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EP 34

王と勇者のヤンキー座りと、袋とじの価値

【タローソン・店内】

「えぇっと……頼まれたのは……」

優太はスマホのメモ(魔導端末ではない)を確認しながら、棚の間を歩く。

「キャルルは……『ポテチ・濃厚チーズ味』。あいつ、最近カロリーを気にし始めたくせに、味の好みはガッツリ系なんだよな」

カゴにポテチを入れる。

「リーザが……『生キャラメル』と『板チョコ』。また虫歯になっても知らないぞ」

甘味コーナーで商品をピックアップ。

「で、ルナが……『プレミアム・ロールケーキ』。……これは僕も食べたいから2つ買おう」

優太は手際よく買い物を済ませ、レジで会計を終えた。

温められた弁当の匂いと、コピー機の音。

ここが異世界であることを忘れさせる空間だ。

「よし、帰るか」

自動ドアを抜けて外に出た、その時だった。

【タローソン・店外喫煙所】

店の横に設置された灰皿の前。

そこには、この国の頂点に立つ二人の男が、地面に踵をつけて深くしゃがみ込む「ヤンキー座り(ウンコ座り)」でたむろしていた。

一人は、ヨレヨレのジャケットを着て、甘い香りのキャスターを吹かす国王・太郎。

もう一人は、作業着姿で無精髭を生やした伝説の勇者・リュウ。

「……絵面がガラ悪すぎるだろ」

優太が心の中でツッコミを入れたが、二人は優太に気づくと片手を上げた。

「おぅ、優太か」

「お疲れ、優太」

「お疲れ様です……。何してるんですか、こんなところで」

優太は苦笑しながら近づいた。

国を統べる王と、魔王を倒した英雄が、コンビニ前でたむろする姿は、治安の悪い地方都市の深夜のようだった。

「聞いてくれよ、優太……。俺さぁ……」

太郎が煙を吐き出し、深いため息をついた。その目には深い悲しみが宿っている。

「嫁さん(王妃)から、小遣いを減らされたんだ」

「へぇ。……今度は何をやらかしたんですか? また変な店(二郎系)を作ったから?」

「それもあるが……『マンガの買いすぎ』と『公務中の抜け出し』がバレてな。……今月から、金貨2枚(約2万円)だ」

太郎が指を2本立て、震える手で示した。

「に、2万……!?」

優太は絶句した。

一国の王の小遣いが、高校生のバイト代以下。

タロウキングで豪遊すれば一瞬で消える額だ。

「そ、それは……厳しいですね。同情します」

「だろぉ? ……今月はもう、タバコ代とコーヒー代でカツカツだよ」

太郎が項垂れると、隣でしゃがんでいたリュウがニシシと笑った。

「太郎よぉ。その金貨2枚、俺に渡せよ」

「あ?」

「俺がパチンコ(タロウ・パーラー)で増やしてやるからよ。新台の『海浜物語 in 異世界』は出るって噂だぜ?」

「ふざけんな。パチカスが」

太郎は即座に吐き捨てた。

「お前に渡したら、一瞬で藻屑になるのがオチだ。俺は堅実に生きたいんだよ」

「堅実な奴が王様やってねぇだろ」

二人の不毛な会話を聞きながら、優太はふと思いついた。

(……金貨2枚か。ちょうどいい商材があるな)

「まぁ、元気出してくださいよ太郎さん。……これで」

優太は周囲を警戒し、スキルのウィンドウを太郎だけに操作して見せた。

亜空間から取り出されたのは、一冊の分厚い雑誌。

『美少女水着大全集 2026年保存版(袋とじ付き)』

表紙には、地球のトップグラビアアイドルの、布面積が極限まで少ない水着姿が掲載されている。

そして何より重要なのは、ハサミで切らなければ中身が見られない「袋とじ」の存在だ。

「おまっ……! こ、これは……!!」

太郎の目がクワッ! と見開かれた。

マンガもいいが、男には「三次元の癒やし」が必要な夜もある。

「金貨2枚でいいっすよ」

優太は悪魔の囁きをした。

太郎の全財産と同額だ。

「き、金貨2枚……!? 全財産だぞ!?」

太郎が雑誌と財布を交互に見る。

喉から手が出るほど欲しい。しかし、これを買えば残りの一ヶ月を無一文で過ごさねばならない。

「鬼かよ、お前は……足元を見やがって……」

太郎は葛藤した。

しかし、彼の脳内で「王の才覚」が閃いた。

(……待てよ? この雑誌……この世界には存在しない「極上の資料」だ。これを購入し、王宮の魔法印刷機で複製コピーして……貴族や騎士団の連中に売りつければ……?)

太郎がニヤリと笑った。

「……刷れば、元は取れる。いや、莫大な利益になる!」

「毎度あり」

取引成立。

太郎は震える手でなけなしの金貨2枚を優太に渡し、雑誌を聖遺物のように抱きしめた。

「へへへ……これで今夜は……いや、事業拡大だ……」

その様子を見ていたリュウが、身を乗り出した。

「おい太郎。俺にも見せろよ。袋とじの中身、気になるじゃねぇか」

リュウが手を伸ばすが、太郎はパシッとその手を払いのけた。

「ダメだ。見たけりゃ金を出せ」

「ケチくせぇな! 友達だろ!?」

「ビジネスは別だ。……拝観料、金貨3枚でどうだ?」

「高ぇよ!! 原価より上がってんじゃねぇか!!」

リュウの抗議を無視し、太郎は雑誌を懐に隠して立ち上がった。

「ふふふ……。じゃあな優太。良い取引だったぞ」

「はぁ……。ほどほどにしてくださいね」

優太は、コンビニ袋をぶら下げながら、ヤンキー座りから立ち上がった二人――哀れな王と、カモにされそうな勇者に、深々と一礼した。

「(……あの二人、本当にこの国を救った英雄なのかな)」

優太は哀れむような目で二人を見送り、ヒロインたちが待つアパートへと帰っていった。

【ピロン!】

> システム通知

> 取引:地球の文化遺産(エロ本)の売却

> 売上:金貨2枚

> 備考:太郎国王のモチベーションが回復しました(国益には繋がりません)

>

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