4-12:ナイガラ滞在編12
今回で滞在編は終了です。
次はナイガラ攻防戦です。
でも、おそらく普通の戦いや、戦記物っぽい戦いをご期待されると・・・後悔されると思います。
あと、すでに書いた章?の文章を随時変更していきます。1-1から順番に変えていきます。
多少?文が変わるかと思いますが、ストーリーは変わりませんので、もし読まれる方はご注意ください。
カンカンカンカン
今日も朝から金槌持って、朝から晩まで鍛冶作業
いえ、いいのですけどね、何かもう腕の太さが倍になりそうです。
先日の遙さんの装備を直してから、1日約4セットの装備を回復してます。
一応、先日の色物装備は返却しようとしたんですけど、ダメでした。受け取って貰えませんでした。
う、これ早く手持ち装備から倉庫に収めなおしたい。持ってると、なんか不吉な予感がします・・・
あの後から今日でもう5日たちます。
入れ代り立代りでラビットの人や、王国の転移組みの人が訪れて装備を預けています。
コヒナさんは、あたしが作った銅メダルを使っての、新人のLv上げの監督をしています。新人だと、初級のMOBでも出てくる種類によっては危険ですからね。
でも、このメダルのおかげで新人さんのスキルが上がってきているって言ってたし、あたしはこれで促成栽培されたからね・・・・途中から地獄のような特訓でしたけど・・・・
そして、この為に、銅メダルを合間合間に増産してます。でも、手持ちの材料が減ってきているので、もうしばらくしたら打ち止めかな?この世界で、この材料が有るのかは情報不足でわかりませんし。
ちなみに、メダルの製造方法と、金のメダルをフィリスさんがやたらと欲しがるのですけど、ユパさんに絶対教えてはダメって言われてるので教えません。
その件で、またユパさんとフィリスさんが睨みあいをしていました。でも、ユパさんのいう悪魔の王国ってどういう意味でしょうか?何かメダルを使うとそう呼ばれるとか何とか言い合ってました。
あの後、この地下工房の入口は2名の衛兵が常に警護してくれています。あの一酸化炭素中毒死事件?からは特に身の回りでは事件らしい事件は起きていません。
ただ、この地下工房の事は、何か秘密兵器を作っているとか、巨大なヌイグルミ兵器が製造されているとか、色々と噂になっているようです。
先日、コヒナさんから聞いた中には、頻繁にユパさんが来ることから、ユパさんがハーレムを作っているなんていう噂まであるそうです。
あのユパさんがハーレム・・・・・想像が付きませんよね?
あ、そういえば、今エリーティアさんとデュランさんがこの町に来られています。お二人ともこの町の中に潜んでいるスパイの炙りだしをしているそうなのですけど、相当苦戦されているそうです。
元々、スパイなのか、異種族が嫌いなのか、それとも王様が来てたからなのかすら判っていない状態での捜査なので、より困難だと思います。
「はぁ、パルテさん、回復できましたよ」
「ありがと~~~~!」
王都で近衛をされている颯さんです。秋津嶋さんと同じで3年前に転移して来たメンバーのお一人だそうですね。
「うわ~~、真面目に嬉しいです。こっちでもう1回作るなんて不可能だし!」
「あ、これ、お礼の女学校セットです!」
「えっと・・・・お礼はいりませんので・・・・」
「え?だって昨日サイロンさんから、お礼にビキニセットを贈ったって!」
何か、今回耐久回復を御願いされる方の半数近くが、何らかの衣装を持ってきてくれるんです・・・・
まだ、ウエディングセットは良いですよ、嬉しかったですから、やっぱり憧れですものね。でも、それ以外だと、ナースセット:大きな注射付き、ビキニやスクール水着などの水着セット、良くわからないのが女性下士官セット:鞭付きってこれ何でしょう?こんなセットがMMOで売られていたなんて初めて知りましたよ!
それにしても、このお礼に変な衣装って絶対裏に誰かの策略を感じますよ!
ちなみに、エリーティアさんはロールケーキとマフィンとクッキー詰め合わせセットを下さいました。うん、やっぱり女性はいいですよね!判ってくれています!
