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第3話「負の男神」 Part3

「ヤベェな」


 前線では今までとは違うといった空気が走っていた。

 戦闘モードの悪魔、その典型的な姿と言えばといった姿の有角有翼の巨人。


「デモンドーズなんて出てくるのかよ…さっきまではロッセクトとかベロスとか雑魚ばっかだったのに……!」

「当たり前だろうが。仮にも章によってはラスボスだった奴の城だぞ」

「そういや、コイツも雑魚敵だったような……って奴の後ろにもう4匹いるぞ!?」

()()はどいてろ!ここはステータスの高い俺らが……」



 その瞬間だった


「【ストレイト・フラッシュ】」


 他の音や声に掻き消される呟くような細音と共に、巨体が頭をすっ飛ばし倒れる。


「チッ、取られたか。今の誰だー?」


 自分は強いと名乗り出た者が後方に確認するが誰も違うと横に振る。

 そしてその後方にいた人々が目の前の光景に思わず驚く。


「ん?なんだ」



 振り返ると残る四つの首を無くした群れがバタバタと倒れていく場面がそこにあった。



「マジでか」


 そう言うしかなかった。というよりも、ああ先を越されたかもういいやという終了を悟る語気で呟かれた。


 そうして倒れた巨体が起こす砂煙の中から、1つの影が戻ってくる。……砂で少しむせながら。


「あんたやるな!何モンだ?」

「ゴホッ……な、なんだってー?」

「気を付けろぉー、増ー援が来てるぞー!」



 砂煙が晴れ、中に居た者は周りに再度の悪魔のような異形から一瞬人間と迷うような人型まで大小様々な魔獣が集まっていることを視認する。



「もう、大丈夫」



 一瞬、少し屈むように構えたかと思えば次の瞬間魔獣のうち1体の後方上空に浮かぶ。空中を蹴り地面と激突しかねない勢いで加速し急所たる首部分を抉らんばかりの斬撃で取り除く。彼女の持つパッシブスキルの中には、こうした空中戦を可能とするものがある。


 直後地面スレスレで踏み込むようにジャンプ、翼で飛ぶタイプをその場に訪れた際及び直前の斬撃と同じく速度を乗せた攻撃で両断。


「7」


 空中で残敵数を確認。


「これかな」


 脳内で心当たりのある適当な技を選び実行。大きく半円を描き相手の旋回が1割も完了しない内に回り込み移動後が低空ながらも翼と同じ要領で1体を撃破、また空中を蹴って今度こそは地に足を着ける。


「スキルを使うだけで、こんなにも楽になるんじゃないか」


 そう考えながら、踏みつけようとかかる魔獣を魔法による刃伸長で両断、いや非物質様の刃を残して振り抜くと錯覚かと思うほどの速度で踏み込み横一閃で背後に迫っていた次を瞬殺。


「焦ったとはいえ何も使わずに怯えたなんて…たしかに我ながら変な話だな」


 右手に持っていた剣を投げ突き刺し飛び掛かって蹴り倒しつつ回収。その際大きく裂いて4匹目。


 5匹目は完璧に人型。素早い。しかし相も変わらず馬鹿正直な近接攻撃故に刃を置けば突き刺さる。正確には飛び道具持ちを最初に処理していたのだが。


「でも、きっとあれでよかったんだろう」


 控えながらも襲い掛かろうとした残り2体の足元に色つきの升目を含んだ格子状の線が浮かび上がる。

 次の瞬間、地面から質の良い瓶の如き巨大植物がトラバサミのように喰らい、これで全戦力は地に伏した。


「二度と油断はしない」



 この間1分どころか20秒もかからない。攻撃力とスピードに特化したその力は傍から見ればベクトル調整や待ちの体勢以外全てが不可視の鎌鼬。



「早ぇ……これがトッププレイヤーだったPCの実力なのか」

「俺の風魔法の出番ぐらい作れよクローウ!」

「アイツだけじゃなくて敵の動きもおかしかったぞ」

「ああ。一瞬だからよくわからなかったが、何体かは相手されるまでその場で走り続けてた……そこまで行くと怖ぇよ……」


 これがトップ層の力だったのかと他のバスターは畏怖を抱く



「もークロウちゃんたら速すぎだよー!」

「よく見えなかったからもっかいやって欲しいところだな」

「よんこあは帽子脱げばいいじゃなぁい」「そろそろ呼び方一定させろ」


 後から到達したナノハとシアーズが冗談でも飛ばす。


(あれがクロウ……かの、“玄のサザンクロス”の実力か……)


 一方クロウの戦いを僅かだが見たヒトシは、そう頭が動いていた。



「死体処理部隊は……」

「俺に任せろ」

「あ、分かった」


 クロウが該当する役割を持った人物らを探していると、戦線にいたバスターの内の一人が声をかけて来た。そして……


「うぉぉぉぉっ燃え尽きろぉぉぉ」

「また私の仕事がぁぁ」

「ドンマイッ☆」


 流石に仕事を取られ過ぎて居辛い処理部隊を励ます?ナノハ。

 その目の前で死体は瞬く間に消滅する。



「お前を含めてセレマの強いのは揃ってる」

「うん」

「もうじきに黒溶神殿窟に着くはずだ。見て、帰る――他の連中がヘマしたら、任せるぞ」

「流石に僕一人じゃ重いと思うけど?」

「俺と、“従者”もいる。あのナノハって嬢ちゃんも強いんだろ?」

「俺もいることを忘れないで下さいよ。同室の仲では不足でしょうが」

「言うね……よーし、全員馬車に乗れよ!雑魚が強く多くなってきたらもうすぐ目的地だ、死なないようしっかり準備するんだぞ!」


 おおと大勢の声が上がる。それは侮りの余裕か据わった覚悟か、どちらにしろ士気が高いことを知らせる。

 目的地に到達したのは、その日の夜だった。

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