3-4:真実
やっと主要メンバーが集まり始めました。
でも、まだこの世界観とか何にも語ってないなって思いながら・・・
でもVRって本当にどんな感じなんでしょうね・・・
あたしは、遙さんたちの視線に戸惑いました。
(えっと・・・何かおかしな事を言ったのかな?・・・あ、ログアウト出来ないのは今はあんまり話題にしないほうがいいとか?)
あたしは、周りの雰囲気に不安になっていると
「まぁせっかっくケーキもありますし、まずはお茶にしましょう」
ユパさんがみんなにそういいました。
あたしは、頷くとみんなの前にお茶を並べ始めました。
「紅茶だ!久しぶりだなぁ・・・」
「ケーキもここしばらく食べてなかったからね」
「ですねぇ、ぼく味を忘れそうですよ」
みんな思い思いに会話しながら、机の上に好きなケーキを取り分けています。
「あ、サラちゃんとルカちゃんも遠慮しないで食べてね」
あたしは、そう言いながら、みんなの会話にどこか違和感を持ちながらも自分も席につきました。
あたしが、席につくのが合図のように、みんな一斉にケーキを食べ始めました。
「美味しい~~~」
「うん、美味い」
「甘い、美味しい!!!」
「美味しいです!」
みんなそれぞれに感想を述べながら、それでもすごい勢いでケーキやクッキーが消えていきます。
「あ、次それとって!」
「あ、あたしもそれ食べてみたいです」
「おれはそのチーズケーキくれ」
「あ、あたしもそれ食べてみたいです、ルカはどれ?」
あたしは、その様子に圧倒されてしまって、最初に取り分けたショートケーキもどきにまだフォークすらつけずにただ見ていました。
そして、ものの見事にケーキもクッキーもみんな無くなってしまいました。
(な、なんか凄いものを見た気分です・・・・欠食児童を集めたみたい・・・・)
あたしは、そんな事を思いながらみんなに再度紅茶を入れてあげました。
みんなが、紅茶を飲んで一服していると、サラちゃんがお皿を集めて台所へと持って行きます。
ルカちゃんもお手伝いをしています。その様子にあたしは和みながら、みんなの方を向きました。
「遙さん、さっきは中途半端になったんですけど、みなさんログアウトできるんですか?あたしは昨日INしてからシステム画面を見てもログアウトボタンがどこにもなくって・・・・」
あたしは、思い切って一番気になることを聞きました。すると、みんな難しい顔をします。そして、遥さんが逆に聞き返してきました。
「うんっと・・・・キュアちゃん、こっちに来てまだ2日くらいしか経ってないんだよね?それだと解らないかもしれないけど、こっちの世界で違和感感じなかった?」
「違和感ですか?」
あたしは、遥さんに聞かれて違和感が何を指しているのか考えようとしました。その時、家の前に馬車が止まる気配がして、そしてトモエさんが飛び込んできました。
「ちょっとまった~~~~、遙!抜け駆け禁止~~~~!キュアちゃん、腹黒遙に騙されちゃダメだよ!キュアちゃんはうちのギルドに来るよね?ね?ほら、あたしたちタイミングはずれたけど一緒にこっちの世界に来た仲間じゃない!ね、ほら、うち中堅だから即戦力欲しいのよ!こんな訳の解らない世界に飛ばされて信用できる仲間が欲しいの!ね、うちに来て~~~」
あたしは、トモエさんに両肩をつかまれて揺すられながら、トモエさんの後ろからくるコジロウさんやまりすさんに目で助けを求めました。
そしたら、突然横からトモエさんの頭に拳骨が落ちました。
「ふぎゃ!」
あたしの膝の上に突っ伏したトモエさんを遙さんが笑いながら・・・でも目は笑ってないです・・・覗き込みました。
「トモエ~~~誰が腹黒だって?」
(う・・・人の膝の上でやめて欲しいなぁ・・・・・)
あたしはそんな事を考えていました。
「いった~~い、遙!あんた何ひとの頭かち割ろうろうとしてるのよ!」
「ふん、それより早かったわね、到着はもう少しかかるかな?って思ったのに・・・」
「ちょっと!逆よ逆!ちょっとブラウンウルフの討伐を請けてきたら、ブラウンウルフがいなくて手間取ったのよ。本当なら昨日には到着してたわ!」
「・・・・・チッ・・・・狩り残しがいたか・・・・」
なんか遙さんが小さな声で呟きました。
「えっと、とりあえずトモエさんお久しぶりです~他のみなさんも3日ぶりかな?」
あたしが、そう挨拶をすると、コジロウさん達は複雑そうな顔をしました。
「あ、キュアちゃんは昨日着いたそうだよ。だから何にもわかってないみたい」
遙さんはトモエさん達にそう言いました。
(解ってないってなんだろ?MMOとの違いかなぁ?う~ん、チャットだと”?”を飛ばせばいいんだけど、VRってある意味面倒かも?)
