表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/47

EP 42

欲望の歌姫、ドームに降臨す

【太郎城・作戦会議室】

「……やはり、リーザしか勝たん」

太郎は真顔で、机をバンと叩いた。

「あんた、まだ懲りないのか。この前の放送事故の始末書、まだ書き終わってないだろ」

優太が呆れたようにツッコミを入れるが、太郎は聞く耳を持たない。

「ルナは強すぎた。キャルルはアホすぎた(褒め言葉)。やはり、芸能エンタメの王道は『アイドル』だ。それも、とびきりキュートで、とびきり正直なな」

太郎は一枚の歌詞カードを、リーザに手渡した。

「リーザ。お前のための新曲だ。これを今夜の『タロウ・ドーム(闘技場改修)』のこけら落とし公演で歌え」

「こ、これは……」

リーザが歌詞に目を通す。

最初は戸惑っていた彼女の瞳が、次第に「イェン」マークのように輝き始めた。

「……素晴らしいですわ。私の魂の叫びが、全てここに記されています……!」

「だろ? かぁ〜っ、ドームの観客が待っているぞ。行ってこい、歌姫!」

「はいっ! 稼ぎに行きますわ!!」

【タロウ・ドーム(旧・王立闘技場)】

夜。数万人を収容する巨大なドームは、異様な熱気に包まれていた。

観客席を埋め尽くすのは、サイリウム(魔法の光る棒)を持ったオーク、ゴブリン、ドワーフ、そして冒険者たち。

『リーザちゃぁぁーん!!』

『俺の金貨を使ってくれぇぇぇ!!』

地響きのような歓声の中、照明が落ちる。

【Intro】

ドラムロールが鳴り響き、ブラスセクションとシンセサイザーが炸裂する。

BPM170の爆速チューンが始まった。

ステージ中央から、金色のスパンコールとフリルを纏ったリーザがポップアップで飛び出す!

「みんな〜! 愛してる〜? (お金を)落としてってね〜♡」

All: 愛!アイ!愛!アイ!ラ〜ブラブ!

All: (Fu Fu!)

All: マネー!マネ!ローン!ダーリン!グ!

All: (Yeah!!)

観客のコールが完璧に揃う。訓練されたオタクたちだ。

【1A】

リーザが軽快なステップを踏みながら歌い出す。

♪朝に目覚ましがなったわ (ジリリリ!)

♪私はまだ眠いわ (おはよー!)

♪朝シャンしなきゃ (Fu!)

♪朝メニュー食べなきゃ (パクパク!)

可愛い。ひたすらに可愛い。

しかし、歌詞は徐々に雲行きが怪しくなる。

♪鏡の前で メイクをしなきゃ

(魔法をかけて〜! キュルルン♪)

【1B】

♪さぁショーの始まりよ (It’s Show Time!)

♪のんびりな私は 1LDKに置いて行くわ (バイバイ!)

♪扉を開ければ 私が主人公 (オ・レ・の! アイドルー!)

野太い「オレのアイドルー!」コールがドームを揺らす。

【1サビ】

ここからが本番だ。リーザの目がマジ(本気)になる。

♪今日も私の為に世界が動く (まわって!まわって!)

♪全て上手くいくわ (絶対!)

♪愛も富も一つの物 (どっちもちょーだい!)

リーザが客席を指差す。

♪ダイヤが欲しい♪ 土地も欲しい♪ (Want You! Want You!)

♪貴方の(とキャッシュ)で生きていける (Fuuu〜!)

「キャッシュ」の部分で、リーザは指で「お金」のジェスチャーをした。

観客席からは「あげるよー!」「土地権利書持ってきたー!」という絶叫が飛ぶ。

【Post-Chorus 1】

♪だから私は 銀河の果てまで歌って行けるわ

♪だから、何処までもついて来てね♡

(一生ついていくよー!!)

♪ダーリン!

