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4-2:ナイガラ滞在編2

名前が間違ってた部分を修正しました~

ナイガラの街には会議翌日に領主交代の案内が行われ、早々に行政移管の作業が開始されました。

新領主のユーパンドラさんは、ラビットラブリーより自分の率いている部隊ごと移動してこられました。

その数なんと200名。当初の打ち合わせの倍の人数です。ユーパンドラさん曰く、この人数でもとても領地防衛は覚束ないそうですけど。


あたしは、特にすることも無く1日目が過ぎてしまいました。

二日目になっても、周りのバタバタは一層激しくなって、あたしは一人手持ち無沙汰になっています。それと、ルンが部屋の中にずっと居ると色々と問題が出るのですよね。昨日は、領主の館裏にあったお庭でルンは走り回っていたのですけど、それも二日目になると退屈しているみたいです。


「キュアリーさん、くれぐれも勝手に街中を出歩かないように御願いします。現在非常事態でもあり、こちらも目の届かない所も多くあります。この為、不安材料は極力減らしたいのです」


あたしは、先日こんこんと説明してくれたユーパンドラさんの言葉を思い浮かべました。


(うぅ・・・・暇です・・・・)


あたしは、ルンの頭を撫でながら、今日一日どのように過ごそうか考えました。


(昨日と一緒でお庭でボーっとするのもねぇ・・・何かやってないと暇で死にそう・・・)


あたしは、一応護衛兼伝令のコヒナさんに街中へ出る許可が貰えないかお伺いを御願いしました。

ちなみに、コヒナさんはあたしと同じ転移組みの人です。あたしが女性ということも有って女性の騎士さんを護衛に付けてくれたようです。


「う~~ん、ユパさん今忙しいですから難しいかも?」


「やっぱり駄目ですか?」


「どうかなぁ・・・ルンちゃんがいるからどうしても目立つしね」


「ですねぇ・・・」


転移組みのせいか、コヒナさんはルンを怖がらないのですっごい助かります。ルンも不思議とコヒナさんには懐いています。


「あ、あたしの家ってシェパード飼ってたからね、それもあって大型犬に慣れてるっていうのもあるかな?」


あたしは、コヒナさんと部屋で雑談をしていると、ルンがムクッと起き上がりました。そして、扉のところまで行くと、あたし達を振り返って鳴きます。


「ウヴォン!」


「あ、トイレね、ちょっと待ってね」


あたしは、用意してもらったおトイレセットを急いで持って扉を開けました。


「ルンはお利口さんだね」


コヒナさんと連れ立ってルンに付いていきます。


庭に出ると向かい側に立つ行政府の建物が見えます。領主の館のお隣の建物って行政を行う為の建物だったんですよね。その建物では、人が行ったり来たりとバタバタしている様子が見えます。


(誰か知ってる人は通らないかな?)


そんな気持ちで窓を見ていましたけど、特に知った人は通りませんでした。中の人たちも、庭に意識を向ける余裕がないのか、特にこちらを見る事も無くバタバタと行き来しています。


「みなさん忙しそうですね・・・・」


「ですね、行政面では以前の状態をとりあえず踏襲するだけなんで簡単なはずですけど、軍事の面ではどこから手を付けて良いかっていう程遅れているそうです。ナイガラ騎士団自体が総数30名、騎士としてまともに戦えそうなのがランクBの団長シープ、ランクCのプードルの2名、あとは軒並みDかEですからね」


「あの・・・そのランクってどういう基準なんですか?MMOではモンスターにはランクってありましたけど、プレイヤーには無かったですよね?」


「あ、そっか!こっちで普通にランクって言うし、こっちでの生活が長いのですっかり当たり前になってた。大人数を管理するのに目安が無いと厳しいってことで、こっちで勝手にランクを付けてるんだよね。一応目安は自分に相当するLvのMOBをソロで倒せるかだよ」


「はぁ、そのMOBの基準はやっぱり某ギルドの?」


「うん、あそこの基準をベースにしてる」


この基準について簡単に説明し解きますと、MMO時代にはこのゲームってスキルの熟練Lv中心で、とくに他のRPGのようなキャラクターのLv制度をとっていなかったのです。強さはもっぱらどれだけ多くの熟練したスキルを持っているかとプレイヤー自身のプレイヤースキルで決まるって言われていました。

