6-2:コルトの森編2
誤字ご指摘ありがとうございました。
訂正いたしました。
ご指摘頂いた斬馬頭を斬馬刀に変更しました。ご指摘ありがとうございます。
戦闘の文でのリズムが変なので、です、でしたなどをちょっと変更しました。戦闘シーンって相変わらず書くのが難しいです・・・
誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
私たちは、みんなで地面の上に寝っ転がっていました。
何も好き好んで土まみれになってる訳ではないんですよ!コルト村がどうなっているかの偵察に来たんです。
コルト村の周辺も、昔のように緑豊かな風景なんか想像もできない荒野となっていました。
そして、コルト村はこれまた予想とは違った佇まい?を見せています。
「いやぁ、ちょっとこれは予想外でしたね」
「だね、要塞ではないけど、これってどう見てもダンジョン入口よね?」
「まぁ、ここから見ているだけでは解んないですけど、恐らくはそうなのでは?」
偵察に来ていたあたし、トモエさん、レイムーンさんは前方に大きく口を開いている岩の入口を観察します。
そして、その入口からは1時間に1回くらいの割合で魔物が外へと飛び出してきます。
「魔物の遭遇率が高かったのはこれで理由が解りましたね。ただ、あのダンジョンをどうするかですね?」
「キュアちゃん、この村って前からダンジョンなんてあったの?」
「え!ないですよ!もしダンジョンなんかあったら絶対気がついてます」
あたしの言葉に、レイムーンさんは頷きます。トモエさんは何かちょっと意味深な?視線を向けてきます。
「あの?何か?」
「うん、キュアちゃんだと素で気がつかなさそうって思った」
「酷!」
そんな馬鹿な話をしながらも、あたし達の視線はダンジョンの入口に釘付けとなっています。
「さて、困りましたね。みんなを呼んでまず先にダンジョンを探索しますか?」
「う~~ん、ちょっとそれは無謀かな?バックアップもいないのに危険は冒せないね」
トモエさんの言葉に、あたしも同意をします。まだダンジョンの危険度も解らないのです。そんな所に回復薬などの支援無しに潜ったりしたら下手したら遭難、全滅の可能性だってあります。
「周りのMOBや、ここに来るまでのMOBの感じではランクB~C、Aは滅多にいないでいいかな?」
「どうでしょうか?サンドシャークもあそこから?」
「系統的にはダンジョンMOBじゃないから違うんじゃない?」
あたし達の会話に、転移組ではないサイレンさんは蚊帳の外になってます。
「まずはコルト村はスルーして塔に向かうほうが良さそうだね。ダンジョンは上手くすれば収入源にもなるし、イグリア軍で一気に地上掃討して町を作るほうが良さそう」
「あ、そうですね。前に聞いたんですけど魔物が減少してるって事ですし調度良いかも?」
「よし!まずベースに戻ろうか」
「「はい」」
魔物に発見されないように慎重に後退をはじめて、あたしたちはコルト村跡を後にしました。
◆◆◆
ベースキャンプに戻ると、ルンがお口を真っ赤に染めて何かを食べています。
それ以外にも、あちらこちらに戦闘の跡が見えます。
「うわ、やっぱり襲われた?」
トモエさんの言葉に、エリィさんとサイアスさんが苦笑しながらも出迎えてくれます。
「ええ、ただ今までとは違ってピッグモスが3匹でしたのである意味助かりましたけどね、食料的に」
「むぅ、やっぱりベースキャンプするような場所じゃないよね」
「そうですね、見通しは良いので不意打ちなんかはされないと思いますけど、遮蔽物が地面の高低差だけですから」
そうなんです。コルトの地にきて驚いたのは、ここも結局荒野しかないんです。それどころか、大きな岩もなくってただ大地が広がっているだけです。その為、身を隠すっていう事がすっごく難しいんですよね。
「急ぎ森まで移動したほうが良さそうですね」
「だね、ここよりは良さそうだと期待したい」
「どのみち血の匂いがあるからここには居られないですしね」
最後のレイムーンさんの言葉が決め手になって早急にみんなで移動を開始します。
ルンがちょっと名残惜しそうにピッグモスのお肉?を眺めていましたけどスルーです。
血抜きもされてないお肉を保管なんかしたくないです!
