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第8話「ドレスアップ大作戦」 Part5

「おっとそんな場合じゃない。クロウからある程度聞いてはいるが、アリエ君とも確認しておかないと」

「は、はいっ。ハナ、1着目着せてあげて」

「いえっさー!」


 アリエとストックが少し奥へ下がり、ナノハは指示で待ってましたと電撃行動。


「よしてなわけでクロウ」

「待っ、自分でできるから……」

「クロウの普段の着方までは知らないけど、変なやり方で伸びたり破けちゃいけないからね」


 そう言いながら、昨日受けていた指導通りにクロウへ着せていく。妙に慣れた手つきなのは、教えられたからというだけではない。

 ……ダイニーボタンの前に入店していた服飾店での試着と同じ丁寧で速やか、そして完成形へのワクワクを含んだ顔つき。



「うう……変な感じする……」


 スラックスにソックス(あしのさきから)上着に手袋(ゆびのさきまで)まで、立ち上がるかどうかの子供のように他人に着せられていく。それも、よく一緒にいる友人の手で。


「受け入れるの。あらかじめ(プリ)決めておいた装備(セット)に一瞬で変わるみたいに。そう、力抜いてね。強くてかっこいいクロウも、今日だけはお姫様だよ?」

「着せられてるの、アリエのお兄さんのだけど?」

「似合うならいーじゃない。それとも“王子様”の方がよかった?」

「うー」


 伊達メガネをかけて完成。執事を思わせる黒い正装が黒髪でスラッとしたクロウによく似合う。

 腰付きは誤魔化せないが、そのままでも男性と言い張れそうなボディライン……性別を迷わせるには十分だ。

 そしてナノハは改めてクロウの身体の細さに気付かされた。


「今度はランチかな、大盛りの!」

「食べるだけじゃハナみたいにはならない」

「お?なりたい?」

「え、嫌…」

「ガーン……」



 着替えが終わり数分、流れの確認をしていたアリエとストックが戻って来た。


「クロウ、ハナ…おっ、着れたね。調節してあるからピッタリのはずだよ」

「ええいバッチシじゃい!」

「ほほう、よく似合ってるじゃないか」

「調節って、あ……」


 「調節」というのが、丈を詰め袖を上げ、各部位が短くなっていることだとクロウが気付く。


「お兄さんに着せたいんじゃ」

「いや、うーん……なんだろうね。私本当は兄さんをただのマネキンにしたかったのかなって思ってさ」

「あ、いや……」


 不躾かと感じて取り消そうとする。ただ、アリエ本人は気にしていない。


「うぅん、もう兄さんのことはいいんだ。昨日も言った通り、あの方が兄さんにはよかったから」

「……そう」

「訳アリのようだね、聞かないでおくけど」

「さて!開始まであと1時間ちょい、最後の仕上げだよ!」

「おー!」


 ……声はナノハのみ。


「乗らないの二人共ぉ……」

「そういうのはちょっと」

「ん?私もやった方がよかったかな」

「マイペースなのは本番の演技だけにしてね?クロウ」

「ストックには触れないんだねアリエ……」


 グダグダだがやるしかない。巻き込んでおいて、と思いながらも再度のリハーサル。


「……本当にこんな感じでいいの?」

「うん。よい」

「ハナじゃなくて……」

「実際に見てみると、フフ」

「ううう恥ずかしい……」


 動きのベースには露骨に恰好つける仕草を多く挿んでいる。そうと意識して、しかも人前でやるというのはクロウには厳しそうだ。


「それなら私と代わるかい?本番は人が多いだろう」

「いや、やるだけやる……」

「ストック、さんも気になる?男装」

「さてね。ただ、残りを私が使うというのも面白くはないかい?」

「あ、その…これ全部クロウに合わせちゃったから……」

「おや、そっちを手伝うことはできないか」

「ストックさん背高いもんねー」


 まだ引っ張られているところはあるが、同時に不可逆の加工もしてしまう。

 折り合いを付けたようだがやはり不安定にも見える。



「さてと、他にやることはある?」

「えと……クロウが準備いいなら、移動も設置も終わってるし」

「待っててもよかったのに1人でやったの?」

「違うよハナ、一緒にやる他のお店とやったの。ほら、舞台とか」


 考えてもみれば、これは合同企画である。他店と連携をとることは当前だ。

 ただそれならば参加を取りやめたり他店に助力を求める方がよかったのだろう。


 ……兄の帰還を信じたいと思うがゆえにそうしなかったであろうことが、ナノハらには予想がついていた。


「あー。でも結構時間残ってるね。敵陣視察とかしよっか!?」

「ナノハ君、それはやめておいた方がいいんじゃないかな?」

「はい止めます!」

「はっやい」

「ハナは相手の顔がいいと考えるの止めるから」

「ちょっとクローウ!」

「ではクロウには残り時間で色々踊ってもらおうか?」

「私達の宴はここからじゃゲヘヘ」

「普通に休んでるッ!!」


 その後、クロウは時間までウインドウでの荷物整理を行っていた。



 他の3人も必要なものを出しやすい位置に運んだり、今のファッションのことを会議したり、アリエ作の服や装飾の付け方を見学しつつ……時々、アリエが外を、集まりを見せる観衆を気にする。


 そうして合同お披露目会は開始時刻を迎えた。


「目測……50人はいる?」

「こんなに人住んでたんだねーここ」

「二人共、カーテンの中から覗くと不気味じゃないかい?」

「うっ、く、おお…けっこう集まってる」


 店のカーテンは閉めていたが、集まっている数が気になり端から覗く。後からアリエもぬっと加わった。


(……いない、かな)


 台座を囲う弧線で仕切りを付けてはいるが、少し目を逸らせば生首3つ。幸い見つかりはしなかったようだが目に入れればストックの言う通り驚いてしまうだろう。



「他の店が主催で、仕切ってくれるんだよね。もうそろそろ?」

《――お待たせしました!!》

「っ!」


 大きな声に驚かされる。少し割れた音が耳をつんざくことでそこにいた全員が混乱に陥る。


《あああ大きすぎた!!!えっと!!こう!!》

「くっ…!一々声に出るタイプ……!」

「何、これ、魔法!?」

「ちょ、なんて…?」

「クロウ聞こえない……!」

「アぁぁ……」「くっ……!」

《こう!!こうか!よしっ!あー、みなさ……あれ?》


 調整完了、異変を感じ、静寂音。いや、極大音量による耳鳴りだ。

 なお、本人はどういうわけか無事である。



《え~~っと……3店合同のファッションショー、楽しんでいってくださいね!!》


 少しして4人が復帰し外を見てみると、人影のほとんどが消えていた。

 なんらかの危険を感じてのことであるというのは想像に難くない。


「どうしよう、人が」

「まぁこの方が僕もやりやすいかな……」

「そ、それなら……やりやすいならいっか!」

《ではまずはわたくしの所属している“カーマインクロス”から!》


 進行役が一番手の所属を呼んだ。今度こそ合同お披露目会の開催である。

衣服回をやってみたかったのよね


結果全体で2万2千文字、二十二単

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