2-8:サラちゃんのお願い
少しずつこの世界の状況を織り交ぜていこうと思っています。
2章ではキュアちゃんの巣篭もり準備を終えないとって思ってますが、予定の2-10過ぎても準備おわらなそうです><
あたしは、サラちゃんの問いになんって答えていいか悩みます。だって、それくらい真剣な眼差しだったから。
「うん、王都には行った事あるよ。ただ、50年前にだけどね、今の王都は行った事ないなぁ」
あたしの答えに、サラちゃんは明らかに落胆したような表情をみせました。でも、すぐに別の質問をしてきます。
「あの・・・それでは、偉い神官さんのお知り合いとかお見えにならないですか?」
「神官かぁ・・・・一応いないことはないけど、今どこにいるかはわかんないよ?」
サラちゃんはしょんぼりした感じで黙り込みました。
「サラちゃん、大丈夫よ」
アリーゼさんが声をかけ、ロダンさんがサラちゃんの頭を撫でています。
「えっと・・・・何が大丈夫なの?」
あたしの問いにロダンさんが答えてくれました。
「ルカの事です。もうお気づきだとは思うのですが、ルカは昔怪我をして、それ以来ずっと足を引きずるようになってしまいました。それで、サラはなんとかして治療を受けさせてやりたいと、ただ、お金の事もありますが、まず治るのか治らないのか、それと、治癒を行える者があまりいない為、一般の者はまず治療が受けられません。それで、色々と旅をされているキュアリーさんなら何か伝手があるのではと、そう思ったのだと思います」
「はぁ・・・・・」
あたしは変な返事をしてしまいました。
「あの、神官でなくても治癒士に頼めばいいのではないですか?どっちも似たような治癒魔法使えますし」
あたしは、別に神官に拘らなくてもって、だって、神官職はたしかに回復魔法や治癒魔法に特化してて、復活なんかも使えたはずですけど、治癒士も同じくらいっていうか神官の倍はいたんじゃなかったかな?治癒士はわりと戦闘系スキルや、支援系スキルも多くて使い勝手が良いから。なんといってもあたしがその治癒士ですし・・・まぁなぜか女性キャラの神官職のシスターは人気があって、巫女服とか着せてる人も結構いましたけど・・・・巫女職はなかったですからねぇ・・・
「ええ、治癒士でも問題はないんですけど、神官も治癒士も戦闘では真っ先に狙われますから、その為、幾度かの戦争で多くの治癒系魔法の使い手がいなくなってしまいました。神官はまだ教会が保護、育成していますから比較的数は増え始めてます。でも治癒士はすでに魔法自体を教える人が減っているため、最近ではもうほとんど見かけなくなりました、今はどこの国でも治癒できる人は不足しています」
「治癒職不足ですか・・・・昔はシスターなんて大人気だったのに・・・・」
「あら、今でもシスターは人気ですよ?ただ、貴族の娘さんか、よほど裕福な家の娘さんしかなれなくなっちゃってますけど。」
「そうなの?」
「ええ、まず神学校を卒業しないといけませんから」
う~ん、社会制度自体が変化してるっぽいですね。まぁキャラ作成時に職業選択ではなく素人から始めることになるのかな?
「・・・あたし、一生懸命働く・・・・・」
サラちゃんがポツリと呟きました。
う~~~~ん、健気ですねぇ・・・・ここら辺はいいストーリーかなぁでも、VRってイベントの区別つき辛いよね?これって治癒してハッピーエンドストーリー?でも、治癒士を前に話すって変よね、ストーリー的にちょっときついかなぁ?
