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第17話「プライド・バトル」 Part1

第17話。なんか知らんけど歴代最長の回になりました

てへっ♡

 ――こんなもの作ったところで、無駄だって分かってる。

 でも、今更止まれない。それに……――





 アルキテク、という都市がある。

 ジーディス大陸五都市の中でも、特に技術力が発展した未来都市として人は度々口にする。

 そのテクノロジーは例えるならば産業革命の前と後。かつていがみ合っていた五都市の中でもその力は抜きん出ており、まさに大国のような存在感を放っていた。


 しかし、その高慢たる余裕と偏ったパワーバランスを均してしまう異常事態が起こった。魔獣の出現である。

 伝説の中のみの事と思われた怒りの神と魔の獣、その脅威を圧し潰すには他勢力の数歩先を行く程度の未来では足りなかったのだ。

 そして更に追い打ちをかけたのがバスターの、“魔法”の出現である。

 その不可思議なる力の前に、技術発展というこれ以上無い現実的な裏打ちを認識し未知など無いと驕る“科学狂信”は危機感を抱いた。


 彼らは選んだ。もう終わりにしよう。


 共通の敵を持った人類は一つになった。だがその心が清廉なる抗いであるとは限らない。

 「戦争は科学を発展させる」……宗教的思想で全ての事象を確定した時代のように、今この時こそが完全体だと胡坐をかいていたアルキテクを固定観念から解放させたのは、人類のために行動を起こす心ではない。

 二つのライバルと、それに立ち向かわざるを得ないという焦りであった。




「そこに、遊びに行こうって?」


 とはいえ、大変革と名付けられた事態を越えてきた人々がそんな“設定”を守り通すかというと疑問である。

 アルキテクの設定上の歴史を少し振り返りながら、クロウはストックをお出かけに誘う。


「たまには何も考えずに観光でもしようかなって。ハナもカンナと行くって言ってたよ」

「なるほどね。遠出の度に何かしら厄介事に巻き込まれているから、その反動かな?自分から――」

「意地悪言うなら乗せないよ」


 正確には、何かしらの目的があって遠方を尋ねたところ、ついでと言わんばかりに厄介事が降りかかった過去である。だからある意味先手を打つような遠征でもあった。


 何かあったから行かなければならない。するとその先で問題が待ち構えている。

 ならば何かある前に行けばいいという意趣返し。逆説的でも繋がりは全く無い浅知恵、それが本心というわけではないが、心のどこかでは気にしていた。


「冗談だよ冗談。そうだね、私も相乗りさせてもらおう」

「決まったね」

「そういう刺激も悪くはない」

「良くは?」

「良いね」

「準備しよう。持っていくものと戸締りと……」


 だが結局、彼女は巻き込まれることとなる。バスターである以上トラブルというものに魅入られているのか、運命はまたも平和なひと時を奪おうと迫って来ていた。




「…………」

「…………」

「…………」

「……なにこれ」

「すごーい!!」


 しかしその前に、ひと時の驚きが余計な意識を攫ってこの世界に溢れる不思議さを叩きつけていく。


「えっと……着きました」

「え、ほんとに?ねぇこれ異世界じゃないの?マップ見た??」

「いやはや、この世界にこんな場所があるとは」


 男子三日会わざればとは言うが、この世界が変わって約2ヶ月が経過している。

 たしかにそれぐらいの時間があれば、多少はそれこそ“変革”され始めていることだろう。

 だが、アルキテクの変革は常識を遥かに超越してる、正に大変革だと評せざるを得ない。


「えんぴつ?」

「定規っぽくない?」

「二人ともなぜ比較対象が文具なんだい……?」

「セレマの外ってすごいなぁ…!」

「カンナ?多分ここだけだよ?」


 もはやこれは進化というレベルではない。

 直線と曲線が入り混じる摩天楼、清潔感を感じさせる寒色の街並み、軌跡を描いたような細長い環状の構造物。他都市の侵略や魔獣の侵入を防ぐ城壁すらも、細かい線の入ったツルっとメカニカルな構造体。


 かつてこの地は産業革命をもう一つのモチーフとした真鍮色(ブラス)の工業地帯だった。

 それがなんということか、多くの場合現代における発展途上の過去の世界、特に中世期を意識されて作られるはずのファンタジー(F)がSという特異な接頭辞を開拓しては真逆の道を突き進む。


「私さ、今までシパンガの奥地に未来都市を見たって思ってたんだけど」

「僕も同感」


 それは人がSFに夢見た“未来の街並み”。無論、このロスマギ世界の人々が夢見る未来とはほど遠い、奇々怪々なる形状である。


「これが未来なんだなー……って」


 しかし彼女らも人間、印象は薄くても感覚は似るものなのだ。



「……入っていいのかな、コレ」

《用件ヲ オ聞キシマス》

「うわっ!?」

「人の声ではないな…っと、これでは田舎者のように見られてしまうな」


 まず、入都の時点で洗礼を受ける。

 人の声を合成したのだと一発で分かる独特の音。それにより驚いた人々を見て来たのだろう衛兵は、クロウ一行にやさしく声をかけた。


「私が聞きましょうか?」

「え、ああ……観光、というか遊びに来たというか……」

「どちらから?」

「セ、セレマから……」

「クロウがキョドってる」

「うん。面白いね」

「お姉ちゃん……」

「君らは~…!」


 都市の見た目こそ異常だが、衛兵の服装は一目で軍服と分かるものだった。しかしここに至るまでに叩き込まれた恐ろしいほどの情報量に、クロウは挙動不審となり、後の2人は嗤ってる。


