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第11話「メディカル都市S.O.S.」 Part4

お?説明回か?お??(だから何だ)

「バスターの人造……」

「え…?」


 話したくて仕方なさそうという予想は的を得ていた。


「バスターとは何なのか!!通常の人類と違う点はいくつそしてどうなっているのか!!“亜人”とのより詳細な関係性は!?出せる魔法の限界は、力の限界は、何故今もウインドウを扱えるのか!?私もそれになれるのか!?興味は尽きない!!」


 ある分野に大きな関心や多くの知識があると、人によっては速やかな必要情報量の伝達や話す内に熱く興奮する等の要因から会話が早口になってしまうという。

 まさにその一例だ。


「我々がマナと呼ぶ物質感情の強まりによって膂力は大幅にそして新たな器官限界は洗脳には忠誠心を刺激極限はまだわからなしかし――」


 彼の言葉はかける熱量の勢いに追い付かず、圧縮されていくような文章の破綻を招く。



「――結論、バスター体質の人工的且つ後天的な獲得は不可能。できて亜人といったところだった」


 そして躁鬱を疑うほどに突然の落ち着き、至った結末。

 情緒不安定なその様子は二人に不気味さという印象のみを焼き付けた。


「このフシュケイディアに多数収容されている亜人、彼らはバスターとは関係が無い。しかしこの中から、もしくは私がこれから作る亜人の中にバスターと言える近似値的個体が現れる可能性も完全なゼロではないと思うと……くっ、内から湧き上がるものが、ああッ早く研究に戻らねば!!」

「【バリ矢】」


 クロウの拘束が解ける。

 正確には縛られた両手の間に小さな魔法の矢を発生させ、その縄を切断していた。


「加害しようとしないでくれ」


 クロウの襲撃に驚きはした。しかし届かない。


 彼の傍に控えているのはフシュケイディア有数の実力者のようで、拘束具の破壊を見た瞬間に動き、クロウの細い腹を抱えて見せた。


「仕方がない…治安の維持のためには見せしめが必要だ」


 そう言うと、拘束された際に回収されていたであろうクロウの剣の片方を、別のバスターに持ち出させる。


「ウインドウが無ければどんな性能かは断定が難しいが……斬首は容易だろう」

「抜けられない…!?」

「クロウさん!」

「クソッ……」


 縛っていた縄以上に脱出できない洗脳バスターの力、これまでかと焦るクロウの前には横一閃を目論まされた愛剣。


「罰を受けろ」

「とりゃああ~~~~~!!」


 ドゴォオオン!!



 突然鳴り響いた巨大な音に、全員が気を取られた。


「何だ……?」

「近い…?違う、近づいてくる……!」

「ま、まさか……」

「クロウ!!ここかクロウァァーー!!!」


 轟音はゴン、ガン、と迫ってきており、


「だらっしゃッ!」


 バッガォオン!!一際大きな音と共にクロウらの後ろの扉をブチ破る!