あたしは、またも見当違いの事を考えていました。
そして、突然人が更に5人も増えたため、あたしはコジロウさんやユパさんに手伝って貰って地下の道後箱から椅子を5脚取り出して持って上がりました。
あたしが、1階にもどると、何やらまた騒動が起きています。
「うそ~~~ケーキ食べてたの!酷い!!!あたしら来る事が解ってたんだったら残しといてよ!」
「ふ・・・・なんでそんな勿体無い事を・・・遅れてきたトモエが悪いんじゃない!」
「くぅぅぅ~~~遙!あんたまた何か企んだでしょ!でなきゃあんなにブラウンウルフがいないなんて変だよ!」
「ふふふ、人聞きの悪い事を言わないでほしいなぁ・・・誤解されちゃうじゃない」
(何やら賑やかですね・・・・でも、そういえば遙さんって色々な二つ名があったような?あんまり覚えてないけど、どちらかというと・・・ブラック系の・・・)
あたしは、椅子を並べながらそんな二人の様子を見ています。そして、ふと台所を見ると、サラちゃんとルカちゃんが所在なさそうにしているのが見えました。
「あ、サラちゃん、ルカちゃんのんびりしてていいよ~何なら2階にいる?」
あたしが言うと、二人は頭を横に振って、台所にあった丸椅子に腰をかけてこっちの話を聴いているようです。
あたしが、サラちゃん達から意識をもどして、二人を見ると、逆にあたしが見られていました。
「う・・・・なんでしょう・・・・」
話を聞いていなかった為、なんで見られているのか解りません。若干腰が引け気味に聞きました。
「う~んと、キュアちゃん、さっきの続きに戻るんだけど、こっちに来て何か違和感ない?」
遙さんは先ほどの問いかけを再度あたしに聞いてきました。
「えっと、違和感ですか?・・・・え~っと・・・・VRってすっごいリアルですね~あたし吃驚しました。これだったらみんなMMOには戻ってこないよね~って思いましたけど・・・あとは何でしょう・・・」
「はぁ・・・やっぱりねぇ・・・・」
「うんうん、キュアちゃんだし・・・・」
「まぁ予想はついていたね・・・・」
「いやぁ、まさかここまでとは・・・・」
みなさん思い思いに何か言ってますけど・・・あたし褒められてないよね・・・・
「う・・・何気に馬鹿にされてる・・・・」
「いえ、馬鹿にはしてないかな?ある意味尊敬?」
遙さんの言葉に、みんなが一斉に頷いています・・・・けど・・・やっぱり馬鹿にされてる気が・・・
あたしが、ちょっと拗ねた顔をしてると、遙さんはすっごい嬉しそうです・・・・
(あ、そうだった・・・遙さんってこういう人だった・・・・)
あたしは、諦めににた気持ちでため息をつきました。
「団長、脱線して行ってる気がするのだが・・・」
「だな、確実に脱線してってるな・・・」
ユパさんとコジロウさんが呆れたような顔で言いました。
「うむ・・・では、キュアちゃん・・・そこにいるサラちゃんとルカちゃんを見てどう思う?」
「え?サラちゃんとルカちゃん?・・・・いい子よ?」
あたしの発言にみんな一斉にため息をつきます。そして、サラちゃんとルカちゃんは突然会話に自分達の名前が出て吃驚しています。
「いや・・・・キュアリーさん、そういう事を聞いてるんじゃなくて・・・」
「まじですごいな・・・・これ素か?」
「聞きしに勝るだねぇ・・・」
(う・・・相変わらず褒められてない気がする・・・・)
「はぁ・・・キュアちゃん、あの子達って普通ならNPCよね?」
トモエさんが聞いてきます。
「あ、あぁ・・・うん、VRってすごいですよね、NPCがリアルすぎます!吃驚しました!これだと、NPCとPCの差が中々わかんないですよね」
「うん、だってあの子達NPCじゃないから」
「あの子達NPCじゃないよ?」
遙さんとトモエさんが同時に言いました。そして
「あと、VRを経験していないと解らないかもだけど、こんなリアルなVRってないから」
「は?・・・・」
あたしは、遙さんが何を言っているのか解りませんでした。そして、トモエさんが話を繋ぎました。
「うん、吃驚するだろうけど、ここは異世界っぽい」
「とりあえずログアウトは出来ないですね。私達はすでにこの世界でですが3年強の月日を過ごしています」
「俺達はまだ1ヶ月経たないくらいだけどな、なんでかタイムラグがあってさ、キュアリーさんが今回の最後だと思うな」
ユパさん、コジロウさんが更に話を進めます。でも、あたしにはみんなが何を言っているのかぜんぜん理解できませんでした。なんか疑問符がいっぱいで思考がついていかない感じです。
(・・・・異世界?・・・・なんって・・・ラノベ?)
そして、あたしはそんな変な事を考えていました。
次回はこの世界の説明などを行う予定です。
でも、説明するのがあのメンバーなんで・・・・




