3-10:エルフの守護者
引き続きアルルさんが活躍されます!
他のキャラが霞むほどの存在感です!
コジロウさんとアルルさんが肩で息をしながら座り込んでいます。
でも、二人ともほぼ低位置からの剣のやり取りで周りに被害を出していないのはすごいですね、意図してはいないのかもしれませんが。
「えっとさ、そろそろ何で呼ばれたのかを教えて欲しいのだけど」
遙さんがアルルさんでは無く、案内をしてくれたエルフさんに聞いています。
「そうですねぇ・・・まぁ長老がこんなですから、私が話しますか」
「そうですね、そうしていただけるとありがたいですね」
遙さんとエリーティアさんが話を進めます。トモエさん達もコジロウさんをほっといてその会話に参加しています。
あたしは、一瞬どうしようか迷いましたけど、同じように会話に参加しました。
「あの、失礼ですけど、もしかしてプレイヤーさんですか?」
「あ、ごめん、改めてで申し訳ないですね、元神軍ギルドのユーナです。一応エルフの後衛職でマジシャンやってます」
みんな、口々に挨拶を交わします。
(あれ?神軍ってギルマスが完全引退で解散したんだったよね?あ、だから元なのかな?)
「で、今このエルフの街にPCは何人くらいいるの?」
「一応こっちで確認してるだけで6人かな?別に自分がこっちの世界生まれかそうで無いかって事を言う必要ないし、上手く溶け込んじゃった人もいるかもだし実数はもう少し多いかもね、でも、そんな要領の良い人はあんまり多くはないと思うよ」
「それで、いつ頃からこちらに来られてるんですか?」
あたしは気になったので思わず尋ねました。すると
「そうだねぇ、最古参はアルルさんで5年前らしいよ?私は2年ほど前にこの街に現れたね、マイホーム作ってあって、そこに出現したんだ」
(5年前ですかぁ、遙さん達より更に2年も前なのですね・・・・・)
あたしが、みんなの転移されてきた時間を時系列で考えればその法則はわかるのか、それともすでに誰かがそれを行っているのかが気になって、遙さん達に尋ねようとすると、トモエさんが話をしています。
「あ、そうかぁギルドに所属してない人はやっぱりマイホームに出現するっぽいね、ギルド加盟者はギルドに出現するみたいだけど」
「あ、うん、そうみたいだね、他の4人もマイホーム登録地点での出現だったね。王都へ行ってみて色々確認したけど、転移場所はだいたいそんな感じだったなぁ」
「王都にも来てたんだ!でも、そうすると転移者確認数にはカウントされてるの?」
「あ、うん、秋津洲さんがカウントに入れとくって行ってたから」
「ふむ・・・秋津洲陛下と面識あるのか、あの人秘密主義だからなぁ・・・こっちに情報くれてればいいのに、それにしても、あの襲撃してきたエルフはなんなの?問答無用で攻撃してきたんだけど」
「むぅ、いつの間にやら話が進んでいる様じゃ、コジロウよ、お遊びはあとにしようぞ」
「ぜぇぜぇ・・・・お前なんでそんなに元気なんだ・・・・・さっきまで肩で息してたのに・・・」
「コジロウは地の利を見誤ったな、ここはエルフの街だ、そして、わたしの活力源たるエルフの吐息に満ち溢れておる。又、周りを見回せばいと麗しきエルフが溢れておる。その地において何ゆえわたしが負けることがあろうか!いや、ありえるはずなど無い!」
どど~~んとまたもや効果音が聞こえてきた気がします。すると、コジロウさんが床に膝をついて今気がついたようにいいました。
「くぅぅ・・・・俺のミスか、感情に任せて冷静に判断できなかった俺の・・・」
(あの・・・・コジロウさん、そのとんでも理論認めちゃうのですか?あたしは、それ認めちゃいけないような気がしますよ?)
