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第10話「戦士を名乗る」 Part5

「ダイヤモンッ…!いやいや、叫ばない方がいいな」


【ダイヤモンド・ボディ】【ダークプロテクト】【ヘビーアーマー】【ダークバリア】【エクセルガード】……効果時間の長いものや時間で消えないタイプの防御用マジックスキルを無言で複数展開していく。


(もやっと、するなぁ)


 物理防御強化、闇属性防御強化、対物理バリア、対闇属性バリア、防御行動強化……そしてタンク役というものが使う最も重要な技の一つ。


(プロヴァケイト……!)


 デモンオーバーの視線がZを刺す。そうするように仕向ける、いわゆる挑発だ。


「来たか。強者よ……!」

「ヒーローは敵がどんなに強大でも背を向けない。しかし逃走は逃走…強者と言われるほどではない」


 マナの効能で注意を刺激し何をするかと思えば謙虚な告解。

 結局どんな危険の前でもまっすぐでいることこそが、彼の想う生き様なのだろう。



「再び此処に戻った時点で強者だ。誇るといい」

「そう言われると、嬉しいなッ……!」


 Zから攻撃開始、手の平から軽くジャブだといわんばかりの小型の火球複数。

 太く逞しい腕で払うように防ぎきるがそれは想定の内。


「【ハイスピード】!」


 ついつい声を出してしまいながらも高速化のマジックスキルを入れる。


 クロウほどではないが上昇した速度で向かう先は相手の足。システムに支配されない現実世界だからこそと速度に硬さを合わせて自身を弾丸のようにぶつける。

 デモンオーバーはよろけるが、Zも反動に打たれて実質的に仕切り直し。両者すぐさま次の手を繰り出す。



「!!!!」

「【イージス】!!」


 デモンオーバーは火炎放射、Zは盾のようなクリエイト(造られた)スキル。

 強化タイプとして作られたエネミーの攻撃は苛烈で、巨大で堅固な防御盾でもすぐに溶かしきってしまいそうな……いや、炎が盾を伝い包むようにZを包囲し高温の大気で苦しめている。


 かといって壁を解けばそれほどの熱源が直撃してしまう。いくら強化を重ねてもこの技の直撃は受けてはいけないと感じ盾を維持し続けようとする。


 火炎はそれを解って尚善しと抱擁する。炎が尽きるかZが蒸されるのが先か。


「遅くなった」


 ただし、その我慢比べは傍から見れば棒立ちの隙。

 刀身を伸ばし挟み斬るセイタカホウヨウの仲間、光の効能の【セイタカバサミ】で背後から直接首を狙う。


「!!」

「ううっ、ぐ……」


 回り込み奇襲するまでに様々な強化や隠密効果の魔法を重ね、この一撃に全てを懸ける。

 だがそれでも非常に硬い。彼だけは未だにHP制なのかと思えてしまうほど刃が通らない。


 しかも、斬られ続けることも厭わず、炎を発したまま首だけ半回転し迎撃するという力押しの対応まで速やかにこなされる。

 人間の常識に当てはまらない対応に驚きながらも空中を蹴って大きな頭へ着地しようとする。しかしデモンオーバーは両手が空いている。


 まずい、と火炎放射から復帰したZは再び挑発の魔法プロヴァケイトを使うも右手からの闇の光弾の雨。

 先ほどよりも小ぶりな盾【インタフィア】で防御に徹する。そして挑発魔法の甲斐むなしく、デモンオーバーの左腕はクロウを掴もうと追う。

 この腕も関節が無いような酷く柔軟すぎる可動域でクロウを追い詰め、もう一度の蹴りを誘発させた。


「じゃあこれっ…!」


 場所は頭頂部、迎撃を左手に任せながら火炎放射を止め首の捻りは一旦戻そうかと回転している途中へと、逆手に構えた両の剣を牙の如く振り下ろす。


(【闇咬剣】……)

