみたいで不思議そうにあたしを眺めました。

そして、すんなりと扉の前に到着する事が出来たあたしは、ちょっと唖然としながらも扉に手を掛けてます。

すると、扉には鍵がまったく掛かっていなくてすんなりと開く事が出来ました。


「気をつけてね~」


「結界があるなら大丈夫だと思うが慎重にな!」


「はい!、中に入って結界の設定を変更してきますね」


みんなが其々あたしに声をかける中、あたしはみんなにそう告げて中へと入ります。

塔の中は、以前あたしが暮らしていた状況そのままでした。特に物が壊れた様子も無く、外観が倒壊した塔のようであったのに反して、中はまったく壊れた様子がありません。


「あれ?ここは外観と中が一致してない」


そんな事を思いながら、塔の制御を行う水晶がある二階へと上がりました。

そこも、外観では天上が倒壊していておかしくないはずが、まったく壊れている様子がありません。

でも、そんな物なのかな?って思いながらあたしは壁に設置されている水晶へと手を触れました。


”神聖なる調停者のアクセスを確認、神聖なる調停者のアクセスを確認”

”データーのアクセスを開始、アクセス完了、既存データーの更新を開始します”


あたしが、水晶へと触れた瞬間、塔全体からアナウンスが聞こえ始めました。

そして、データーのアクセスを開始の言葉を聞いた瞬間、あたしは突然目の前が暗くなっていくのを感じます。そして、あたしはそのまま意識を失ってしまいました。


◆◆◆


「清音ちゃん、清音ちゃん」


誰?あたしを呼ぶのは誰?


「おかあさん?」


思わず問い掛けた瞬間、ぼんやりとした頭が急速に鮮明になっていきます。そして、あたしを呼ぶ声がお母さんであるはずが無い事に気がつきます。

いつの間にか床にうつ伏せで倒れていたあたしは、慌てて周りの様子を見回しました。


ここは、塔の中?


先程までいた塔の中にしては、辺り一面が真っ白な壁に包まれています。

そして、壁以外の家具は何一つありません。ただ、床も天井も壁もすべてが真っ白な部屋、自分以外は何一つない部屋です。


此処はどこ?あたしを呼んでたのは誰?


「目が覚めましたね」


そう思った瞬間、あたしの真後ろから声が聞こえました。あたしは、文字どうり飛び上がって後ろを見ます。

そして、あたしの後ろにはある意味予想通りに佐光さんが立っていました。


「佐光さん・・・」


「お久しぶりね清音ちゃん。そして、ありがとう」


佐光さんはあたしに向かって静かに頭を下げました。


「ありがとうってどういう事ですか?それと、あたし達をこの世界へと引き込んだのは佐光さんなんですか?」


突然謝られた為、胸の中のモヤモヤとした思いをぶつける事が出来ず、ちょっと不貞腐れたような声で佐光さんへ質問しました。


「ええ、貴方をこの世界へ連れてきたのはわたし。そして、ありがとうと言ったのはコルトの塔を再起動してくれた事へのお礼です」


「コルトの塔を再起動?」


その後、佐光さんが説明してくれた内容はあたしには予想外の事ばかりでした。

この世界は、元々ゲームとは関係なく存在していました。ただ、かつて存在した龍人族、エルフ、ドワーフ、獣人族、人族、海妖族など多種多様な種族が存在していたそうです。ただ、その中で本来もっとも非力な人族がその唯一と言って良いほど多種族より優れていたのが繁殖力だったそうです。そして、その人族が次第に他の種族の特徴でもある技術を未熟ながらも身に付けて行った時にこの世界の天秤が壊れていったそうです。

人族は次第に圧倒的数の力と、その飽く事の無い貪欲さをもって多種族の生存域にまで勢力を拡大していきました。

又、人族は多種族と比較しても短い寿命と引き換えに多種族との交配が可能な存在として作られました。この為、多種族との混血による更なる能力の上昇、そして、世代を重ねるごとに進む種としての進化によって多種族を排斥できるだけの力を手に入れたそうです。

