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5-2:ナイガラ攻防編2

誤字、言い回しのご指摘ありがとうございます。

訂正させていただきました。

行政府へと戻ると、コヒナさんが厳しい顔で支持を飛ばしていました。


「東門の状況はどうなりましたか!」


「はっ!一部に混乱は残っておりますが、避難できる者達は順次避難を開始しています。


「東以外の門は、至急閉鎖を御願いします」


あたしと、一緒に西門へと向かっていた兵士が、コヒナさんへ西門の状況を報告します。


「コヒナ隊長!西門の結界発生装置が破壊されました!」


コヒナさんは指示を止め、その兵士と、あたし、そして、連れてきた男を見ました。


「それは間違いありませんか?」


「はい、辛うじて装置を破壊していたこの男を捕らえました。しかし、他4名は逃走し、まず報告の為に追跡を断念し帰還しました」


「思っていたより動きが速いですね。やはり用意は周到にされていますか・・・。ハスキー、いるか!」


「はっ!」


「予定通りに各門に新しい結界発生装置を設置しにいけ。次は壊されないように警戒は密にしろよ!」


「了解しました!」


ちょっと恐持ての顔付きの兵士が、指示に従って周りの兵士達と騎士団へと走っていきました。


「さて、時間はあまり無いですが、この男が実行犯ですね。名前は?」


コヒナさんが、実行犯の男を真っ直ぐに見据えます。


「・・・・・・」


男は、睨みつけるだけで話をしようとしません。


「おやおや、ダンマリですか。ふむ、時間も無いことですし、この局面で知りたい情報などありませんから・・・、見せしめもかねて処刑しましょう」


コヒナさんの言葉に、男の顔に動揺が現れました。


「た、たかだか兵士にそんな権限は無いはずだ!」


「おや、吠えますねぇ。ただ、貴方とお話する気は無いんですよ。安心してください、貴方のお仲間も必ず見つけ出して、後を追わせてあげますから」


「へ、そんな脅しに引っかかると・・・・」


男が、話し始めると、コヒナさんが剣を引き抜いて男の足に突き刺しました。


「ギャァァァ~~~」


男の叫び声を無視して、コヒナさんは男に語りかけます。


「貴方は、この街の領民を危険に晒したんです。貴方のせいで死ななくても良い人々が死ぬかもしれなかった。そんな貴方に、なぜわたしが情けを掛けないといけないのです?」


「お、俺達は世の中を正しくするんだ!」


「へえ、その為には弱者である子供や、女性が犠牲になっても構わないと言うのだね」


コヒナさんは、男の足に刺さった剣を引き抜いて、今度はもう片方の足へと突き刺しました。


「ギャァァァ~~」


男は、再度叫び声を上げますが、足を貫かれていて動くことが出来ません。


「で?貴方と遊んでる暇は無いので、言いたい事があれば言ってくれないかな?」


「あ、悪魔に味方する貴様らなどくたばれ!」


「悪魔ですか、何を思って悪魔と認定されるのでしょう?色々とお聞きしたい気もしますが、申し訳ありません、時間が無いのでご退場願います」


そう告げると、コヒナさんは無造作に剣を横に振りました。そして、唖然とした顔のまま、その男の首が上に跳ね上がります。


「へっ」


男は何か言いかけたように見えますが、その後倒れこんだ体から噴出す血潮にその首を濡らすだけで、もう何も語る事はできませんでした。


「後始末は御願いしますね」


周りにいる兵士達にそう告げると、コヒナさんは西門へと歩き出しました。


あたしは、日頃のコヒナさんとのギャップに吃驚しました。そして、ここでも又、人が死ぬ場面を実感出来ずにいる自分に驚きました。


あたしは、やっぱり何処か壊れてしまったのでしょうか?そう思いながら、首の無くなった男をただ見つめています。そして、コヒナさんの示した怒りの強さに驚きました。


コヒナさんはなんであんなに怒ったんだろう・・・・


そんな事を思いながら、西門へと向かうコヒナさんの背中を見送っていると、ふと、広場の片隅に集まる数人の男達の様子に違和感を感じました。その男達は、コヒナさんがこの場を立ち去るのを待ち構えているようです。そして、時々行政府の入口へと視線を向けます。


