6-1:コルトの森編
コルトの森編が始まります。
やっとですね!
誤字ご指摘ありがとうございます。訂正しました。
転移門はその3日後に無事回復しました。
回復した途端王都からも、エルフの森からも続々と人が転移してきました。
その、行政府も、騎士団宿舎にも人が納まりきらない為、急遽宿屋や民家なども借り上げて、ユパさんもユーナさんもてんてこ舞いの様子です。
あたしは特にする事がなかったので、転移門が回復するまでの3日間の間にコルトの森へと出発する準備を整えてしまってます。
先の戦闘では怪我人があまり出なかったので、本業?の治癒士の仕事もないですし、又、これ以上ヌイグルミを作る必要も無いのでルンと異世界の町並みをまったりと買い物をしながら見物していました。
ちなみに、騎士団には先の戦闘で残ったヌイグルミを100体寄贈しました。移動しての戦闘には不向きですけど、拠点や要所防衛にはガーディアンは重宝しますからね。
4日目の朝、まだ日が昇ったばかりの時間に北門にあたしと、ユパさん達が集まっています。
「それでは、お気をつけて」
「また遊びに来てくださいね」
「コルトの森の復活を望むなら協力は惜しまんぞ。森はエルフの母だからな」
その他にも、みなさんそれぞれが声を掛けてくれます。
「ありがとうございます。落ち着いたら一度連絡をいれますね」
あたしの言葉に、みんながそれぞれ頷いてくれます。
まだ、この街にきて10日ほど、この世界に来ても1ヶ月くらいしか過ぎていないのに、こんなに皆と親しくなるとは考えてもいませんでした。
「さぁ、キュアちゃん行こうか」
傍らに立つトモエさんの言葉にあたしは頷きます。
今回コルトの森へと同行してくれるのは、なんと推定淑女のトモエさん、エリィさん、そして、エルフの森からも哨戒部隊の隊長さんだったレイムーンさんとその隊員のサイアスさんの4名です。
なんとレイムーンさんも転移組みですので、過剰戦力ですよね!
それでも、知った顔があるとすっごく安心できます。
「はい、ではみなさんお元気で」
あたしは、ユパさんからお借りした馬車に乗り込みます。ちなみに、この馬車はトモエさん達が帰りに乗っていきます。コルトの森の状況によっては馬が飼えるかわからないので一台くれるっていうのを断っちゃいました。
馬車は、ナイガラからコルトの森へ向かって北上します。
馬車でだいたい4日くらいの距離でしょうか?こっちの距離感がいまだによく解らないのですが、トモエさんもだいた3日か4日くらいじゃない?って言ってましたし。
結構ゆったり仕様の馬車ですけど、それでも御者席に2名、馬車の中に3人+1匹がいると狭く感じます。荷物はそれぞれのアイテムツリーに収納してるのでそれ程場所を取ってないのですけど。
のんびりと周りの風景を見ながら、こっちの世界にきてからの事を色々と話しながらコルトの森へと向かいました。
最初の2日くらいは、特にかわらない風景の中を魔物に襲われることも無く、又、ユーステリアなどの襲撃に遭うことも無くただのんびりと過ぎました。でも、3日めに入ったとき、少しずつ様子が変わってきました。
「ねぇ、なんか景色が変わってきてない?木や緑が少なくなってきてるよね?」
トモエさんも、その様子に違和感を感じ始めたようです。そして、それはコルトの森に近づくにつれて更に変化していきました。そして、3日目の夕方には周囲の景色はまさに植物が見当たらない荒野のようです。
「これは酷いですね、森どころか木々や草すら見当たらない」
「う~ん、この地に入ってからどんどん精霊の気配を感じられなくなってきました」
サイアスさんとレイムーンさんが呆然とした様子で周りを見回しています。
「とりあえず日が落ちる前に野営の準備をしましょう」
「だね、エリィは周辺の警戒をして、あたしはレイムーンさんとサイアスさんとで焚き火や食事の準備を始めるから」
「あ、ルンもエリィさんと一緒に警戒してね。わたしは防御結界を張りますね」
この二日間で段々と役割分担が出来てきたので、みんなは其々の作業へと入ります。
そして準備も問題なく済み、みんなが食事に入ろうとした時、ルンが突然立ち上がりコルトの森の方角を睨みつけました。
「グルルルル」
「何か来るみたいだね」
あたしの言葉にみんなが思い思いに武器を取り出して北の方角をじっと見詰めます。
エリィさんとあたしがエネミーサーチの呪文を唱えて周囲を警戒します。
「う~~ん、見通しの良い場所なのにぜんぜん敵が見えませんね、どんどん近づいているのに」
