5-9:ナイガラ攻防編9
次回でナイガラ攻防編は終了です。
攻防と言うわりには戦闘は前半であっさり終わってなんかグタグタしてましたね・・・
誤字ご指摘ありがとうございます。皇女を公女へ訂正しました。
誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
あたしが、目を覚ますとそこには悪夢の光景が広がっていました。
ハッキリ言ってカオスです、混沌です。
きっと、悪い夢を見ているんですね、もう一回このまま眠ろう!
あたしが、そう決断をして、せっかく眠ろうとしたのに、その悪夢の根源ともいえるアルルさんがこちらに気がつきました。
「おお、キュアリーさんやっと目が覚めてくれたか!待ちかねたぞ!」
その言葉に、一斉にみんながこちらを注視します。
あたしは、その状況にハッキリ言って怯えました。小さい子ならぜったいトラウマになります。
「あ、あの、これはどういった状況なんでしょうか?」
恐る恐る確認します。
すると、ピッチピチのピンクのナース服にナースキャップを着た、真ん丸なアルルさんが辛そうに答えてくれました。
「うむ、キュアリーさんが意識を失った直後、予想通り第二の人格が現れたのだ。そこまでは良い、我らもそこまでは予想しておった。しかし、その後ユーナの装備の外観を元に戻して欲しいと頼んではみたのだが、残念ながら断られた。そしてな、さらにこの場に居る皆の装備まで・・・ごらんの通りだ」
そう言って、周りの皆を見渡します。
そこには、フリフリドレスのコヒナさん、これはまだ許せます。セーラー服のユパさん、あぅ、イメージが。そして、ナース服のアルルさん、これははもう毒です!それから、ユーナさんとエリーティアさんが変わらない衣装で立っていました。
「まさか、この様な結果に終わるとは」
「誰も予想できませんでしたねぇ」
悲痛に呻くユパさんに、なんかすっごい楽しそうなエリーティアさん。エリーティアさんは相変わらず無敵ですね。
ユーナさんは机に突っ伏した状況で肩を震わせて泣いているみたいです。
「あ、あの、」
なんと言って謝れば良いのか判らなくて、ただオロオロとみんなを見ます。
「しかし、この格好は酷い」
ボソリとユパさんが呟きます。そして、あたしもそれは尤もだと思います。
でも、意識がなかったとはいえ自分がやってしまった事なので、それを言う訳にはいきませんでした。
コンコン
「失礼しま・・・した」
会議室に何かの用事で来た女性の方が、部屋に入ってこようとして皆を見たとたん引き換えしていきます。
ユパさんが何かを言って引き取めようとしたのですが、何かを恐れるように慌てて部屋を出て行きました。
「うわぁ!噂が立つ!」
やたらと慌てるユパさんに、他の人はなんか笑っているだけです。ここら辺がメンタルの強さなのでしょうか?
「ブフッ!」
突然、ユーナさんが噴き出しました。ユパさんの動揺する姿が思いのほかツボに嵌ったのかしばらく机を叩きながら笑っています。
「あの、ユーナさん、ごめんなさい」
あたしが、そう話し掛けると、手をブンブン振って問題ないよって仕草をしました。
「あぁ、もう駄目だわ、わたし我慢できないから。キュアリーさん、ごめん、これはみんな其々の持ってるユニーク装備着てるだけだよ。無事外観変更できました」
そう言って、ユーナさんは赤色が綺麗に光る鳳凰装備へと姿を変えました。
「あ、うわぁ綺麗です」
「ありがと~~」
そう言ってあたしの手を取ってキャッキャとユーナさんが喜びます。
よほどあの装備が嫌だったんですね。
「あの、でもそれでは何でみんなあんな格好に?」
「それはね、ちょっとキュアリーさんを脅かしてみましょうって提案した人がいて」
「あら、私一人に罪を押し付けるの?みんなも面白そうだって賛成したでしょ?」
ユーナさんがチラリとエリーティアさんを窺うと、エリーティアさんは満面の笑みを浮かべながら指を頬へと持っていって困ったわねって感じで首を傾げます。
あたしは、なんとなくエリーティアさんっていう人が判って来ました。うん、最初に抱いていた大人しい、オットリしたってイメージは意図して作られてたんですね。今の仕草もぜったい計算ずくです。
う~~でも、意図されていても可愛いです!反則です!ぜったい責めれないですよ!