「後ろ2人、いや3人はお連れ様かな?ちょっと動かないでくださいね……」

「え?」

「はい、OKでーす」

「何が!?」


 突然、衛兵の手のランタンのように持たれた物体から薄い光の膜が上から下へと照射された。

 何をされたのか全く分からないクロウはついツッコミを入れてしまうが、それすらも慣れているらしい落ち着いた衛兵は改まって説明を入れる。


「ああ、申し訳ありません。説明すべきでしたね。今のは危険物検査機で、金属や火薬とかを持ってないか調べるんですよ」

「金ぞ、あっ!武器……」

「私とか見たまんまだよ?」

「君達はその武装で何を遊ぼうと云うんだい?とはいえ私も護身用にナイフはあるが……」


 トラブルを予想して、というよりも最早無意識の職業病。観光旅行と主張するには重武装過ぎた。

 それに対し衛兵は、ランタン状機械と長い線で繋がる別の物体を操作しながらこう手を差し伸べた。


「バスターズIDも同時に確認できるので、それが所持証の代わりとなります。ナイフは…このぐらいなら大丈夫でしょう」

「おーやさしい」

「いやはや、ハイテク過ぎるね……」


 この時点で他の追随を許さぬ技術力。それぞれ純粋な驚きを隠せない。


「ってか覗かれた!?ャーー♡」

「それに関しては、こちらから見るとこういう風に」

「なるほど、決まった人の形…全部を透視するわけではないのだね」

「完璧過ぎない??」

「お姉ちゃんまさか……」

「そういう()たまに見えるよね」

「はァぁ~~~??」



 都市内部に入場すると飛び込む目新しさしかない景色。

 これまで足をつけていた大地と地続きであることが不思議なほど異質な光景を間近で見ても、ただ唖然とするのみであった。

 行き交う人々は銀色でシンプルなデザインの上着が多く、服一つとってもと言ったところである。


(なんか……)


 仕草自体は他所と変わりない。だが、時折ぎこちなさのようなものが見え隠れしている。


(慣れて、いない?よーな……)



 地面は均されただけで終わらず灰色の硬い何かで覆われ、仕切りなのか金属質の構造に飾られている。

 建物の入り口は触れずとも開閉し、透明な動体は耐久性に不安の残るガラス質だと一目で分かった。

 天を衝く摩天楼はシパンガ中央のそれと同じ高さに見えた。だがシパンガのものに“硬い”という印象を持ってしまいそうなほどの「柔軟な機能美」が、未来という第一印象を捉えて離さない。

 デザイン性のある屋上、オブジェとも融合する設計、それらをぐるりと周回する天空の道路……。



「さぁどうしよう」

「目移りどころか、むしろどこを見ればいいかさっぱりだね」


 だがそんなことより土地鑑が無い以上に何が何なのかさっぱりわからないというクロウ家。


「こうなったら行き当たりばったりだよ!うぉぉぉぉぉぉ」

「ハナ!」

「そうだね、止まっていても始まらないもんね!お先!」

「おいおい、団体行動を…!」


 冒険心をくすぐられて飛び出してしまうサイネリア家。

 見事に真っ二つに分かれてしまった幸先には、やはり心配がのしかかってしまう。


「いつものハナだし、もう放っておこうか……万が一の時はマップあるし」

「バスターのナノハ君はいいにしても、カンナ君は普通の子じゃないか」

「普通って?」

「道も治安も分からないんだ。あの勢いではぐれられたら……女の子一人では心配にならないのか?」

「た、たしかに」

「追いかけるよ、ほら」


 ナノハ姉妹の走り出した方へ急ぐ。もしもカンナに何かあったら。

 見知らぬ土地で女所帯となるとトラブルに巻き込まれそうで心配という情が湧いてしまうもので、二人もその思考により追跡を始める。

 だが、その心配はもう二人を見つけた時点ではもう消えかけていた。


「……一緒に行動してる」

「ふぅ、杞憂だったか。し、しかし速いね…クロウは……」

「ああぁごめん、もっと加減するべきだった?」

「いや……憂いているなら当たり前だろう。すまないね」

「でも、ここの人達……」


 人は外見だけでは判断できない。とはいえ明らかだと言えることもあるだろう。

 それは時々漏れるどことないぎこちなさに留まらなかった。


「……なんだか、みんな満足そうだ」


 人は、余裕がある時こそやさしくなれるという話がある。

 ということは、全てが著しい発展を遂げ生活が安定し、且つ欲求を満たし続けることができれば、他者への危害は加えないのではないか?

 クロウの観察結果からストックはそう推理した。過去の諍いを知識として知っているが故の考えでもある。


「雰囲気がある。やさしい人になれたんだろう…ここの住人は」

「油断しきれるわけじゃないけど、そう信じたくなるんだ」


 そう結論付けた主従は気を取り直して、この未来都市を楽しむことにした。

よくありそうな魔法世界に超未来都市というぶっ飛んだ組み合わせ。いや見た目だけならシパンガ中央部とかあるんだけど。

まぁ、この世界にトンデモ古代文明は無さそうだからちょうどいいんじゃない?

あと、我々にはアスファルトとか自動ドアとか、そこに何があるか一発で分かるだろうけど、クロウ達の視点に合わせてできるだけ固有名詞抑えてるよ


そういえばナノハの妹カンナちゃんおひさっすね

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