「ですね、空にもなんにも見えませんし、っていうことは・・・・下?」
あたし達はみんなで顔を見合わせました。
「マズイかも?これってワームかな?」
トモエさんが近づく魔物の正体を推測しますが、ワームにしては動きが早いです。
「いえ、ワームにしては速度が早いです。これはたぶん」
あたしがこの魔物の正体に気がついたとき、目の前の地面のしたから何かが飛び出しました。そして、目の前の防御結界の障壁にぶつかりました。
「あ、跳ね飛ばされた」
「ちょっと~~~、なんでサンドシャークがこんな所にいるのよ!」
目の前に現れたのは、おなじみのホオジロザメっぽい魔物です。色はグレーですけれど。
「さぁ?北の砂漠から流れてきたのかな?」
「防御結界があるうちに何とかしないと!」
「今ので30%くらい耐久が減ったかな?」
「キュアリーさん落ち着きすぎです!まずいですよ、更に2体の接近を確認しました!」
「な!まずいじゃないか!」
なんか皆さんバタバタと慌て始めます。レイムーンさんは弓を取り出してサーチを頼りに出現しそうな場所に狙いを定めています。
ほかの人たちもそれぞれ思い思いに武器を構えて準備をしています。
「えっと、別に普通に対処すればいいのじゃないの?」
なんでみんながこんなに慌てるのかわからず、あたしはキョトンとしてしまいます。
だって、サンドシャークってやっとこ上位の魔物なんだし、そんなに慌てなくても?
「こういう時って音響弾でしたっけ?」
「えっと、それは違うゲームだと思う」
エリィさんの発言に思わず突っ込みを入れてしまいました。不用意な発言は色々と誤解を生みますしね!
そんな事を話しているうちに、こんどは真下から突き上げるような衝撃が着ます。
「うそ!上に出ないで下からって!」
「上に来ないで下から攻撃され続けたら対処のしようがないぞ!」
慌てるみんなを眺めながら、あたしは鞄の中から爆裂弾を3個ほど取り出してサーチ画面の赤い点がある辺りに投げ入れました。
ドゴーーーン!!!
そんな音と同時に、地面の上にお腹を見せてプッカリとサンドシャークが浮かび上がります。
うん、セオリー通りです。爆発の衝撃で一瞬気絶状態なんですよね。
そして、あたしはレイピアを取り出して一気に襲い掛かりました。
「刺突三段」
久しぶりに使うレイピアでサンドシャークの頭の部分にスキル攻撃で一気に3段突きを放ち、あっさりとサンドシャークを倒しました。そして、更に近くまで着ていた赤い点が突然の爆発で同様にお腹を見せて浮かび上がって来ていたので、更にスキルを連発して3匹とも串刺しにしてあげます。
「ほむ」
一息ついて振り返ると、みんなが呆然としてこっちを眺めています。
「あ、うん、あんまり褒められた方法じゃないけど、ダイナマイト漁?」
「「「それ絶対に違う!!!」」」
う、みんなから一斉に否定されました。
え~~だって、これってどう見てもダイナマイト漁よね?ちなみに、音響弾なんて使ったら逆に地上にいる私達がダメージ受けますよ!サンドシャークは土の上の振動を頼りに獲物を狙ってくるので、爆発で地面に強い衝撃を与えるのが一番なんですよ?たぶんですけど。
その後、みんなにワイワイ言われながらも大事にヒレを剥ぎ取ります!
夕飯はフカヒレですね!
その後コルトの森へと向かうあたし達は、更に3回もの魔物の襲撃を受けました。
その中にはサンドパイパーもいたのでびっくりです。
「どうやら、ここら辺は砂漠になっているとの認識で対処したほうがいいですね」
「だね、サーチに反応しない魔物もいるし、慎重に移動したほうが良いと思います」
割と待ち構え系や昆虫タイプの小型の魔物ってサーチに引っかからないのですよね。
「コルトの森の手前に村があったよね?コルト村だっけ、あそこってまだあるのかな?」
「どうでしょう?でも、魔物もジワジワ増えて来ているのであまり期待しないでその村に向かいましょうか」
エリィさんの発言で、とりあえずはコルト村へと進路をとります。
コルト村は確か塔攻略の拠点になる予定だった村です。でも今の状況を見ると、きっと廃墟になっている気がしてきます。
「まぁ誰も塔攻略を経験した人はいないし、どうなっているかはわからないですから」
「エリィの言うとおりだよ、もしかしたら要塞みたいになっているかもしれないしね!」
「それはそれで嫌そうですね」
あたしの言葉にみんなが笑います。でも、自分の塔を攻略する要塞って嬉しくありませんよ!
まだコルトの森編の序章です。
とりあえず次回はコルト村へ!




