第18話「荒野の弾丸、ライダー・リリー!!」 Part8
リリーと似た掛け声がこだまする。遅れてやってきたガサキのものだ。
「あの人も、おじさんの親友…?」
「お、おじさん……まぁ、そうなる、なぁ」
カンナの何気ない呼び方に、まだ名乗ってはいないためとはいえガズーは少し項垂れた。
「あれ?リリーは?」
マボーグを降り、まず尋ねたのは妹分の居場所だ。
「あっちだ。掘りに来た連中と混ざってやってる」
「そうか。じゃあ俺もここでのんびり待つとしますかね」
そう言うと彼は降りたマボーグに腰掛け、ウインドウを弄りながらゆったりと寛ぐ。
向き的にリリーのいる方角に近い角度である分、ちょっと遠くから見守るぐらいでいいというスタンスが示されている。
(……あっち行ったらそれはそれで面倒そうだしなぁ)
「んん?そういやロジャースのやつはどうした?」
さきほどはガズーが先行したため、ガサキはロジャースと2人きりであったはずだ。
そう訊かれてもガサキはいい加減な返事しか返さない。
「え?さぁ」
「さぁって。俺はあいつに馬の借りがあるんだよ」
問い詰める、というほどではない。ただ、ガズーなりに“友人”を気にかけているようであった。
それでも、いやだからこそ何があったかを事細かに語るわけにもいかないと判断したガサキは適当に答えることにした。
「あー…やることやったからかえったみたいで」
「ハン、奴らしいな」
とりあえず、そういうことにした。
「……」
「リリー」
と、ふらっふらっとだらしなく戻ってくる人影がひとつ。
「オイ、まさか嘘だろ?」
「へ、ふへへ……」
その様子に、ガズーは夢も希望も無い現実をまた叩きつけられるのかと感じた。
何度と体験した徒労、結局それが答えなのかと。
「へ、はは……!」
「何の話?」
「おい、なんとか言ってくれよ……!」
話に置いてかれるクロウも尻目にするガズーの追及に、リリーは頭をぶら下げたまま親指で後ろを指す。
その先には、まさしく狂喜に乱舞する冒険者の姿があった。
飛び上がり、シャベルを投げ捨て、誰彼構わず抱き合い、見えなかった道先の終点を謳い合った。
「あ、あれは……」
ガズーにもその理由が予想できた。
途端彼は駆け出していく。無邪気に、一心不乱に、かつて見た夢に向かって。
「アニキ、帰るよ!」
「おっ、そうか?」
しかしリリーの方は、一仕事終えたように帰る準備をする。
ガサキもそれに賛同しマボーグに跨った。
「待って」
クロウがそれを引き留める。
「リリー……だっけ。探し物は見つかったんでしょ?いいの?」
リリーは少し考えて、その想いに話し言葉を書き加えた。
「そうねぇ。金欠なら貰うかもしれないけど……“見つかった”からいいの。見つけるまでが楽しいんだから。あんたもロマンを追うようになると分かるよ」
「俺には分からん」
「アニキは黙ってて」
「へい……」
「それより……」
マボーグのエンジンが唸る。
通常は騒音を出さないはずのマボーグが声を上げるということは、敢えてそう改造していることになる。
ベースとは真逆にぶるるんと雄叫びを上げながら地を駆けるという、それこそ利便性では説明のつかない姿のもとに。
「また会ったら、そん時はよろしくね!」
クロウが星の間を駆ける流星なら、リリーは目的地まで止まらない放たれた弾丸。
「連絡先、交換した方がよかったんじゃないか?」
「いや、いい……」
巻き込み貫き止まらない挑戦者。
今日も彼女は大地を走る。まだこのジーディス大陸には未知なる世界が眠っているはずだ。
枷から解き放たれた弾丸は黄金の道跡に別れを告げ、次の浪漫へと跳ね返り行く。
夕陽が背中を照らす頃、サルンティアに赤い幕が下りた。
伝説は人の中にある。それは精神を縛る呪いか、憧れと共にある勇気か。
果て無きチャレンジャーが伝説の果てに見たものこそが、その答えを与えるはずだ。
荒野の弾丸は追い続ける。何であれ夢を追うことこそが、人の欲であり性なのだから。
「ナノ、ハ……」
「…………」
「愛、してる…………ガクッ」
「探さなきゃよかった」
~~fin.~~
第18話「荒野の弾丸、ライダー・リリー!!」
――――――――
菜の花:よ~い、アクションッ!
保安官:「ガズー、貸し一つでいいな?」
荒くれ者:「オー、ロジャース……」
乗馬したロジャースが、別の馬を引き連れて来たのだ。
馬:ヒィィン!!!!
お喋り:あーっ!ちょっと待てオイ!
荒くれ者:おあっ
保安官:えっ?わっ
馬:ヒヒィィィン!!
お喋り:ああっ!!
荒くれ者:あああああっ!!
ドドドドドド……
菜の花:……はいカットーっ
――――――――
嗚呼……そこにロマンはあ(ry
西部劇とゴールドラッシュをまぜこぜにしてドン!としたらこうなったとさ。めでたしめでたし……
……魔法世界とは????




