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3-16:瘴気溢れる大地

なんか謎が謎を呼んでいます。


一応、設定通りなのですけど、なんか解決後回しっていう気もします。

後できっと苦労するんでしょうね・・・

コルトの森に向かい始めて2回目の夜を迎えました。

でも、昨日の夜と、今日の夜では様相が一変していました。


「ちょっと、静かに寝てなさい!」


あたしは、持っていた皮の材料と、裁縫道具、細工道具を取り出して、せっせと首輪を作っています。


「えっと・・・ここにこのネームプレートを付けて・・・、うん、出来た!」


あたしは、いま自分が作り上げた首輪に満足しながら、ルーンウルフに見せました。ルーンウルフは首輪に鼻を近づけて匂いを嗅ぎますが、皮のなめした匂いがあまり気に入らなかったのか、すぐに興味を無くして、あたしにじゃれ付いて来ます。


「こら!だから頭が邪魔!」


あたしの手元に頭を入れて、撫でて、撫でて攻撃をしてきます。昔おばぁちゃんの家に居た犬が耳の根元あたりを掻いてやると喜んだので、さっきつい同じ事をしたらもう大喜びだったのです。その後、頭を撫でてあげてたらもう夢心地みたいに目がトロンってしてました。それ以来隙あらば撫でて撫でて攻撃をしてきます・・・


あたしは、頭を退かせて今できたばかりの首輪を首にまいてあげました。嫌がる素振りを見せるかな?って思ってましたけど素直に任せてくれます。


(うん、これでいいかな?首輪あるから間違って人間に襲われないよね?一応守護のプレートを付けてあるから大丈夫だとは思うけど・・・)


「いい?これからは人を襲っちゃダメですよ」


あたしがそう言うと耳をピクピクさせて聞いています。


(う~~ん・・・通じてるのかな?多分通じてないよね?)


あたしはそんな事を思いながら寝袋を取り出して寝る準備を始めました。

当初はルーンウルフに寄り添って寝るとあったかいかな?って思ったのですが、流石に野生の狼です、はっきり言って汚かったので浄化の魔法を使って綺麗にしました・・・・・でも・・・・


(うぅぅ・・・汚れって別に不浄なものでは無いんですね・・・浄化のスキルで綺麗にならないなんて・・・今度水場を見つけたら絶対に洗ってやるんだから!)


あたしは、恨めしそうにルーンウルフのルンを眺めました。ちなみに、ルンはあたしがつけた名前です!

ルンは基本的にあたしの傍で丸まって眠ります。浄化スキルは汚れは取れないですが臭いは軽減されるので、今度何が基準になっているのか調べてみないと判りません。


(食べ物とかで腐ったり、痛んだりしてるものは不浄なのかなぁ?でも、発酵してる物も腐るっていうのに現象はちかいのですよね?臭いは何で臭いって感じるのかなぁ?)


とても高校生の知識では説明がつきません。


(うん、そういう物だって覚えてしまうのが一番いいかな?)


あたしは、そう気持ちを切替えて静かに眠りました。


翌日、ルンと一緒に朝ご飯を食べて、コルトの森に向かいます。でも、ルンは昨日会ったときとは顔付きも温和になった感じがします。


(やっぱり飢えって影響が大きいのよね、でも、何で飢えてたんだろう)


あたしが色々と考えながら歩いていると、丘を越えた所で突然目の前の風景が一変しました。


「・・・・・・なにこれ・・・・・」


あたしは、その風景を前にして呟きました。

ルンがしきりにあたしの服の裾を咥えて後ろに引っ張ろうとしています。

あたしの前には、丘の麓から先は木どころか草もまったく生えてない荒野が広がっていました。


(う~~何か土の色もどす黒い?)


「ルン?あそこに近づきたくないの?」


あたしは、服を引っ張るルンに聞いてみます。ルンはあたしが歩みを止めた為、服を引っ張るのをやめてあたしを見上げています。


「ク~~ン」


「う~~、あっちは危険なの?」


「ク~~~ン」


「うん、なんとなくわかった」


あたしは、再度視線を荒野に向けました。


(なんだろう?何か嫌な感じがする・・・・・)


エリア確認をしても異常はありません。


(これは今自分が立っている場所しか表示されてないのかな?とりあえずあそこに行ってみないとだね)


「ルン、ちょっとここで待っててね、ちょっと行ってくるね」


あたしは、一応戦闘時の通常ブーストを掛けてから丘を下りました。

丘の下は草地と荒地で見事に線引きがされています。


「う~~ん、結界とかは無いみたいですね」


エリア表記は特に変化はまだないです。

エネミーサーチにも特に変化はありません。


(エネミーサーチは敵意しか反応しないみたいですから、土地に敵意はないですものね?)