あたしのそんな心配を余所に、コジロウさんは負けを認めてしまいました。
「コジロウ、そんなに落ち込むことは無い、もし、ここに猫娘がいたなら、そしてエルフっ娘がいなかったなら結果は違った物になっていただろう・・・戦いとは実に非情なものよ・・・・」
「あ、あの・・・・長老、そろそろ終わっていただかないと話が進まないんですが・・・」
コジロウさんとアルルさんが熱く握手を交わした所で、ユーナさんが呆れた顔で声を掛けました。
「あ、うむ、お主たちを襲撃したエルフの事か、あの物達はな、簡単に言うとはぐれエルフだ。住むところが何らかの理由で無くなり、彷徨っている連中だな。事前に連絡を受けていたが、その村の村長に何らかの便宜を諮ってもらい、その村の護衛をしていたのだろう。まぁ迷いの森に入りたくても入れん中途半端な根性しかないエルフだがな」
その後の説明で、近年かなり遠方からもこの村を目指してエルフが流れてくるそうです。各地でエルフの人口が減り、また人族との諍いもあってじわじわと生活圏が狭まっているそうです。
「まぁ恐らくじゃが、そのエルフ達をこの森の者と勘違いして、ラルク村の村長とやらが交渉を行ったんだろう?」
「あの・・・だろう?ってあたしたちに聞かれても答えれる人はここにはいないと思いますけど・・・・」
あたしが、そう答えるとアルルさんは驚いたような顔をしてあたしを見ます。
「うむ、もっともだな・・・・よし、ユーナ確認をしてこい!」
(う・・・・この人本当にだいじょうぶなんでしょうか?)
あたしは、ちょっと心配になりました。
「あの、ところであたし達はなんでここに呼ばれたのでしょう?」
「ん?あぁどうやらラルク村に転移者らしいエルフが現れたと聞いてな、とりあえず状況も判らないだろうし保護するようにユーナに指示したんだ。そしたら、なにやら揉め事も起きたようだし、何やらコジロウ達がどっかへ連れて行こうとしてるらしいからな、まぁ大丈夫とは思ったのだが用心に一回こっちへ連れて来させようとしたんだ」
「保護にしてはえらく物々しい感じだったよね?ちょっと焦ったよあの数は、しかもユーナさんと他にも数名気配があきらかに違うのいたからね」
遙さんが言うと、アルルさんはさも当たり前のように答えました。
「推定淑女だけならまだしも、ブラッディーラビットの紋章が見えたそうなのでな、200でも少ないかと思っとったぞ、まぁ推定淑女のメンバーがいるから何とかなるかとは思っとったがな」
「あの、それでこれからどうするんでしょうか?」
あたしは、なんか話が進んでいるようで進んでいない状況に気を揉ませながら聞きました。
「ふむ・・・とりあえずだがキュアリーさんと言ったかな?大体の事情は聞いているのだね?それならばこれからどうしたいのだね?そなたの意思を尊重しようぞ!なぜなら・・・わたしは!すべてのエルフを愛する者!すべてのエルフを見守る者!エルフの守護者たらんとする者だからだ!!!」
アルルさんはその丸い体を大きくそらし、太い腕を右へ左へ存分に振り回して、最後にはマントをばさりとたなびかせて宣言をされました。
(うわ~~すっごいオーバーアクションです・・・なんか・・・凄いって言うより・・・コメディーに見えてしまいます・・・・)
あたしは、ふと横を見るとコジロウさんが激しく頷いています。その向こうではエリィさんが小さく拍手しています。おそるおそる周りを見回すと、遙さん達も何か感動してるっぽいですし、護衛?のエルフさん達は崇拝しているかのようにキラキラした眼差しでアルルさんを見つめています。アルルさんをそっと見ると、なんか自己陶酔されています。
(え~~っと・・・ここは感動しないといけない所なのでしょうか・・・・)
あたしは救いを求めるように更にそっと後ろをみました。そうしたら、みんなの後ろに隠れるようにしていたサラちゃんと目が合いました。サラちゃんは明らかに途方に暮れています、そして、どうしていいのか判っていないようでした。
(よかった、あたしだけじゃないんだ、でも、もしかして、これって・・・・魅了スキルとかだったりしないよね?みんな混乱してないよね?)