エリィさん達が当面の食事分は確保してくれたみたいですしね。ルンの分は不明ですけど。
コルトの森へと移動を始めると、周りの風景が少しずつ変化をはじめました。
やはり荒野なのは変わりないですが、まばらにですが枯れた樹木が見え始めます。
それでも、地面の上には草花はまったく見ることができません。
「これがコルトの森なんだ」
今までパソコンの画面でしか見ていなかった風景、でもCGに繊細に描写された綺麗な森の風景が見る影もありません。
「ひどいですね・・・」
あまりの光景にあたしは絶句したまま立ち尽くします。
すると、また小さなざわめきのような声があちらこちらから聞こえてきます。
そして、うっすらとですが枯れた木々の辺りから聞こえてきている気がします。
あ、そういうことなんだ、まだ森は死んではいないんだ。
そして、たぶん塔に行けば何かが変わるような気がします。
そして、感傷に浸っているあたしに、ルンが慰めるように頭を擦り付けてきます。その頭を優しく撫でながら、塔のあるはずの方角を見ますが、本来見えるはずの塔は見当たりません。
「塔が見えないですね、やっぱり破壊されてるっぽいかな」
そう呟くあたしに、みんなが顔を向けます。
「塔を見たことが無いのでなんとも言えませんが、下手すると跡形も無く破壊されてるのかもしれませんね」
「うん、でも大丈夫、ぜったい再生してみせるから。塔も、この森も」
その言葉が合図だったかのように馬車が進み始めました。・・・けど
「うわ~~~、ちょっと何とかしなさいって!」
「いやぁこれは想定していませんでしたね」
「まあ考えれば解ることではあったね」
「ですね、人がこないっていう所で思いつくべきでした」
「ごめんなさい~~~、まさか道がなくなるなんて知らなかったです」
「ヴォン!」
森にさしかかった所で、突然道が途絶しました。あるのは獣道と思われる細い狭い道のみです。馬車で通ることなんて出来ません。それでも、最初はまだなんとか馬車を蛇行させながらも森の奥へと進むことができたんですが、ガタガタ道なんて生易しい物ではありません。馬車の中はまさにシャッフル状態です。ルンにいたってはさっさと馬車から外に出て自分で走ってます。
「これ以上は厳しいですね。馬車を捨てたほうが良いかもしれません」
「そうですね、馬2頭に荷物を結びつけて馬車はこの場に置いて行きましょう。運がよければ帰りに引き取れるでしょうし」
「うん、あわせてここで小休止としますか」
「森の奥に入ってからは途端に魔物が減りましたしね」
「荷物を馬に移してから小休止ですからね!」
「「「「は~~い」」」」
馬車に括り付ける荷物はそんなに多くないですから、早々に小休止に入ります。基本的には大体のものはアイテムツリーに格納してますからね。
「キュアリーさん、ここから後どれくらいの距離か判りますか?」
「そうですね、あと2~3時間くらいで付けるんじゃないかなって思いますけど、実際に歩いたことがあるわけじゃないので」
「あ、そうだよね。ゲームでしか歩いたことないんだしね。ゲームだとこの森ってどんな感じだったの?」
「あ、すっごい綺麗な森でしたよ!薬草や果物なんかも豊富で、魔物もだいたい上の下くらいの魔物が適度に現れてくれるので比較的安全に狩りができますし」
そんな事を話していると、サイアスさんが警告を発します。
「前方赤4点、こっちへ向かってきます」
あたし達は、慌てて攻撃態勢へと移行します。そして、前方からは枯れ木を倒しながら3メートルはある青い肌の巨人がこっちへと向かってきていました。腕は、それこそ丸太のような太さで、しかも巨大な鉄の斧を持っています。そして、なんと言っても顔が怖いです!夢に出ます!
