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第13話「ストレイ・アストレア」 Part5

一人称形式だから本人いなくなったら地の分無くなるのでは理論

「っ、“おおなみ”か!イーフォ!!く…大丈夫かァ!?範囲の分弱化したはずの技…いや、仮想敵の問題か……」

《ウォゥ!》

「無事そうか……さぁかかるぞ!おぉぉぉぉっ!!」

《……》

「その“型”ならァ!!」

《……!》

「隙の少ない突きには対応できまい!」

(少しは慣れてきたが硬さもあるか……キビシイな)

《バオゥ!!》

「強化魔法…!よし、“ひうち”!!」

(物理的な強化だがまずは払い……)

「てェー!!」

(火球を飛ばす!それに紛れて…)

「貫け“つのしま”!!」

《……》

(つ、つのしまを合わせて……剣先で搗ち合った!?)

《アォォン》

(イーフォの《轟雷衝》!あの雷球ならば!)

「形が…マズい!!」

(“すおう”の構え、あれは魔法を跳ね返す!速度特化の“しまかぜ”で間に合うか…?)

「うぉぉぉぉぉ!!」

《!!》

「ご一緒するぜ!」

《ウォォォォォン!!》



(……組みついたまではいいが、流石に中・長距離攻撃を得意とするイーフォの魔法をこの距離で食らうのはキツいな……で、俺がまだ生きてるってことは)

《……!……!!》

(コイツもピンピンてなわけだ)

《……!!》

《アォォォォォ!!》

(アイツに倒れるとか怯むなんて概念は無いのか?形を変えて隙無くイーフォに……クソ……ウアトロ、何してる?俺を治すよりもまず攻撃を……)


「【フロスト】ぉ!!」


 着いた。ここが目的地だ



(――あそこの鉱石が今作ってる防具に必要なんだ)

「【ダイヤモンドボディ】……」

(――強化魔法の効果高めるんだっけ?)

「それっ!」


 まずはさっきの鉱脈の傍に転がってた尖った鉱石を、【フロスト】で鈍らせた相手に防御魔法で硬化させてぶつける。


「刺さった、だと…?」



 僕には強力な攻撃のスキルは無い。


(――イヤセモドキ:薬草であるイヤセ草に似ているが、何の効果も無い。驚くほどの辛さが嫌でもそれを気付かせてくる。)

「これっ!」


 その代わり武器や魔法だけに縛られない戦略で勝つ。


「なんだ……?痛がっている、のか?」


 すぐに接近して刻んだイヤセモドキを顔に押し付けた。

 辛さを感じさせるならと思ったけど、効いてよかった。顔を構成する器官を引っ込む前に叩けたみたいだ。



「イーフォさん、今のうちに!」

《クルルゥ…!》

「シアーズさん、これを!」

「! これは……木片……違う、縄張りの印?」


(知ってるかい?この印は他の魔獣が嫌う匂いを放ってるんだ。だからゆっくり休めるぜ。…付けた本人が来るまではだが)


「少し狙われにくくなるはずです!」


 本当は僕が持とうと思ってたけど、シアーズさんが危険そうだったので渡す。

 目の前にその避けたい敵がいる以上確実とは言えないけど、無いよりはきっといいはず。


「背中を押しさえすれば、か……」



 イーフォさんの電撃がトレストレスを灼く。さすがに僕の攻撃の力では倒しきることはできそうにないので素直に仲間を頼る。

 そしてただ頼り過ぎることもせず、僕は僕で「やれること」をするんだ。


「ウアトロさん、これに回復を!」

《!? アウ!》


 丈夫そうなツタを短剣で切り離して、木に絡みついている方を持ってウアトロさんに頼んだ。

 一瞬驚いたようだったけどすぐに回復を使ってくれて、ツタはすぐに伸びていく。

 多分根っこは地面だけど伸びてくれてよかった……!


