第15話「黄金のかたち」 Part9
これにて一件落着。
越奥は全てを認めコウシロ屋の玉座を降ろされることとなった。
クロウらの目的であったアークとの繋がりの調査も、越奥を問いただすことで達成された。
「あんな不気味な男でも、研究とやらで色々入り用になるってね。それ以上でも以下でもないですよ」
コウシロ屋は単に商売相手としか見ておらず、アークからも良い調達先という印象しか持たれていないようであった。
任務として訪れたが故に何か巨大な陰謀が隠されていると思わなかったわけではないが、全く拍子抜けの結末。
しかし自分から見物に来ておいて刺客が撤退すると怯えて逃げようとする、そんな黒幕ではそうとしかならないだろう、と彼女らは却って不思議なほどの納得を得るに至った。
「それで、報酬ですが……こちらお納めを」
「わわ、こんなに」
クロウとナノハは次郎の護衛依頼の報酬として金貨を受領した。
それも1枚や2枚ではなく、手のひらほどの巾着袋にたっぷりと、である。
「都市庁までは行かなかったけど、いいの?」
「契約の3倍の金額です。それと、こちらも……」
次郎は続いて、赤く輝く宝石のようなものを差し出した。
「わわわこれエクストーンじゃん!しかもなんか綺麗!」
「貴重なものでしょ、貰えないって……!」
「実のところ、余っているのです。今も需要はあり、貴重とも言われていますが、PC……と呼ばれるバスターの皆様がよくお支払いになったもので」
「そ、そういうものなのかな……」
課金通貨及びその無償版、どちらにせよ使う先はある程度限定されていた。
その結果希少鉱物はどこの店でも溢れ、希少と言っていいものか怪しくなっているという。
「金貨30枚、エクストーン15ct2つ分……。誠に勝手ながら、この量の増額が妥当かと判断致しました」
「ほら、父上もこう言ってるんだから受け取んな!」
「芋煮子、お前もその“色々”の一部なのだからな」
「う……そ、それはそうでしたぁ」
「ふふ、考えた通りには行かないね」
信国とその供は越奥への宣告後都市庁に戻り、それから顔を見せていない。
しかし、去り際に芋煮子へと密かに託した言葉があった。
「それにしてもあの爺さん、『すまぬ』って……なんだったんだろうなぁ」
それは一般に謝罪として使われる一言であった。
信国はむしろ次郎らを助けた側であり、全てが終わった後わざわざその言葉をかける理由は思い当たらない。
実は都市元首だったという隠し事のことも、その時を待たずに謝ったはずだ。
「こら、あの爺さんなどと……」
「ま、まぁまぁ」
次郎は国の頂点に立つ人物のことをそう呼んだことを叱ろうとするが、ナノハに止められる。
「……もしかしたら、自分の不甲斐なさ……かも」
「クロウ殿まで…!」
「まぁまぁまぁまぁ」
シパンガは階層社会の要素も取り入れて作られた都市だ。
それはつまり格差社会と呼べるもの、その闇はこの都市に訪れた際に垣間見ている。
荒れた道、粗い外見の施設、治安に不安の出る薄暗い雰囲気。
何か手掛かりがあるかと入ったはいいが実際のところ、その妖しい雰囲気から無意識に歩く速度を速め、大して探索せずに地上に出てしまった。
芋煮子と過去に遭遇したということから、城下へ視察に出てはその鬱屈とした空気を信国自ら浴びていたことは想像に難くない。
「だから、どんな人でも関係無く取り込もうとした芋煮子に、感動したんじゃないかな」
この世界は現実世界の人々によって造られた。各地に為政者が配置されようとも、後から生えて来た彼らが共同体の根源にあるわけではない。
しかし、信国は強い正義感のようなものを持っていた。
だからこそ、やさしい人ほど鬱になりやすいと言われるように、信国はこのような社会を抱える為政者として責任を感じていたのだろう。
そう、クロウは推理する。
「あっしはねぇ、いつか下も上もない、みんなが肩を並べて暮らせる都市にしたい。他の都市から来た人が言うんだ、ここは色んなものが混ざってるなって。ならさ、混ぜて混ぜて全部混ざった、誰が見ても輝く黄金郷に……!」
――“ジパングは黄金の国”、そう語った旅人がいるという。人は大陸に寄り添うように浮かんだ島国に溢れるほどの黄金という幻想を見た。
実際はそのような極端な金色に非ず、更にはそう語った旅人もその島国を直接見たわけではないとされる。
しかし火のない所に煙は立たない。その島国には確かに黄金に彩られた殿堂があった。
よろずや目耳所は未だ見ぬ黄金の国の、その発端にして煙立つ火元となるだろう。
天を衝く摩天楼の陰を払い、仄暗い地下街からも黎明を呼び起こすように。
「あ、こりゃあウッカリだ!」
「ハナがその役なの?」
「あー!やっぱり知ってんじゃん!」
「で、どうしたの?」
「テンプラ……食べてなぁぁぁぁい!!」
「はいはい、じゃあちょっと遅いけど行こうか」
「わぁーい!黄金の衣ー!」
~第15話「黄金のかたち」~
――――――――
悪徳商人:「ハッ!?ままままさか!?」
御家老:「もしこれでも足りぬなら」
駄目押しと言わんばかりに、今度は供の二人乾と笹原がお守りのようなものを取り出した。
供1:「この印ろ」
悪徳商人:ああああああそれはダメですってええええええええ!!
菜の花:どう思います?
見聞録:ありきたり!3点!!
悪徳商人:何が!?
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ストック出しきっちゃったー頑張って書かないとなぁ・・・
というわけで異世界モノあるあるの日本風の国編でしたとさ。
・・・日本・・・風・・・?




