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第12話「亜人ラプソディ」 Part3

「それで、フシュケイディア、正確には中央街…ここ“メノアローグ”で起こっている問題ですが…待たせたね!入ってきて!」


 そう言われ恐る恐る入室するのは、クロウが救出に向かい、そして解放した5人の亜人だった。


「君達は……」

「この子達が貴方の無実を証言してくれました」

「そ、その……」

「逃げて、ごめんなさい」


 大尉が軍曹を諫めたのは、血が昇ったような加熱っぷりを抑えるためだけではなく、被害者側の証言を彼らから得たためであった。

 5人の少年少女は全員おどおどとしてはいるが、兵士の誰かへと勇気を持って伝えてくれた。

 その意気にはクロウも頭が上がりそうにない。


「無事なら、いいんだ」

「おじちゃん……」

「僕そんなに歳食ってるように見える?」

「ま、まぁまぁクロウ殿、子供は年上をおじさんおばさんと呼ぶものでしょう!それと同じですよ」

「一応17歳らしいんだけど……美容考えるか」


 男性と間違われるどころか“おじちゃん”呼ばわりは、美少年のような見た目に作られた少女のはずのクロウに深めの傷を残すこととなった。

 加害者の一人がクロウをオッサンと呼んだことに引きずられているのだろうが、おそらくこの後彼女は帰宅してすぐにストックへ相談をしに行くことだろう。


「さて、この子達の言う通りクロウ様は」「様付けはちょっと…」「……こほん。クロウさんは無実であり、簡単にですが現場の検証で証明されています」

「大尉、そうなると最初の証言者は……」

「えぇ。フシュケイディア解放と殆ど同時に起きた問題……端的に言えば差別思想です」




 人間の歴史は、差別の歴史でもある。


 輝かしい時代も暗黒の時代も、ヒトは常に虐げ怒るための相手を捉え続けていた。それは決まり事では決して無くならない断崖となり、ゆりかごから墓場まで続く冷笑すら引き出した。


 過去があろうが無かろうがヒトが誰しも持つ(サガ)であるが故に、解放されてすぐこの問題は露呈したのである。


「正直なところ、亜人への差別は想定していました」

「想定って…」

「あくまで私の記憶という注釈は付きますが、大変革以前に差別的な行いは為されておりません。私利私欲のために利用された記録は残されていますが、そちらの方が例外と言っていいでしょう」

「じゃあなんで今になって」

「我々がこうして自らの意思でやりとりしている。故にとしか言いようがありません」


 大尉の持ち出した分析に、彼自身が気を落とす。

 それはまるで自らが行ってきたことの意義を問うような、後悔にも似た迷いの念であった。


「亜人とは人種による差異や先天的な障碍とは違い、学者の方曰くヒトの遺伝子とヒト以外の遺伝子の両方を持って生れて来た全く新しい人間を指します。ですがそもそもヒトは、自分と違うものを中々受け入れない。それどころか……」

