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第15話「黄金のかたち」 Part6

 さて直訴のために先へ進む一行だが、難関はすぐそこにあった。


「ねぇ他に何されてたの?」

「商品に直接文句付けてこられたり」

「うわー割とフィジカル」

「汚されたこともあったなぁ」

「よくタイホとかされないね!?」

「それだけ強い連中ってことなのよ」

「さてお二方」


 過去のコウシロ屋の悪行を訊いていたナノハと答える芋煮子を横目に、作戦開始5分と経たずに現れた第一関門。


「このシパンガでは“下層”と“上層”、さらには“中央”までも分かれているのですが」

「う、うん」

「上層と中央の境界はこの、関所で隔てられております」


 目の前にはまさしく大きな関門。

 駐在の兵士はこの都市の軍部か、周囲の被服文化に合わせながらも層の上位や治安維持機関に在ることを示すような立派な刀や陣笠を携えている。


「許可がいるのか……」


 関所と聞き、これを突破するアイテムがあるだろうかとウインドウ倉庫をまさぐる。

 大切なもの、と区切られた箇所にそれらしきものを見つけ、取り出す。


「通行手形はこちらにあります。ですが貴方方が通れるかは」

「これだね」

「私もあるよ!」


 証明書のような一枚紙を両名示すと、その内容は中央区域入場の許可と読めた。

 過去の世界ではシパンガ外の人間も中央部に入れるよう入手手段が用意されていて、二人共それを当然と消化していた。


「おお、ならば大丈夫でしょう。芋煮子は私と」

「おうよ!」


 かくして最初の壁は文字通り突破、駐在は良しと厳しくも快い一声を挙げ部下に門を開けさせた。



「む?」


 と、駐在は鳴り始めた構造物に注意を向ける。

 掴みやすいその一部を手に取り、両端を其々(それぞれ)耳と口にあてる。


「……はい、なんですと?では…………はい。承りました。はい」


 何かあったのかな?

 クロウがその様子に気付くと、駐在はすでに門を通り過ぎた一行を見据え、人を集める。


「あの」

「どうされました?」

「嫌な予感が…します」


 果たしてその予感は的中した。


「……御用だ御用だ!!」

「御用だ!」

「御用だ!」


 御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ御用だ


「な、なんだ!?」


 先程の駐在が付近にいた人々を伴い一斉に追いかける!全員「御用」と太く書かれた提灯を提げ、駐在は提灯の他刀身にL字が付いた小型の武装“ジッテ”を掲げて急襲だ!


「追ってきてるぅ!?」

「よくわからないけど、早く行こう!」

「う、うむ!」「ひぇぇっ!」


 恐ろしさすら感じさせる怒涛の波に一目散、シパンガの中央へ最高速で駆け抜けんとする。


 関所を越えた先は地下通路の他外周に近い部分を覆う荒れた“下層”、赤絨毯の如く防壁と繋がる道を含んだ活気ある中間地帯“上層”、それらとも違う第三の世界が築かれていた。

 シパンガへ入場してはじめ、遠目に焼き付く近未来の楼閣。その整備された道を彼女らは懸命に駆けていく。


「御用だ御用だ御用だ御用だ!!」

「しつこい……!」

「戦う!?」

「みな様こちらへ!」


 謎の声が一行に呼びかける。

 ほぼ反射的にその方向へ進路を変えた一行の後には偶然か、行列が通りかかった。


「いや~もうすぐ限定あんこ餅が食べられるのね~~」

「私なんかもう3日待ちだったのよ!」

「整理券は持った、お金もあるし、大丈夫!」

「今この時の為にお腹空かせてきたんだから!」

「今日何時間待ちでしょ……」


 やけに譟然(がやがや)と通り過ぎる群れは行く先を眩ませ、一般人を巻き込むことを是としない民間協力の追手は見事に立ち往生となってしまった。


「ええい皆の者、探せ探せ!」

「御用だ御用だ!!」


 そして行列が過ぎる頃ともなれば空しい再稼働、目標とは見当違いの方向へと集団のまま闊歩し続けていった。



「……どうやら撒いたようですな」


 渋い男性のひと声。それは依頼主である次郎の力強いものとは違う(しわが)れた、老人の声。

 お供に刀を提げた二人組を引き連れ、一行を庇うように前に立つ。


「あんた、いつかの……」


 芋煮子は、その人となりに反応する記憶を持っていた。


「おや、久方ぶりだのう?お嬢ちゃん」


 そしてそれは相手も同じであった。


「そんなに離れてないやい!」


 おそらくはたった一度のみの邂逅ながら、それでも互いに通じるところがあったのだろう。

 芋煮子は良き旧友と再会した喜びを含んだように言い放った。


「おおそうかい?だがその元気な様子は覚えておるぞ」

「あ、じゃあさっき言ってた相談したい人って!」

「ほう、相談とな」

「ああっ、いや!なんでもないなんでもないんだよっ!」

「芋煮子、この方は…?」

「シー!この子らの問題なの!」

「はぁ」


 かつて芋煮子に声をかけた謎の人物。

 彼が今目の前にいると思うと、一方的なお願いであることから遠慮するようになってしまう。


「言ってみなさい。言うだけならばタダと言うでしょう?」

「で、でもねぇ……そんな…こっちから……」

「あの日見た心、覚えておるよ」

「え……」

「困っておられるのでしょう?この老体でよければ力になりましょうぞ」


 老人は今目の前にいる、厄介事を抱えた少女を受け止める気でいる。

 その寛大なる助勢の意志に芋煮子は話してみることに決めた。



「――ふむ。コウシロ屋ですか……」


 なるほどそれは面倒だと感じていそうな重い相槌。この人物もその屋号を目の上のたんこぶと思っているだろうことが聞いてとれる。


「それで、父上やこの二人と直訴に行こうって話になったんだ」

「ほう……では我々もお供しましょうか?」

「はぇ?」


突然の提案に、芋煮子から素っ頓狂な音が抜け出た。


「この共の二人はバスターではありませんが、魔獣とも戦える実力者……何かの役に立つでしょう」

「し、しかし貴方方を巻き込むことに……」

「旅は道連れ世は情けと言うではありませんか。何、私の方も用がありますから……“進む道は同じ”、ということですよ」


 芋煮子以外面識のない老人が、屈強そうなお供2人と道連れに加わる。


「私のことはどうか大田(おおた)と。この二人は(いぬい)と笹原」


 それも、巻き込んでしまうという次郎の心配に対して危険は承知と言わんばかりにだ。

 この迷いの無くはっきりとした、物腰柔らかなようで(まさ)しく大物たる様子からナノハは改めて思った。


「な、何者なんだろうこの人……」


 こうして思いもかけず7人の大所帯になった一行は、再度都市の中心へと歩を進めるのであった。

最近、書いてるとなんか、前回の話を一部引き継いで再構築してるように錯覚する件

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