はっきり言ってそれだけでも無かったんですけどね。ファイターと支援ではっきりと動きが違うのでタイプの相性がありますし、装備なんかの優劣も大きく出ますしね。ただ、誰もが認めてたのは、やっぱりプレイ時間が物を言うっていう廃ゲームだったって事でした。


「はぁ、でもそうするとシープさんは結構強かったんですね」


「う~~ん、まぁ型にはまると強いけどね、そうでないと雑魚?」


「はぁ・・・・」


あたしは、先日の団員さん達の様子を思い出しました。


(う~~ん、確かにあれは弱かったですね・・・・あれだと、先日の襲撃者にも勝てないと思うから危険だよね・・・装備もなんか今ひとつだったし・・・)


あたしは、自分の考えの中である単語が気にかかっりました。


(えっと・・・装備?この世界の装備ってどんなLvなんだろう?)


この町の兵士さんは勿論ですけど、ラビットラブリーの人達の装備もMMO時代に見たようなユニーク装備やレア装備はまったく見かけません。


(遙さん達はさすがに凄い装備してましたけど、コヒナさんはいたって普通ですよね?)


あたしは、コヒナさんの身につけている装備をじっと見ました。


「あの、コヒナさん?この世界に来てからの装備ってどうしてるんですか?あと、一般の兵士の人達の装備もなんですけど」


あたしの言葉にコヒナさんは苦笑を浮かべて自分の装備を眺めます。


「うん、あたしのメイン装備は3年前の戦いで壊れちゃってね。一応サブ装備を使ってるんだけど、壊れるのが怖いから普段はこっちで調達した装備使ってるの」


「え?でも転移者の中に鍛冶氏や細工氏の人とかもいますよね?」


「まぁね、でもマイスタークラスって居なくてね。あのね、キュアリーさんうちらのギルドメンバー見て違和感って無い?」


「え?違和感ですか?特に無いですけど?」


「そっか、まぁ全員に会った訳じゃないしね。この世界で転移者の出現場所はギルドが優先されてるっぽいっていうのは聞いた?ただ、それ以上に優先されてるのが種族っぽいんだよね。鍛冶系ってみんなドワーフばっかりだからぜんぜんこっちにはいないんだよね~おかげで装備がね」


「え?でも最初の人がこっちに来てもう随分と経つのですよね?それならとっくに合流してても良いと思うのですけど、それにあたしはエルフですけど、自分の家に転移しましたよ?」


「う~~ん、そこら辺はよくわかんない。でも、なぜかドワーフの国があるはずの場所に無かったらしいの。その為か、ドワーフの転移者って見かけないのよね。原因は不明だけどもしかしたらドワーフの転移者っていないのかも」


「そうなんですか・・・・でも、それならこっちのドワーフっているのですか?」


「いるのはいるみたいだよ?でも冒険者にはいないし、あとあたしは見たことが無いかな?見たっていう人はいるみたいだけど確かじゃないの」


「えっと、それだと鍛冶はドワーフ以外で、しかもLvをこっちで上げるしかないんですね。種族補正ないとすっごく大変そう」


(あれをもう1回やれって言われても無理だなぁっていうかやりたくないなぁ)


あたしは、自分の鍛冶Lv上げを思い出していました。


「うん、そうなんだけど、こっちだと更に効率が悪いらしくってね。特に材料のバザーがある訳でもないし、自分か仲間で狩するしかないでしょ?あと、スキル上げでLvが高くなるとどうしても高ランクのMOBを倒さないとだから危険がね・・・この世界で死ぬとどうなるかなんて誰も判ってないからね。だからどうしても限界が見えちゃうのよね。唯一言えるのはこの世界で死んだら復活は出来ないって事くらいかな・・・」


(あ、そうか、それだと危なすぎてスキルLv上げなんてしてられないかも・・・)


「この世界の鍛冶技術も50年前の戦争ですっごくLvが下がったみたいだからね。そして、年々下がっていってると思うよ。今では高ランクのMOBから出る装備なんかを当てにするとかくらいかな?しかも、そのMOB倒す為にそれなりの装備をしないとって悪循環があるんだけどね」


コヒナさんの話を聞きながら、あたしなら作れるのかもって思いました。でも、それを話してしまうと多分ですけどMMOを始めて1年くらい過ぎた時のように、毎日ただ頼まれるままに装備だけを作るだけの日々になるような気がしました。


(もう他人の為だけに製造ばっかりして、それだけで1日が過ぎるような生活には戻りたくない、だから一人で遊ぶ事にしたんだし・・・)


あたしは、昔の自分を思い出してそんな風に思いました。


(あ、でもそうすると・・・トモエさん達の口止めしとかないと?あと、ユーナさんが驚いたのはこのせいもあるのかな?)


