6-5:コルトの森編5
誤字訂正しました。
ユーステリアのオーク?この呼び方で良いのかは微妙ですけど、彼らが宿営地へと戻っていくのを見てあたし達はナイガラの街の門へと向かいました。
エリィさんを含め、みんなは石になりかけている貴族の人達をまったく無視です。
でも、途中から叫び声も聞こえなくなって静かになったなぁ?って思っていたんですけど、どうやら追加で沈黙の魔法でも掛けられたのかもです。
チラッっと見ると、口をパクパクさせていますけど、まったく声が出ていません。
「えっと、この人たちどうするんですか?」
「うん、とりあえずナイガラの行政府に任せるつもり。まだしばらくは完全に石化するまでに時間がかかるし、その方が問題ないかなってね」
あたしがこっそりとトモエさんに尋ねると、トモエさんがそう答えてくれました。
「エリィがここまで怒るのは珍しいし、今は放置だよね」
なんかボソリと呟いていましたけど、あたしも空気が読める子です。スルーですよね。
門へと向かうと、門の扉はピタリと閉じられています。そして、門の扉を数人の人が叩いています。
口々に扉を開けてくれって叫んでいます。
そして、あたし達が近づくと今まで並んでいた人たちが大慌てで逃げ出しました。
「あちゃ、扉を閉ざしたね」
「ユパさんは何をしてるんでしょうね?」
周りの人に状況を聞こうにも、みんな遠巻きにして近寄ってきません。よく考えたらこのメンバーってナイガラの人って誰もいないのですよね。
「門を開けなさい!イグリア所属推定淑女ギルド団長のトモエだ!」
トモエさんが門の前で声をあげます。でも、一向に門が開く気配がありません。
「さきのナイガラ戦闘の折、参戦させてもらったエルフのキュアリーです。わたしを覚えているものもいるでしょう!早急に門を開けてください。緊急事態です!判断がつかない場合はユーパンドラさんに連絡をとりなさい!」
あたしも併せて声をあげます。
すると、門の上の覗き窓?付近で何か人が動く気配がしました。
「う~、まだうちらの名前は浸透してないね」
「まだ来てから間もないですし、しかたないのでは?」
「でもさ、新たなギルドって結構話題になってたじゃん」
「あれは王都だからです」
トモエさんとエリィさんが何かぶつぶつ言っていますね。
一応、何か動きが出たようなので、私たちはしばらく様子を見ることにしました。
そして、10分くらいが過ぎたとき、静かに門が開き始めます。
「お、開き始めた」
「やっとですねぇ」
みんなちょっと複雑そうな顔で門が開くのを見ています。でも、レイムーンさんとサイアスさんはなぜか緊張した顔付きで静かに呟きました。
「まさかと思うが、門が開いた瞬間に攻撃されるなんてないですよね?」
「あ、それわたしも思った」
そして、その言葉にあたし達も一気に警戒心を強めました。
だって、通常ユパさんが統治している中で今回のような馬鹿な兵士が門を警備するなんて考えられませんから。
ギギギギーーー
門が静かに開き、その向こうには多くの人が集まっていました。
剣をもった人、木の棒を持った人さまざまな人がこちらを見ています。そして、その人達の雰囲気はそれこそ熱烈歓迎!ようこそナイガラへ!っていう感じです。
当初予想したような敵対意識なんか、何それ、美味しいの?っていう感じです。
「うわ、なんだろこの感じ」
トモエさんは若干引き気味になりながら、それでも先頭に立って門の中へと進んでいきました。
「キュアリー様!良くぞお戻りくださいました」
そう叫んで出迎えてくれたのはナイガラ騎士団の人です。何度かお顔を見てますからなんとなく覚えてます。
そして、その後ろの集団の中から、一人の人が前に出てきてトモエさんそっちのけであたしの前へと進んできます。
「あ、ドーベルさん!」
吃驚してみると、そこには前領主のドーベルさんが立っています。
う~ん、という事はまたドーベルさんが原因なのかな?
あたしはそんな事を思いましたが、門の内側の状況を見て更に絶句しました。
そこには多数の騎士達が縛られて倒されているんです。
「おお、エルフの嬢ちゃん!」
縛られている騎士達の傍らにはプードルさんも立っていました。
「あれ?みなさんは王都の方へ行ったんじゃなかったんですか?」
「うむ、なにか魔物の出現数が急に増えていてな、それでユーパンドラ様は王都へ昨日戻られたんだ。それで臨時に俺達が再度ここの守りに戻ってきたってところだ」
プードルさんと話をしていると、あたしに気が付いたドーベルさんが慌てたようにこっちにやってきます。
「おい!エルフの娘!久しぶりじゃないか!」
「あ、はぁ」
「おい、聞いてくれ!陛下に新に領地を頂いたんだが、その地へ行ったら街どころか人っ子一人住んでないんだ!」
「へ?」
「王都に確かに近い場所ではあったんだよ!でもさぁ前の戦争で焼け野原になってそれ以後放置されてたんだよ!」
なんかすごい勢いでドーベルさんはあたしに話し掛けます。
でも、話が突然すぎて今ひとつあたしは会話に付いていけていないですよ?