そして、人族はついに戦争を始めました。しかし、当初人族の予想していただけの戦果は得られませんでした。

多種族は個々の力としては人族よりはるかに強く、そして、元来人を遥かに超える魔力を持っていました。そして、この魔力の差によって各種族は防壁を張り、人族の攻撃は他の種族にとって何ら脅威にはならなかったそうです。ただ、それも人族が世代を重ねるまではですが。

そして、次第に魔力を高め、様々な魔術や呪術、魔具や呪具を生み出し、ついにその均衡が破られたのがおよそ100年程前、そして、その後は数の暴力によって他の種族は次第に滅びの危機に瀕していったそうです。

それでも、各種族は手を取り合うことは無かったそうです。多種族に対する偏見、蔑視、そういった思いを乗り越えることができず、正に滅びる寸前になってようやく各種族は協力してこの塔を4つ作りました。

この4つの塔はこの世界のマナを制御する為の物でした。そして、この塔によって世界中のマナは大地へと還元され多くの魔獣を生み出したんです。そして、魔獣の脅威によって人族を減らそうと私たちはしました。そして、それが更なる悲劇を呼んだのです。人族がこの塔の存在に気がつき、そして破壊しました。その瞬間世界中のマナが暴走し、4つの内3つの塔がその周辺の大陸ごと消滅したそうです。別次元へと切り離されただけなのか、それとも存在自体消滅してしまったのか、それは佐光さんたちも把握出来ていない、その為になんとしても唯一残ったこのコルトの塔を再起動させたかったそうです。


「その再起動になぜあたし達が関わってくるのでしょうか?」


説明を聞き終えたあたしは、そこになぜあたし達が関わってくるのかがわかりませんでした。


「わたし達にはもう人族と戦うだけの力はもうありません。そして、良くも悪くもこの世界のマナは暴走とともに多くの失いました。ただ、この暴走によって一つの可能性が生まれたんです」


そう言うと、佐光さんは白い壁に手を触れました。そこは、今正に多くの人達が大騒ぎをしながら争っている映像が映っています。でも、それは明らかに映像です。3Dのテレビ映像と同様に、明らかに作られたとわかるだけの映像。あたしが、テレビやパソコンで見た宣伝画面そっくりのVRMMOの映像でした。


「そうです、これは貴方達の世界のVRMMOの映像です。そして、なぜかわたし達の世界にそっくりに作られた世界。その世界にわたし達は時空魔法によって干渉する事ができました。そして、逆にこの世界から貴方達の世界へと行くことができたのです。その時の驚きと、そして期待を忘れることはできません」


そう言いながらも辛そうにそのVRMMOの世界を眺める佐光さんに、何も問い掛けることができませんでした。ただ、あたしもその壁に映る映像を見つづけました。


「そして、貴方達の世界へ行き、わたし達は大きな戸惑いを感じました。わたし達の世界に匹敵するほど濃いマナがありながら、まったく魔法の発展していない不思議な世界。それでも、わたし達は貴方達に対して同様に恐怖を感じました。」


次に壁に表示されたのは、さまざまな戦争の映像でした。貧困の映像でした。そして、最後に現れたのは毎週末行われていたMMORPGの国VS国によるイベント戦の映像です。


「わたし達は、その中において誠に勝手ながら数名の者をこの世界へと強制的にお連れしました。今正に人族至上主義の下に攻められているわたし達に比較的友好的であった人々を救う為に。それが、50年前の事です」


「それは、秋津洲さん達のことですか?」


あたしは、50年前という言葉で誰を指しているのか気がつきました。


「ええ、彼らはわたし達が望んでいた通り、いえ、それ以上にこの世界に大きな影響を与えてくれました。この世界でかろうじて生き残っているエルフや獣人達を保護し、局地的にではありますが彼らへの偏見を払拭してくれたのですから」


