6 閑話
※こちらはプチざまぁ的閑話になります。読まなくても、本筋のお話には差し支えありません。コメディー調の鳥糞ざまぁ、笑いたい方だけどうぞ。
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両陛下に叱責され、肩を落として馬車へと向かう道すがら、アメリとメルバは途切れることなく喚き散らしていた。いつもの控えめで上品なアメリと愛らしいメルバではない。
王宮の敷地は広く、馬車が待つ場所まではかなりの距離を歩かねばならなかった。
「旦那様のせいです! 私もメルバも、同居人だの庶子だの言われて……私、身分詐称の罰金まで取られたのですよ! 今までカーク侯爵夫人として振る舞っていた罪ですって、わけがわからないわ!」
「忘れていたのだ、仕方がないだろう。それに金を払ったのは私だ。アメリこそ、王族に反論するなど……肝を冷やしたぞ! ちなみに、皇后陛下の父君は宰相閣下なんだぞ!」
「そんなこと、知りません! 私は光属性の魔法が使える唯一無二の娘の母親だわ。私のほうがずっと偉いです!」
「そうです、お父様! 私はこの世界でただ一人。光属性の魔法が使えるのですよ! 皇后陛下よりずっと尊いはずですわ」
その時だった。
ポトッ!
ベチャリ!
黒い羽とともに、鳥の落とし物がアメリとメルバの髪に直撃した。
「「きゃああああっ!!!」」
私は思わず笑いそうになり、口を押さえたその瞬間。
ベチャッ
もうひとつの落とし物が、今度は私の肩に落ちてきた。
「な、なんだとぉ!? なんたる無礼な鳥よ! 許さん」
慌てて見上げた空には、数羽のカラスが愉快そうにカァカァと鳴き交わしていた。
「カラスにまでバカにされましたわ。これもすべて旦那様のせいです! 手続きを忘れるなんて、呆けてしまったのでしょうか」
「そうです、絶対お父様のせいです。もう、お父様なんて大嫌いよ! 変な匂いもするし、最悪」
アメリとメルバの怒声が響く中、私は幻想が打ち砕かれたことを嘆く。
(家族愛はどこに消えた? 私の心優しく善良な妻子はどこに? 呆けてしまっただなんて……アメリがそんなことを言うはずがない。きっと聞き間違いだ。変な匂い? まさか私のことか? いやいや、心優しいメルバがそんなことを言うわけがない。カラスの落とし物のことだろう。うん、きっとそうだ)
私は自分の肩に落ちたにカラスの落とし物に鼻をそっと近づける。
(うわっ! くさっつ……これの匂いのことを言ったんだな。まぁ、二人の機嫌も二、三日もすればなおるさ)
肩を落として歩く私の頭上では、カラスがなおも楽しげに輪を描いていた。




