3-6:出かける前に整理整頓
サブタイトルが・・・・
と、とにかくお話は動き始めます。
「キュアちゃん、キュアちゃん?」
「お~~い、聞こえてる?」
「あ、ごめんなさい。考え込んでいました」
「キュアちゃん、ギルド入る入らないは別にして、まず1回王都行こう!」
「うん、まずここの世界に慣れるまでは一緒に行動したほうがいいよ!」
あたしが、考え込んでいる間に、二人はとりあえず王都に行こうっていう結論に達したようです。
「はぁ・・・・王都へですか?」
「そうだな、こっちの世界に慣れるまでは一人ではいないほうがいい。」
「ですね、慣れるまでは・・・・」
コジロウさんを含め、みんな口々に慣れるまではを強調します。
あたしは、恐らく顔いっぱいに疑問符を浮かばせていたんだと思います。でも、その後のユパさんの説明で納得しました。
「そうですね、まぁわたしより推定淑女のメンバーの方が今の段階では実感の篭った意見が聞けるかとは思いますが、簡単にいうと生き物の命を奪うのに慣れるまではっていう事ですね」
(あぁ・・・そういう事か・・・・)
「やはりゲームとは違って、生々しいっていうか・・・・・あたしはまだ慣れないですね・・・・」
「わたしも慣れるまでは結構かかりました・・・・」
エリィさんもエリーティアさんも同様に言い辛そうにしています。
「まぁな、俺達も簡単な討伐クエストから慣らし始めたが、まだ慣れたとは言えないな。最初も、俺達にしては余裕と思ってたコボルト討伐ですら抵抗感っていうか罪悪感っていうかが邪魔して、予想以上に苦戦したしな」
コジロウさんはその時の事を思い出しながら、思い口調で言いました。
「まぁ、それがあたりまえだって、まだ良い方だよ?あたしらなんてINしたら最初っから戦争に巻き込まれたからね・・・・しばらくはまともに睡眠取れなかったねぇ・・・よく頭がおかしくならなかったって思う。まぁ今では敵は躊躇無く殺せるようになっちゃったけどね」
遙さんは笑いながら話してくれますが、その笑いはなんとも言えない笑いでした。
あたしは、あたしもこんな笑い方をするようになっちゃうんだろうかって、その事が怖くなりました。
「まぁ、まずはトモエ達とクエストをこなしながら慣れておかないとある意味後悔する事になるかもだからね。キュアちゃんがもし仮にそれで死んじゃったりしたらあたし達悔やんでも悔やみきれないから」
「まぁ慣れないで平和に暮らせれば問題ないのだがね、ただ、、恐らく俺達にはそれは許されないんだと思う。何となくだけどね」
みんなが心配してくれているのが判ります。あたしは素直に頷いてまず王都へ行ってみる事にしました。
「よし、それでこの子達はどうする?」
遙さんがサラちゃんとルカちゃんを見ていいました。
「えっと、連れて行っても問題があると思うし、それに今まで通りでこのまま村にいてもらうほうがいいのかな?」
あたしが同意を求めると、ちょっと意外でしたがサラちゃんは悩んでいるみたいです。
「あぁ、さっきの変な連中が心配なのかな?」
「変な連中?」
遙さんはサラちゃん達との出会いの状況を説明してくれました。
「それはたぶんあたしの所為だね。この村の人達はエルフに対して敵意があるみたいなんです。おそらくエルフの森に入れなくなったのが原因みたいなんですけど・・・・でも、暴力は許せない」
あたしは憤りを感じながら、現在村の置かれている状況を説明しました。
「まぁ暴力に関しては一応の報いを受けてはいるけどね、でもあれで懲りるかは本人達次第だけどね。えてしてああいう輩は懲りないからなぁ。それと、森の封鎖は仕方がないんじゃないかなって思えるけどね。ほら人間って際限なく増えるし、自然を破壊するし、どこかで歯止めを掛けないとあっという間に森なんて破壊されちゃうよね。エルフからしたらそれはとんでもない事なんじゃないかな」