「特に必要が無いのでいらないです!」
「え?その、拙いんですよ、ちゃんとお礼を渡さないと・・・、その、色々と拙いんです・・・」
むぅぅ、なんか変な事になっています。何か不吉な予感がビシバシしてきます。
あたしが、何かを聞こうとした時、外から何かが爆発するような大きな音が聞こえました。
「な、なんでしょう?」
「わたしは急いで向かいます!装備ありがとうございました!」
そう言うと、颯さんは部屋から飛び出して行きました。
あ・・・・女学校セット・・・置いてった・・・・
あたしは、ひとまず部屋を片付けたあと、一階へと向かいました。一階へと出ると、此処最近地下への入口を警備してくれている兵士の人がいました。でも、いつもは2名のはずが、今日は1名の人しかいません。
「あの、さっき爆発音がしたのですけど、何か有ったんですか?」
「はい、まだはっきりした事は判りませんが、どうも移動用のゲートが破壊されたようです」
その兵士の人は、あたしの問いかけに不安そうな顔をしながら答えてくれました。
「移動用ゲートの破壊ですか・・・そうすると、ついに来ます?」
「恐らく・・・・」
あたし達は、顔を合わせて広場に向かいました。
すると、そこにはゲートを守る為に配置していたと思われる兵士達が数人、倒れて治療を受けていました。
あたしは、倒れている人達の所へ急いで駆けつけます。
「あの、ヒーラーですが、治療の必要な方を教えてください」
「キュアリーさん、大丈夫ですよ、ひとまず治療の必要な人への処置は終了してますから」
壊れたゲート付近からエリーティアさんが立ち上がってこちらへと歩いてきます。
「いったい何があったんですか?」
あたしが聞くと、エリーティアさんは厳しい顔付きでゲートの傍に倒れている男の人を見ながら答えてくれました。
「簡単にいうと、自爆ですね。しかも、ゲートを警護している兵士自身の・・・・」
「え?」
「ゲートは重要です。だから、信用できる兵士に守らせている筈なのですけどね。わたしは、間者を調べるどころか、尻尾すら掴めませんでした・・・」
悔しそうにエリーティアさんはゲートを見つめます。
「ここまで派手に壊されると、修復にはやはり10日近くかかると思いますね。いやぁ、まさに敵の思う壺ですね」
破壊された状況を調べていたデュランさんが、あたし達に伝えてくれました。そして、その時、行政府の方からユパさんが10名ほどの兵士達と歩いてきました。
「やられたか」
「はい、申し訳ありません」
「コヒナ!至急ナイガラの街に戒厳令を敷け!それと、2名1セットで偵察部隊を作り至急敵の進軍経路を確認しろ!」
「はっ!」
指示を請けたコヒナさんは騎士団へと走っていきました。
「警邏隊は事前に打ち合わせした通り、住民を広場に集めろ。敵の進軍経路が判り次第住民を逆方向に避難させる!」
「はっ!」
周りから、数名の兵士が走っていきました。
「はぁ、さてさて、これからどう対応しますかね、どうせ来るなら団長がいる時にでも来てくれたら全て押し付けたんですが」
前にユパさん達が話していたように、ゲートが破壊されたという事は今日明日にも攻撃がされる可能性が高いという事なんだと思います。
街の門からはすでに何人もの人や兵士が慌しく行き来しています。
ユパさんが、兵士の人達と話している傍らで、あたしは怪我をした人達を介抱する手伝いをしていました。
大きな怪我はないのですが、破片による裂傷や、爆発による火傷などを至る所に負っています。
エリーティアさんは、流石にこういった現場に慣れているのか、てきぱきと周りに指示を出して、怪我を負った人はみんな騎士団へと運ばれていきました。
「ふぅ、お疲れ様でした」
「キュアリーさん、お手伝いありがとうございます」
一仕事を終えて、あたしとエリーティアさんは休憩を取ることにして食堂へと向かいます。
他の人の手伝いをしなくて良いのか聞いたあたしに、エリーティアさんは
「休めるときに休んでおかないといけないのですよ?」
とのお言葉でした。
あたし達が、行政府の前まで来ると、入口にはたくさんの人が押しかけてきていました。
そして、扉の前でユパさんが現在の状況を説明しています。
「まもなく、ユーステリアの攻撃部隊がこの街に押し寄せてくると思われます。偵察部隊が情報を持ち帰り次第避難誘導をさせていただく予定です。時間的猶予はありません。早急にご家族を連れて、再度この場所に集合を願います」
ユパさんの説明に、広場に集まった人達のざわめきが大きくなりました。そこかしこで、ユパさんへの質問が飛びます。
「この街が攻められるというのは本当なのか!」
「なぜ逃げないといけないのですか?騎士団がいるじゃないですか!」
「お前達はなにやってるんだ!っさっさと何とかしろ!」
「俺は逃げんぞ!」
「馬鹿か!この街が攻められるはずが無い!」
様々な叫びが聞こえてきます。でも、あまりにごちゃごちゃしていてユパさんがその後何を言っているのか判りません。
その時、広場に一騎の騎馬が駆け込んできました。そして、広場の前の群集を押し分けて、ユパさんの所までやってきます。
「痛ぇ!何すんだ」
「うわ!あぶない!」
そんな声が通り道から聞こえてきます。でも、そんな事を気にする事無くその騎士は大きな声で報告しました。
「遠見にて確認!北西方面約100キロにて、ユーステリア軍を確認。その規模約1万!明朝には街に到達すると思われます!」
その言葉に広場は一瞬静まり返りました。そして、その静寂の後、一気にパニックが始まりました。
この場に集まった人達は、思い思いに走り出し、ぶつかり、倒れ、叫び声が更に混乱に拍車を掛けます。
あたしは、危なくその流れに飲み込まれそうになったのですが・・・
「ヴォ~~~~ン」
ルンの遠吠えの一声で場は一気に落ち着きを取り戻しました。
ルンが真後ろにいるって気がついていない人なんかはへたり込んでいます。
「ルン、偉い!」
「ヴォン!」
「キュアリーさん、危険ですから行政府内にいてください。この混乱の最中に何が起こるかわかりませんから」
颯さんが、すかさずその隙にあたしを行政府の中へと案内してくれます。
後ろのほうでは、ユパさんが集まった人達に再度色々と指示をだしています。
みんなルンのおかげで冷静になったから大丈夫だよね?
あたしは、そのまま会議室へと案内され、そこでサンドイッチを食べながら他の人達をまちます。
そして、15分くらいすると、会議室にはユパさん、コヒナさん、エリーティアさん、デュランさん、颯さんなどの人達が集まって来ました。
「さて、軍議をはじめましょうか」
ユパさんがみんなを見回した後、言いました。




