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第6話「大変革」 Part4

 手前の林から始まり、森の密度は段々上がっていく。


 ここに設定されていた“場所”は無い。

 正確には訪れること自体はできるが、メリットが無い。アイテム、経験値、熟練値、エトセトラ。特別な名も役目も何も無いただの山。


「クロウはさ、壁がなくなったらどうするの?」

「何って……さぁ?」


勢いよく飛び出した後に聞かれても困る、というほどではない。


「ノープランじゃん。でもそうじゃなく…なんで壁を壊そうと思ったの?」

「……さぁ」

「つまりノリ?理由があってやったわけじゃないんだね。クロウはもっと色々考えてると思ってた」


宣言した通り、ただその場の雰囲気で踊るように駆け出した、気まぐれでしかないからだ。


「不満?」

「いぃや?私も壊すよ、このバリア。せっかくだし。キョーハンってやつ!クロウとね」

「僕と共犯ねぇ…たしかに、勝手に……大罪だよ」

「時代はバリアフリーだよ?世界が後から付いてくればいーのっ」

「バリアフリーってそういう意味だっけ……。そうだ、さっき出る前。何か言いかけてた?」

「ん?んー…?いや、そなこたない」

「そう?……ん」



 中腹といった辺りか、人の声がした。どことなく怯えているような響きをみて放っておけずに急行した。


「しょうがねぇだろ、に、任務なんだから……」

「んたって、俺たち、しか、いなかったからとかっ、ほ、ほ、ほ、ほどがあるっ!」

「今更ぼやいたところで……じゃあ帰るか?」

「ひぃぃっどこに魔獣が隠れてるかわかんないのに!」


 隠れて見てみると……装備は中堅、弱くはないが特別強くもない。PCかNPCかは判別つかない。

 言動から成り行きで投入されたおっさん二人組だということはわかる。よくここまで来れたものだ。


「……勇気がある人って、いるんだねー」

「クロウ、それもしかして皮肉(ケー)?」

「成り行きはともかく、ここまで来てる時点で立派だけど……かわいそうだし合流しようか」


 ビクビクしながら歩を進めているため、変に驚かさないよう音を鎮めひっそりと近づいた。



「すみません」

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」「ななななんぬぬぁ敵かぁぁぁぁっ!!」

「ちょっ」


 逆効果。


 走り去っていったのでとにかく呼び戻そうとするが、過剰な怯えは音をシャットアウトしている。

 これはこれで魔獣に気付かれたりしてマズいと思い、全力のスピードを以て回り込む。


「ヒッ」

「落ち着いて。僕はバスターだ」

「瞬間移動したが!?」

「速度型のPCだ。多分目的は同じだから一緒に行動しよう」

「ぴ、ぴぃしぃ……?バスター……」

「ソウ、ミカタ、ダカラ、オチツケ」


 あまりの狼狽っぷりに、もはや普通の言葉では無理とカタコトにまで発展していく。

 そんな冷静さを置いてきたような二人組に対話を試みる中、続いてナノハも到着した。


「速すぎだよクロ~ウ…」

「囲まれた!?」

「その臆病さとせっかちさでよくここまで来る気になったね……僕はクロウ。そっちはハナ。いやナノハ」

「ぅぇぇしくよろ~…」


 隠密行動も速度もクロウには勝てないナノハは息を切らす。


 全力疾走でひぃひぃと吹いてるナノハや、話を聞くという選択肢がどこにもない遭遇者という混沌の森ゆえ、一旦は全員の落ち着きを待って、まず合流先の事情を聴くことにする。