「あ、ねぇところでこれどうなってるのよ?」
トモエさんは後ろに縛られている兵士達を指差しています。
「ああ、こいつらは一応応援でこっちに送られてきた兵士だよ、でもさ、人の領地でなんか好き勝手してるから今とっ捕まえていたんだよ」
「うむ、我らが愛するナイガラの街で狼藉など許せん!」
ドーベルさんは、トモエさんに状況を説明します。そして、プードルさんはそれに大きく頷いています。
「う~ん、応援って何かあったの?戦闘は終わったはずでしょ?」
「さっきも言ったが、イグリア全域で魔物の目撃例、被害報告などが突然増えてきておる、それで近隣の村などからも多くの者が避難してきておる」
プードルさんの言葉に、あたしはちょっと疑問をもちました。
「えっと、それだと門を閉じるのは拙いんじゃないの?」
「ああ、それで慌ててこいつらをとっちめた所だ。ましてや通行税を取ろうとしていたなど聞いてびっくりしたぞ!」
やっぱりさっきのはあのお馬鹿達が勝手にやっていた事みたいです。
「そういえば、チワワ子爵とかおらんな?見なかったか?」
「え~~っと、たぶんあそこで石になりかけてる?」
あたしの言葉にドーベルさんが門の外へと視線を向けると、そこには徐々に石になっている数人の後姿が見えました。その姿を見た後、ちょっと困った顔でドーベルさんがあたしを見ます。
「あ、あたしじゃないからね!これはエリィさんだから!」
ドーベルさんが視線をあたしの横へと向けると、あたし達の会話を聞きながらニッコリ笑うエリィさんの顔が見えます。
「何かありまして?」
うわ~~怖い!なんか絶対零度の微笑みってこういうのを言うんだって姿を体現していますね!
ドーベルさんも顔を引き攣らせて救いを求めるようにあたしを見ますけど、無理!
「あれって死ぬか?」
「さぁ?」
「あ~~、その・・・命だけは簡便してもらえないか?」
「無理?」
えっと、エリィさんそこでなんで疑問系なの?それと、なんでこっちを見るんでしょう?
あたしが困って救いをトモエさんへと求めます。そして、成り行きを珍しく?静かに見ていたトモエさんが溜息をつきながらドーベルさんへと話し掛けます。
「確認だけど、あいつらはキチンと処罰されるんでしょうね?」
「うむ、もちろんだ!今回の顛末は陛下へも報告させてもらう、陛下はこういう事には大変厳しいからな」
その言葉を受けてトモエさんがエリィさんに了解をとります。
エリィさんはちょっと不服そうにムスッっとしていますけど、トモエさんの説得を受け入れました。
「わかりました、わたし達は今急いでいますし、疲れてもいますので他の治癒士の方に治療してもらってください」
その言葉にドーベルさんが頷いて、バタバタと兵士達が動き始めます。
そして、あたしたちはそのまま領主館へと向かいました。
「転移者以外の治癒士で治せればいいのですけどね」
あたしは、吃驚してエリィさんを見ます。そして、レイムーンさん、サイアスさんも同様に吃驚した顔をしていますので、同じように呟きが聞こえたんだと思います。
「はぁ・・・とりあえずオーガの報告をしましょう、あとのことはその後考えましょう」
トモエさんが溜息混じりに皆を促しました。
その後、領主館に移動すると、驚いたことにラビットのメンバーは誰もいませんでした。
「あちゃ、誰もいないの?」
「ああ、ユパは今王都へ行ってる。コヒナやエリーティア達は近郊に現れた魔物退治に出てる」
「むぅ、みんなが行かないといけないくらいの魔物?」
「うむ、私たちではなんともならないのは確かだな。ビッグベア、ブラックウルフ、オークや中にはオーガが出たなんて報告もある」
その言葉に、あたしたちはみんな顔を見合わせました。
「いや、これは参りましたね」
「だね、あたしらだけかと思ったらそこらじゅうかぁ」
「あれは現地の人達じゃ無理だね、死ねるよ!」
みんなが口々に話す中で、内容を感じ取ったのか真剣な表情でドーベルさんが尋ねて来ました。
「まさか、魔物に遭遇したのか?」
「うん、まぁね。コルトの森にオーガの集落を発見したんだよね。それでユパに援軍頼めたらって帰ってきたんだ」
「オーガの集落!!」
トモエさんの発言にドーベルさんもプードルさんも呆然とした表情をしています。一匹や二匹のオーガならともかく集落ですから。その脅威ははぐれの魔物の比じゃありません。
「まずいですね、今それだけの戦力はいませんよ?ところで何匹くらいのオーガが?」
「だいたい30匹はいるんじゃない?」
「うん、それくらいはいました」
トモエさんの言葉に、あたしも同意して頷きました。ドーベルさんとプードルさんは真っ青な顔をしています。
「ばかな!そんな数がここを攻めてきたら!」
「うん、あれはヤバイ!オーガの変位種みたいだしね。なんだっけ?ヴォーリアだっけ?」
二人は、その言葉に顔色を真っ青から真っ白へと変化させます。
「王都に援軍を頼まねば!」
「やばいぞ!やばいぞ!」
「あ、とりあえずあたしら休ませてもらうからね。ちょっとばかり疲れた」
トモエさんの言葉に、あたしたちは一斉に頷きます。
「いや、ちょっと!」
「おい、俺達だけにどうしろと!」
慌てる二人にみんなで軽く手を振ると、あたしたちは思い思いに解散します。
「まずは食事よね?」
「ヴォン!」
あたしとルンはまっすぐに食堂へと向かいました。
しっかり読み返しができてない状態での投稿です。
訂正がいっぱい無いことを祈りながら・・・




