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第7話「クロウの女苦労」 Part1

「今しがた、パリィ及びハルパリィーンの全滅が確認されたとの報告が入った」


 壁の原因と思われる魔獣のもとへ向かっていたバスターたちが帰還して2時間後、ペイガニーに報告後再度呼び出されたクロウにそう伝えられた。


 結局、壁の破壊を独断で行った“解放者”クロウは特に世間から責め立てられることなく、同時に手柄ともされずに表向きは「上空の発光現象の調査及び原因魔獣の殲滅」を行ったことにされた。


 大陸を覆う壁を消失させるという規模の大きすぎる結果は公表すれば混乱を生む。しかして公表しなければ、民衆に目撃されている“組合から大急ぎで飛び立った多数のバスター”という現象に追及が及ぶかもしれない。そう判断したペイガニーの意図によるものだ。要は隠蔽ではあるが。


 とはいえクロウ以外のバスターも真実を知っているし、彼らの口が軽いという想定は必須だ。事の始まりである船乗りらにも報告をする必要がある。

 結局のところ、付け焼き刃の処置である。


「君らが行った直後に出した索敵部によると、ここからあの山までどこにもパリィ系は反応なしだったそうだ」

「そう……」

「どうでもいい風にしてるが一応は快挙だぞ?すぐ殖えるから一種の絶滅だけでも本当に大きな前進だ」

「一か所に固まっていたのをやっただけだ」



 謙遜する、というよりは“どうでもいい”に近い反応。軽く考え事を抱えてるためであるが、実際のところは何十と、いや“大変革”を迎えた大陸全土に何百種跋扈しているだろうかと思うと先が長いとしか思えない。


 それにもしボルツの影響による風土現象という設定を貫通し全世界に魔獣が広がっているとするなら、その種類はどれだけ膨れ上がるかと思うと彼女でもゾッとしただろう。



「しかしパリィは初期に索敵した魔獣種の1つだったが、実のところその時からパリィの存在は確認されていなかった」

「他の地域へ移動、いや全てのパリィ類があの一か所に……?」

「こちらでも生息地域の移動という説が考えられていた。いくつかの魔獣は生息域を変更していることが索敵部とバスター皆の探索で確認されている。しかし……」

「うん。僕もそう思う」

「大陸中の全てのパリィ系が一か所に密集する……クロウはそう思うんだな?」

「本当のところは誰も知らないだろうけど…」

「大量の魔獣が一か所に集う……何か不吉な前兆のようにも感じられる」



 途中から同行していた一人ヨンドはパリィのことを“怯えていた”と評した。


 あれから考えていた……大量の同志と身を寄せ合って不安へ対処していたのだろうか。ならばなぜかの魔獣らは不安を感じていたのか。


 その中でふと思ったのが、“大変革、という環境の激変”のためではないかという説だ。

 生物が感じる恐怖といえば外敵だろうが、余程弱い魔獣でなければ自然界での天敵など考えにくい。


 世界が自分ごとバリアの内側という、バリアの意味を為さない無防備さで生き残り続けていたという事実が証左だろう。


「…環境の変化、なるほど、そういう考え方もあるか……。それでも、他の理由を考える必要はある。こっちでも調べられることは調べるつもりだが、依頼としても出す。強制はしないが見かけたら協力してくれると助かる」

「分かった」



 ところで、少し気まずそうにペイガニーが話を変える。


「それともう一つ、その……」

「ん?あ、もしかしてイッカが」

「それは…いや先に業務連絡だ。クロウ、お前の処遇が決まった」

「ん、んんんん?」

「流石にやらかしたことのスケールが大きすぎる!知ってる奴が多いからなあなあにはできないんだよ。あの件は本来綿密に協議を…」

「帰っても」

「2週間謹慎!組合にはその間顔を出さないように!…これでも譲歩したつもりだ、むしろ軽すぎるだろう」


 ある意味世界を壊して、場合によっては魔獣の流入や侵略者も発生するかもしれないとくれば、彼の言う通り軽すぎる刑だろう。クロウにも納得できなければ贅沢だろうと思える自覚がある。


 しかし、元がゲームだったがゆえのするもしないも自由な希望制の職業、謹慎とされてもあまり変わらないところがあるのは、クロウ自身も如何なものかと少し疑問である。


「う、うーん…まぁ2週間程度なら……ん?譲歩って誰に?」

「他のバスターだ。主にお前の行動に否定的だった人たちで、正直圧が強くてめげそうだった」

「そう……」


 自分が原因で湧いていたであろう感情だったため、決まりが悪く目も泳ぐ。


「一応事情はある。君レベルのバスターの中でバスターを続ける覚悟がある人材といえばシアーズにナノハ君に、ヒトシとか……他にもいるが多くはない。現状セレマ一番であろうPCもいるが…ハッキリ言って制御不能……有り体に言えば、何かあった時に連携が取れなおかつ腕の立つ人員が欲しいというわけだ」

「何か、ねぇ」


現実化した世界への油断のような、そして自分をていのいい駒にしたいのかという呟きが無意識に漏れ出る。


「外的脅威や事故事件で皆やられてしまってそのまま…とならないよう実力者はできるだけ多く確保しておきたい。だから本来は最低でも拘束してバスターの権利剥奪まであり得たところを無理矢理通した」

「ここまで決めれるぐらいに成長したんだね、組長……」

「こんなことでしみじみとしないでくれ。あと組長はやっぱりやめてほしい。君まで言うのか」

「とりあえず、言われた通りおとなしくする。長期休暇だと思っておくよ」

「体裁的には謹慎なんだからあまり外に出ないようにな。それと――」

今回のテーマは日常系です(途中まで)


というかやっと通常回できるみたいな(なお移行するストーリー上のきっかけ)

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