3-18:迷子発覚!
「が抜けてた所訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
現れたエルフの人達はあたしの知らない人達でした。
でも、相手はあたしを見知っていたようです。名前も知ってましたし、いつものフードを被ったままのあたしを識別しましたから。
「いやぁ、まさかここでキュアリーさんと遭遇するとは思いませんでした」
あたしは、このエルフの隊長さんの言葉に疑問を持ちました。だって、迷いの森のエルフはあたしがコルトの森に向かうことを知ってるはずです。だからわたしは警戒を強めました。
「え?なんで?あたしの目的地は知ってみえますよね?」
あたしの警戒心に反応して、ルンが静かに唸り声を上げ始めました。
隊長さんは、一瞬ルンに視線を向けたあと、焦ったように答えました。
「あ、は、はい、コルトの森ですよね?だからなんでこっちに居るのかと」
「え?こっちって・・・・コルトの森はこっちですよね?」
「いえ、コルトの森は迷いの森から北方向ですよ?こっちは東です」
「え?え?だって、地図には東だって!」
あたしは、急いで地図を取り出して隊長さんに見せました。
(やっぱり偽者の地図を買っちゃったのかなぁ、買った地図を誰かに見て貰えばよかった・・・)
あたしは、地図を確認している隊長さんを見ながら、失敗したなって考えていました。すると・・・
「地図は合ってますね、なんでこれで東に向かったんですか?」
「え?だってコルトの森って迷いの森から見て東ですよね?」
「いえ、どう見ても北ですよね?」
あたしは隊長さんの言葉に、再度地図を覗き込みました。そして、周りのエルフの人達も同様に覗き込みます。
「北だな」
「うん、ちゃんと北になってますね」
「だね」
あたし以外の人は地図を見ながら頷いています。
「え~~どうして、ほら、ここが迷いの森でしょ、それで、こっちがコルトの森でしょ?どう見ても東じゃない!」
あたしがそう言うと、隊長さんは地図の右上を指差しました。
そこには剣に蛇が巻き付いている絵が付いていて、剣の先はまっすぐ右を向いています。
「えっと・・・これはなんでしょう?」
あたしが聞くと、
「はい、普通の地図はこの剣先が北を指しています。ですから、こっちは北ですね」
あたしは呆然としました。
「えっと・・・・そうすると・・・・地図の上方向が西?・・・なんで~~普通上は北じゃない!」
「いえ、普通西ですよ?日が昇る方向が下、沈む方向が上になります。太陽の動きを基準に地図を作らないと方向が判らなくなるじゃないですか」
「え?でも季節によっては太陽の昇る位置と沈む位置は少しずれるよね?」
「え?いえ、ずれたら困るじゃないですか、ずれませんよ?」
(えっと・・・・これは文化の違いなんでしょうか?それと、この世界は自転軸が傾いていない?)
あたしは、地図で改めて確認をしました。
(うん、こっちを北だとすると・・・確かに東に向かうと海に出る・・・・)
そして、あたしは改めて今自分の居る場所がコルトの森から離れ初めている事に気がつきました。
「そんなぁ・・・・一生懸命歩いたのに~~~」
「ヴォン!」
ルンだけがあたしに同意してくれています。
(うん、一緒に歩いたのだものね・・・・)
あたしは、あまりのショックに地面に座り込んでしまいました。
ルンはそんなあたしの顔を慰めるように舐めてくれます。
「ルン、大丈夫だよ、ありがとうね」
あたしはルンにそう声を掛けて、立ち上がりました。そして、所持品の中から紅茶セットを取り出します。
(う~~~なんかどっと疲れがでた気分です)
そして、あたしは気分を変えてお茶お沸かしてみんなでティータイムにしました。
マッタリとした空気の中であたし達はクッキーを摘まみながら雑談をしていましたが、昨日の夜に襲われた事を話すと、エルフさん達は一気に緊張した顔付きになりました。
「それで、その男達は急に襲いかかってきたんですね?」
「はい、話しながら近づいてきて、突然言いがかりのような事を言ったかと思うと攻撃してきました」
「なんと、それでその者達は?」
「あたしとルンで3人倒したところで引き上げていきました、でも、朝になったらその3人の死体もなくなってて、周りを調べてたんですけど、血の跡も何にもなくなっています」
「それは・・・・・」
隊長さんはその事について何か思い当たることがあるようでしたが、最後まで口にされませんでした。
「しかし、その者達は何が目的だったかお判りになりますか?」
「えっと・・・ちょっとわかんないです」
あたしは、あの時の事を考えるのですけど、どちらかというとあたし達を殺そうとしてたとしか思えません。
(最初っから話し合うつもりは無さそうでしたよね?でも、そうすると目的はなんなんだろう?)