「極論に近い気はしますが、同意ですね。ただ、今のキュアリーさんの話の中でおかしな点がありますね。まず、この土地の作物の実りの減少は二期作及び連作障害というのは理解はできます。ただ、税金が日に日に値上がりしているというのは納得できませんね。騎士団が出来てからは軍隊の増強は各騎士団に任されてはいます。ですが、国が騎士団に払ってくれる金額は二年前から固定です、併せて税金も二年前から固定ですね、おかげで各騎士団は自前で金策をして自分達の増強を図っていますよ。わたしも苦労していますね・・・うちの団は色々と負担を掛けてくださる方が多いので」
ユパさんは余程やりくりに苦労をされてるのか疲れたような感じの話の終わり方でした。
「う~ん、怪しいねぇ・・・・増えた税金はどこへ消えたんでしょうねぇ」
ユパさんとは逆に遙さんはすっごい嬉しそうです・・・・
「よし、まずは村長さんの家に行こうか!その馬鹿息子の事も気になるしね」
そして、あたし達は連れ立って村長さんの家に向かいました。ちなみにサラちゃん達はエリィさんとまるすさんがその間みててくれる事になりました。心配そうな顔をする二人に小さく手を振りながらあたしは家をでました。もしかしたら、あたし達じゃなくって村長さんの心配をしたのかもですけどね。
◆◆◆
あたし達は連れ立って村長さんの家に向かいました。そうしたら、村長さんの家の前に幾人もの人が武器を持って集まっていました。その中の数人は頭に包帯を巻いています。
「う~ん、何やら物々しいねぇ」
「明らかに殺気立っていますね」
「いやぁ・・・これはまた・・・」
遙さん達は楽しそうに顔に笑みを浮かべています。そして、あたしはその雰囲気に緊張しながら歩きつづけました。
「う~ん、何か魔物でもでたかな?」
遙さんは明らかにそうでないってわかっていながらニヤニヤ笑いを浮かべながら村の人達に声を掛けました。
村の人達はあたし達に気がついた時から、続々と村長さんの家から人が出てきて、今では30名近い人が集まっています。そして、その中にはなんとロダンさん達の姿も見えました。
そして、彼らの中から村長さんが出てきました。
「これはキュアリー様、ご一緒に見える方はお知りあいですかな?」
村長さんは特に感情を表に出すことなく、淡々とこちらに聞いてきました。
周りの人たちの雰囲気が殺気立っているだけになんだかすっごい不気味でした。
「こんにちははじめまして、キュアリーさんの知り合いのトモエといいます。何かあったんですか?なにやら物騒な雰囲気ですが?」
遙さんではなく、トモエさんが先頭に立ち、会話を始めます。遙さんはそれを普通に受け入れて、後ろでただ控えています。なんか遙さんらしくないなぁって思いました。
「いえ、村の入口で先程村人が突然襲われるといった事件が発生しまして、それで今、村の主だった者に召集を掛けた所です。どうやら賊が村に入り込んだようでしてな」
「へぇ~~物騒ですねぇ。最近は色々と世情が不安定になってますからねぇ」
村長が探るような視線を向けてきますが、トモエさんはそんなことに一切気がつかないように会話をしています。
「おい、村長!そいつらだ!俺達を攻撃してきたのは!」
村人の中で包帯を巻いている男がユパさんを指差して叫びました。
村の男達が一斉に殺気立つ中で、ロダンさんとアリーゼさんがニガ笑いを浮かべながらその輪から抜け出してきました。そして、村人みんなに聞こえるように声を掛けてきました。
「キュアリーさん申し訳ない、その方達をご紹介いただけませんか、わたしの記憶違いでなければその紋章は騎士団ラビットラブリーの紋章だと思うのですが」