あたしは、用心深くまず片足を荒地に入れてみました。


(う~~ん、特に変化は・・・・・)


あたしが、そう思って更に前に進もうとした時、突然視界がピンク色のもやに包まれました。


「あっ・・・・」


あたしはステータスを確認すると、状態:毒、って表示が出ていました。


(う~~ん、やっぱり・・・・・)


リカバリーで毒を解除した後、あたしは丘に登って今後の事について考えました。


「ルン、このせいで動物がいなくなったの?」


「ガゥゥ・・・・」


(う~~~ん、良くわかんないけど多分このせいでこの近くには動物がいないっぽい)


「よし、原因を調べに行こうか!」


あたしは所持品から毒ステータス無効のペンダントと腕輪を取り出して、腕輪を自分に、ペンダントをルンにつけてあげて荒地に向かいました。

ルンも最初は嫌がってましたけど、わたしの意思が変わらない事を感じたのか一緒についてきました。


「まずは・・・」


さっきと同じように足を荒地に入れてみます。しばらくしても特に異常が起きないので、思い切って中に入ってみました。


「うん、大丈夫そう。ルンもおいで!」


あたしが声を掛けると、恐る恐るといった感じでルン君が荒地に入ってきました。

あたしはサーチコンディションでルン君を確認していますけど、特に異常は出ていないようです。


「大丈夫そうだね?ルン、この毒の根源ってどっちの方角かわかる?」


あたしの言葉に、ルンはじっと奥を見て、そして歩き始めました。


(いくあてもないですし、まずはルンについて行きましょうか・・・・)


あたしは、案内されるままに歩き始めました。


◆◆◆


それから、更に2時間ほど歩いて、お昼になった時、あたしは困ったことに気がつきました。

所持品から食べ物を取り出したとたん、食べ物が毒に汚染されてしまったのです。


「うぅ・・・・ご飯が・・・・・」


このままでは、ご飯は出したとたんに毒に侵されてしまって食べることができません。


「結界を張ってみて、あとはその場所を浄化してみれば・・・・」


あたしは、所持品から結界石を取り出して、地面に設置しました。そして、浄化スキルを発動してみました。

すると、さっきまでの毒の気配があっという間に無くなりました。


「うん、これで大丈夫そう、ほら、ルンおいでご飯だよ」


あたしが、豚肉の塊を取り出すと、ルンは尻尾をぐるんぐるん回して寄ってきます。

頭の良い子なんだと思います、もうご飯っていう言葉を覚えてしまってるみたいです。


「ゆっくり食べるんですよ!」


そう言いながら、あたしはもう一つの器にお水を入れ、一応HP回復のポーションもまぜて与えました。

その後、自分はサンドイッチをモソモソと食べながら、周囲を見渡します。


(はっきり言って食欲のわく景色ではないなぁ・・・・)


ご飯が食べ終わって、またルンについて歩き始めます。

更に、2時間ほど歩きつづけると、ずっと向こうに村のようなものが見え始めました。どうやらルンはそこに向かっているようです。


(う~~んっと・・・・村かな?でも、こんな環境で生きていられるのかなぁ?)


あたしは、なんとなく頭の中で村の中を徘徊する生ける死体ゾンビさんを想像してしまいました。


(・・・・ゾンビはいやだなぁ・・・見たくないなぁ・・・)


あたしは、そんな事を思いながらもエナミーサーチを再度働かせ周囲を警戒しながらルンのあとに続きました。


傍まで歩いてくると、そこにはやはり村がありました。

あたしは、村の入口に立って周りを見回しますが、残念なことに人どころか生き物の姿すら見ることができません。


(嫌な予感がビシバシしますね・・・・エネミーサーチには相変わらず反応はまったく無いですし、廃村なのでしょうか?)


ルンは村の入口から中には入ろうとしません。低く唸り声を上げて村の中心方向を睨みつけています。

あたしは、村の中に入ろうとして、自分が考え違いをしていた事に気がつきました。

当初は村に侵入防止用の結界は無いって感じていました。それ自体は合っているのですけど、逆に村の中のものが外へと出ないように結界が張られていました。


(う~んと・・・でも、この結界もう限界みたいね、もう消えかかってる?でも、この結界があってですら毒がこれほど漏れ出してくるって言う事は・・・・)


「ルン、あたしは村の中に入るけど、ルンはここで待っててね、絶対に入ってきたら駄目よ?」


あたしは、そういうと村の中に一歩足を進めました。


(うわ~~~~すごい濃度の毒ですね・・・・)


村の中は大気の色ですらピンクがかっています。

あたしは腕にしている毒異常無効の腕輪をみました。すると、少し輝きが薄れてくすんだ色になっている気がします。


(このままだと壊れちゃいそうですね・・・・)