(チュッ♡)

リーザの投げキッスが炸裂。

最前列のオークたちが鼻血を出して倒れた。

【間奏】

スラップベースが唸る中、舞台袖で見守っていた優太が呟いた。

「すごいな……。欲望を隠さないスタイルが、逆に『清々しい』と受け入れられてる……」

「そうだろ優太。アイドルとは偶像だ。だが、この国では『金』こそが最強のリアリティなんだよ」

太郎が満足げに腕を組んでいる。

【2A】

♪夕方の鐘が鳴ったわ (キンコンカン!)

♪お腹はもうペコペコよ (ぐ〜!)

♪スーパーのシール見なきゃ (半額!)

♪ポイントカードも出さなきゃ (ピッ!ピッ!)

所帯染みた歌詞に、主婦層のファンが涙する。「わかるわぁ……」

♪家賃のために 節約しなきゃ

(現実はシビア〜! ガマン!)

【2B】

♪さぁ魔法の時間の始まりよ (Change The World!)

♪地味な私は 楽屋に置いて行くわ (バイバイ!)

♪マイクを握れば 私が女王様 (オ・レ・の! 女王様ー!)

【2サビ】

♪今夜も私の為に星が降る (ひかって!ひかって!)

♪全部手に入れるわ (強欲!)

♪夢も金貨も輝くもの (どっちも好きー!)

♪株券欲しい♪ お城も欲しい♪ (Buy Now! Buy Now!)

♪貴方の愛(と貢ぎ)で輝いていける (Fuuu〜!)

【Post-Chorus 2】

♪だから私は 銀河の果てまで歌って行けるわ

♪だから、何処までもついて来てね♡

(一生ついていくよー!!)

♪ダーリン!

(チュッ♡)

【Cメロ】

照明が落ち、スポットライトがリーザ一人を照らす。

ピアノだけの切ないメロディ。

リーザが瞳を潤ませ(演技)、切々と訴えかける。

♪だって女の子だもん 夢見るだけじゃお腹は空くの

♪綺麗なドレスも ガラスの靴も 維持費がかかるのよ

(そうだー!!)

(維持費払わせてくれー!!)

観客の共感が最高潮に達する。

スネアドラムが連打され、ビルドアップしていく。

♪だから…もっともっと、愛して(課金して)ね?

♪覚悟はいい?

一瞬の静寂ブレイク

ドーム内の全員が息を呑む。

【ラスサビ】

ドォォォン!!

銀テープ(お札柄)が発射され、キーが転調する!

♪世界中が私の為に愛を叫ぶ (まわって!まわって!)

♪全部抱きしめるわ (最強!)

♪愛も富も同じ輝き (どっちも本物ー!)

リーザがステージを駆け回る。

♪ダイヤも株も♪ 土地も愛も♪ (All Need! All Need!)

♪貴方の全て(人生)を背負って生きていける (Fuuu〜!)

「人生」と書いて「すべて」と読ませる重圧。

観客は財布の中身をステージに投げ込み始めた。

【Outro】

♪だから私は 銀河の果てまで歌って行けるわ

♪だから、何処までもついて来てね♡

(一生ついていくよー!!)

♪ダーリン!

(チュッ♡)

音楽がジャン! と止まる。

そして、最後の音がドームに響いた。

(レジの音:チャリーン♪)

「ありがとうございました〜! 物販コーナーで待ってるね〜♡」

ワァァァァァァァ!!!!!

大歓声の中、リーザはステージを降りた。

その顔は、アイドルとしての達成感と、お捻りの山を見た商人の顔が入り混じった、最高の笑顔だった。

「優太さん! やりましたわ! 今夜の稼ぎで、借金完済どころか、鯖缶工場の株が買えますわ!」

「……お疲れ、リーザ。ほどほどにな」

優太は、熱狂するドームを見渡しながら、

「この国の経済、リーザ中心に回り始めるんじゃないか?」

と、新たな懸念を抱くのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