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第12話「亜人ラプソディ」 Part4

「誰にもつけられてないよね?」

「も、もちろんだよ。なぁ?」

「どっからどう見ても兄弟みたいでバレるはずが無ぇ!」

「親子の間違いでしょ?」


 はたして怪しい一団をその先に見つけたクロウ。

 彼らはもぞもぞと動く袋を所持しており更には嫌がる子供まで連れている。



「だけど本当にこれでイッパツ・ドカンと稼げるのか?買い手はどこよ」

「まーいるでしょうよどっかに」

「ハァ!?なんにも考えてねーのかよ!!」

「わっ」

「うるさいわね!見つかったらどうするのよ!!」

「声大きいって……!」


 陰に隠れている中でクロウは彼らの声に聞き覚えがあることに気付く。

 1人は初聴きだがもう2人は別々の場所で接触した加害者だった。


(何でこんなことができるんだ……もしやあの僕に罪を着せたのも?)


 唸り声を上げてしまいそうなほど煮え返る(はらわた)だったが、どうにか抑えて次の手を考える。


 恐らく彼らはバスターだ。首謀格は会話している女性だと考えられる。それぞれ別々の場所で見かけたということは、他にも仲間がいるかもしれない。


(……もしかして今か?)


 群れたバスターは厄介だと先日思い知らされた。ならば集まる前に……という所でつい感情に従ってしまう。




「…………」


 つい、やり過ぎてしまった。

 とはいえ殺しはしていない。何らかの“タガ”が外れてしまったのだろうかと疑いたくなるほどの高速移動による格闘制圧。

 超音速だろうと周囲に被害を与えないという都合のいい装備効果だが、あまりに感情が昂ると自身と周囲両方の保護効果が高まり過ぎて逆に攻撃能力が下がるようだ。


 その裏効果を狙ったわけではないというのが本音で、固まってしまった立ち姿とは裏腹に心臓は危なかったなと言わんばかりに強く鳴り響いている。


「おい、お前つけられ…お前ッ……!」


 仲間が集まってきたらしい。倒れている3人を見た男が襲ってくるものの、


「セイッ!」


 …の一言で倒してしまう。まるで芸人のツッコミだ。


「……もういない?」


 バスターのグループだからと警戒すれば、クロウには対応できずに倒されていったのみ。

 こんなことに手を染める、だから弱いのか?とも思ったが、まずは怖がっている亜人の少年を落ち着かせる。


「大丈夫…だった?」

「……うん……」


 今回は逃げないようだ。とりあえず頭を撫でようとするが、拒否される。


「やめ……」

「ご、ごめん。ちょっと撫でようとしただけで」

「うぅ、触られるの苦手なんだよ……」


 改めて少年を見ると、特に何も変わった部分は無いように見える。

 しかし額には短い角があり、それは皮膚の変形などではなく他の動物のような骨であることが見て取れた。



「おねえちゃん」

「えっ!?」

「違うの?」

「あっ、いや…うん、聞くよ」


 今日は妙に初見で男と言われるため一発で女性と理解されたことについ吃驚してしまったが、速やかに落ち着かせ、話を聞く。

 この状況で自分が困惑してもしょうがない。


「あの袋、女の子が……」

「え?」


 指差す方には巨大な袋がある。大きさも確かに子供がスッポリ入りそうだ。

 いやそれ以前に、声になっていない声を上げ袋が大きく歪む暴れ方までしている。


「わかった!急いで出さないと…」

「てめぇら今だ!!」


 その声を出したのは誰でもない、今助けたはずの亜人の少年だった。


 合図と共に現れた“てめぇら”も亜人であり、各々自分の変異部位を活かした戦法で襲い掛かる。

 ……が、要はバスターではなく戦闘経験も少ない数人が一斉に飛び掛かっただけ。

 真上に飛んで、軌道を変えて、着地。要は少し位置を変えただけ。

 これだけでもう不利は無い。彼女にとってはこの程度、静止する的とあまり変わらないのだ。



「怒るよ」


 流石に驚いたが、躾けるように放ったその強い一言にリーダー以外は(おのの)く。


「ひ、ひるむな!こっちは5人いんだぞ!!」

(さっきの子供達とは別人か)


 先程の袋の方を見るとまだ音を出して不規則に蠢いている。

 囚われているには違いないが、他人がああして囮と使われているのだとすれば気分が悪い。



「助けに来たのにどうしてそうやって攻撃してくるの」


 まずは話を聞いてみることにしたが、


「バスターなんかに話すことねぇよ!」


 聴く気はないようで、一蹴される。

 面倒なことになった。亜人に襲われるなんて、亜人の子によくしていた軍曹にはなんて報告しよう……そんなことを思っていた。


「こういう時はえっと……」

「潔く死ねーーー!!」


 蛮族極まったような暴力的な咆哮にて再び食らいかかるが、これは痛みをあげなければと考えたクロウは魔法を放つ。


「ぶぇっ」

「【スペリオルアーマー】。これでいいや」


 物理攻撃の威力を大幅に軽減するバリアタイプの防御用マジックスキル。

 制限時間は5分だったが、一瞬分からせてやればそれでいい。

 小さな蛮族は硬さのある透明な壁に思いっきりぶつかってしまったがために、参ったと言わざるを得なかった。



「さて」

「むぎゅ」

「……ん?」


 しかし逆に言えば、5分ほどバリアはそのまま。

 どうやらこのマジックスキルは自力で解除できない代物だったらしい。近づこうとした相手がバリアに潰されそうになっている。


「……まぁ……その頃には皆落ち着くでしょ……」


 袋にも触れられないので、一旦小休止を挿んだ。

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