追放
「フェリシア·マール!」
「お前を聖女詐称の罪で国外追放、及びに婚約破棄とする!」
なんて台詞をお貴族様ばっかりなパーティーで吐き捨てたのは、この国ゼストールの王位継承者であるフールー王太子だ。
中々整った顔をしていたはずだが、眉間にこれでもかとシワが刻まれていてもはやその面影は無い。
「私は聖女詐称などしておりません!なぜそのような罪が…」
「とぼけるな!」
「貴様は聖女として正式に女神から認められていないと聞いた」
「それだけでなく、私の恋人であるナアマへ陰湿な虐めをしていたそうだな!」
そう言ったフールー王太子の後ろから出てきたのは、ぽろぽろと涙を零す少女だった。
「フェリシア様、わたくしは貴女を許したいのです」
「この腕の傷も、もう気にしてなどいません!」
そう言って袖をわざとらしくまくり上げ、これまた会場の全員に見せつけるかのように前へ押し出した。
「何て卑劣な事を…」
「…やはり、貴様は偽物だ!」
「冤罪です!そんなっ」
「黙れ!ふん、貴様の追放先はもう決めている」
「『魔獣の森』だ。 精々苦しむがいい!」
会場がどよめく。
それもそのはず、魔獣の森は立ち入り禁止を言い渡されている区域であり、中にはドラゴンやらオークやらがわんさかいるのだ。
「明日の朝、貴様を追い出す」
結局、フェリシア·マールが追放される事実は変わらないままパーティーは幕を閉じた。
しかし、所々ではまだ会話が続いている。
「ナアマ様の傷、とても痛々しかったわね…」
「しかしあんな証拠があるんだ、言い逃れはできまい」
「こんな所で傷口を堂々と見せるのは、流石に…」
「王太子があの様子では、この国も長くないだろう」
「マール様なんてどうせ娼婦なのよ!」
「なんでこんな朝っぱらから出勤なんだよ〜…」
そう言ってとぼとぼ歩いているのは、俺と同じ傭兵のビリーだ。
『へーへー、そんな事より早く行くぞ』
『団長に怒られちゃたまんねえからな』
俺はラノベなんかではモブ傭兵Bとでも言うのだろう。だが、今世ではテザーというちゃんとした名前がある。
元々、俺は冴えないアラフィフのリーマンだった。
ここへ来た経緯は…まあ、よくネットなんかで言うトラ転というものだ。
信号無視で突っ込んでくるでかい鉄の塊に人間が勝てるわけもなく、俺はあっさりと死んだ。
…ら、なぜかこの世界に赤ん坊として生を受けた訳だ。
転生特典なんてもんも無い、とにかく普通のモブとして。
何とかこの世界の一般知識を身に着け、傭兵として城に採用される頃にはもう近所の子供に「おじさん」と呼ばれるような年齢になってしまった。
チートスキルで無双しながら女の子にモテモテ!なんて理想も叶わず、結局今世でも冴えないおっさんだ。
「二人揃って遅刻とはどういう事だ!!」
団長であるマーカスさんの怒号で残っていた眠気が吹き飛ぶ。
「す、すんません…」
「ほら、お前も!」
『大変申し訳ありませんでした…』
前世で営業成績がたいして良くなかった俺にとって謝罪は日課に等しかった。
こんな所でもダメ人間なのか、俺…
「はあ…」
「まあ良い、来ないよりはマシだ」
マーカスさんは何だかんだで寛大な人だ。
この人のためにも、とりあえず駄目なところを直せるように頑張らないとな…
「行くぞ、フェリシア·マール様の乗っている馬車はあそこだ」
『「はい!」』
俺達は馬に跨り、門を抜け魔獣の森まで向かった。
なごと申します。
処女作です。