秋津洲さん達ならそうするだろう、あたし達プレイヤーにとってエルフや獣人は友人であり仲間なんだから。それどころか、この世界へ来たそれぞれの姿は人族で無い人も多いだろうし。


「そうですね、貴方達の異種族への思いも想像以上に友好的でした」


表情に出ていたのか、あたしを見て佐光さんは微笑みます。

そして、その後はまた真剣な表情に戻り、ついにあたしと、塔の事について語り始めました。


「わたし達は、マナの暴走によって生じたマナ不足やマナの偏りを正そうと色々と考えたの。そして、塔の復元を決めました。でも、残念ながら塔の復元を行う為の技術はすでに失われていました。塔の外観は造れます。内装も、でもマナを制御するコアの部分をどうしても造ることが出来なかった。そこで、わたし達は貴方の世界の人、プログラマーの人達に干渉して塔を造らせる事にしました。そして、塔が造られたときあたし達はそのコアを確認しました。でもね、残念ながらその塔にはマナを制御することは出来なかったの。そして、その原因を調べていくうちにただのプログラムだけではマナを制御できないことに気がついたわ。そして、その為に清音さん貴方の力をお借りしました」


佐光さんはそのとき、あたしの事をちゃん付けじゃなくさん付けで呼びました。


「あたしの力?あたしはそんな力なんて持ってない」


「ううん、そんな事無いわ。あの塔を建てた場所は塔を育てることができる人にしか見つけられないの。マナに対してより融和性が高く、そして精神値が高い人。この精神値が高いっていう事は自分をしっかり確立していて、他のものに左右されないだけの個を持っている人のこと」


「そんな事無い!あたしはいつも誰かに影響を受けてきたし、流されてばかりだった!だから、だからあたしは!」


「そうね、だから貴方は2年以上を塔で一人で遊んでいた。そうでしょ?」


佐光さんに言われて、あたしはMMOでの日々を思い浮かべました。最初の一ヶ月、半年、一年、そして三年、その日々の中での出来事を。


「あなたが塔の中で過ごすなかで、少しずつ貴方の中に塔のコアが形成されていった。そして、今あなたがこの世界の塔のコアに触れたとき貴方の中のコアがこの世界のコアへと転送されたの。そして、コルトの塔は復活したわ」


「それだと、トモエさんや、遥さん達がこの世界に連れてこられた意味はあったんですか!あたしに巻き込まれただけだったんですか!」


もしトモエさん達があたしに巻き込まれただけの被害者だとしたら、あたしはどう謝罪すればいいのだろう。そんな思いがあたしの中に広がります。そして、そうでは無いことを、みんなはあたしと関係なく巻き込まれた訳ではないと言って欲しくてあたしは佐光さんを見詰めます。


「そうね、最初に連れてきた秋津洲さん他30名ほどの人達は必然だった、人族以外の人を守る為にも彼らは必要だった。でも、最後にあなたとともにこの世界へ連れてきた人達には、連れてこなければならない明確な理由はないわね」


あたしだ、みんなを巻き込んでしまったの原因はあたしだった・・・


その真実にあたしが衝撃を受け呆然としているあたしに、佐光さんはそれ以上の言葉を続けました。


「それも、もう終わりね、この塔が復活した。これで今現在の大陸のマナは平常化への動きを始めるでしょう。

ありがとう、貴方達にはわたし達よりの最大の感謝を、そして、さようなら」


佐光さんの言葉をきっかけにしてシステムアナウンスが流れました。


”システム更新を確認、ログアウトボタンが使用可能になりました。使用期限はゲーム内時間で現在より4時間後の18:00までとなります。ご注意ください”


そして、そのアナウンスと同時に佐光さんはあたしの目の前から姿が消え、そして、あたしの周りの風景も塔の中の風景になりました。


ほとんど説明(設定?)でお話が終わっています。

そして、一応次回が最終話となります。

伏線回収出来ていないよ!っていう部分が多数ありますが・・・

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