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EP 40

二日酔いのゾンビたちと、オルニチンの奇跡

【AM 8:00 コーポ・タロウ リビング】

カーテンの隙間から差し込む朝日が、殺人光線のようにリビングを焼き尽くしている。

そこには、かつて世界を救ったり、魔物を倒したりした英雄たちの見る影もない姿があった。

「うぅ……。朝日が……朝日が辛い……。目が溶けるぅ……」

リーザがカーテンの裏にミノムシのように包まり、吸血鬼のごとく日光を拒絶している。

昨夜の「銅貨が分裂した」という幻覚は消え、残ったのは頭の中でガンガン鳴り響く工事現場のような頭痛だけだ。

「……あぅ……」

床のラグの上では、地上最速のウサギ・キャルルが、液状化したスライムのように伸びていた。

「身体が……重い……。今の私なら……カタツムリとの競争にも負ける自信があるぅ……」

自慢の筋肉も、アルコール分解という重労働の前には無力だった。

「頭痛いよぉぉ……。脳みその中で、小人がピッケルで工事してますわぁ……」

ルナはソファで頭を抱え、涙目になっている。

彼女の魔力が不安定になり、頭上には小さな雨雲が発生して、シトシトと冷たい雨を降らせていた。

「……みんな、全滅だな」

優太もまた、こめかみを押さえながらキッチンに立った。

胃の底に昨夜のラーメンの脂が澱んでいる感覚。

吐き気と頭痛のダブルパンチだ。

「(……くそっ、リベラさんは賢かったな)」

優太は思い出す。

昨夜、ラーメン屋を出る直前、リベラだけがバッグから『ウコンのスーパー』を取り出し、涼しい顔で飲み干していたのを。

今頃彼女は、爽やかな顔で朝のハーブティーでも飲んでいるに違いない。

「こんな日は……あれしかない」

優太は震える手で【地球ショッピング】のウィンドウを開いた。

二日酔いの特効薬。日本のサラリーマンの守護神。

『購入:永谷園 1杯でしじみ70個分のちから(味噌汁徳用パック)』

『購入:白米(パックご飯)』

『購入:梅干し』

「……みんな、起きろ。薬だ」

優太がお湯を沸かし、インスタント味噌汁を作る。

湯気と共に立ち上る、磯の香りと味噌の匂い。

それがリビングに漂うと、死体ヒロインたちがピクリと動いた。

「……ん? いい匂い……」

「お味噌汁……?」

優太は人数分のお椀をテーブルに置いた。

「飲んでくれ。『しじみ汁』だ。アルコールで疲れた肝臓を修復する『オルニチン』が、これ一杯にシジミ70個分も入っている」

「な、70個……!? 貝塚ですわ……!」

リーザがフラフラと這い出てきて、お椀を両手で包んだ。

「い、いただきます……」

ズズズ……ッ。

三人が同時に汁を啜る。

その瞬間、全員の動きが止まった。

「「「はぁぁぁぁぁ…………(生き返るぅぅ……)」」」

五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのこと。

シジミの旨味が、荒れた胃壁を優しく撫で、死にかけていた肝臓細胞に活力を注入していく。

「す、すごいですわ……。頭の中の小人が、工事を止めて帰っていきますわ……」

ルナの頭上の雨雲が消え、光が差した。

「おいひぃ……。なんか、力が湧いてきたかも……」

キャルルが梅干しを乗せたご飯を一口食べる。クエン酸が身体を駆け巡る。

「優太さん……これ、魔法薬ポションですか? 聖水ですか?」

「いいや、ただの味噌汁だよ。日本の知恵さ」

優太自身も汁を飲み干し、深く息を吐いた。

頭痛が引き、視界がクリアになっていく。

【ピロン!】

> システム通知

> 回復:二日酔いからの生還

> アイテム:オルニチンの加護

> 教訓:締めのラーメンは計画的に

>

「ふぅ……。さて、復活したら仕事に行かないとな」

「えぇ~!? 今日は休もうよぉ~!」

「駄目だ。働かざる者食うべからず。特にリーザ、家賃の締め切りは明日だぞ」

「ひぃっ!? 働きます! 歌いますわ!!」

しじみ汁のパワーでなんとか人間に戻った一行。

リベラのように「事前の準備」こそが最強の防衛策であると痛感しながら、今日も騒がしい太郎国の一日が始まるのだった。

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