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第13話「ストレイ・アストレア」 Part6

「“観察眼”、それと“カン”……お前は自分の主に頼り切りだったと考えていただろうが、実際はそうじゃない」


 シアーズさんがそう教えてくれた。


()()()()()中で自然と身に着いていったんだよ、お前の主の生き様ってモンがな」


 そして、「ああ」と肯定するように呟いて。


「操られていたんじゃない」


 そう付け加えた。


「お前はずっと…一緒に戦っていたんだよ。お前がすごいと思っていた、一心同体の相棒と」


 僕は、僕を作った人と同じにはなれない。


 でも、少し、全部を誇りに思えたような気がした。


「それがお前の強さだ」



 トレストレスは消滅し、僕達はようやく落ち着ける状況になる。


 ふにゃりと気が抜けて座り込んでしまう僕を、シアーズさんは「やったな」と労ってくれた。



「やったな」

「やめてください、二度も言うなんて……」

「おい」

「やったな」

「そんなに言って、急にどうし」

「敵だ!!」


 ハッとしてシアーズさんの方を見るとそこには誰もいない。そのままもう四半回転をかけるとそこは火花散る鍔迫り合いの真っ最中だった!


「そうだ、お前はオンリーワンのボスじゃあない。単なる雑魚敵の一人だったな……!」

「敵だ!!おい」

鸚鵡(おうむ)返しじゃッ、強くなれねぇっての!」


 本物のシアーズさんが力で弾き返した!


「…マズい」


 ぶん、ぶんと剣を振り回す偽物。それを見て冷や汗を浮かべたシアーズさんはもう一度向かっていった。


 援護しなきゃ、でも駄目だ間に合わない!


「撃たせん!!」

《!!!!》


 炎、雷、水、突風。その全てが一挙に押し寄せたような凄まじい一撃。今度は4人全員が吹き飛ばされた。


「シアーズ、さん……」


 沼に落ちる直前でイーフォさんが凍らせてくれたから沈まずには済んだ。

 同時に、もっと力があったらこうはならなかったのかな、と最初の想いに逆戻りしてしまう。

 一番前で攻撃を受けたシアーズさんは気を失い、イーフォさんとウアトロさんもへたりこんでいる。

 戦いが終わったところに不意打ちのように最初から強大な技を打ち込んできた相手に対してもうなすすべもない。


《俺も加わるか》

(そんな、ここまでやって、こんな)