ロダンさんの言葉に、さっきまでの殺気が嘘のように無くなって、変わりに怯えのようなものに取って代わられました。
そこかしこで囁き声が聞こえてきます。その中にはブラッディーやら、ラビットやら、戦争やら、中には虐殺なんて言葉も聞こえてきます・・・・
(・・・・遙さん達は戦争中何をやったのでしょう・・・・)
ロダンさんは村人達を振り返って彼らを解散させようとしました。
すると、遙さんが前に出で、それを止めました。
「あ、まって欲しいな。せっかく多くの人が集まってくれてるんだからこのまま話を聞きたいなぁ」
相変わらず、口元に笑いを浮かべながら集まっている人全体を見渡すように眺めています。
「あのさ、あたしはラビットラブリーのハルカって言うんだけどさ、ちょっと聞き捨てにならない話を聞いたんだよね。この村ではここ最近でも税金が上がっていってるって聞いたんだけどそれは本当?」
「ハルカ・・・さんっていうと・・・ラビットの団長さんの?」
ロダンさんが恐る恐るといった様子で尋ねます。
「うん、団長やってるよ」
満面の笑みで遙さんは答えますが、その答えを聞いてロダンさんは2,3歩後ずさりました。
「う~~~ん、傷ついちゃうなぁ、まぁいいや、所でさっきの質問には誰が答えてくれるのかな?そこの村長さんかな?それとも冒険者っぽいお兄さんかな?」
「あ、いや、失礼。つい有名人にお会いできて緊張してしまって、税金が上がった件だが、ここ1年で2回、最近では3ヶ月程前に国から国境砦の整備が必要な為ってことで税金は上がった」
「ふ~~ん、まぁどんな有名かは聞かないでおくけど、その通知って誰からきた?」
「誰からって・・・国からだろ?」
「だよなぁ・・・国からのお触れでって・・・・なぁ?」
「じゃあ質問を換えるね、そのお触れをみんなに伝えたのは誰?」
「え?誰って村長だよ、それしかありえないじゃないか」
みんなの話を聞きながら、あたしは村長さんを見ました。でも、村長さんは依然として無表情のままです。
「そっかぁ、そしたら村長さんにきくね、そのお触れは誰が持ってきたの?あたしが知る限りここ2年税金は上がってないはずなんだよね」
もうあたしは内心ハラハラしながら遙さんの話を聞いています。それなのに、遙さんはすっごく楽しそうに会話を続けています。そして、トモエさんも含め他のみんなはそんな遙さんをいっさい見ないで村の人たちをじっと観察しているようでした。
「はて、おかしいですな。王都より何度も増税のご連絡を受けておりますが?それに、きちんと年2回徴税においでになってますぞ?」
村長さんは苦笑を浮かべながら答えてくれました。でも、あたしには口元や顔、体から受ける印象などは笑っているのに、その目がすごい鋭さで遙さんを睨みつけているように見えます。
(これって・・・・なんか・・・・変だ、村長さんが怪しい?)
村の人達みんなが村長さんを見ています。そして、違和感を感じています。
「ふ~~~ん、そしたらあとでその増税の連絡書でもいいし、徴税の領収書でも良いので見せてもらえる?誰が発行してるのか確認したいからね。でも、おかしいなぁ?村長さん王都での会合に出てないなんてないよね?そこで増税なんかされてないって判らないはずないんだけど?」
その時、あたしは突然頭の中に今まで感じたことの無い恐怖でしょうか?を感じました。そして、まさにその本能のままにスキルを発動しました。
「防御結界!」
そして、その直後にあたし達目掛けて無数の矢が飛んできました!
それと同時に、ユパさん、コジロウさんが矢の飛んできた方向に向け剣を構えました。
「あらまぁ、これは珍しい、ちょっと予想外ですね」
遙さんは剣を構えながら突然現れたエルフ達に言いました。そうなんです、20人近いエルフが弓を構えて現れたのでした。




