第3話「負の男神」 Part1
☆DAN☆CING☆
ボルツェンカボーネ『ウオアアアアアアア!!』
《ボルツェンカボーネの全ATKが半分になった》
バスターA『あれ……?さっきよりも勢いが』
バスターB『だが、これなら……!』
ボルツェンカボーネ『人間、共……!』
《神晶黒波》
《0》
ボルツェンカボーネ『人間……希望、無い……ならばなぜ向かう……!』
「*************」
ボルツェンカボーネ『アアアア……!』
《黒溶人焉》
《miss》
イッカ『***さん!』
《ボルツェンカボーネの全DEFが半分になった》
イッカ『こちらからはどうかわかりませんが、きっと届いているはずです』
《全員のHPが最大値の100%回復した》
イッカ『みんなの想いは一つになりました!女神モリオナへの信仰だけじゃない、みなさんへの無事の祈りと、絶望に打ち勝って必ず未来は照らされるという希望でいっぱいです!』
《全員のMPが最大値の100%回復した》
イッカ『全ての都市から光が流れていく……これが希望の光なんだ……』
《全員の全ATKが100%上昇した》
イッカ『私達は勝てます、絶対に。この光が、あなた達をそのまま平和な未来へと導くはずです』
《全員の全DEFが100%上昇した》
ボルツェンカボーネ『何故だ……この心は……』
《ボルツェンカボーネのMP最大値が半分になった》
ボルツェンカボーネ『駄目だ、不安は終わらない。憎しみは止まらない。ヒトたる限り、命ある限り。それでも――』
《ボルツェンカボーネのHPが半分になった》
ボルツェンカボーネ『乗り越えて見せろ』
《――――》
……………………
………………
…………
……
ペイガニー『ボルツェンカボーネの打倒に成功したことにより、新たな魔獣は発生しないだろう。』
ペイガニー『だが、魔獣同士で繁殖しては災害の繰り返しだ。それに、女神モリオナの神託を信じればボルツェンカボーネは不滅と言っていい』
ペイガニー『今は希望を抱き、団結したままだ。だがそれでもいつかは心の闇が世界を覆うだろう。それに希望と言っても、それが人畜無害な未来予想図だけとまでは言えない』
ペイガニー『人々の中に少しでも不安が生まれればかの男神は先日の戦いと同じ、<黒溶神殿窟>に姿を現すことだろう。』
ペイガニー『その力は流石に弱体化しているだろうがあれほどの団結はもう無いかもしれない。彼が彼である限り暴走もきっと常だろう。……定期的に任務として鎮圧要員を募集する。腕に自信があれば、参加してくれ』
――――そして現在。
緊急任務、「ボルツェンカボーネ接触作戦」。
ああああことシアーズが言っていた、兼ねてより計画されていた作戦。
「各都市間のちょうど中央に位置する洞窟、“黒溶神殿窟”。この場においてのみは知ってる者の方が多いだろうが、そこが負の男神の異名を持っていたボルツェンカボーネの住処だ」
作戦の仔細を組合の長たるペイガニー・クラフトというがっしりとした頼りがいのありそうな男が解説している。既に信頼を得ているのかはたまた組合長だからという肩書きへの平伏か、その場の全てのバスター達――元PCか元NPCかを問わず――は清聴に努めている。
「…移動はこちらで用意する馬車で行う。長く見積もっておおよそ……片道4日。移動速度に、自信があっても歩きや他の、乗り物は…使わないように。」
冷や汗を微かに浮かべどことなくぎこちなくなっていく組合長の説明。
鎧がかしゃりと揺れる音が聴衆の中から聞こえてくる。
「ふぅー、洞窟の位置の関係上、他の都市を刺激しないような装備で行く必要がある。設定上、魔獣の脅威で1つになった各都市だがそれぞれの都市長に自由意思が宿った可能性のため背を見せることはできない」