「はぁ、なんにしても皆さんが戻ってよかったです」
「まぁお遊びはここまでにして、話を煮詰めねばなるまい」
アルルさんの一言で、みんながいつもの装備へと戻していきます。
みんなが一通り着替えて席へと座ってすぐに、アルルさんが状況の説明を始めました。
「さて、キュアリーさん以外の者はさきほどキュアリーさんの裏に存在する者と会話を行いました。そして、その存在は基本的にはですがキュアリーさんとは関係なく意思判断を行っています」
「はぁ、やっぱり別の何かがわたしの中にいたんですか」
背中に氷を入れられたように、背筋どころか全身に寒気が走りました。
「はい、そして私たちはその存在をAIキュアリーと仮定する事としました。なぜなら、その存在は明らかに自我が存在していません。そしてかつての運営やGMのような力といいますか権限を持っているようです。簡単なデーター変更なら可能との事でしたね」
「はぁ、でもそれならAIとかでも良いような」
「いえ、最終的にはどうやらその権限はキュアリーさんへと移行される事になるようです。そして、まずその為に行かなければ成らない場所、それがコルトの森らしいです」
「はぁ」
あたしは、今ひとつ実感がありません。特に自分で意識してその権限を行使した事もないからですし、そんな権限が欲しいとも思ったことが無いですし。
「まぁ簡単に言うと、まずコルトの森に行ったほうが良いよって事かな?」
黙り込んでしまったあたしを、コヒナさんは心配そうに見ながらそう言いました。
うん、まずはそれしか無いんですよね。
「ただ、出発はもう2,3日待っていただけますか?そうすれば転移門が回復するので、キュアリーさんに誰かを同行させることも出来ます。まだ、何が起こるかは不明ですし、とても単独では行かせることも出来ません。わたしも、同行したいのですが、流石に現状では不可能なので」
ユパさんの言葉を聞きながらも、あたしは別の事に意識を取られていました。
「あの、GM権限があるっていう事はログアウトとか、もとの世界に戻る事も出来るのでしょうか?」
あたしの言葉に、みんなは黙り込みました。そして、その沈黙が答えになっているんだと判りました。
「そうですか、駄目なんですね」
「ええ、AIから権限の説明が出たとき真っ先にわたしが聞いたわ。そして、あっさりとその機能は無いと回答を貰いました。そして、帰る方法があるのかと聞いたら、記憶されてるデーターの中には無いって」
ユーナさんの言葉に、あたしを含め、みんなが黙り込みました。
「まぁ、その事はとりあえず置いておこう。それとだな、城門外にいるユーステリア軍の連中の事だがどうやらあれも外観が変更されているだけらしい。パラメーターなどは以前のままだという事だ。その為、外観変更解除薬を作ってもらった。これで一応全員とは言わないが一部の者は姿を戻すことが出来る」
「あ、戻せるんですか?」
「うむ、まぁ解除薬といってもエリーティアが後生大事に酒場から持ってきてたワインを作り変えてもらったものだがな」
アルルさんが笑います。でも、エリーティアさんのイメージがどんどん壊れていきますね。
「まぁ一壜ですが、一口飲むだけで解除されるそうですから、上手に利用させていただきましょう。一度誰かで効果を試してからに成りますけどね」
ユパさんも笑いながら言います。でも、やっぱりお腹の中が黒いですね。
その後、一人のコボルトの姿をしたユーステリア兵が連れてこられました。
そして、そのコボルトさんはあたしとユーナさんそしてアルルさんを見ると、床へと土下座をします。
突然の事に、あたしが呆然としていると、ユパさんがすごく慇懃な態度でそのコボルトさんに対応します。
