第16話「追え!幻のレア魔獣」 Part1
何も考えなくてもいい感じのを目指しました(ほんとか?
ゲームには、ランダム性が付きものだ。
「あっ?あッ!あーーーーッ!!!!ここだああああああああああああ!!」
それは能力値のバラつきであったり、ダメージ量の変化であったり、行動パターンの分岐であったり。
「いたか!?」
「いや、見失った!」
「クソ……一体どこに消えたんだ……」
そして、その確率という難儀な運命の羅針が見つめる最たる例の一つが――
「トパーゾン……!どうすれば奴を……!!」
いわゆる、レアエネミーである。
「……あれ、みんなどうしたの」
「いや、なぁ」
組合へと本日遅めにやってきたクロウの目に入ったのは、疲れ切った大勢のバスターであった。
黒子のような装いの人々も混ざってぐったりしていることから、死体処理部隊もてんてこまいらしい。
「お前さぁ、トパーゾンって…見たことある?」
「トパーゾン?うーん……」
ゲーム世界の当事者といえど、全てを覚えているわけではない。
聞いたことがあるような気はするため頭の中を巡っていくものの、答えは中々見つからない。
「ほら、やけに硬くて赤い石の!」
「うーん……あ、あのネズミみたいな」
「そうそうそうそうそう!!」
クロウがその補足で朧げに姿を幻視すると、まさしくそれだと過剰に素早くYESを連呼する。
「ほら、掲示板にもあるだろ?そいつから出る素材を取れって」
「え?どれ?」
「ほら真ん中にデカく貼って……ンほら!」
今度は自ら掲示板へ向かい乱暴に手配書を分捕り見せつける。少し苛立っているようだ。
「ん……“トパーゾンの宝石”の調達、できるだけ多く?」
・「トパーゾンの宝石」の調達
防壁に対し攻撃を行う魔獣が増えてきたことで、修理を兼ねた改修が計画されています。
そのための素材として、高い防御能力をパッシブスキルとして付与できる「トパーゾンの宝石」をできるだけ多く回収・組合へ納めてください。
報酬として、当該素材を通常の倍の値段で買い取らせていただきます。
(理由が理由なのでできるだけ優先を!)
「ああ。組合長からもできるだけこれに専念してくれと言われていてな」
標的を教えるイラストの代わりに「赤い宝石を付けたネズミ」「大きさは大人の膝ぐらい」のような外見的特徴が文字で記載された手配書。
全てが他の手配書よりも大きく、目立たせようとしていることがはっきり分かる。
「それだけ重要なのか……」
「いんやお偉いサンの考えてることァよくわかんね。なんつってな」
「それ言ってみたかったの?」
「半分はな。だが愚痴りたくもなるぜ?コイツは」
クロウは、首を傾げた。
「いいか?又聞きにはなるが……“0.5%”だ」
「れーてん…ご?」
「トパーゾンは非常に、ひっじょォ~~~~に見つかりにくい魔獣だ」
彼の強調の仕方から、そのトパーゾンなる魔獣が相当なくせ者であることが見てとれる。
他のバスターがぐったりしているのも、そのためだろう。
「コイツにはプレイヤーたちも相当手を焼いてたらしい。とはいえ全員が求めていたわけでもないから、情報は集まり辛かった」
「覚えがないなぁ……あ!そんなに苦戦しなかったからだ」
「んだとォォォォォォ!?」
「うわっ」
運がいい人というのはいる。どんなに確率の低い事象でも、連続して起こってしまう可能性を否定することはできない。運とは、天命とは、因果に結びつけるものではない理不尽な運命とも言える。
確率に支配されたこの手の話には「他人が入手に嘆くほど苦戦する高レア度アイテムが1度に2個以上出た」のようなものが付きものだ。
「お前っ……“前”のことだとしても禁句だろうがよ……!」
「ぅ、え?そんなに?」
そしてそれはクロウを駆るユウのことでもあり、そのため印象が薄かったのだ。
それを聞かされた話し相手は、嫌味のように受け取り血相を変える。
「トパーゾンは、どこでも魔獣1回倒すたびに約0.5%の確率で出現という判定が行われる。それがプレイヤー様方の出した結論だ」
「そんなに……」
「更に、組合長が言うことにゃ索敵班に支援を要請したそうだが着く頃には全く別の場所でぶらついてるのもザラだ」
「そりゃ動くよ」
「常時高速で位置を変えてるから捉えきれない、だとさ。というか、目を離した途端フォングレストからフシュケイディアの方に瞬間移動してたって」
「嘘だぁ」
セレマとフシュケイディアは大陸の対角線を結ぶ位置関係にある。
セレマ近郊のフォングレストからともなれば百㎞千㎞にも及ぶ大移動になるが、それを魔獣とはいえいち生物が瞬間的に移動するなど特別な力でもなければ考えにくい。
「言い過ぎにしたって、そう錯覚するぐらいにはあるってことだろ」
「うーん」
あらかた情報を受け取って思うことは、スピードさえあればどうにかなるという印象であった。
流石に瞬間移動の噂は信じ難いが、つまるところ0.5%の出現確率がその速力によるものだと世界が解釈したのなら話は速い……。
「行ってくるよ」
「吉報を待ちくたびれさせてもらうぜー幸運ヤロー……」
「行ってらっしゃいませー」
臍を曲げたバスターと受付係クリケに見送られたクロウの向かう先は、セレマより遠く離れ大陸南西フシュケイディアと南東シパンガの間の土地。
まだ名前の付いていないこの場所は、狩場や採集場としての需要の低い区画の一つ。
ならばこそその魔獣は逃げず狩られず居続けるのではないか?という単純な発想である。
言うなれば……
作戦一!
誰も行かないような場所を探せ!!




