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第16話「追え!幻のレア魔獣」 Part2

「…………えっ…と……」


 誰も行かないのは理由がある。

 だが、もしも理由が出来たのならば……人が殺到してもおかしくはない。


「おーいそっち終わったかー!?」

「まだちょっとかかりますー!」

「よーし頼むぞー!」


 需要の無いはずの土地……そこは現在、大規模な採掘場と化していた。


「あの……ここって何も無かったはずじゃ……」

「ん?ああ、大変革の前はな」

「ならこれは一体…?」

「ここらはな、いい鉄が沢山埋まってることが分かったんだ。いやーバスター様々だぜ。こんないい場所を見つけてくれてよ!」


 周辺の警備を担当している(くだん)のバスターが、クロウと話す作業員の親指を立てたハンドサインを見つけ、自らもサムズアップで返す。

 仲がいいようで何よりだが、この様子ではトパーゾンどころか多くの魔獣が駆逐された、もしくは出て行ってしまったことだろう。


「この辺りにいた魔獣は……」

「ああ、あらかた片付いたぜ。何種か絶滅したんじゃないかってぐらい徹底的にやってくれたからな!特にあのちっこい嬢ちゃんとか……」

「そう……よかったね」


 この様子では予想に違わない状態だろう。他を当たるしかない。



「いたか!?」

「いいやどこにも……」

「くそぉぉぉもう絶滅してんじゃないの!?」

(ここはダメ……)



「なぁに?今素材を探してるの。ここに出たっていう珍しいものをね!」

「あー早く愛しのリガトピークに帰りたいなー」

「そこ!まだ何も取れてないのよ!」

「ッゆーわけでウチらで仕切ってんだよねー」

(ここもかぁ……)



 同じことを考えたバスターや、新たな需要が生まれた土地。

 競合を避けようと単独行動を考えたはものの、需要の低かったはずの地にも常に誰かしらがいることをクロウは予想はできなかった


(仕方ない、ここは他の人と協力しよう。苦戦してるところに加わってその狩場での効率を上げるんだ)





 作戦二!

 人海戦術に加われ!!




 そうと決まれば話は速い。一旦セレマに戻り、どこにトパーゾン狩りのバスターが集まっているかを速やかに聞き出し、そして該当のポイントへ急行する。



「止めだやめやめー」

「え、あっ」

「ん?トパーゾン()りに来たのか?もういねーよ、ここらには」


 もう白けたと言わんばかりの団体が、クロウの前で一人また一人と去っていく。


「……出遅れた……ってこと?」


 そもそも今回クロウは遅めの出勤、既に日は頂点を越えている。

 ならば加わろうとする頃には、粗方狩りが終わったかもしくはこのようにやる気を失ってしまったグループしか残っていないだろう。


 だが、それでもジーディス大陸は広大だ。

 まだ頑張っている集団がいるかもしれない、そう考えて探しに行くと果たしてその希望的予測は的中する。


「おーい」

「あ、おーい!」


 切り立った大量の面が目立つ、三次元格子積(ボクセル)で構成されたかのようにカクカクとした岩場。

 最初に訪れた採掘場とは逆に人気の無い元採石場、そこで話し合う数人を見つけて声をかけると、明るい返事が返ってくる。

 この女性統一の一団はむしろこれから取り掛かるような雰囲気で、なんらかの魔法を使った跡として薄いベールのようなものが一瞬確認できた。


「やってる?」

「今始めるとこ」

「そうか、じゃあ僕も」

「クロウ!!」

「え゛っ゛っ」


 揺れる桃の髪、黒くふわりとしたドレス、背丈と変わらない長さの武骨な大剣、そして愛らしさでできた童顔。


「知り合い?」

「いや、人違いかなァー…」

「私だよ!!」


 なんと奇遇な事か。この外見の人物と言えば、一人しかいない。


「そっかナノハさんの友達かぁ…!」

「そうそれは一言では言い表せない複雑な……」

「おー」

「話がこじれる!!」

「隅におけませんなぁーナノハどの♡」

「テヘー」

「君らの目耳は節穴か!!」


 と、あることないこと吹き込んでは信じ込まれそうになる様を目にし慌てるが、この寸劇は目的ではないと自らの手で軌道調整を試みる。

 そんなわけで、まずは仲間に加わりたいと掛け合う。


「えっと……これ、トパーゾン倒しに集まった面子?そうなら加わろうと思ってたんだけど」

「だけど?」

「うーーーん……」


 クロウは悩んだ。本来今ここで悩むべきは、彼女を自らの集団へ迎え入れるかの協議の必要がある相手方だろう。

 珍妙な立場の逆転の中で、クロウはナノハを見て悩んだ。


「こい、こい、こいこいこいこい!」


 ナノハ本人は博打の結果が自分の望みであることを祈るようにクロウの加入を願っている。


「果たして結果は?」


 集団の一人が囃し立てる。


「僕も、入って、いいですか」

「やったあああああああああああああああああ」

「やったあああああああああああああああああ」

「やったあああああああああああああああああ」


 3人一斉、喜びの叫び。

 人の輪に入れない控えめな一人が陽気な人々に悪意の薄い弄られ方で迎えられたかのようで、本人は少し気分が悪い。


「……気にしないでください」

「正気の人がいてくれて助かる」


 残った一人は、まともであった。



「私は小夜(さや)

「あっ、うちルインね」

「私は…ヒャクと呼んでください」


 ナノハ以外の3人が順に自己紹介していく。

 姫騎士を思わせるコンパクトな鎧に剣を携えたルイン以外は魔法使いの典型をなぞっている。

 ただ傾向はあれどサヤは高貴なディテールと明るいケープが覆う可憐な白魔導師、ヒャクは古典的でシンプルな魔女と造り手の個性がハッキリと出ている。


「うちが突っ込む係で、サヤもぶち込む係で、ヒャクはぶち込んだりサポートしてくれるんだー」

「言わんとすることは分かるけどもう少し言葉選ばない?」


 クロウは、この3人がナノハのようにノリで生きているだろうことを、自己紹介されるまでもなく察した。いや、ナノハに与しなかったヒャクは違いそうか……?


「じゃあ早速探そう!言うまでも無いけど目標はトパーゾンただ1匹!いや1種類!」


 顔合わせが終わったところで、ナノハが仕切り始める。


「ちなみに現在の成果は?」

「来たばっかりだからゼロだよ?」


 サヤが演説者の代わりに答える。

 人海戦術とするには少し物足りない人数だが、まだ手を付けられていない場所だったのは幸いだ。


「お前らっ!トーキョーに行きたいかァ!!」

「行きたーい!」

「行こうか、ヒャク」

「あ、はい」

「そこー!話をシンプルにしようとしなーいー!」


 もういいやと冷めた態度の二人を見て爆走は終了、レア魔獣の撃破という本題へと強制的に移行した。

 相手はそう見つからないという幻の存在、それも貼り紙の内容的に彼らから集められる材料は量が要るというある意味最悪の事情。雑談に興じてばかりもいられないと身体を動かし始めた。

トパーゾンの由来は宝石トパーズの語源からよ

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