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第10話「戦士を名乗る」 Part2

 ――今回クロウが遂行する依頼は、南東に名付けられた「疾走高原」。そこに現れたという強力な魔獣を調査すること。

 命からがら逃げのびた元NPCバスターがいて、彼ら曰く「見た目はデモンドーズ、強さは別格」だという。


(デモンドーズ……たしか接触作戦で見かけた大きな悪魔みたいな雑魚敵……あれはあれで強いはずだけど)


 マボーグで移動中、再び記憶をたどって心当たりを呼び起こそうとする。


「強化エネミー……デモン…オーバーか、あそこにはいないはずだけど」


 デモンオーバー。見た目はあまり変わらない、そしてより強力。


 報告されている情報が少ないものの一致はする。

 しかし、本来はストーリーを2章終盤まで進めたプレイヤーが黒溶神殿窟の周辺で遭遇する魔獣と記憶にインプットされている。

 疾走高原とはまるで違う方向の生物ということは、そこに隠し要素があったのか、それとも……。


 考えている間に高原が、そして高原という起伏の少ない地域だからこそ目立つ巨大な生物を補足した。



(まずは周りから……)


 マボーグの控えめな駆動音に敵が集まってくる。この辺りの魔獣は速度や機動性が高く、しかし脆い。

 マボーグにも武器は備わっているが近づく前に必要以上に刺激すべきではないと判断し、マボーグをウインドウ倉庫に納めて戦闘開始。


 上空からのフリーフォールは長くかからない。十秒あれば地面に激突してしまう。

 クロウとて怖いところはある。しかし日頃から一歩間違えば激突しそうなほどの高速戦闘を行っていたためか大きな恐れとまではならない。


 自分の肝っ玉を心の中で賞賛しながらまずは嘴の鋭い翼竜のような数匹を魔法の刃を飛ばしてヘッドショット。目の良さと相手の直線的な動きで確実に当てる。中央だけは残して空中を下上2度蹴り3度目は踏みつける。これで残りの跳躍回数が戻るという。


 次はトビウオを間違えたかのような羽根付きの魚、同じような相手のため飛び上がったまま剣先を伸長し薙ぎ払う。


 直後複雑な軌道の魔力の弾がどこからか飛んできたため1・2と下へ斜めへ飛んで対応する。3度目の跳躍は空中で捻りながらの宙返り、アーチの中へ吸い寄せられていくように弾丸が纏めて通る。


 自由落下を再開、消えず離れずの弾丸にしつこさを感じながらギリギリの地面。残り10㎝程の地点で突如クロウは横へ吹き飛ぶ。弾が地面に激突消滅した跳躍回数4/4。

 ライフル銃弾のような錐揉み直進に両の剣を、途中地面を蹴ったことによる回転軸変更とも噛み合わせながら舞うように展開し両側に捌かれた砲台魔獣を形作る。


 始まった戦闘に敵が更に集まってくるがシンプルに速度勝負で平面の敵を次々と斬り倒していき、そのままデモンオーバーと認めた巨大生物へと駆け抜けていく。


「もらったっ」


 しかし敵もいわゆる強化エネミーということか、背後の空中で振り下ろした片手の武器に片腕で応えた。


 当たってはいる。しかし魔力の防護のせいで火花は散れど切断できる気配は無い。無理を悟り一旦離れる。


「……」

《……》


 デモンオーバーが振り向き、一瞬の静寂。



 先に仕掛けたのはクロウ。やはり自慢のスピードで攪乱かくらんしながら少しずつ斬り続ける。これには相手も流石に低く唸りを上げた。

 気にせずそのまま上へ上へと斬る場所を変え昇っていき、再び腕の辺りまで来たところでデモンオーバーは雄叫びを上げる。クロウは勘でそれを察知し離れ、肺活量の風力から逃げ延びる。

 そして再び、後ろから直接(くび)を襲撃する。今度は硬さを想定したスキル使用攻撃、【セイタカホウヨウ】。水属性の魔法で伸ばした刀身をハサミのように構えて思いっきり斬り抜く。


「喝ッ!!」

「んぅっ!?」


 しかしそれは叶わなかった。突然の怒声に驚き、態勢を崩してしまったのだ。

 その声はどこだ。いやとうに分かっている。正面の敵だ。



「しゃべっ……た?」


 目の前の巨大な西洋悪魔風の魔獣が喝、と思いっきり吐き出した。

 そういえば、デモンオーバーって喋れるんだっけ。そう記憶は走るが思っている以上に今身体が動かない。


 クロウは気圧されていた。

 ボルツと接触した時のようだがそれには劣る感覚、大変革前の相対では無かったことだ。


「おまえ、…ボルツェンカボーネの……」

「強き力、ボルツェンカボーネの濃さ。そういうことだ」


 魔獣はボルツの力で生まれたもの。だから、その中の強い個体は彼の力により近い存在ということなのだろう。

 これはクロウがただ怯えたのではなく、“そういう能力”であった。


「ふうっ……!」


 しかし驚きはしたものの、精神力で振り払うことはできた。

 あの時1度大きいものを食らったことにより心構えができるようになったのだろうか?