なんか嫌な予感がする・・・・


あたしがその男達に気を取られているのに、横にいるルンが気がつきました。そして、同様に警戒した素振りを見せはじめます。

男達の一人が、あたしと、ルンが見ていることに気が付いて、他の男達と何か話をした後歩き去っていきました。


あたしは、行政府を警護している兵士の一人に話し掛けます。


「あの、ヌイグルミを2体置いて行きますね」


あたしの言葉に、兵士の人は一瞬戸惑ったようですが、あたしの取り出したヌイグルミを見て笑顔を見せました。


「ありがとうございます」


その言葉に、あたしは小さく笑って、ルンを連れて西門へと向かいました。


◆◆◆


西門へと辿り着くと、そこには多くの兵士達が、門の前で隊列を組んでいます。

でも、コヒナさんは見当たりません。


「あの、コヒナさんは何処にみえますか?」


あたしは、手近にいる兵士の一人に聞きます。


「あぁ、隊長なら上の見張り台へ登ってるよ」


そう言って城壁の上の見張り台を指差しました。

あたしは、城壁横の梯子を使って上に登るかどうか悩みます。


う・・・この格好で上に登りたくはないですね・・・


あたしの装備は、ヒーラー装備なのです。その為、チェーンメールは身に付けていますが、簡単にいうとスカートを穿いています。この格好で梯子を登れば、あまり想像したくない状況に陥るのは目に見えていますよね。


「えっと・・・」


あたしが、どうしようかと躊躇っていると、上のほうから声が聞こえました。


「およそ5キロ地点の街道にてユーステリア軍確認!」


その声と同時に、上から階段を滑り降りるようにコヒナさんが下りてきました。


「よし、防衛をするには兵力差が大きすぎるね。真面目に2000はいますよあれ」


そういうとニヤニヤと笑います。そして、コヒナさんは用意されていた騎馬へと跨りました。

馬上から全体に指示を出すコヒナさんは正に歴戦の戦士とも思える風格を感じさせます。


「開門!打って出るぞ!前衛、後衛のリズムを間違えるなよ!」


コヒナさんの指示を受けて、それぞれの部隊が配置を整えます。


あたしは、その様子をみて、思わず前に出ました。


「コヒナさん、あたしも行きます!」


「助かります!」


あたしが、そう声を掛けると、コヒナさんが嬉しそうに答えました。


「全部隊、出撃!」


コヒナさんの号令と共に、一斉に部隊が前進を始めます。

そして、コヒナさんは一人先行してユーステリアへと向かいました。


コヒナさん早すぎです!みんな付いて行けてない!


あたしは、焦ってコヒナさんを追いかけようと走り出したとき、前方からコヒナさんの大きな声が響きました。


「やあやあ、遠からん者は音にも聴け、近くば寄って目に物見よ!我こそはラビットラブリーにその人有りと言われたコヒナ・ミナハナなり!いざ!尋常に勝負!」


コヒナさんは、そう言って剣を引き抜いてそのまま速度を落とさずにユーステリア軍へと突撃していきます。すると、ユーステリア軍の中央から、一騎の恰幅の良い騎士が走り出して来ました。


「コヒナ・ミナハナなど聞いたこともないわい!わしは、ユーステリア軍第二近衛大隊のオルトナ!身の程を知らぬ若造に現実を知らしめてやるわ!」


そう言って、オルトナさんはコヒナさんへ向かって走り出しました。

そして、それに合わせるかのようにユーステリア軍の進軍が止まりました。


「どおりゃ~~~」


「はっ!」


馬上からオルトナさんの繰り出す槍が、コヒナさんに鋭く打ち出されます。それを、同じく馬上でコヒナさんの剣が綺麗に流しました。そして、双方が一旦すれ違い、再度馬首を変えて向かい合い、再度突撃を開始します。そして、その攻防が1回、2回と繰り返され、その戦いに、相手のユーステリアは、進軍を停止した状態で成り行きを見守るようです。


