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第6話「大変革」 Part5

虫っぽい生き物の集合的描写でできてるPart

なので無理せずね



バトルゥ

 一方クロウはセーブしていた機動力を解禁し、魔獣を翻弄する。


 急所――ただし彼女の勘だが――を切り裂き1体また1体と瞬きの間に数を減らしていく。

 だがそれは1体ずつ丁寧に処理しなければならない戦力が集まっていたということでもある。近くに神々の居城(ラストダンジョン)があるからだろうか。


(粒揃いだ、面倒な……ハナは動けない?このまま倒していくしかない!)


 首を斬り腹を突き、胸を抉る。とにかくそれっぽい部位を一撃離脱で突いていく。

 山中は森の中という地形もあってクロウの高機動能力は十二分に発揮され残敵一体の地点まで辿り着く。


「そのまま来るなら…」


 猪のような魔獣はやや離れた地点から勢いよく突進してくる。

 まっすぐに、戦闘中の判断力が冴えているクロウへ向かって。


「押し通れる」


 【バニラシャーベット】。

 肘を引いたクロウの拳から大量の冷気が放たれる。冷気に当てられた魔獣は動きが遅くなり、届く前に――


(ガガガガガガガガ……)


 発現していた巨大な氷のドリルで粉砕された。



「よし……」

《GAAAAAAAAA!!》


 勘で倒していた。仕留めきれてない魔獣の不意打ちぐらいは想定している。


(ザシュ)


 裏拳の如く後方へ剣を振り、決着。


「急ごう、ハナ!」

「うん!」


 強襲されたところでこれらは目的ではない。こんなところで止まっていられない……争う後方を無視し、怯えている仲間を背負ったナノハに合わせて頂上に向かう。



「頂上って言ってたけど迷ったりしてないよね?」


 指摘されたクロウはウインドウから素早く地図を開いて確認する。


「もう着くよ」




 果たして草木を駆け抜けた先に、ソレはいた。


「“パリィ”!?しかもバリアの無い――いや、大きい?多い!?うわっ!」

「ホラ、着いたよ!!」


 ナノハは背負っていた同行者を雑に降ろす。ぐえっ、と悲鳴が漏れた。

 とっくに冷静なもう1人はパリィと呼ばれた腰ほどの高さの生物……の集合の山を見て驚く。


「あれがパリィ…うわぁぁぁ気持ち悪い!!デカい!多い!!あれ本当にパリィなのか!?手のひらサイズだろ!?」

「うへぇ、さすがの私もこれはちょっと」

「強化体のハルパリィーンだ……僕も直視は厳しいな」



 (ひし)めき合う半球状の虫状魔獣ハルパリィーン。よく観察することを躊躇ためらわざるを得ない恐怖症を誘発させるが如きおしくらまんじゅうには、そのままの形状で小さい姿の普通のパリィ、それが多く集まっていた。ドーム状の身体の下にも隠れていることだろう。


「うわ、ば、バリアバリアぁぁぁっ!」

「オイ待て!」

「えっ…?」


 同行者片方が魔法による障壁を張る。もう片方はそれを止めようとする。

 結局障壁は顕現するが、すぐに消えてしまう。


「消え…」

「パリィはこっちのバリアを吸収してバリアを補強する!忘れたのか!?」

(え、そうなの?)

(そうなんだ!?)


 実のところ基礎的な情報で周知されているパリィの性質、しかし混乱の中ではそれを気にする精神的余裕は相変わらず無かった。


 ……そもそも避けるクロウも、脳筋なナノハも、それぞれバリアを使うことが、パリィと戦うことが、少なかったため性質を忘れている。


(旨味無いからなぁ、パリィ系……)

「わぁぁぁぁぁ!!」

「だからバリアをやめろ!!」

「――!!」


 バリアを使う度、そこからマナが煌めき天へ昇っていく。


 マナはいずれ大陸を覆うバリアへと到達し、何分の一秒ほどかバリアがマナの粒子として一旦解除。そしてバリアへのダメージのように、青い波紋がバリア増強の証として広がっていく。



