5-1:ナイガラ攻防編
文章訂正を始めました。
その為、若干?更新速度が落ちています。
決して、遊んでて文章を書く時間がないって事は・・・・
ナイガラ攻防編でした、名前間違えました。ご指摘ありがとうございます。
ユパさんは、現状判っている事柄を黒板に列記します。
1、ユーステリアの軍 1万
2、ナイガラの軍 約350
3、転移ゲート破壊:修理に約10日
うん、どうみても勝ち目が無いですね。この人数差で勝てたらすごいです。
「あの・・・勝てるのですか?」
あたしは、思わず聞いてしまいました。
すると、みんながあたしの方を見ます。
「ふむ、まずそこから話し合わないといけませんね。みなさんの意見はいかがですか?」
「そうですね、今回も3年前のようだと思い込むのは危険ですね」
「だな、もしかしたら向こうにも転移者がいないとは限らないし」
「え?ユーステリアには転移者はいないのですか?」
あたしは、デュランさんの転移者がいないとの発言にびっくりしました。
「はい、3年前の戦争では、ユーステリア側に転移者は確認できていません」
「はぁ・・・」
「3年前の戦争だと、劣勢で落城寸前だったイグリアを、転移してきたあたし達が守った戦いでした」
「ああ、転移した王都が火に包まれていたのには焦ったね。何が起きたのか判らなくて、あの時仲間がいなかったら訳が判らないままに死んでたよ」
エリーティアさんの発言に颯さんが補足されます。
「なんにせよ、まず戦ってみない事にはハッキリした事は判らない、ただ、あの時のように魔法で一気に型を付けれるかは不明なのかもしれませんね。今回は、相手も用意周到ですし、更には内通者の数も把握できませんから」
「はい、今回の一番の問題は内通者ですね。潜在的な内通者も含めると、どれだけいるのか」
「だね、狂信者っていうのは・・・」
50年前に誕生した、その人族優越主義的な信仰は、いつの間にか各地で芽吹いているそうです。
そして、その信仰自体が異種族との争いを生み、そして、それによって更に信者を増やしているんだそうです。
「戦争が起きるほど、勢力を伸ばしています。あれほど厄介な宗教は無いですね。恐らく、その為に戦争を起こしている気がしますよ」
ユパさんの言葉に、みんなが一斉に頷きました。
「それで、具体的にどうする?」
「そうですね、私達ラビットのメンバーでまず様子を探りましょうか。可能ならそのまま撃退すると」
「そうですね、それが一番無難かもですね」
「だね」
え?ラビットの皆さんって・・・・今15名くらいしかいませんでしたっけ?
あたしが、呆然としている間に、話はどんどんと進んで行きます。
「それでは、今から出発して、夜襲で決定ですね」
「あぁ、その方が危険は少ないと思う」
「この街の指揮はどうする?」
「そうですね、誰か適任はいますか?」
そういうと、みんながこっちを見ますよ!いえ、無理です、ぜったい無理です!
あたしが、必死に首を横に振っていると、みんなの視線がやっと外れました。
「とりあえずナイガラ騎士団のメンバーにさせますか」
「いや、あれなら王都の新人どもの方がマシじゃないか?」
「いい人材がいませんね・・・仕方ないですね、コヒナ、あなたは此処に残って指揮を願います」
「了解しました、しかし、ちょっと残念ですけどね」
コヒナさんの言葉に、みんなが一斉に笑います。
ここって、笑うところなのでしょうか?あたしは、一人身を竦めて聞いています。
「キュアリーさんは、ここでコヒナの補佐をお願いします。何があるか解らないので、くれぐれも気をつけて」
あたしは、そのユパさんの言葉に頷きました。
「あと、こちらもそうですが、エルフの森はどうなってますかね?」
「ええ、それも気になりますね。誰か様子を確認にいかせましょう」
「だね、それこそ王都から連れてきた雛連中から誰か行かせよう。そこはコヒナにまかせて、まずさっさと一当して来ようか」
「すぐに用意を!集合は北門で15分後に」
「「「了解」」」
そう言って、みんなは一斉に席を立ちます。
あたしは、最後まで碌に話す事が出来ずに終わりました。
その後、ユパさん達は、街の門に完全装備で集まっています、その数14名。
「あの、本当に14名で行かれるのですか?」
「ええ、相手側に転移者さえ居なければこの人数で充分です。情報があまり無いので、状況次第で変化はしますが、それでもまぁこのメンバーならそうそう後れをとることは無いでしょう」
そう言うと、心配な面持ちで見送るあたしの頭にポンッっと手を置いて、笑って出発をしていきました。
エリーティアさんも、小さく手を振ってくれます。
突然の事で、街の人たちは状況が解っていないのか、出発していく一団をただ見送っているだけでした。
なんか、寂しいですね・・・・
あたしが、そう思っていると、横にいるコヒナさんが囁くようにいいました。
「これで、街中に居る内通者がどう動くかですね・・・」
あたしは、吃驚してコヒナさんを見ました。すると、その顔はいつもの穏やかな顔つきではなく、とても厳しい、力強い顔をしていました。
「さぁ、行政府に戻りましょうか、こちらも明日にはドタバタと騒動が起こると思いますから」
そう言って、こちらを振り向いた顔は、いつもの穏やかなコヒナさんでした。
◆◆◆
次の日は、朝からまるでコヒナさんの予言のように騒然としていました。
多くの人達が行政府の前に詰め掛けて、領主を出せと騒ぎ始めています。