ナイガラ軍は、その間に距離を詰めていきます。そして、ある程度まで近づいたとき、コヒナさんの声が再度響き渡ります。


「全力、放て!」


その瞬間、一斉にナイガラの魔術師達がユーステリア軍に向かって魔術を放ちました。そして、ユーステリア軍のそこかしこで魔法の爆発が起こります。

そして、その瞬間にコヒナさんはオルトナさんを剣で馬上から叩き落し、その勢いのままユーステリア軍へと突っ込みました。


「おらおらおら~~~」


まさに、鬼神のように次々と眼前の敵を切り払って突撃していきます。

そして、ナイガラ軍は、前衛を主体にして、相手の崩れた所へと突撃します。


「き、汚いぞこの餓鬼が!」


地面に倒れたオルトナさんが、槍を捨てて剣を抜き放ちました。

そして、手近にいたナイガラ兵に切りかかります。

でも、その時、その兵士との間にヌイグルミが割って入ります。そして、ヌイグルミはその腕でオルトナさんの剣を受け止めました。


「な、なんだこの珍妙な生き物は!」


そう叫ぶオルトナさんに対し、ヌイグルミはすばやく懐に入り込んでオルトナさんの体をなぎ倒しました。


「グワ~~~」


まるで、どちらが熊か解らないような叫び声を上げ、オルトナさんは吹っ飛んでいきました。

そして、その頃あたしは走りながらもせっせと所持品の中から、ヌイグルミのガーディアンを取り出しては投げ、取り出しては投げを繰り返していました。


ユーステリア軍は、それこそ混乱の極みにいたのだと思います。それでも、突撃を受け止め、更には少数のナイガラ軍を包み込んで殲滅しようと動きました。でも、その動きを完了させることなく、各所でヌイグルミが暴れまわっています。


「何だこれは!こんな馬鹿な戦いがあってたまるか!騎馬隊、構わずにナイガラを落とせ!」


ユーステリア軍の後方から、そんな指示が飛びました。

そして、その叫び声に合わせて、ユーステリア軍の後方から500騎ほどの騎馬部隊が、混乱を避けるように中央を大きく迂回しながら走り出しました。


「魔術師隊、行かせるな!」


コヒナさんの声が、混戦の中響き渡ります。

そして、騎馬隊に向け、いくつもの魔法が飛びます。でも、騎馬隊の手前で悉く壁に当たったかのように消えていきます。


「魔法障壁か!」


あたしの横で、魔術師の人が叫びました。

あたしは、ルーンウルフタイプのヌイグルミを急いでそちらの方へと投げ始めました。

でも、とても進行を防ぐには間に合いそうもありません。


ど、どうしよう・・・・


あたしのサンダーレインの有効射程からも離れています。それに、あれ程の集団を一気に倒せるほどの範囲も威力はありません。

その時、あたしの焦りを感じて、今まで傍らで戦っていたルンがその騎馬隊へ向かって走り出しました。


「ルン!」


あたしの叫び声も、周りの喧騒で掻き消えます。

いつの間にか、あたし達後衛も戦場のど真ん中に入り込んでいたのです。

それに、少しずつですが、相手の勢いが回復してきている気がします。戦場のあちらこちらでヌイグルミの残骸も目立ち始めています。ユーステリアの兵士は、明らかにナイガラ兵よりも強く、恐らくは中級以上のプレイヤーに匹敵する者が多数いるように思われます。


数が違いすぎる・・・・このままだと拙いかも・・・


あたしは、そう思いました。あたしの周りでも、先程から激しい戦闘が始まっています。

でも、いつもなら使うエンッジェルリングは、下手をすると味方を傷つける可能性もある為、混戦の中では使用できません。

それに、敵味方を判別しながらの回復魔法に、必要以上にMPが消耗していっている気がしています。


この混戦から抜け出さないと・・・


あたしが、そう思って立ち止まったとき、横から突然斬り付けられました。

とっさに手にしたメイスで受け止め、オートカウンタースキルが発動して相手を殴り倒しました。

そして、殴り倒した相手を見て、驚きを隠せませんでした。倒れた兵士はナイガラ軍の兵士だったのです。

そして、気がつけば、ナイガラ軍の兵士数名があたしに斬りかかって来たんです。


「お前ら、何をしている!」


あたしの横で戦っていた魔術師の人が、咄嗟に前方の一人に魔法を叩き付けました。でも、その瞬間に別の兵士に切り伏せられます。


「ば、馬鹿どもが・・・」


そう言うと、その魔術師は胸から血を流して倒れました。

あたしは、急いでその魔術師にヒールを掛けながら、攻撃してくる兵士にメイスで反撃します。


「悪魔め!くたばれ!」


そう叫びながら斬りかかって来る兵士を、あたしはメイスで殴り倒しました。

そして、その兵士達が決して明らかに戦い慣れていない事を感じました。


この人達・・・兵士じゃない・・・


そして、あたしがそう思ったとき、思わず振るうメイスに躊躇いが生まれました。

その躊躇いは多分一瞬の事だったと思います。でも、その瞬間周りへの注意が途切れました。

そして、あたしは背中に焼けるような痛みを感じました。


「死ね!」


振り返ると、そこにはいつの間にか、剣を振り上げたユーステリアの兵士が立ってたのです。


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