鸚鵡(おうむ)返しじゃッ、強くなれねぇっての!》



 シュッ――


「……?」

「…………」


 ほんの少し、風を切る音がした。



「あ、あなたは……」


 その人は後ろを確認し、少し言葉を入れてから姿をくらました。


「クロウ。ちょっと気になって来た」


 次に目が捉えた姿は、別の魔獣…おそらくは騒ぎに気付いて訪れたそれらを、途轍もないスピードで倒していくところだ。

 最小限の動き、最小限の攻撃、そして最大限の速度。いや、本当に限界の速さかは僕には分からない。



「そこっ!」「【アサルトピック】」「……」「終わりっ」


 斬って、刺して、無言で蹴って首が飛び、そしてすれ違いでまた斬ってしまう。

 各動作1体ずつ仕留める確かな技、それらを繋げる“舞い”は美しい……というよりは強制的な方向転換。瞬きで見逃したんだろうかと錯覚するような不思議なコンボだった。


 そして最後に終わりと締めたはずが、また新たにトレストレスが現れる。


《!!!!》

「させない!」


 トレストレスに主導権を握らせない方法、その答えを単純明快に示す。

 そう、真似られる前に倒せばいい。それこそ真似できない方法に見えるけど……。

 とにかく、やってしまった。この人は、颯爽と現れて、圧倒的な力で。僕達を助け敵は殲滅……。


 外されていた外套から現れた、カラフルな装甲が僅かな光を反射する。

 一通りの事を終え立ち止まったその人の姿は光度よりも輝いた。



「……すごい」


 それしか、言葉は出なかった。



「……っく、お前ら…ん?クロウ……?」

「シアーズ、無事?」


 直後目覚めたシアーズさんが、やってきた助っ人…クロウさんと顔を合わせる。どうやら知り合いみたいだ。

 シアーズさんは辺りを見回して何があったかを悟り、無事かと小さく呟くと次に感謝を述べた。


「助かった。完全に後手に回っていた」

「トレストレス……厄介だったみたいだね」

「お前と……こいつのおかげでどうにかなった」

「えっ…」


 シアーズさんが改めて労ってくる。

 それに驚き情けない声を出してしまい、だけど構わず褒めてくる。


「判断力、応用力、精度も。どれをとっても優秀だ。いや、それ以上だな…。連れて来た俺が引っ張らなきゃならないのに、その俺ばかりがこのザマよ」

「そんな、僕は、シアーズさんとシアーズさんの従者の方が」

「はいはいそこまで」


 少し、謙遜合戦になってしまったのを見ていられずに止めるクロウさん。いつの間にか、最初は付けていた外套を纏い直している。


「ところで、探索の具合は?」

「まぁぼちぼちだ。欲を言えばもう少し別の場所も見たかったが」

「そう……まずは帰ろうか」

「お前の方はいいのか?ここまで来るってことは何か用事があったんじゃないか?」


 そういえば僕も気になっている。

 タイミングの良すぎる救援は何らかの理由があるんじゃないか?そもそもここは、“大体の把握でいい”という探索任務が残ってしまってるような場所だ。

 恩人のはずなのに、どうにも疑ってしまう。


「むしろ早く終わったから帰ろうとしてたんだけど……なんか大きい犬みたいなのがいたから」

「……ウアトロとイーフォを見かけたのか」

《??》

《??》

「ちょっと気になって付けてってみたらシアーズが」

「お前ら気付いたか?」


 ……返事はなかった。

 2匹とも目を泳がせている。表情に表れやすいんだろうなぁ。


「途中で見失ったから迷ったけど、魔法か何かの衝撃が凄かったから様子見に来て現在」

「なるほどなぁ」

「というか従者でしょ?何で別行動してたの?」

「ちょっと、な?」

「んん?」


 シアーズさんの、少し含みを持った物言い。

 たしか後方警戒のためだったはずだけど……本当なのか怪しく感じてきた。


「ま、そういう訳だ。とにかく帰ろうか…あんまりここには居たくない」

「それは同感」



 組合に戻るとまず探索の報告をシアーズさんがする。

 クロウさんも一緒に……というわけではなく。

 シアーズさん(…と僕…)が倒した魔獣と、クロウさんが道中倒した魔獣。その死体の処理のため、死体処理部隊の護衛としてあの沼へとんぼ返り……僕達に気を遣ってくれたんだろうけど、出発の瞬間はさすがに嫌そうな顔をしていた。


「悪い、やっぱお前も要るわ」


 僕はもう要らないかなと思っていたら、僕の協力した部分が多かったとのことで、今後の調査について僕の意見までも欲しがっているという。

 道中受付の人に挨拶を一言だけ送りながら、シアーズさんの案内で長めの会議へ詰め込まれるのだった。


「……ふふっ」




42日目 晴れ


 今日もアストレアさんが組合に来ました。

 クロウさんにどうすれば強くなれるかと聞いて、困らせていました。

 シアーズさんいわく今のままでも十分だそうですけど、それでも退かなかったのを見てちょっと横やりを入れてしまいました。




「こんな依頼が来ています。みなさんどうですか?腕試しにいいと思うんです」




 3人で出発して、すぐにその依頼を終え、また2人のように強くなりたいとお願いして、用事を作って解散。

 でもこれってきっと、アストレアさんが強い人だと認められてるんだろうな。

 何があったのかまではわからないけど、今のあの男の子は、とっても真っ直ぐで、シャキッとしてるって思うんです。






 あ、そういえば。昨日ボロボロになっていた評判の悪い数人のバスターが、なぜかシアーズさんに突っかかっていたけど、野良かな…?外から迷い込んだ子犬に声をかけられてぴゅうーって逃げて。

 職員としては不適切だけど……ちょっと痛快だったかな。


~第13話「ストレイ・アストレア」~


――――――――


20日目 晴れ


 以前気になっていた男の子が他の人達に絡まれていました。

 でも、いじねるをされているとかではなくて、頼りにされているような感じでした。

 たぶん、彼は椀のいいバスターなのでしょう。見かけだけでは実力は則れません。

 でも本人は迷惑そうで、萎宿しきっていました。まるで少し前のバスター達のように。

 誰も邪剣には扱ってないから……大大夫かな?



受付:すみませんこれ書いたの誰ですか


――――――――



主人公が最後ピンチの時だけ颯爽と現れて、その回のメインを張るサブキャラに「・・・やっぱりすごい」とか「敵わねぇなぁ」みたいなこと言わせるのいいよねってコンセプトで作った回だったり

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