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5-10:ナイガラ攻防編10

なんとかナイガラ攻防編終了です。

この後、コルトの森編が始まります。

厳守→元首、中から→中にへと訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

席に戻り、今後の方針を皆で打ち合わせをしています。

主には、今後のわたしの身の振り方、そして、併せてわたしの情報というかエルフの巫女の情報の取扱いについての打合せを行います。


「まずはエルフの巫女様をどう守るかだな。今後、ユーステリアが巫女様の命を狙ってくるのは確実だろう」


「狙ってきますかね?彼らとて神の怒りに触れ、魔物へと姿を変えられたくはないでしょう」


「さあな、ただこのまま大人しくしているとはとても思えんが」


「巫女様には早急にエルフの村へお戻りいただくのがよいと思いますが」


「ええ、わたしもそう思います」


アルルさん達が話し合っています。

あたしは、会話に入らずただ、話を聞いています。


「で、キュアリーさんは王都へとお戻りになるのかな?」


「はい、今回はたまたまこちらで戦闘に巻き込まれましたけど、もともとは伝令でしかありませんから。ギルドへと戻ります。団長も痺れを切らしていると思いますから」


「そうですか、残念ですね、このまま私の部下としてこのナイガラに帰属しませんか?」


「ありがとうございます。でも、もしユパ様のところへ転籍しようものならうちの団長が暴れますよ?」


「推定淑女のトモエさんですか、中々怖い方だとお聞きしています。ましてや、転移者40人を引き連れてみえるかたです残念ですが諦めましょう」


「さて、そろそろ巫女様のお慈悲で元の姿に戻ったものが目を覚ますのでは?」


「ふむ、では打ち合わせは後にするか」


その言葉に、みんなの視線が先程のユーステリアの王女へと集まりました。


「ルン、その人起こしてくれる?」


コヒナさんの言葉に首を起こしたルンが、真横に突っ伏しているその公女を片足でボカッっと叩きました。


「かはっ」


肺の中から空気が漏れるような声が聞こえて、公女が目を覚ましました。


「さて、お目覚めですかな?あまりに良くお休みなので、こちらも途方に暮れていた所です」


その言葉に、その公女は羞恥に顔を真っ赤にしました。


「質問なのですが、公女が戦闘に参加する事は普通なのですか?」


「まあ普通と言えば普通、異常と言えば異常ですね。ユーステリアは宗教国家ですが、元首は国王です。その王族の中に公爵は2名いますが、現在両公爵家ともに後継ぎの男子がいません。その為、恐らく今回の戦争で実力を見せ後継ぎ候補に名乗りを上げたかったのでしょう」


「でも、第三公女なんですよね?可能なのですか?」


「不可能では無いですね。3人とも親が違うはずですから」


「まぁ権力争いですか、宗教国家といえどその程度ですね」


私たちの会話を聞いている公女を見ていると、顔を真っ赤にして屈辱に震えています。

でも、自分達がもっとも差別する魔物に姿を変えられて、それでもこちらに対して怒りを覚えれるというのは凄いことですよね。あたしなら絶対心が折れると思います。


「さて、黙っているようだが、何か意見はあるかな?」


「わ、私達はすでに降伏した。賠償に対しては別途父上を窓にしてもらっても構わない。ただ、皆の姿をなんとか元に戻してあげて欲しい。このままでは更に自殺者が増える、又、今の姿のままでは帰国すら出来ない」


決して揺るがない強い意志を感じさせながら、その公女さんは私たちに嘆願しました。


「ふむ、しかし困ったお話ですね。今回の魔物化は決して我々が意図したものでは無い。その為、元に戻して欲しいと言われても困るというのが率直な意見だ」


「そんな!現に私の姿は元に戻っているではないか!」


悲痛な声が会議室に響きます。


「ええ、貴方を戻すことは出来ました。しかしそれは我らの神の加護でしかありません。ここに一瓶の聖水があります。これは、エルフ達が奉じる神の力が込められた水です。貴方に飲ませたのはこの聖水です」


ユパさんの持つありふれた壜に公女さんの視線が注がれます。ただ、かなり疑わしげな気がします。


「信じる信じないは貴方次第ですが、この聖水で問題なのはこの一壜しかないと言う事です。それがどういう意味かわかりますか?」


その言葉で、公女さんの視線が先程とは打って変って厳しくなりました。そして、ユパさんの言葉を理解した時、その表情は絶望に彩られました。


「そ、その一本しかないのですか?新に手に入れる方法はないのでしょうか?」


「生憎とそのような方法は伝わっておらん。これは、我らエルフにとっても貴重な物。この度はユーパンドラのたっての願いの為特別に使用を許可した。これ以上の使用を許可するつもりは無い」


「そ、そんな・・・・」


悲観に暮れる様子は、普通なら同情を誘うのかもしれません。でも、この人はわたし達に戦争を仕掛けてきた人です。私たちは、そんな人に同情するつもりはまったくありません。