「ぬるい!!」


 ヤギようの巻き角の先端が光りバチバチと鳴る。


「【シールドマグナム】!!」

「魔法の出どころは手だけではないぞぉ!!」


 直後クロウのいる場所に激しいスパークが炸裂する。Zが咄嗟に投げたマナの盾がなければ、頭部への着地に加えて攻撃命中と同時に消し炭になっていたことだろう。


 盾が消え、次のスパークが来る前に地上のZと合流する。



「卑怯者は卑怯者か。さりとて一矢……よき強者であること違いあるまい」

「卑怯者。そう映るのか、やっぱり」

「多分君のことじゃないと思う」


 クロウは前回背面を奇襲したことで卑怯と言われている。

 理想としたスタイルを曲げたZにそれは流れ弾として降りかかった。二言目に褒めているにも関わらず。


「でも、それでも勝たなきゃならない戦いがあることだって分かってるんだ」

「ヒーローの資質はよくわからないけど、この世界なら上出来だと思うよ」


 しかし、彼が現実を前に変わり始めたのも事実。受け止めながらもやることはやろうと闘志が滲み出ていく。


「行こう、俺達で……奴を止めるんだ!!」

「そこは“私達”、でいいんじゃない?」

「その意気やよし。ゆくぞ!人間の双璧よ!!」


 今ここに最後の決戦が始まった。




 まず、3度目の【プロヴァケイト】。今度はZではなく、なぜかクロウが。


「君が!?」

「“積みなおして”!効果は1分!」

「おい!」


 また同時に消えるように位置を変える。


「【ダイヤモンド・ボディ】!【ダークプロテクト!】」

「フンッ!」

「くっ……!」


 Zは再度能力強化や魔力のバリアを纏う。時間が経つと消える効果も多いためだ。

 デモンオーバーは最初こそ乗るもののレベルの低い挑発効果を1分といわずあっさり振り、Zの自己強化の邪魔をしようと踏み潰しにかかるが【ハイスピード】の効果が残っていたため空振りに終わる。


(【風雲無明剣】なら!)


 瞬間、もう片方の脚、その膝裏へと斬撃が放たれる。風雲無明剣、風の力を纏い透明化した刀身延長斬撃。

 気配は感じたかもしれないが、刀身を伸ばして斬るタイプのクロウの攻撃ではこの技スキルが最速。攻撃の瞬間を見切ることでデモンオーバーの反応・行動速度を上回ることに成功した。


「や、やる、な……」


 賞賛の呟きの最中も気は抜いていない。体勢を崩し呟きながらも右腕から闇光弾、頭部からは再びのスパークで二人をそれぞれ狙う。


「【イージス】!」

「【ソニックターン】」


 Zは巨大盾、クロウの方は放たれた瞬間に移動を伴う技でそれぞれ防御・回避する。なお、緊急回避として使ったためクロウの攻撃は軽く宙を裂いた。

 体勢を立て直す須臾しゅゆの時間に数回背中を斬りつけ離脱するクロウと、


「【プロヴァケイト】!!」


 今度こそタンク役として発動したZの挑発。Zのものはかつて最大レベルの15であったため強力な釘付けとなる。


「お前がァァァ!!」


 不可視のマナが魔獣の思考を強く刺激し、術者への攻撃的な執着を高める。そんな元高レベルスキルの挑発刺激により苛立ちを活性化させたデモンオーバーはZを思いっきり殺しにかかる。


「【シールドリカバー】!」


 それを【イージス】による盾の欠けた部分を回復しながら受ける。

 足元が削られるほどの衝撃だが耐えてみせ、その間にクロウがまた背後から、


「【ライフルバレット】」


 ライフル銃弾のように回転しながら突撃をかます。

 Zから注意を逸らすことのできないデモンオーバーはそのまま直撃を受けるがこの技の威力は低い。大きな傷にはならなかった。


「【ダークネス・ドガ】!!」


 それを気にせずにZを人一人入れそうなほどの巨大闇光球で攻撃し続ける。2発目で既に魔力の盾はヒビが入り、3発目で完全に砕け散る。


「【グラント・ジ・アースプレート】!【ガーディアン・エゴイズム】!!」


 すかさず半球状の更なる強化盾を生成、更に盾を強化する魔法をつぎ込み【イージス】の頃からある紋章の意匠が輝く。


(砕かせるわけにはいかない……今、押し負けたら……)


 今度は完全に防御できているが強い衝撃は更に増していく。デモンオーバーは殴打を織り交ぜながらまた巨大な光球で盾が割れるまで攻め立てていこうとする。


(【トルン】、【バーン】、【ダクネー】、【ダクネー】…【クラスターエレキテル】!)


 風をぶつけ、炎の尾を引く火球をぶつけ、闇の光球を連続でぶつけ…ととにかく手数で攻めるクロウ。効果が薄いと見るや稲妻の束のような太いビームで押し通る。流石によろけるが倒すまでには程遠い。


 注意がZに向き攻撃も集中している間、とにかく攻撃を続ける。いつかのヤケクソの連撃を思い出しながら、斬り、撃ち、斬り続ける。しかしそれでも限界はあるだろうというのが脳裏を過り、やり方を変えようかと考える。


(こうなったら“アレ”しかないか……)


 と、その時、クロウの視界にウインドウ。以前シアーズから連絡を受け取ったのと同じ、個人メッセージ機能だ。

技名が連続で飛び交う決戦っていいよね

この子らの場合無言発動多いけど

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