「おやおや、朝も早くから何事ですか?今は貴方達の相手をしていられるほど暇ではないのですが?」
コヒナさんが、行政府入り口の扉の前に立ち、その人達の相手をしています。
「貴様では話に成らん、領主を早く出せ!」
先頭に居る男が、コヒナさんに叫ぶと同時に一斉に周りの人達からも「早く出せ!」といった叫び声が上がります。
「生憎と、領主様は多忙でして、御用があるのならわたしが承りますよ?」
コヒナさんは、そんな周りの怒号をまったく気している様子がありません。
「領主が昨日、この街から逃げ出したという情報もあるんだ!噂が嘘でないなら、さっさと領主を出せ!」
その先頭の男は、そんなコヒナさんの様子にイラついた態度をしめしていますが、コヒナさんの両側に控えている兵士達が気になるのか、叫びながらもしきりに視線を両側へと走らせます。
「おや、領主様に命令するなど、貴方は実に命知らずですね。不敬罪を適用しちゃいますよ?」
ニコニコと笑みを浮かべながらも、コヒナさんから次第に怖いほどの殺気が湧き出てきます。それを感じたあたしの横にいるルンは、さっきからいつでも飛びかかれるような体勢になっています。
「ルン、大丈夫だよ・・・」
あたしは、そう言いながらルンの頭を撫でました。
そして、その時群集の中に一人の兵士が飛び出してきました。そして、コヒナさんの前に跪くと叫びました。
「ナイガラの西方よりユーステリアと思われる部隊が現れました。その数2000~3000」
その叫び声が聞こえた瞬間、いくつもの出来事が重なって発生しました。
何を思ったのか、コヒナさんの両隣に立っていた兵士が抜刀し、そのままコヒナさんに切りかかったのです。そして、群集の中からも同様に、抜刀した兵士が数人飛び出して、コヒナさんやその他の兵士、そして、あたしにも切りかかってきました。
あたしは、何が起きているのか解らないまま、ただ突っ立っていました。でも、あたしの傍らにいたルンは、迷わずあたしに向かってくる兵士に飛び掛りました。
「ギャ~~~」
「ウギャ~~~」
複数の叫び声が、辺り一面に響き渡ります。
ルンは、飛び掛ってきた男を、逆に地面に押さえつけ、その喉を噛み切りました。
そして、コヒナさんは両隣の兵士が斬りかかって来るのを知っていたかのように、後ろに下がりながらも剣と、左の腕に付いているバックラーで受け流し、逆にあっという間に二人とも斬り伏せてしまいました。
そして、その他の行政府側に立っていた兵士達は、群集の中から飛び出してきた兵士達と切り結んでいます。
群集は、何が起きたのか解らず、ただ呆然と見つめていました。でも、すぐに叫び声を上げて逃げ惑い始めました。
「ガルルル~~~」
ルンは、まだ切り結んでいる兵士へと飛びつき、その足を噛み砕きます。
「ルン!」
あたしは、慌ててルンを呼びますが、ルンはどうやら敵と味方をちゃんと判別できているようです。
「さて、もう一度確認しますが、敵は西からどれくらいの距離に居ますか?」
突然聞こえた声の方を慌てて見ると、コヒナさんが先程報告に来た兵士の前にと移動していました。
「はっ!まだ遠見で確認しただけですが、この街から1時間程の距離まで接近しています!」
その兵士は、突然発生した出来事に、どこか呆然とした様子でしたが、コヒナさんに問いかけられるとすぐに正気にもどりました。
「さて、これほど内通者が居るとは思ってませんでしたが、どうやら謀られたかもしれませんね」
「っと言いますと?」
「領主達は釣り出されたと思われますね。さて、とりあえず篭城するかどうするか・・・」
コヒナさんと兵士達は急いで相談を始めています。
あたしはどうしましょう?今、変に声を掛けるとお邪魔になりそうですし・・・
あたしが、そんな事を思っていると、不意にあたしの裾をルンが引っ張ります。
「ルン?どうしたの?」
ルンは、あたしをどこかに引っ張って行きたいようです。
あたしは、コヒナさんを見ると、コヒナさんも不思議そうにあたしを見ています。
「あ、ちょっとあたしルンと行ってきます」
あたしは、そうコヒナさんにことわりを入れて、ルンに誘われるままに走り出しました。
そして、あたしを追いかけて2名の兵士の人が走って付いてきます。
あたしと、兵士2名が西門に辿り着くと、そこに数名の市民と思われる男達が集まって何かをしています。
そして、ルンは迷わずその男達に飛び掛りました。
「ガルル~」
「うわ~~~」
「ギャ~~~」
まさに一瞬で男達はルンに薙ぎ払われます。
「ルン!」
あたしは、ルンの行動の意味が解らず、慌ててルンを捕まえようとしました。
すると、その男達は一斉に逃げ出しました。
「え?」
ルンが押さえつけている男一人を除いて、周りには誰も居なくなります。
あたしと、一緒にきた兵士が、男達の居た辺りを慌てたように確認しています。そして・・・
「くそっ!街の結界用の装置が壊されてる」
兵士の呟きに、あたしはルンが押さえ込んでいる男を見ました。
「い・・・異種族などくたばれ!」
あたしは、男の憎しみを込めた眼差しに呆然としました。
その後、男は、兵士2名に連行されていきました。あたしは、兵士達と一緒に行政府へと戻りながら、まちのあちらこちらから注がれる視線の鋭さに気がつきました。
なぜ?・・・なんでこの世界の人達はこれほど異種族を憎むんだろう?
あたしは、行政府へ戻りながら、ただその事を悩んでいました。