「簡単ではないの?貴方達にも神官はいるのでしょ?貴方達が信じる神の加護を願えばいいのではなくて?」


公女さんは、エリーティアさんの言葉に更に顔を歪ませます。恐らくですが、すでに試みているのではないでしょうか。


「我々とてこのような事は初めて経験したのです。この後どのようになるのかも不明です。もしかしたら魔物の体に心が引きずられて、そして真実魔物になってしまうのかもしれません。その時、貴方はどうされるのですか?」


何も言い返せずただ黙り込む公女さんに、ユパさんは静かに最後通告を言い渡しました。


「貴方には、この後無事に自国へとお帰り願います。そして、事の次第を貴方の父親や国王へと伝えてください。そして、己の行いを見直し神の怒りを買った理由を真剣に考えるように言ってください。帰国の際、希望する者を連れ帰って頂いても構いません。自国で彼らを治す事が出来ることを祈っています」


その後、項垂れたままの公女を兵士達が連れ出しました。

そして、私たちは再度席について今後の対応に関して打合せを行いました。


「さてさて、芝居も此処までにして真面目に今後どのようにするのかな?」


アルルさんがみんなへと視線を投げます。


「それよりも、さっき本当にあの公女さんは起きてたの?」


「それは間違いないです。呼吸も明らかに違いましたし。確実にわたし達の話は聞いていたと思います」


「ふ~~ん、そうすると上手くいったのかな?」


「さぁ?それはどうかしら?」


そうです。先程の公女さんを起こす前の会話は、偽の情報を与える為の演技だったんです。

エルフの巫女って誰のこと?って気分ですしね。それに、エルフの森にっていう事にしておけば何かあった時もあの森なら何かと対応も出来そうですし。又、わたしが疑われても王都へ行った事にすればなんとでもなるだろうって事です。


「さて、終わったような、終わってないような微妙な気分だね」


ユパさんの言葉に全員が頷きます。


「今回、ユーステリアは本国からこの街に転移させる予定の兵士をどれくらい用意していたのかな?」


「さぁ、それ程多くなかったのではないでしょうか?それだけの兵力を用意するくらいなら進軍してきていたと思います」


「そうだな、エルフの森との2方面作戦を行ってもおかしくは無い。今回は偶々ユパ達がこの街に赴任してきていたが、そうでなければ今回の戦闘では確実にこの街は陥落していただろう」


「いえ、わたしがいても危なかったですね、別働隊がいるとは思ってもいませんでしたからね。キュアリーさんのお蔭ですね」


「いえ、あたしは結局何もしてませんし、なんか気絶してただけのような気がします」


そういうと、みんなが一斉に笑い始めました。


「終わりよければすべて良しですわ」


「そうだな」


「ですね~」


みんなが再度顔を見合わせて頷きます。


「この後、義妹殿は予定通りコルトの森へと向かうのかな?」


もうなんか義妹でいいやって気分で特に否定をしませんでした。この会議室の雰囲気が今まで感じた事の無い連帯感を作り出してしる気がするんです。


「はい、その予定です。それに、何か行かなければっていう気持ちが段々と強くなってくるんです」


「そうですか、寂しくなりますね。」


「しかし、コルトの森か。あそこはいまどういう状況になってるんだ?」


「さぁ?アルルさんが知らないのに私達が知るはずないですよ?わざわざ行く所じゃないですから」


なんか相変わらずひどい言われようですね。良い所なんですよ!


「まぁ問題はキュアリーさんの裏設定ですね、こちらはどうしますか?」


「裏設定って!」


「うむ、まぁ放置してもそれほど害は無さそうではあったが」


「話した限りそれほど問題は起きそうになかったですね」


「ですね、なんというかそれこそAIみたいでした」


みんながそれぞれ意見を言いますけど、当事者のわたしはその間気絶してますから判断できないのです。


「まもなく転移門が修復されるから、誰か来るだろう。コルトの森までとりあえず同行させよう」


「え!いいです、ルンもいますし平気ですよ!」


あたしは必死に遠慮します。でも、結局みんなに押し切られちゃいました。


うぅ、そんなに危なっかしそうですか?


「まぁあとは政治的な部分が殆どですから、キュアリーさんはご自身の安全のみ気にしていただければと思います。いまさらですがナイガラ防衛にご助力いただきましてありがとうございました」


ユパさんが深々とお辞儀します。それに合わせてコヒナさんもエリーティアさんも同様にお辞儀してくれます。わたしは、顔を真っ赤にしながら、みんな無事でよかったなって思いました。

そして、わたしのナイガラ防衛戦はこれで終了したのかな?いまひとつ実感がないですけど。


ちなみに、その2日後にユーステリアの公女さんは一部の人を引き連れてユーステリアへと戻っていきました。でも大部分の人は、ユーステリアへ戻ることを止め、ナイガラの近辺に村を作る事を許されてそこで生活する事にしたそうです。

なんでも、ユーステリアへ行くと下手すると殺される可能性が高いって思っているそうです。

あと、公女さんも(あ、名前聞き忘れてる)恐らく色々と問題が起きるだろうってみんなは考えているようでした。逆にわざとそう仕向けているみたいです。ユパさんは相変わらず黒いですね!



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