「――そうか、リガトピークから」

「ああ。でも誰も行きたがらなくて」


 リガトピークはプレイヤーが開始時に選択する五都市の一つで、大陸では真北に位置する。

 セレマに近い雰囲気を持った中世風異世界ファンタジー意識の都市だが、より史実に基づいたリアリティーのある様式だという。


「こっちも、似たような感じだ。とはいえちゃんとしている人もいるみたいだけど」

「そうだなぁ。こっちの方はトッププレイヤー様はバスター辞めて、鍛冶屋目指してるよ」

「元トッププレイヤーのPCの作る武器、強そうだね!」


 結局のところ、これからの世界は本当にやりたいことをやるのが正解なのだろう。


「いつか行ってみようかな」


 現状にいじける人々と喧嘩したように飛び出してきたクロウも、それには同意せざるを得なかった。



「他の強いのも残ってるには残ってるが、半壊してる。みんな戦いに疲れたのかねぇ」

「気持ちは分からなくもないな。どんどん出かけては戦ってたから」


 バスターの減少は魔獣の脅威を凌げなくなる可能性はある。それが実力のある元トップ勢ともなればなおのこと。


 しかし、だからと言って止めることなどできない。本当の世界。本当の自由。

 それらを抱く者達こそが、本当に「生きている」ということなのだろう。


 そして、生きることそれ自体が苦しいと感じる人々も確かに存在する。

 ならばさっきのことは尚更間違いだったのではないかと、改めて感じ始める。



「逆に……あんたらは違うのかい?」

「まぁ……できることならケガもしたくないよ。でも」


 先へ進まんと見せるように山の奥へ向き合い、続ける。


「それじゃユウに自慢できないなって思ったから」


 それでも、自分に嘘は()けないから。



「ユウ…?」

「僕と共に戦った人、かな」

「戦友への手向けかい、思えば俺にも思い出すべき奴らがいっぱいいたもんだ」

「切り上げるよ、まずは歩こう」

「そ、そうだな!ああ!」

「でもまだ怖ぇ……」


 合流バスターズの片方がその名前を言う前に会話を終わらせる。

 例え酷でも、例え意味が無くても、それをそう言わせるわけにはいかないと、そう直感したのだ。


 ……過去の無い我らだから。



(ギュォォォォォゥ)

「……!」


 吹き付けるような独特な音。マボーグの音だ。

 マボーグはあまり騒音を出さない機械だ。だがそれでもわかる時はわかる。特に、全速力の時は。


「来たね」

「な、何が」

「まもの!?」

「そういえば出発前喧嘩吹っ掛けてたよね、クロウ」

「どういう――」

「後!」



 一行は速度を上げて頂上へ向かう。木々枝々が掠り多少傷を負っても構わずに。

 一番の機動力を持つクロウは傷を負わないが、行軍速度を意識しているため速度は出さない。この先に何があるか分からないというよりも、その意識は3人を置いていかないというお題のもとに設けられている。



「待て!」


 4人の内誰のものでもない声。出る前に挑発した以上当然止まるわけにはいかない、が。


「俺にもバリアを割らせてくれ!」

「自分が情けなくなったんだ!根性を取り戻すために!!」

「私たちにも誇りがあるの!!」


 思わず立ち止まる。

 どうやら、かつて内に熱さを封じていたバスターたちがクロウやハナの喝をきっかけに“誇り”、“勇気”、その他諸々を取り戻すためにやって来たようだ。


「皆…?」

「オイこっちだ!」

「クロウを止めろ!!」


 都合のいいことばかりではない。反対派も到着した。

 地上だけではない、マボーグで空から捕捉する者も見られる。腐っていても、行動力というのはあるものだ。


「どうする!?」

「振り切るよ!」


 先ほどの続きのように、クロウが他3人に合わせる以外最大速で天辺を目指していく。

 魔獣も、反対派も、賛成派すらも振り切って。



「待ってくれクロウ!!俺たちも…」

「クロウの味方か!おいこいつらも止めるぞ!!」

「うぅっ……!」


 置いていかれた賛成派を反対派は敵と認定、襲い掛かる。

 人数のより多い反対派はクロウを追う班も自然に作り出し、追跡を試みる。


《グルルルルル》

《オァッ、アァァ!》

「魔獣か!邪魔をするな!」

「わっ、い、いやだぁぁぁっ!!」


 しかし、騒ぎを聞きつけ現れた魔獣が内ゲバに加わって状況は更なる混沌に陥る。


 人と人が争う中に入る魔獣はそれらを更に恐怖する者しない者へと分けてもはや勢力図も何も無い。


 追跡中の班も同様。逃げ出す者もいれば事前の倦怠とは逆に殲滅せんと立ち向かう者もいる。マボーグで追跡していた者も空を飛ぶ魔獣と交戦し、ついにはクロウらを追う者が一人もいなくなってしまう。



「魔獣が出てきたか!」

「ひぃぃぃっ」

「わっ、ちょっ、」


 クロウ一行も魔獣と遭遇する。それも、個体数にして大小様々十に届くか。

 1人恐れをなして逃げそうになったので、ナノハはそれを捕らえる。


「むしろ危ないって!」

「助けてくれぇぇぇっ!!」

「ほいよっ!」

「降ろしてくれぇぇぇっ!!」


 もうどうにもならないのでナノハはいっそと持ち上げた。そして仕方ないので降ろした。

 いい大人の何度目かの悲鳴、ナノハは彼のことがいい加減情けなく感じた。


「じゃあ私の後ろにビッタリ貼りついて!それなら大丈夫だから!」

「うぅぅ……」

文字数見たらこの回全体で2万文字あった  マジか

しかもこっちにコピペしながらも違和感のあるところを都度追記修正してたりするからもうちょっと増えてる

より巧い人ならもっと圧縮できるんだろうか・・・?


でも今更短く作る気がそんなに無いという。突っ走れ!!クロウみたいにさ!

いつもはこんなことしない、クールでちょい湿っぽい子だけど!!(そんな評価でいいのか・・・?)

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