「この方たちは、エルフの巫女様の使いです。お前達ユーステリアの侵攻に神の怒りが降り注いだ。その事をお前達はどう思っているのか?」
「わ、私たちは国の神官の指示に従いました。この事は神の意思に従うものだと聞かされていました」
あら?この人は普通に話せるんだ。
相変わらずそんな関係の無いことをあたしは考えていました。
「あなた方の信じる神はユーステリアの神、それは人類至上主義を謳いあなた方の言う亜人を、そしてその亜人と融和する人族さえも襲い、殺してきました。そこで、真実この世界の神がこの度あなた方に過ちを自覚する機会を与えたのです」
「真実の神ですか?」
そのコボルトはユパさんの言葉に驚きを隠せないようです。
「そうだ、我々エルフはあまり他種族と関わることを好まん。それゆえ今まで何の干渉もしてこなかった。だが、ユーステリアの者どもが信じる神は本来は邪神よ。世に争いを生み、苦悩や恨み、憎しみを糧に生きる邪神よ。どうだ、心当たりが無いか?」
アルルさんの説明を聞き、そのコボルトは真剣に考え始めました。
「我らとて、人を魔物に姿を変える魔法など知らん。そして、今お前達の姿が魔物になった、決して幻術や呪いなどで無いことは既に知っておるだろう。お前達の中にも治癒者くらいはいるであろうからな」
「はい、祝福でも治癒でも何を行っても元の姿に戻ることはできませんでした」
「これは真実神の奇跡なのです。そして、神の嘆きでもあります。真実の神は人族もそれ以外の種族も平等に愛しておられる。よく考えてみてください。第3公女殿」
ユパさんの言葉を聞き、そのコボルトはハッとした様子でユパさんを見ました。
そして、深く頭を垂れます。
「さぁこれをお飲みなさい。神の慈悲です」
そのコボルトさん改めユーステリアの第三公女さんは震える手でユパさんが持つ小さな御猪口?を受け取ります。そして、しばらく悩んだ後一気に飲み干しました。
しばらくジッとしていたと思うと、突然体を痙攣させて床に倒れます。その姿をあたしは呆然と眺めています。
「うぅ、あ、ぐぅぅ」
もしかして、毒?ユパさんは第三公女さんだと知って毒で暗殺しようとしてるの?
咄嗟にそんな事を思うぐらい苦しそうに床で痙攣を繰り返します。
でも、そのうち少しずつ姿が変わり始めました。そして、始まってから5分くらいが過ぎたでしょうか?
床の上には20歳前後の金髪の女性が倒れていました。
「えっと・・・体の大きさも変わったのになんで鎧のサイズがピッタリなの?」
「「「「突っ込むのはそこですか(なの)!」」」」
え?だって一番気になりますよね?
「はぁ、まぁキュアリーさんはキュアリーさんだからとして、とりあえず効果は確認できました。どうやら気絶しているようなので、一先ず意識が戻るまでお茶にしましょう。あ、コヒナ、お茶が冷めてめているので温かいお茶を用意させてください」
ユパさんはさっさと席へと戻ります。
あたしは、このまま床へ放置して良い物なのか正直迷いました。すると、今まで部屋の隅で大人しくしていたルンが静かにこっちへとやってきて第三公女さんの傍らにしゃがみ込みます。
「あ、見張りしてくれるのね、ルンありがと~」
「ヴォン!」
見張りはルンに任せて、あたしも席へと戻ります。
でも、さっきの姿の変化って痛そうで嫌ですね。
誤字のご指摘いただいた修正や、今までの文章の括弧抜きやらやらないといけない事はいっぱいあるのに時間が取れないです・・・
ましてや、物語掛け持ちを始めてしまった為、一層更新が遅れてます。
出来るだけ時間を作って頑張りますのでよろしく御願いします。




