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第10話「戦士を名乗る」 Part4

「十束、いややっぱり……Mr.Z」

「改まって」

「アイツを倒す大まかな作戦は簡単だ。君がアイツを引き付けている間に僕が全力で攻撃をする……それだけ」

「…ああ、そうだな。疾風の攻撃と絶対なる防御、助けようとした相手からの助けは借りるべきでないと思っていたが、あの強敵には互いの個性を活かすことが最善だろう!流石かのサザン・エア・クロウ、強者は常に……」

「あまりそういう意識はされたくないな」

「失礼した。ヒーローの間に詮索は不要……!」



 ハルバード十束は、ヒーローを志す者Mr.Zはどんなに小さなことでも、困っている者がいれば助け出す。



「この作戦には君の防御力が必須だ。とはいえあの敵は図体の割に素早くて、途中でバフを積むようじゃ遅い」

「しかし私は正々堂々と挑みたい。正面から、直前の強化など行わずに」

「その心構えを、君は誰かに見せるんでしょ?」

「さっきも言ったが、そうすることで人々の光となり、私自身も自分を見て……」

「誰かしらには見せるんだ?でも戦闘前に色々やってくれないとお互い生存率が下がる」



 そうだ。僕だってこいつに巻き込まれることになる。

 でも、言いたいことはそうじゃない。まずは“小さい”ことを挙げる。



「…なら、私一人で行く。そうすれば一人の犠牲で片を付けることもできるだろう」

「確実に?」

「やってみせる」

「確実じゃないと困るんだ。僕だって一人だと油断すればどうなるか分からない。君がバフを戦闘前に使ってくれないと」

「しかしそれはずるい…」

「いいやその主義捨ててやってもらう。そうでもしないと…今の君のままじゃ僕どころの話じゃない」



 僕はあの魔獣と同じだ。



「セレマどころか、この村だって護れやしない」



 ただのお人好しに、人質を取っている。



「マップを見て。セレマと高原を結ぶ直線上にこの村がある。もっと横にずれたり無視される可能性もあるけど、もし来たらここのバスター別の方角に出向いているらしいから僕らが駄目だったら壊滅は必至」

「そう、だな……」

「それだけじゃない。未把握のコミュニティだってあるかも……」

「クロウ」

「……本当は、解ってるんだね?」


 さっき、彼はクロウとの共闘に同意していた。そしてまたかざした主義が折れかけている。彼は一人では無理だと感じたのだとここで勘付いた。


 だがそれだけじゃない。彼は他人を思いやることができる……それはつまり、彼らのために自分が今どうすべきかを感じ取れているということでもある。


こういった人達を守りたいし誰よりも前に立つヒーローがいる安心を教えたいが……あんな怪物がいては四の五の言っていられない。捨てなければならない想いがここにある。


 正義の味方とは何かを考え意識し続ける限り、避けては通れない“現実”もまた、目の前に立ちはだかり続けるのだ。



「……貴方を超一流のバスターと見込んで一つ教えてもらいたいことがある」

「言い過ぎだよ」



 だからこそ、今一度その他人に答え合わせをしてもらう。



「強敵との戦いを前に策を練り、見えない所でスキルを重ね続ける私は、見本になるカッコよさだろうか?」

「常識的に考えると…誰もカッコ悪いだなんて言わないことだ」

「そうなんだな?」

「倒せれば、ね?」

「…………やろう、名バスター:サザン・エア・クロウ」


 Mr.Zは手を差し出した。


「そういうのはやめてほしいな」


 クロウはその手を、握り返した。




「――では、もう行かれるのですね?」


 次の日、早朝に集落を出ていく二人に見送りが付く。


「家に待たせてる人もいるし……できるだけ早く済ませたいんだ」

「なぁにこのMr.Zとクロウさんにかかれば、巨大な魔獣も一捻りですよ」

「本当に、そんな魔獣が来るのでしょうか……」


 集落の人にもデモンオーバーのことは伝えた。

 巨大で、強力で、強者との戦いが叶わなければセレマを襲撃する。そして、そこからセレマまでの直線ルートの一つにこの集落を経由する線があること。


 そして、もしも自分達二人で止められなかった場合、この集落も無事では済まない可能性があること。


「来る前に倒してしまうのが、我々バスターの仕事です。明日の平和のため、全力を尽くすと誓います」

「そうですか。こちらも手助けをしたいところですが何もできず…」

「いいえ、休ませてくれて食事もご馳走にもなったのです。十分過ぎますよ」

「でも、本当によかったの?何もお礼要らないなんて」

「ええ。Zさんには些事から長年の問題まで色々お世話になりましたから」

(長年……?)

「あとはそのデモンオーバーという魔獣を倒し、お二人が無事セレマへ凱旋できれば御の字というもの。頑張ってください、どうかご無事で」


 集落の人々に応援されながらも別れを告げ、クロウのマボーグでデモンオーバーの所へ向かう。



「あの村にバスターはまだいない。そうだな?」

「あっっ…」

「俺は村で色々やったからな。クロウさんは詰めが甘いらしい」

「……テキトーなこと言った」

「いい、いい。誰かにヒーローとは何か、何をすべきかの答えを教えてほしかった所はあるからな」

「そう」



 デモンオーバーは座って、微動だにしない。

 二人は少し遠くに伏せて様子を見ており、それは瞑想のようなものと推測した。


「作戦は言った通り。これから僕は大きく回って相手の後ろに付く。その間に防御系のスキルをたくさん積んで、それから名乗るでも何でもいいから注意を引いて」

「クロウさんがそれに合わせて攻撃する……やっぱり変な感じがするが、ヒーローたるもの、自己顕示するのみで敗北してはいけないからな!」

「……ねぇ、僕がそのまま逃げるとか…思わないの?」

「そんなことをあのサザン・エア・クロウがするとは思えない!味方を信頼するのは、ヒーローでなくても重要なことではないか」

「買い被りすぎ。じゃ、行くよ」

「ああ!」


 次の瞬間そこに何もいなかったかの如くクロウが消え去ったことにZが驚いたが、デモンオーバー撃滅作戦開始である。

最初「燃えよ勇気ヶ丘」ってタイトルで考えてたけどなんか違くね?ってなってこのサブタイに着地してたり

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