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第12話「亜人ラプソディ」 Part2

どっちかというとラプソディというよりカプリッチョでは?とは思わなくもない

でも一般的な印象(?)に合わせてもいっか、とも思い

 それは、「現実である限りは」、避けられない問題でもあった。


 目のいいクロウの水晶体には映ってしまう。落ち着いてきた人々と困惑を続ける人々の間に紛れて、あからさまな暴力を振るわれている者達の姿が。


「ハナ!……は、いないんだった」


 複数箇所で起きているため手が欲しかったが生憎と一人きり、一人でどうにかするしかない。近い場所から順に巡る。



「おーい」

「急に誰だよオッサン!!」

「言い過ぎでしょ!!!」

「ったく白けたよ。いくぞ」


 いきなり不躾の極みを吹っかけられ思わず言い返したがまずは1人。


「わ、わぁ……っ!」


 被害者は逃げた。



「ねぇ」

「アンタそんな姿でお母さんなんていたの?」

「お母さん…お母さん…」

「クスクス、クスクス」

「止めてあげなよ」

「えー?いーじゃ…誰?あたしらに敵うと」


 バスターらしき集まりを捻じ伏せ2人。


「おかあさぁぁぁぁぁ!!」

「ちょっ…!」


 逃げた。



「俺聞いたんだ、変わった奴は売れば高い金になるんだと!」

「お前言ってたなぁ、作っておきながらプレイされないって。そのせいで金が…」

「離し、て!」

「おっと暴れるなよ」

「オラァ!!」

「がぁぁ!?」


 雑に3人。


「っ……!」

「またっ!?」


 やはり逃げていく。



「安全なところに行ければいいけど……」


 ここまで救出者の全員が感謝も無く即座に逃げていったため、本音は非常に寂しい。

 ただ、一時でも解放されるのならその方がいいだろう。そう自分に思い込ませて、別の加害者に絡まれる可能性を一旦外し次に向かう。



「ほら、食えって。犬みたいな口なんだからイケるだろ?」

「あ、あが……!」

「犬みたいな声!でも私の犬の方がハンサムよ。こんな“ちゅーとはんぱ”じゃないわ」


 確認できた最後の箇所。

 擬人化した犬、それか獣人と形容できる子供が、別の子供たちに何らかのゴミを口に入れられそうになっている場面。


 子供相手と言え、いやだからこそ止めなければならない非道な行い。距離を詰め、まずは話しかける。


「君達」

「そこのお前」


 声は届いていた。

 だが、それはまた別の人物の声だった。


「亜人を襲う不審者はお前だな?」


 実用性の高い制服、格式ばった装飾。

 それはバスターよりも戦闘力は低いが確かな戦闘力、組織力、歴史的設定、そして土地にもよるが厚い信頼を持つ勢力。


「ひとまず我々の詰所に来てもらおう!」


 軍の兵士である。



 彼らは警察組織としての役割も担う。そして、つまるところ民間人の通報により動くことも多い。


 衆目に晒される中、力で抵抗するわけにもいかずに連れていかれるその最中。流し目が捉えるその(カオ)は、愉快そうな笑みを浮かべる先の加害者の一部だった。




「名前は?」

「サザン」

「フルネーム!」

「サザン・エア・クロウ……」


 早速事情を聴取されるクロウ。

 相手は先程自分を連れ去った者で、長く訓練・実戦経験を積んだ兵士(という設定だったNPC)なのだろう、正に筋骨隆々の大男。魔獣を超えかねない威圧感を放っている。


「スカした名前だな……亜人を襲うなんて、なぜそんなことをした!」

「違う!僕は助けようと」「じゃあ目撃証言はどう説明する気だ!!」

「も、目撃証言……どんなことを」


 殆ど決めてかかってるような追及に見える彼の尋問に、気圧されながらも対等に話そうと努力する。

 まずは被疑の証拠からだ。


「お前が向かった所から亜人の子供達が逃げていった!そしてその場所の一つから来たグループが、ローブに身を包んだ黒髪…お前に亜人の子諸共襲われたと証言したのだ!」

「えっ……!それ、本当に言ってたの……!?」


 クロウが救出した亜人は全員逃亡した。

 加害者はそれを逆用して嘘の証言を行い兵士もそれを信じ込む。

 クロウからすれば全く酷い言いがかりでしかなく、驚きで聞き返してしまった。


「しらばっくれるな、さぁなぜ子供達を襲ったか理由を吐け!」

「そんなこと言われても……」


 精神的に後手に回ってしまいほとほと困り果てる。

 加害者の言葉は信じてこちらの言葉は聴かないというのはなんとも理不尽と、不公平さを心中嘆き続けながらどう答えようか思案しているとようやく解放の時が来た。



「軍曹、そこまでにしてください」

「大尉!しかし!!」


 大尉と呼ばれた美麗な男はクロウの側に立ち、軍曹と呼ばれた男の離席を促した。


「申し訳ありません。軍曹は…彼は熱くなり過ぎるだけで悪人ではないのです」

「え、あ、あぁ…そうだろうなぁとは思っていたけど……」


 大尉は軍曹をフォローする。

 確かに、被害者どころか亜人という人々までも気にかけてるような話し方ではあった。少なくとも、各加害者グループとは違う。


 だからこそ言い返せなかったというのはあるが、それでももっと考えて接してくれてほしいところだと被疑者は感じざるを得ない。



「軍曹。貴方が亜人のことを、それも大変革より前から気にかけていたことは殊勝なことです。しかしこう頭ごなしでは見えたはずの誤りも掠れてしまう、熱くなり過ぎないでほしい」

「申し訳ありません……ですがバスターからの証言ですので…」

「先ほどの殊勝という言葉を取り消しましょう。バスターであろうと平等に接することこそ、この現代に平和を満たす第一歩なのです。それに、この方自身もバスターですしね」

「うっ……」


 軍曹は自らの行いを後悔し、頭を下げる。

 直情的過ぎたものの真実を理解すれば素直な男であった。


「申し訳ない。真偽を決めてかかっていた」

「う、うん。分かった。もういいから…」


 二人は和解し、それを見計らってか大尉は話を仕切りなおす。



「ところで今回の事件ですが、フシュケイディアがこのクロウ様に救われて以降」

「えっ」「大尉?」


 突然の救世主扱いに二人は同時に困惑する。


「なんでしょう、軍曹」

「この女性……ん?女性?」

「合ってるよ」

「この方がこの都市を、街を解放したと?」

「正確にはバスターズ連合組合長リーヴ・エイドス氏ともうお一方が、協力して解決して下さりました。まだ各所が調査に追われているので公表されてはおりませんが、近く公に知らされることでしょう」


 今はまだ当事者と各機関の上層部のみに伝わっている情報ということなのだろう。

 しかし、公開カウントダウンに二つ名のようなものを(いと)うクロウは当然受け入れられず


「そんな恩人を私は……!」「恥ずかしいのでやめてほしいんだけど…」


 とチョット遠慮がちにお願いを託すが、


「いいえ手遅れでしょう。どうか諦めてください」


 とバッサリ斬られた。


 そして本人のうなだれ具合をよそに大尉は再び軌道を修正する。

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