「げ!オーガじゃん!なんでこんな所にオーガがいるんだよ!」
「くっそう!前衛はあたししか居ないのに3匹かよ!」
「プロテクション!アクセル!」
それぞれが一気に戦闘準備を行います。オーガが単体でも中ボスクラスの強さを誇ります。そのオーガが3匹も現れるのは予想外です。
「エリィ!足止めを御願い」
「はい、ファイアーアロー!」
エリィさんから攻撃が先頭に居るオーガへと飛びます。そこで、私たちはありえない光景を見ます。
先頭のオーガが手に持った斧でファイアーアローを打ち払ったんです。
「ありえない!」
そう叫びながらもトモエさんが前へと出ます。エリィさんも今度はファイアーボールを後方のオーガへと打ち込みます。
「エンジェルリング!」
わたしは、後衛のレイムーンさんとサイアスさん、エリィさん、前衛のトモエさんとの中間の位置へと進みました。もしトモエさんを抜けてオーガが来たら持ちこたえれるのはあたしだけです。
ガキン!
甲高い音が響き渡り、トモエさんの剣とオーガの斧が打ち合わされます。そして、その後足を止めての激しい打ちあいが始まります。ハッキリ言って技の欠片もないのは気のせいですよね?
ドゴーン!
「グアアアアア~~」
次に、後方ではファイアーボールを同様に斧で打ち払おうとしたオーガが爆発に巻き込まれて腕を吹き飛ばされています。壮絶な叫び声を上げ、腕を押さえています。そして、3匹目のオーガが戦闘で足を止めているトモエさんの横を迂回してエリィさんへと向かって来ました。
「「トリプル!」」
レイムーンさんとサイアスさんが向かってくるオーガへと矢を浴びせ掛けます。
二人ともアーチャースキルの3連スキルトリプルで合計6本の矢を打ち込みました。1射、2射は斧で弾き飛ばしたオーガも、続く3射目は避けることが出来ず、一本は左足を、一本は右足をと見事に両足に突き刺さりました。
「グルル」
「うわ!効いてないぞ!」
一瞬速度が落ちたように感じましたが、矢が刺さったままでそのまま突っ込んできます。
「セイッ!」
あたしは、メイスを構えてオーガの足を打ち払いに前に出ました。
それに併せるかのようにオーガの斧がエンジェルリングへと叩き付けられます。
「グオオオ!」
あたしのメイスがオーガの左膝に叩きつけられ、そのまま左足を圧し折りました。そして、驚くことにオーガの斧がエンジェルリングに弾き飛ばされましたが、その一撃ですでに点滅を始めています。
うわぁ~~次に一撃もらったら絶対もたない
左ひざを打ち砕かれ、大地に突っ伏したオーガが手を付いて起き上がろうとします。でも、その瞬間に真横からルンがオーガの喉へと噛み付きました。そして、噛み千切ろうと首を激しく左右へと振りますが、それでも噛み千切れずオーガの拳がルンへと向けられます。
「ルン!下がって」
その言葉に、ルンがオーガの体を蹴りつけて離れようとします。それでも一瞬早くオーガの拳がルンの体に叩きつけられました。
「キャウン!」
「ルン!ヒール!」
咄嗟にルンへとヒールを掛け回復を図ります。
そして、その間にレイムーンさんとサイアスさんが間断なく矢を飛ばします。
そして、身動きが取れないオーガに次々と矢が突き刺さりました。
「グオオオオ~~」
壮絶な叫びにみんなの体が一瞬硬直します。そして、その一瞬を突いてオーガが地面にある石をあたしへと投擲しました。
エンジェルリングへと当たった石は、そのままエンジェルリングを砕き硬直して動きの取れないあたしをふっ飛ばしました。
「かはっ」
あたしは、あまりの衝撃に一瞬意識が飛んだような気がします。
そして、石が直撃した胸の辺りが鈍い痛みを伴って呼吸を妨げました。
それでも、威力が減衰されていたのと、装備の物理攻撃軽減効果で意識は繋ぎとめています。
「ひ、ヒール!」
回復魔法で痛みが次第に弱まっていき、そして先程のオーガを見るとルンに今度こそ喉を噛み切られ倒れこむ所でした。
「ヴァオ~~~~ン」
ルンの勝利の雄叫びが辺りへと響き渡ります。
でも、そちらへ一瞬気を取られた瞬間に視界の横でサイアスさんが吹き飛びました。
「え?!」