深呼吸の後に長い言葉を吐く。しかし若干早口になってしまっている。
「確実に魔獣との戦闘になる道中、何かあった時のための退避・撤退手段や戦力の温存、そういう理由も含まれているから、留意してくれ」
「……緊張してるのか?」
見かねたのか、シアーズが語りかける。
彼は作戦の計画に関わっていることからペイガニーの傍に控えていた。同時に、彼の本性も知っている。
「あー、皆、ギルド長は自分に自信が持ててないんだ。この説明が終わったら励ましてやってくれ」
「シ、シアーズ君止めてくれ……」
「まぁこの統一感の無い連中を纏めて人類を脅かす脅威に立ち向かうことを運命づけられてるんだ、察してやってくれ」
「……くっ、面目ない……とりあえず続けるぞ」
世界の変容の結果生まれた、頼れるはずの男の思いもよらぬ素顔。集まっていた人々も少し肩の力が抜けたように砕けた体勢になる者が増えていく。
咳払いをし、組合長は続ける。
「実際に行うのはあくまでボルツェンカボーネの状況を確認する偵察活動だ。相手が相手ゆえに、可能な限り刺激を与えないことを徹底してくれ。そして、何かあれば、命だけは持って帰るんだ……忘れないでほしい」
事前に打ち合わせた内容を話し終え、シアーズが後を継ぐ。
「質問は、誰かあるか」
いくつか手が挙がり、やはりシアーズが順番に対応する。
「別に倒しちまってもいーんだよなぁ?俺みたいな力のある奴からすりゃ、もうワンパンで余裕だろうが」
「君はPCか?同じくゲーム出身の私が言うことでもないだろうが、この世界はもうゲームじゃない。現実と混同しては持ち帰られる命も失くなってしまう」
「いやラスボスってのは分かるけどつっても所詮は第1章、いや後々弱くなったとかいうアレだろアレ」
「3章後のレイドボス版か。後の実装の分より強力なはずだがな。だがそんなことは関係無い。これは正真正銘の神になっていないかどうかの調査だ」
一旦、集まったバスター達を見渡し、改めて強く、言い放つ。
「魔獣という強大且つ多数の怪物を生み出した神格が相手だ。それも、この大陸の人類全ての負の感情に直結するような強大な・だ。その程度の覚悟では一太刀入れる間もなく空想の世界に飛んでいくだろう。いや、道中の遭遇戦でオダブツだ」
「そ、蘇生アイテム……回復アイテムはたらふく持ってるぜ……」
「蘇生アイテムの効果の実証なんてできてるわけがないだろうが!!回復ならまだいいが戦場で取り出したくてウインドウを開き続けるなよ、その時間が命取りになる」
(シアーズ、もうギルド長になればいいのに)
組合長ペイガニーよりもよっぽどきちんと演説を行っているシアーズを見て、クロウはそう思わざるを得なかった。
逆に、現組合長のことは頼りないと認識してしまっていることだろう。
「いいか、弱体化の可能性など考えるな。これだけの戦力を集めた意味を考えろ。各々の全ての技術を用いて様子を観察しろ。10分でいい……交戦となればすかさず逃げろ。見るだけ倒すだけと舐めてかかるな、それが“偵察”だ。生きてこれからの未来に必要な情報という宝を持ってこい。死にたい奴以外はそうやって寿命を延ばすんだ、分かったなっ!次の質問は!?」
複数上がっていたはずの手が一転見られなくなった。
気押されてバツが悪くなったか、同じ内容の手しかなかったのか、平らに静まり返っている。
「凄いな、君は。私もこうありたいが、すまない」
「……それっぽい言葉を並べただけですよ。鎧で隠れているが、私も正直いっぱいいっぱいです。……本当にもういいんだな!?」
はいはい!少女特有の高い声と共に1本だけ手が挙がる。
「オヤツはいくらまで…?!」
「一時解散ッ!各自馬車の用意ができるまで準備に励め!!」
(ハナ……)




