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EP 46

回転するカプセルと、SSRへの果てなき課金

【PM 2:00 タロー・マート店頭】

「ふふふ……。今日はデザートに『プリン』でも買っちゃおうかしら」

リーザは鼻歌交じりに、タロー・マートの自動ドアをくぐろうとした。

しかし、その入り口横に、見慣れない機械がズラリと並んでいるのに気づいた。

「あら? これはなんですの?」

そこには、赤や青のポップな筐体が設置され、透明な窓の中にカラフルなカプセルが詰まっている。

「ああ、それは『ガチャガチャ(カプセルトイド)だよ」

商品補充に来ていた優太が声をかけた。

「優太さん! ガチャ……?」

「コインを入れてハンドルを回すと、ランダムで景品が出てくるんだ。一回、**銅貨3枚(約300円)**だよ」

「銅貨3枚……。安いですわね。でも、何が入ってますの?」

優太は筐体のポップを指差した。

そこには、リーザの理性を吹き飛ばすラインナップが書かれていた。

【タロウ・ドリームガチャ ~一発逆転の夢~】

* SSR(大当たり): 『コーポ・タロウ 家賃1年分無料チケット』

* SR(当たり): 『高級霜降り肉ギフト券』

* R(普通): 『優太の肩たたき券』

* Cハズレ: 『たわし』

* KC(激ハズレ): 『太郎国王のブロマイド(キメ顔)』

「や……家賃1年分無料ぉぉぉぉ!?」

リーザの目がカッ! と見開かれた。

家賃は月金貨5枚。1年分なら金貨60枚(約600万円)の価値がある。

それが、たった銅貨3枚で手に入るかもしれない?

「確率は?」

「SSRは……まあ、0.5%くらいかな」

「いけますわ! 私のアイドルとしての『引き』の強さを見せる時です!」

リーザはプリンを買うはずだった小銭を握りしめ、筐体に向かった。

「唸れ、私の全財産! 回れ、運命のハンドル!」

ガシャッ、ゴロン。

出てきたカプセルを開ける。

【KC:太郎国王のブロマイド(ウインクver.)】

「いらなぁぁぁぁい!! 焚き付けにしますわこんなもの!」

リーザは写真を地面に叩きつけた。

「もう一回! 次こそは!」

ガシャッ、ゴロン。

【C:たわし】

「なんでですの!? たわしで身体を洗えと!?」

「あーあ、熱くなってるな……」

優太が苦笑していると、そこへキャルルとルナが通りかかった。

「あ! ガチャガチャだ! やりたーい!」

キャルルが興味津々で近づいてきた。

「私もやってみますわ。運試しですわね」

ルナがお財布から銅貨を取り出す。

「見てなさい……! 欲のない私が、サクッと当ててみせますわ」

ルナが優雅にハンドルを回す。

ガシャッ、コロン。

出てきたのは、金色のカプセル。

【SSR:家賃1年分無料チケット】

「あら。当たりましたわ」

「「えええええええええ!!??」」

リーザの絶叫が商店街に響き渡った。

「う、嘘でしょう!? 一発で!? 0.5%を!?」

「物欲センサーってあるんだよ、リーザ……」

優太が哀れみの目を向ける。

ルナは「あら、私は持ち家(実家)なので家賃はいりませんのよね。……コースターにでもしますわ」と、チケットを無造作にポケットに入れた。

「ま、待ってください! それを私に! 私に譲ってくださいまし!」

リーザがルナの足にすがりつく。

「あら、タダではあげられませんわ。……そうですね、このチケットが欲しければ、ガチャで**『SR:高級霜降り肉』**を当てて、私に献上してくださいな」

「わ、わらしべ長者……!?」

リーザは震える手で財布を見た。

残りは、銀貨数枚。これが尽きれば、明日の食パンも買えない。

しかし、目の前には「家賃無料」というエデン(楽園)への切符がある。

「……やるしかない。ここで退けば、私はただの貧乏アイドル……。勝てば官軍、負ければ路上生活!」

リーザの目が血走った。

「両替! 両替をお願いしますわ!!」

「やめとけリーザ! それは沼だ!」

優太の制止も聞かず、リーザは銀貨を銅貨の山に両替し、マシーンへと突撃した。

ガシャッ、ゴロン。(たわし)

ガシャッ、ゴロン。(太郎ブロマイド・寝起きver.)

ガシャッ、ゴロン。(たわし)

「出ない……! なんで出ませんのぉぉぉ!!」

カプセルの殻が足元に積み上がっていく。

たわしの山と、太郎の写真集が出来上がっていく。

「あと一回……これがラスト……!」

最後の銅貨3枚。

リーザは祈りを込めて回した。

ガシャッ……ゴロン。

出てきたのは、少し重いカプセル。色は青(R)。

【R:優太の肩たたき券】

「…………」

リーザは膝から崩れ落ちた。

風が吹き抜け、大量の太郎ブロマイドが舞い上がる。

「終わった……。私のデリバリー報酬が……全部、たわしと太郎様と肩たたき券に……」

真っ白に燃え尽きたリーザの背中を、優太が「肩たたき券」を使ってポンポンと叩いた。

「……元気出せよ。肩たたきなら、いつでもしてやるから」

「優太さん……。肩じゃなくて……ふところが寒いんですの……」

【ピロン!】

> システム通知

> 結果:爆死

> 獲得アイテム:たわし×15、太郎ブロマイド×20、肩たたき券×1

> 教訓:ガチャは悪い文明

>

その夜。

ルナが当てたSSRチケットは、「期限切れ(当日限り有効)」という鬼のような規約が発覚し、結局誰も得をしないまま、リーザの部屋には大量のたわしだけが残されたのだった。

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