《……》

「こっちだ!」


 イーフォさんの攻撃が終わったところで、注意を引く。……少し反応したけどイーフォさんに向かったままだ。


 でも、その一瞬のおかげで成功した。

 想像以上に長くなったツタを鞭のように振るって巻き付け、離れないように【フロスト】でくっつける。これで動きが制限される。


 トレストレスはもがくけど木に強く貼りついているツタは中々剥がれない。

 なんだったらツタに備わっている吸盤まで再生して、トレストレスに対し貪欲なまでに吸い付いている。

 でもこのツタは普通の植物、ちょっと力を強めれば剥がれるし、千切れもする。

 そうして千切られ拘束は解けた……瞬間にほんの少しよろける。


 ……この作戦は本当に綱渡りだった。

 もし、変身を利用して抜けられたら。ナオセモドキの刺激性が通用しなかったら。いや、もっとそれ以前に、僕自身が速攻にて狙われていたら。


 でももうそんなことは考えていなかった。

 必死だったというのもあるだろうけど、大きかったのは“自分を信じること”ができていたからなのかもしれない。


 つい数時間前まであんなに卑屈になっていたのが嘘のように、ここまでこれた。

 シアーズさんが背中を押してくれたから?実戦は思っていたよりも順調に流れるものだったから?

 それらが理由なのか?じゃあこのいやに溢れている自信はなんなんだろう。僕にはなぜか、――未来予知とかの類では決してないと言えるけど――こうすればこうなるという“道筋”が見えていた気がした。



「だぁっ!」


 体勢の崩れた僅かな隙を狙って、思いっきりタックルを仕掛けた。

 足腰はコピー対象に似て強かったんだろうけど、隙があるなら別。全体重を仕掛ければ大きく動かせる。そして……


(バシャアン!!)

「はぁ、はぁ……」


 トレストレスを沼に落とすことに成功した。


《!! ……? …!!!!》


 トレストレスは僕に反撃しようとするけど、届かない。この展開はなんとなく予想できていた。


 ここは沼は沼でも“底なし沼”だ。

 藻掻けば藻掻くほど沈んでいき容易くは出られない。たとえそれが魔獣や、バスターであっても。


 二の腕より上が水面から出ている辺り、底なし沼を作っている泥は体積自体はそこまででもない。

 でも“最初から最後まで完全に動きを真似る”ただの真似事を封じるのには十分だった。


《…!!!!》


 強力な魔法、強力そうな火の玉。

 でも、動きが封じられ一か所に留まっている分見てからでも避けられた。


 後で知ったことだけど、使える技が多い人をコピーすると、その技が多いほどフルに使いこなせなくなるデメリットがトレストレスの変身にはあるらしい。

 よく使う技ほど彼らも使い、こういう危機を脱する術がもしあってもそれが多用されない技だったなら早々に諦めてしまう。シアーズさんは主に接近戦を行うからマジックスキルはあまり使わない。

 足元に何かを撃ったり強化のマジックスキルで脱出するだけの応用まで考えないトレストレスは……表面の形を変更し、少し縮むような動きを見せる。


「……あれって……」


 その姿は、僕と同じに見えた。

 まさか、シアーズさんよりも僕のことを脅威と思ったのだろうか?それで、真似しようと。

 そう考えると妙にくすぐったい。でも……


「僕は、僕自身は弱いから」


 トレストレスの模倣は相手の技の全てに及ぶ。

 だけど僕は、“スキル類が最低限”のバスターだ。持ち物や周りのものを柔軟に利用して戦う。


 それを今更真似したところで、もう一度沈み直すだけだ。



「みなさん、お願いします」

《クルゥゥ》

《アォゥ》

「俺も加わろう」

「もう大丈夫なんですか?」

「ウアトロはサポート特化だ。すぐに治してくれたよ」

「頼もしいです」

「ああ、本当にな」



 そして、この“トレストレスの沼”に大きな衝撃波が立ち昇った。

ああああことシアーズの技は、彼のプレイヤーが護衛艦の名前を元に作り上げたという

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