そちらへと視線を向けると、片腕を失ったオーガが今度はレイムーンさんへと大きな石を投擲する所です。
「ホーリーサンダー!」
あたしは、咄嗟に魔法を唱えオーガへとぶつけます。
オーガは、一瞬ビクッっと身を震わせますが、何事も無いかのようにあたしへと目標を変えて石を投げつけてきました。
「きゃあ!」
真横へと転がるように避けますが、次々に石が投げつけられます。
そして、どの石も地面に深々とめり込んでいます。
「死ぬ!こんなの当たったら死ぬって!」
思わずそんな事を叫びながら、必死に逃げ回ります。
そして、あたしに気を取られている間にレイムーンさんはサイアスさんに回復ポーションを飲ませていました。
何度目かの攻撃を避けた瞬間、トモエさんが戦っている辺りからオーガの叫び声が聞こえてきました。
でも、そっちを見る余裕なんかぜんぜん無いです。
「ガウウ!」
あたしへと投擲を続けるオーガの首に向かって、背後からルンが襲い掛かりました。
そして、あたしは攻撃が止んだ瞬間を利用してサイアスさんにメガヒールを掛けました。
「無事ですか?!」
「ヒールありがとう」
サイアスさんが起き上がります。そして、次にトモエさんの方を見ます。
すると、視線の先には真っ赤に血で染まったトモエさんが立っていました。
そして、トモエさんの足元には頭を失ったオーガが首から断続的に血を噴き出して倒れています。
「エリィ!あんた援護するのはありがたいけど魔法を考えろ!」
「ごめん~~、でもそんな余裕無いって!」
その様子に、あたしは危険が無いことを確認して、最後のオーガへと意識を向けます。
背後から首筋に噛み付いたルンを引き剥がそうと暴れるオーガは、すでに廻りの状況を気にしている様子はありません。
「ルン!下がって!」
トモエさんが叫び声を上げ、一路片手のオーガへと肉薄します。そして、ルンが離れた瞬間に併せてスキルを発動しました。
「斬馬刀一の太刀、水月!」
その瞬間、トモエさんの剣が下から掬い上げられる様に走り、オーガの残っている左手を切り飛ばしました。
「二の太刀、散花!」
そして、返す刃でオーガの頭を切り飛ばします。そして、直立したままのオーガの首から、まるで花びらが散るように断続的に血が吹き上がりました。
「おつかれさまです~」
エリィさんがみんなへと声を掛けます。そして、みんなが地面へと座り込みました。
「う~~、疲れた、オーガってこんなに強かったっけ?」
「どうでしょうか?でも、最初にファイアーアローを打ち払われた時には驚きました」
「はい、あたしもエンジェルリングが一撃で壊れそうになるなんて想像もしてなかったです」
地面に座って話し込んでいるあたし達のところに、レイムーンさんとサイアスさんが剥ぎ取りを終えてやってきました。
「みなさん流石ですね、わたし達だけでは全滅してる所でした。さすが転移者の方たちですね」
「ああ、まさかオーガヴォリアーを3体も相手にして無傷で勝てるとは思わなかった」
「え?オーガヴォリアー?なにそれ?」
トモエさんがあたし達を代表して質問をしてくれます。
オーガヴォリアーさんて聞いたことないですよ。MMOを3年以上遊んできても聞いたことのない名前です。攻略本にもそんな名前なかったです。
「オーガの上位種ですよ。わたし達も初めてみましたが、まさか矢が突き刺さっても構わず攻撃を続けてくるとは思いませんでした」
「「「上位種!」」」
「ええ、戦士の腕輪を装備していたので間違いないですね」
そう言って、剥ぎ取ってきた腕輪を見せてくれます。そのアイテムステータスを見ると、確かに戦士の腕輪となっていました。
「オーガが落とすのは確かオーガの腕輪だよね。そうすると、ほんとに上位種なんだ」
「だね」
「ですね」
あたし達は驚きを隠せずにいました。なぜなら、この事はおそらくあたし達の遊んできたMMORPGとの乖離を示す事に成るからです。そして、今後も更にどんな新種の魔物が現れるかわからないといった危険を含んでいたからです。
うわ~~、あっさりコルト村スルーしちゃいました。
一応、今後の伏線は入れておいたんですけど、まさかスルーするとは書いてみるまで思いもしませんでした。