 ガ、と吹っ飛んだ扉(叩き付けられた人1人付属)に巻き込まれ絞り出された声も上がる。


 そして部屋の外をバックライトのように背負い


「次はどいつだァァー!!」


 ナノハ、参上。




「……」

「……」「……」

「処刑の手間が省けた」


 ここは奥に長い通路でもだだっ広いアリーナでもない。


 つまり、扉と共に倒れたのは後方から見張り反抗を阻止する敵だけではない。

 扉の射程から離れていたのがアークとその傍の2人の護衛のみだったというわけである。



「勝手に殺すな!!」


 扉と、扉をサンドする人2人を持ち上げ今度は縦に飛ばさんとばかりにクロウが飛び出した。

 ナノハの入力した速度に加算された大質量はさすがに堪えたようで少しふらついている。


「大丈夫ですか…?」

「うーん……うん」


 一方で直撃を免れたものの衝撃波に遭ったリーヴは拘束されたままクロウの身を案じる。

 そして後ろに付いていたバスターが離れていると見て


「ん……んぐ……」


 拘束を力づくで破ることに成功する。力を向上させるマジックスキルにて丈夫な拘束具を弾けさせた。

 すると即座に離れていたバスターの腹を目にもとまらぬ接近と共に殴り、ダウンを取る。


「おー強い」


その鮮やかな瞬撃に、ナノハも見入る。


「もしや貴方がクロウさんのお連れの?」

「リーヴ・エイドス…治療の魔法に長けたバスターながら、高速移動と拳術を組み合わせた戦法を操る実力者」

「アーク・ミンツ……」


 アークに苛立ちが見られる。頭をとんとんとんと指で叩き、足も同じく振動し、敵の情報を整理する。


「しかし自分か他1人のみに作用するもの以外の魔法を扱えないという弱点を持つ」

「すごく黒幕っぽいのがいるけど、アレが私を襲ったみんなのボスでいいの?」

「今まではぐれていたそうですが、大丈夫、そう……ですね」

「まぁね」

「氏名不明、大剣を振り回すことから力押し、しかし観測装置のマナ拡散量と戦力差からして奥の手が……」

「隙だらけ!」


 ガィィィン!!


 巨大な金属音と共に軌道がズレる。護衛2人が同時に防衛したのだろう、しかし2人とも鍔迫り合いともならず力負けで吹っ飛ばされてしまった。


「……受け流した。そんなのアリかー黒幕~~!」

「蛮族め……」


 アークが冷や汗を流し始める。

 予想の歯車が狂ったのか苛立ちが加速する。真横数㎝内に巨大な剣と振り下ろされてできたクレーターを見たとなれば異常なほど冷静と言えるが、何にせよ狼狽えているには違いない。


「なにぃ人を蛮族みたいにー!」

「蛮族とは言ってますが…」

「ふぅ、落ち着いてきた……」

「あ!聞いてよクロウ、アイツがアイツがー!」


 ぴょん、ぴょんと跳ねながら、星が浮かびそうなほどの衝撃から持ち直したクロウに苦情を言い付ける。


「ねぇ、いっぱい洗脳されたバスターがいたはずだけどここまでどうやって来たの?」

「……」



 どさくさに紛れ回収した双剣の片方の具合を見ながら、疑問だったことの一つを口にする。


「一応僕ら勢い余って殺さないように努力してたけど……」

「……」



 ちょっと考え回答


「フッ、あれは峰打ちじゃ……」

「峰ないでしょうが」

「じゃあこの側面(フラー)で……」

「じゃあってなんだじゃあって!」


 ごまかすような態度にクロウは嫌な予感を感じる。

 しかし彼女こそが状況を打開する救世主となっていたことは間違いない。一応。


「そんなことよりよくもこんなやっ↑べー!所に連れてきてくれたね!!?」

「勝手に付いてき…いや、正直助かった」


 突っ込むのを止め、素直に礼を言う。


「あーん?」

「やられたと思ってた」

「……クロウを残してはいけないよ」

「珍しいこと言う」

「そうだっけ」


 一方で、たんたんたんと、靴を鳴らす音は未だに響いている。


「クロウ…おそらく正式名Sathan Air Clow、高速戦闘を主とするが同時にパッシブ・技・マジック各スキル群の保有量が比較的多いと言われている」

「…あぁ、それぐらいは分かるよね」


 残っているのはアークただ一人。


「非常に残念だが……私の研究成果の実践としよう」


 ではなかった。

 アークが少し下がると床が開き何か薄く光沢を示すものがせり上がる。それはカプセルのようで、中に五体を持つ生物が格納されていた。


「“バスター化実験体C-04”、協力者は……」


 忘れてしまったのか覚えきれなかったのか、胸ポケットのリング付きカードを取り出して参照する。


「そうだ、イゴルス・ゴー。腕が発達した亜人だ」

「亜人を……赦さない!!アーク、彼を解放しなさい!!」


 大木のような腕を持つイゴルス・ゴーと参照された亜人。

 その頭部や両腕に埋め込まれた点滅する機械から、過剰な人体改造を施されているのは明らかである。アークの呼び方や態度からして研究材料としてとことん利用されたことだろう。


 そんな冒涜的な変貌体を目の前で見せられたリーヴの怒りは頂点に達しつつある。


「何を言ってる?今から出すところだというのに、何をそんなに」

「分かった?ハナ。あのイカれた人が最後」

「絶対そーよね!じゃあ……」


 3人は構えを正し、開かれたカプセルの向こうを目指す。


「反撃開始だぁーっ!!」

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