「…僕が見たのが、その先に当たるわけだ」

「ねぇ、クロウ…さん」


 亜人の子の一人が話しかける。


「クロウさん、僕達、大丈夫だよ」

「え、えっと……」

「だから、クロウさんは僕らなんかにかまわないで……」

「ちびっ子ども!!」


 建物の外まで聞こえそうな大きな喝。

 急にそう叫んだ軍曹は子供達の前にしゃがみ込み、目線を合わせ今度はやさしく語り掛ける。


「子供が強がりを言うものではない!素直に我々に甘えてくれればいいのだ。軍の兵士はそのためにあるのだからな!」


 少し、きょとんとなる子供達。


 目の前にはよくしてくれる大人達。正確にはクロウは成人と言い辛いが、何にせよ彼女も子供達からすれば頼れるお姉さんに違いない。

 いずれにせよ、ここは敵のいない安全な場所なのだ。


「君達は亜人を保護してる病院から来たのかい?それとも家族がいるのかい?よければ私が送ってあげよう」

「わ、わたし、おとうさんもおかあさんも見つからなくて」

「おおそうか、それならみんなに頼んで探してみるよ。それまではここでゆっくりしていくといい。君はどう?君は……」


 人は甘えられる存在が必要な生き物。先ほどまで正義感が暴走していた男は一転、本来持っていた“心”にて子供達のそれを満たさんと努力する。


「……まぁ、そんなわけです」

「はぁ」

「クロウさんはどうします?バスターがいると思われる犯人の一団の捜索、お手伝いしてくれると助かるのですが」


 ああ、色々話したのは巻き込まれた事件の詳細を伝えるだけじゃなくそういう目的ね、とクロウは考えた。


 軍はバスターの登場以前から魔獣撃退を含む治安維持に当たっていた。しかし、その戦況は苦しいものであったという。単純な戦闘力ではバスターに及ばないのだ。

 主人公の属する組織と離したかったのであろうが、それ故に軍に所属するバスターは存在しない。

 よって相手がバスターとなると対抗手段に乏しく、治安維持の観点から見ても引き入れたい思いがあるのは明白だ。



「今回だけ。僕はセレマに住んでるから」

「助かります」

「それに……」

「それに?」


 本来はとっくに帰宅していたはずの予定、ここまで来たらもう皿までと、“普通に過ごす”のお願いに併せて受け取ることにする。


「いや、もう行くよ」

「では大尉、我々も」

「そうですね。気を付けてください、相手は堕ちたバスター、何をしてくるか分かりません」


 早速、それぞれ街へと繰り出していった。




 ――相も変わらずギクシャクとした街の声、人は慣れる生き物と言うそうだが、さすがに目を離した数十分ほどの時間では変わることなど望むべくもない。


 改めて何をしてやればいいかと考えると、やり方を知らないのに教えることはできないし、落ち着かせるとか悩みを聞いてやるかとか、というとどこから手を付ければいいやら。

 なら必要なのは決められた運命や導く神のようなものだったのだろうか?しかし、そういう存在に頼るのは間違いだとプレイヤーたちが話していたのを聞いたことがある。この有様を見れば、その考え方にも疑問が湧いてしまうが。


 といったところで思索は御仕舞。いつからか自分を見つめる何かに気が付いた。

 意識すれば強い視線はなるほど刺さるように感じるのだな、と元はスキルだった感覚を振り返り立ち止まる。



「何がしたいんだろう」


 そう呟いたため、というよりは不意に立ち止まった時から、突き刺すような感覚は無くなった。

 そこそこ不快だったため次からは意識をもっと軽めにしよう、と反省点を気に留めつつ感じた先へと一気に駆ける。


 常人の走行速度で向かった先には特徴的な事は無く、着く前に移動したのだろう。そう推測する。早速意識を(軽めに)集中するが、そもそも意識がこちらへ向いてなければもう離れた不特定人物のことなど探れたものではない。


「――ッ!今の!」


 僅かな手がかり、それを彼女は聞き逃さなかった。

 微かな音はクロウの聴力ですら拾いきれずに人混みに掻き消されるほどで、半ば奇跡的に耳に入ったために全く内容が分からない。しかし、何か緊急事態を伝えるような雰囲気が含まれていた。


 それは「気のせい」で一蹴されてしまいそうなほど弱い要素。しかしヒントの乏しい現状では喉から手が出る水面の藁稭(わらしべ)、クロウはとにかく聞こえた方へと進軍していく。

ある種のファンタジー小説はいじめ描写が生々しくて、それは作者が体験したことだからだ!

・・・って言説皆で言いふらしてるのを昔某SNSで見たけど・・・まぁ、ネットにいたら参考になってしまう人らは掃いて捨てるぐらいいるよね。いじめっ子は質量保存の法則によりどこへ移動するのか・・・

反面教師って嫌なんだけどなぁ


あ、フシュケイディアって奥が広大な森になってるから意外と狭いんよね

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