とにかく治癒魔法でのイベントっぽいので申告しました。
「えっと、良ければあたしがルカちゃん診てあげようか?」
あたしの言葉に、みんな何を言ってるんだろうって顔をしています。
「あたし、治癒士だし」
「「「え?」」」
いえ、みなさんそんなに声を揃えて驚かなくてもって思いました。
「あの、キュアリーさんは治癒士なのですか?」
アリーゼさんが改めて聞いてきます。
「うん、ほら、どう見ても治癒士の格好でしょ?」
あたしは、わざわざ椅子から立ち上がって、その場で一周してみせました。
「いや、ぜんぜん治癒士に見えん」
「見えないですねぇ」
「・・・・・・」
「酷!・・・ほら、フードも被ってるし、装備も白で統一してるし」
「白って・・・・関係あるのか?」
「ですよね~どう見てもキュアリーさんは剣士だと思ってました。お会いしたときレイピアを持ってみえましたし」
「歌って踊れる治癒士なのです!」
「「「・・・・・・・」」」
あぅ・・・・思いっきり滑りましたね・・・・みんなの不信感が増大しています・・・視線が痛いです・・・っていうかロダンさん下から上に視線を滑らさないで!セクハラですよ!
あたしは、MPを消耗しながらも何とか軌道を修正します・・・
「ええっと・・・・・とりあえずルカちゃんを診てみましょう!」
あたしはそう言うとルカちゃんの横に移動します。
ルカちゃんは、お腹が膨れたのか、あたし達の話が解らないからなのか、いつの間にか椅子で眠っちゃってますね。
「あ、あの・・・本当に治癒士様なんですか?」
「うん、治癒士してます。とりあえず治せるか見てみるからね」
サラちゃんは心配そうに見ています。でも・・・治癒士だと様付けなんですね~。
「スキャン・コンディション!」
あたしはルカちゃんの状態を確認します。
すると・・・・
”脚部神経圧迫による歩行障害 ヒール回復率15%、メガヒール回復率50%、リカバリー回復率100%、サンクチュアリー回復率100%”
う~ん、こんな表示の仕方初めてかな?とりあえずリカバリーで治りそうね・・・
あたしは、一応成功率と魔力ブーストのために”賢者の杖”を装備しました。
よし、って気合をいれて、魔法を唱えようとしたら
「・・・・今・・・杖どっから出した?」
ボソッっとロダンさんが呟きました。
「そこ!細かい事に拘らない!」
「細かいんだろうか・・・・」
まだぶつぶつ言ってるロダンさんを睨み付けて黙らせると、改めてルカちゃんに意識を集中して杖をかざして魔法を唱えます。
「リカバリー!」
すると、あたしの全身が発光し、そのあと杖から白い光が出てゆっくりとルカちゃんを包み込みました。
そして、損傷していると思われる場所がより明るく輝いて、徐々にまるで体の中に吸い込まれるように消えていきました。
「スキャン・コンディション!」
”異常箇所無し”
無事、治療は終わったみたいです。
でも、このゲームの魔法って・・・・・雰囲気ないですよね、もっと格好良い呪文とかならよかったのに・・・
「うん、治ったよ」
サラちゃんは、祈るような眼差しで見ていました。そして、あたしの言葉と同時にルカちゃんを揺り起こしています。
「ルカ、ルカ、起きて!」
「んぅぅ・・・や!」
「ルカ、起きて!ちょっと歩いてみて、お願い!」
サラちゃんは、嫌がっていたルカちゃんを強引に椅子から下ろして歩かせました。
「ルカ、どう?普通に歩ける?」
心配そうに見つめるサラちゃんの前で、ルカちゃんは最初は今までの足を引きずる癖が出たのかちょっとぎこちなかったですけど、しばらくすると普通に歩きはじめました。
「ルカ!!!治ったね、よかったね!!!」
サラちゃんは泣きながらルカちゃんを抱きしめています。
うん、よかったですね~~
あたしは、ゲームだというのに、何かすっごい幸せな気分になりました。
うん、ルカちゃんサラちゃんよかったね!
いつ治療するかで悩んだんですけど、やっぱり怪我をしている子供はほっておけませんよね!