先日、知らなかったとはいえ自分がエルフの街で鍛冶が出来ることを証明してしまった事に気がつきました。それと、トモエさん達推定淑女のメンバーには鍛冶が出来ることを知られている事も心配になってきました。


(なんか厄介な事にならないといいなぁ。あと、鍛冶は置いておく事にしても、何か厄介事が起きたときの事を考えておかないとかな・・・)


あたしは、今自分に出来そうな身を守る方法を考えました。


「あ!あの・・・コヒナさんに御願いしたい事があるんですけど、もし可能ならトゥードの羽毛と綿花、ベアー系統の皮は手に入りませんか?」


「ん?数によっては入ると思うけどどれくらい?」


「えっと、2Mくらいしか所持金がないので、それで買えるくらい?」


「2Mだと結構な量買えるよ?何を作るの?」


「えっとヌイグルミを作りたいなって思って」


「ヌイグルミかぁ、まぁ暇だものね、いいよ、頼んできてあげる。お金は後でいいから」


「ありがとうございます!」


あたしは、コヒナさんに御願いしながら、所持品の中にある精霊石と魔法石の数を数えていました。


◆◆◆


その夜、あたしはいっぱいの羽毛、綿花、皮に囲まれていました。


「しまったなぁ、こんな事なら袋に入っていた状態で1回所持品に格納すればよかったかも・・・」


あたしは、しばらく寝るところも埋まってしまった部屋の中を眺めながら思いました。


「はぁ、しょうがないなぁ、今日中にとりあえず5体くらい作っちゃおう、残りは明日以降にして・・・しばらくどうせ暇だもんね」


ルンは最初、羽毛の山に顔を突っ込んで何やらドタバタと散らかしてくれてました。どうもフワフワと舞う羽がすっごく気に入ったみたいでした。そんなルンもいつのまにか羽毛の山に埋まって寝ています。


「もう!散らかした張本人がぐっすり眠ってるってどうなのよ」


あたしは、そんな事を言いながら手元にあるレッドベアーの皮を手に取りました。


「う~ん、レッドベアーの皮だとちょっと強度が足りないかな?2重にして、内側に守護障壁の魔方陣を書き込もうかな?そうすると・・・・魔法石は2個入れておいた方がいいよね・・・」


イメージした形に皮を裁断して積み上げていきます。予想以上に大量に届けられた材料の山にあたしはちょっと溜息をつきました。


(2M分の材料ってほんとにこんなにいっぱいだとは思わなかったなぁ・・・・)


「う~~もうとっくに12時過ぎてるって感じよね、いい加減にしないと明日起きれないかも・・・」


そんな事を思いながらも、作り始めてしまったら切りの良い所まで終わらせないと落ち着かない気性が寝ることを良しとしてくれません。


(羽毛が余りそうならルンに似たヌイグルミも作ってみてもいいかな?)


そんな事を思って気を紛らわせながらせっせと裁断を続けました。


(はぁ、縫製スキルがあって良かった。特に意識しなくても手先が勝手に動いてくれるから・・・)


なんとか5体分の裁断を終わらせて、次は縫製に入りました。


「それにしても、こんなに作る必要あるのかなぁ?でも、何が起きるかわかんないから用心しておくに越したことないよね、きっと」


あたしは独り言を呟きながら裁断された皮を丁寧に縫い合わせて形を作っていきます。

その後、更に2時間くらいかけて5体のヌイグルミを作り上げました。


「疲れた~~~、でもこれでようやく眠れる~~~~」


大きく伸びをした後、あたしは手元の道具を片付けて、出来上がったばかりのヌイグルミを所持品の中に収めました。

そして、急いで布団の中に潜り込みました。

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