「ほう……よし、ならば戦おうぞ!貴様こそが我の待ち望んだ強者(なり)!!」

「強者を望む…?」

「ゆくぞ!ハアアアアアアアアッ!!」


 まさかの気質に面食らうがいつまでも怯んでいてはいられない。振り下ろした剛腕をまずは回避する。


「突然背のみを狙う卑怯者とも思ったが、さて正面からの戦にどこまで通用する!」


 強い相手を求め卑怯を嫌う武人気質を思わせる言葉選びだが、体格差による破壊力や防御力、一歩の差は大きい。

 それでも動き自体は遅いためクロウには掠りもしない。



「うっ」


 そのはずだった。


のろいと思ったか間抜け」


 数回の拳と尻尾振りも避けていた。だが、その倍以上の速さでもう一度拳を振るわれた。

 巨体に見合わぬ弾速に、防御をさほど重要視していないクロウは大きくダメージを負った。


「??!? な、」

「呆気ない……一度当てられるだけでこのざまか」


 とっさにキュアーで自己再生を行い、いくつか折れていた骨がすぐに元通りになる。魔法様々だ。


 自分の背丈の半分以上の大きさの拳をもろに受けたが、防具の効果で墜落の衝撃共々軽減はされる。

 それでも致命傷になりかねない一撃に、クロウは自分達の“最高傑作の防具”をつけていないことを後悔した。

 昔の昔、まだあまり強くなかった頃難易度の高い相手からこの衝撃は何度も食らっていたと己を鼓舞しようとする。

 しかし相手の強さは想像以上、周囲の事前掃討にも少し力を出したこともあり正直な感想は「一旦態勢を整えたい」だった。



「待て待て待てぇぇぇぇい!!」


 今度は何、と声のする方を確認する。


「何者だ!」


 魔獣も問う。


「私こそは闇を払い光をもたらす正義の使者・Mr(ミスタァァァ).()Z(ゼェェェット)!!」

「……なに、それ……」


 まだダメージの衝撃が抜けてきっていないクロウの口から、そう零れた。


「私が来たからにはもう安心だ!さぁモンスターよ……私が相手だッ!うわぁぁぁあああああっ!!」


 気合の雄叫び……というにはぐちゃぐちゃな叫びを上げてデモンオーバーへと突っ込む。無謀だ、クロウはそう勘付いた。


「【ダークネス・パラ】ァァ!」

「ぎやぁぁぁぁぁぁ!!」

「マズい……!」


 角の先から暗い紫の弾幕、自ら向かっていったMr.Zとやらはその大雨に悲鳴を上げる。早速見かねたクロウが、光弾の途切れた瞬間を狙い彼を回収する。

 ただし遮蔽物は無いかあっても逆に目立つため隠れられない。



「……このままお前が今果てるのもそれはそれで惜しい。本調子ではないのだろう?」


 たしかに、前哨戦の分の消耗はある。しかし本調子でなくなるほどのものではない。

 ゆえにそう聞かれて逆にムッとなる。


「とはいえ我が身の内側には衝動がある。全てを憎めと言う衝動が」

「くっ……」

「温情ではないぞ。我がここに座するのは酔狂ではない」


 デモンオーバーは一点を指さす。そこにあるのは大きな街だ。


 この疾走高原は名付けられた通りの高い位置にあり、周囲を広く見渡せる。

 その範囲は、その大きな街――都市セレマとて例外ではない。


「明日までに戻り我と戦わなければ、あの街を襲撃する」

「あそこを……人質に取るのか?」

「かの地に高い戦闘力を持つ者が多くいることぐらいは分かっている。元々そのためにここへ来た。しかしそれでも、犠牲は避けられないだろう。いくらでもやりようはある…例えば半分の距離から届く光線……」

「卑怯者はあんただ…!」

「強者との戦いに弱者は不要。それがあの街ということ」

「狂ってる」

「分かっているだろうに」


 見逃す条件を()()した魔獣は背を向け帰るよう促す。


「ゆけ。次は本気でやり合おうぞ」

「ぉ、い……」

「喋るな。今は従おう」

戦闘回だああああああああああああああああああああああああああドンドコドコドコ



いやなるべく毎回1度くらいは戦闘や出撃は入れようとしてるから正確には戦闘重視回だけど

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