「ああああ今度ぁ青い輪だぁぁっ」

「なんなんだよ!何が起こってんだよ!!」

「怖いよぉ」

「よしよし、家に帰りましょう、きっと大丈夫よ、大丈夫。ママが付いてるから……」


 これが通常のサイズなら、一瞬赤や青に光るダメージエフェクトのような変色で済んだのだろう。


 しかし大陸全土を覆う規模ともなれば、世界の終末を予感させる超常現象として恐れを抱くなど当然の心理である。




 パリィと同列のバリア、つまりはパリィの種類に応じた属性の魔法の障壁を自動的なマナ操作で消し、そこから吸収したマナで自らのバリアをより強く、大きくする。


 パリィの能力はバリアと、それだけである。相手を利用してでも身を護るか、物理攻撃を行使するか。


 それでも本来はあまり大きくならない。それが世界に混乱を招くほどになっている。



「そうか、ハルパリィ同士がうっ、集まって、互いにバリアを吸収し続けたから……」



 本来パリィは群れでは現れない。クロウをはじめとしたPCやプレイヤー達はそのことについてあまり考えたことが無かった。

 あったとしても、お邪魔キャラみたいなものだから群がってほしくはないなという願望止まりだった。


 しかし群れてしまえば成程バリアの種類に個体差はあれどパリィ同士のバリアに違いはない。特定属性のバリアでなくとも、同族のというだけの理由で吸収できるということか。


 クロウは大陸を覆うバリアの真の正体に辿り着いた。そして同時に思う。ならばなぜ、これほど大量のパリィ系魔獣が結託して一気にこれほど極端なバリアを?


 だが深く考える前に追手が来た。


「いたぞ!!」

「あの魔獣の塊か、あれを守れぇぇ!!」

「させるかぁぁ!!」

「くっ!」


 到達した追手は思い思いに突撃していく。

 ただこちらの一団も、タイミングはずれているもののまるで群れを成して狩りをするかのようであった。


「クロウ!」

「ああ…!」


 考察なら後でいくらでもできる。ナノハを背にクロウも急ぎパリィの殲滅へ向かう。


「止めろぉぉぉ!!」

「行けぇぇぇっ!!」

「ぉぉぉ……!」


 後ろや上からの勢いに気圧されてか冷や汗に低い唸りを上げるクロウ。


 追手にはクロウのスピードに追い付ける者はいなかったようだが、予測射撃はできる。

 駆け出した際に放った武器がクロウの走る位置に図星で突き刺さる。

 だが、クロウの感覚はかつてパッシブ(自動発動)スキルだった能力により研ぎ澄まされている。対ヒトから来るプレッシャーをその感覚で察知、彼女はその鋭利な刃をも予測し軽くかわしていく。そしてかわした体勢のまま、敵を一掃する技を瞬時に選ぶのだった。


(【破陣通貫(はじんつうかん)】!)


 僅か数秒、しかし当人らには非常に長く感じられた最後の攻防。

【破陣通貫】はマナにより刃を限界まで平行に伸ばすことで、駆け抜けながら大量の敵を一気に切り裂く。

 威力は高くはないが、いくらバリアー魔獣といえども、ここはその自らのバリアの中である。無いバリアに頼りきりともなれば一掃するなどそれでも容易い。


「……やられ……たのか?」


 否。ハルパリィーンは同族に乗り上げて山のようになっている。小さな魔獣であるパリィも含めれば殆ど倒せていないだろう。クロウもそう考えていた。


「【バーニング・フラッグ】…!」


【破陣通貫】は片方の剣にしか使えない。それを逆用したコンボ・アタックも用意済みだ。


《!!!!!!?!!》


 もう片方の剣に予め炎を纏っておき、崩れた虫の山へ振り向いて叩きつけるように振り下ろす。

 大きな爆発が起き、虫の1匹も残さない。



「クロウ!?」


 追手をあしらうべく後方に残ったナノハも、爆発にはさすがに驚く。


「……ハナ!」


 爆発の中から、呼ぶような声がする。


「逃げたパリィはいるー?」

「う、うーん……見当たらなーい!」

「えっと…そうだ【トルン】だ」


 プレイヤー作のスキルではない基礎的な風の魔法。その場に風を起こす。

 今回は爆発で発生した煙を払うために使われた。



「むせる」

「やったね」

「ああ……やった」

「やっちゃったー!」


 やらかした。この大陸の運命を決めかねない大問題の解を、ノリで決めてしまった。


 いっそ逆に清々しい気分で、いやむしろ放心にも近いか、余韻に責め立てられる。

唐突にアイスっぽい名前の技なのは、ユウがよくやっていたこととして、「思い付きでスキルを作るから」。

なんせバニラシャーベットはかき氷食ってる時に思いついたってんで・・・(ここで言及しても裏設定ぽいけど)

なんなら各属性分作って、火属性付与バージョンは激弱スキルになってしまった、ということもあったとか。

一応、クロウの本領的なオリジナルスキルのモチーフ方針自体は決まってたけど、バニラシャーベットや破陣通貫、あとこの前のストレイト・フラッシュみたいにそれを使わないことも多い。そりゃ自分の技忘れもするわ



ちなみにその本領のオリスキルシリーズ、ここまでで既に2つ出てたり。

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