「ふむふむ、ちなみにその者達は自分達をイグリア軍と名乗った、これは間違いありませんね?」
「はい、本当かどうか判らないですけど、自分達をイグリア軍と、でもあの人たちはあまり軍隊って感じじゃ有りませんでした」
「でしょうね、それはどこかの特殊部隊と思われます。ただ、なぜわざわざ貴方の前に姿を現したのか・・・それと、イグリアと名乗ったようですがそれも信じられるかどうかですね。ただ、殺す相手に嘘を言うかといった疑問もあります、真偽は謎ですね」
あたしも、その意見には同意する部分が多数合ったので、とりあえずどこかの国の特殊部隊がこの地で何をしていたかといった所に興味が移りました。そして、あたしは迷いの森を出てからの行動を説明しました。
「やはり、災厄の地を浄化されたのは貴方でしたか・・・・」
「あ、あははは・・・危うく死に掛けましたけど」
(うん、あれはほんとに死んだと思ったもんね・・・)
あたしは、乾いた笑い声を洩らしました。
「それは・・・ご無事でなによりです。ところで、どのように浄化をされたのかお聞きしても宜しいですか?」
「あ、えっと・・・・なんか気がついたら浄化してました・・・」
「ふむ・・・秘密ということですかな?」
「あ、いえいえ、本当にわかんないのですけどね・・・・」
あたしは、素直にその時の状況を説明しているのですが、なんか信じて貰えてない気がします。
「それにしても、その特殊部隊と思しき者達が、もし災厄の地の浄化された理由を調べに来ていた、としたら対応が早すぎですね、しかも問答無用で住民を襲うとは・・・」
「はい、あたしもそう思います。ところで、あの村はなんであんな風になっちゃったんですか?ハイドラも普通のハイドラじゃないと思いました。そうでなければあんな風に大地が汚染される事はなかったかと・・・」
「そうですね、あれは50年前の戦争の歪みと言えますか・・・。当時の事をわたしは詳しく知りませんが、あれは元々イグリアを壊滅させる為の兵器だったと言われています。ただ、失敗をして、そのくせ殺すことに成功はしましたが、結局毒の放出はそのままになっていまってる。わたしはそう聞いています」
「生き物を兵器にですか・・・・いくら魔獣とはいえ、それって悲しいですね・・・・」
あたしはそう言うと、ルンの頭を優しく撫でました。
「はい、いくら戦争とはいえ・・・・しかし、その襲撃で残った3名から災厄の地が浄化されたという情報は、相手の国に伝わったと思えます。この地は、もし毒がなければ優良な穀倉地帯の筈ですから、これから忙しくなりそうですね・・・」
(隊長さんはそれ以上言いませんでしたけど、場合によっては戦争になったりするのかな?)
あたしは黙り込んでしまいました。
隊長さんも静かに何かを考え込んでいるようでした。
「しかし、あの地を浄化されたのがキュアリーさんだと知っているのが私達エルフだけ・・・と言う事は・・・・・ふむ」
隊長さんは何かぶつぶつと呟いています。そして、徐に立ち上がると他の人に撤収の指示をだしました。
「キュアリーさんご馳走様でした。我々は取り急ぎこの情報を長老へと伝えます。ただ、昨日の生き残りがまだ居るかもしれません。貴方なら大丈夫とは思いますが、充分注意をしてください。もし何かあった場合必ず我々に助けを求めてくださいね。我々は同じエルフなのですから」
あたしが頷くと隊長さんは急いでみんなを集めて迷いの森の方向へと旅立ちました。
最後までチラチラとルンを見ていましたけど、ルンについては最後まで何も言いませんでした。
「あぁ~~~~しまった!近くの町か村を教えてもらえばよかった!」
あたしは、隊長さん達が見えなくなった頃、ふと食料が心細くなっている事、手近なところで食料を確保するつもりだった事などを思い出しました。そして、もっと早く思い出していれば聞けたのにっと後悔しました。
「で、でも、地図の見方も教わったし、大丈夫だよね?一番近くの村はこの海沿いに行けば良いのだしね」
「ヴォン!」
「うん、ルンもそう思うよね!」
あたしは、ルンの同意を得て、意気揚揚と海沿いに移動を始めました。
「海の傍だから主食はお魚かなぁ?」
「ヴォン!」
ルンにお魚の美味しい食べ方を教えながら、あたしは次第に早くお魚が食べたくなって少し早歩きになっていきました。
あたしとルンが海沿いに移動していると、遠くに街らしいものが見え始めました。それと、海にはヨット?みたいな小さな船がちらほらと
「ルン、あの先に見えるのは村かな?街かな?この距離で見えるのなら街かな?」
「ヴォン!」
あたしは、ようやく食料の補給が出来そうなのでちょっと安心しました。
そして、少し歩くと街道のように整備された道が現れました。
「おぉ~~道だよ!きちんと整備されてるね、そうすると結構大きな街なのかな?どこだろうね」
あたしは、地図を取り出して確認します。
(え~~っと、東へ降りてきて、それから海沿いに北上したから・・・・これかな?)
「えっと・・・・ナイガラの街かな?イグリアの伯爵領かぁ・・・・ルン、大人しくしてようね、あんまり目立つと厄介ごとに巻き込まれそうだし」
「ヴォン!」
「うん、がんばろう!」
あたしとルンは暢気にそんな事を話していました。
街道を街の方に歩いていくと、目の前から来た商人っぽい人が歩いてきました。あたしは、挨拶をしようとしたんですけど・・・・あたし達を見たとたん大急ぎで街のほうに走っていっちゃいました。
「えっと・・・・ルン、なんかまずいような気がしない?あたしどっか変?」
「ク~~~ン」
「あぅ・・・・そうよね、偶々あたし達から逃げるように見えただけよね?きっと何か忘れ物したんだよね?」
あたし達が街道をさらに進むと、街の方から何やら大急ぎでこちらへ向かってくる騎馬の一団が見えます。
「何か急いでる馬がくるね・・・危ないから道から避けとこうか」
「ヴォン!」
あたし達は街道から少し下りた所から急ぎ向かってくる騎馬の一団をやり過ごそうと思いました。でも、なぜかその一団はあたし達の目の前で止まりました。
(・・・・・なんか・・・・嫌な予感するなぁ・・・)