あたしは、浄化スキルを試しに広範囲に掛けてみます。

でも、一瞬は綺麗になった大気も、あっという間に周りから来る毒の瘴気に汚染されていきます。


(う~~イタチゴッコになりそうですね・・・・)


今の大気の流れ的にも村の中心から強い瘴気が流れてきます。


(根源をなんとかしないとどうしようもないですね・・・)


あたしは、早期決着をつけないと面倒な事になりそうなので、村の中央に向けて走り出しました。

村の中央に辿り着くと、そこに大きな真っ黒な塊が広場全体を埋め尽くしていました。その塊は、よく見ると、まるで鳥のような形をしています。


(な、なにこれ・・・・すっごい瘴気だ・・・)


あたしはサーチでその塊を確認しました。


・魔獣 ハイドラ 状態:死亡 呪: 


「え?・・・・死んでるの?でも・・・呪って何かの呪い?」


あたしは、その塊がすでに死亡しているハイドラを使った何らかの呪術である事に気がつきました。


(死んでからも安らかに眠れないなんて・・・・)


あたしは、そのハイドラを見て締め付けられる様な悲しみを感じました。その時、あたしの腕の辺りで何かにひびが入る甲高い音が聞こえました。


(ま、まずい・・・もう腕輪がもたない・・・)


あたしは、最大級の浄化スキルをハイドラに向けて放ちました。

一瞬、ハイドラを中心に白い輝きが辺りを包み込みました。でも、その輝きが消えた後、又ハイドラから強い瘴気があふれ出します。


(う~~~~、効かない・・・・このままだとまずいわ・・・・)


浄化ではほとんど一時しのぎにしか成っていないみたいです。直接的な攻撃魔法を持っていない為、次の手段をあたしは迷いました。


(炎で燃やし尽くせばいいのかもしれないけど、あたし攻撃系の火炎魔法もってないし・・・)


あたしは、所持品を確認し始めました。


パキン!


その時、腕に嵌めていた腕輪が、ついに音を立てて壊れました。


「ふぎゃ~~~~~」


瘴気が一気になだれ込んできました。

目の前はすっごいドギツイピンク色で覆われています。

毒に体全体が侵されて行くっていう感じがします・・・


(あぅぅ、目の前がぐりゅんぐりゅん・・・あれへぇ・・・なんかきびゅんが・・・れ?)


あたしは、毒によってまともに話す事が出来なくなって、体からも次第に力が抜けていきます。

その時、突然あたしの体全体が発光を始めました。そして、どこからかアナウンスが聞こえます。


”神聖なる調停者”において世界侵食クラスの異常を確認、強制修正を行います”


そして、その瞬間に瘴気はいままで本当にあったのかと疑いたくなるほどあっけなく消え去ってしまいました。そして、村の広場には大地に打ち込まれた大きな鎖と足枷があるのみでした。


(あ、あれ?今何がおきたの?)


あたしは、突然の出来事にただ呆然と座り込んでしまいました。


「ヴォン!」


すると、後ろからルンの鳴き声が聞こえました。振り返ると、ルンがこっちへと駆けて来て、あたしの顔に鼻を寄せしきりに匂いを嗅いだ後、顔全体を嘗め回します。


「ルン、ちょ、ちょっとまって・・・あぅ・・・お、お座り!」


あたしは必死に顔を背けながらルンに指示を出します。


「うわ~~ん、顔中ベタベタじゃない・・・・もぅ・・・」


ハンカチで顔を拭いながら、あたしはルンを見ると、ルンはお座りをしながら嬉しそうに尻尾を振っています。


「もう、危ないから村に入ってきちゃダメって言ったのに・・・・」


あまりに嬉しそうな様子にとても叱る事が出来ず、あたしは溜息をつきながら広場の中心にある足枷を見ます。


(あのハイドラはあの足枷で拘束されてたのかな・・・・そして、殺されたのかな・・・・)


猛毒をもつハイドラだから、殺すのはしかたがないのかもしれません。でも、これは何か普通に殺されたのではない様に見えます。


(安らかに眠ってね)


あたしは、広場に向かって静かに手を合わせました。

そして、しばらく黙祷を捧げた後、静かに立ち上がりました。


「ルン、毒は浄化されたみたいよね?」


「ヴォン!」


「うん、何が起きたのかわかんないけど、とりあえず行こうか」


あたし達は、そのまま村を抜けてコルトの森へと向かいました。

村を出て、ふと足元を見ると、いつの間にか荒地の至る所に草の芽が頭を出し始めています。


(えっと・・・浄化されたにしても早すぎません?)


あたしは、そんな事を思いながら、速度増加スキルを発動して足早に村を後にしました。



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