第18話「荒野の弾丸、ライダー・リリー!!」 Part4
冒険者(原義)
問題のだだっ広い荒野には、馬の走りがこだまする。
パカラ、パカラ、3人という少数部隊ながらも勇ましき行進は魔獣の興味を惹きつけ、そして
「ロックオ~ン」
「……」
「【フォイユ】!」
そのまま踏み均されていった。
「都市の近くだけあって、そんなに強くは無いね」
「テンション低いなぁ、こういう時こそ気合入れて行こうよ!さっさと終わらせるのよ!」
「でも、マフィアだよ?本当に二人を無事のまま返してくれるとは思えない」
結局のところ只いいように使われ、そのまま捨てられるのではないかという疑心。
捨てる、とはいうものの本来充てられるべき単語は……あまり考えたくない。
「気負い過ぎるのも駄目だって分かってる。でも、気楽にはなれない」
「そっかぁ……」
残念そうなナノハの影が少しの無理を含んでいると気付くと、思わず小さな「あ……」が漏れる。
だがナノハはぶんぶんと首で何かを振り払い、変わらぬ調子で前を向いた。
「とにかくやろう!ほらストップストップ!」
平らな荒野の中で見つけたほんの少し高い丘。差し掛かったところで行軍は止まった。
「……ゴールドロード、だっけ。探し方だけど」
馬を降りたクロウが話を切り出す。
「まず、強いバスターならどうにかしてくれるって思ったんだろうけど……あいにく僕は探し物を見つける能力なんか持ってない」
「……本当に言ってるのか?」
監視役の男が、話が違うとばかりに強く投げかける。
バスターでない人間などクロウからすればどうとでもなる。それでも相手の手札を考えると、頬を一筋の水滴が伝ってしまう。
「やりようはある。マナは金属に吸着しやすい……特に金だと」
「――元々の始まりは、索敵とかいうのが得意ってやつが、広い場所を探した時に違和感を感じたって話だな」
ガズーは、馬に速度を合わせるマボーグ乗りのガサキに語りかけた。
「ある方向に少し歪みがあるとか、軽い穴が開いてるようだとか、そんな些細な違和感だ」
「索敵スキルはマナを反射させたりピンと張った線にして探ったりする、そう聞いたな……」
「あんたリリーの兄チャンだったな?かなり勉強しているようだ」
「……どーも」
「そんな話が出た頃だった。マナは金属との相性がいいってね。特に金に溜まりやすいって研究結果が発表された」
「じゃあ、それを結び付けて……」
「ああ…。俺たちはそこに、愚かにも“夢”を見ちまったのさ……」
ガズーの語り方には、後悔のような寂しさがあった。
一体どれほど探し尽くしたのだろうか?それで見つからないということはやはり無いということなのか?
今確実なのは、その“無い”に賭けてしまった自分たちに徒労というものを見出しかけているのがサルンティアの人々だ、ということだ。
「目当ての金は今も見つからねぇから、すっかりヘタれちまって」
「アルキテクには帰らないのかい?」
「今更手ぶらで帰ったら物笑いの種だぜ。あそこにいる連中ってのはな……プライドだけは高ぇのよ」
「全くだ!俺の苦労も考えてくれればいいのに!」
「そりゃあ悪かったなぁ保安官!」
馬の走る音に対応した音量の茶々がロジャースから入る。自嘲も合わせ、サルンティアの住民のプライドが高いということは周知の事実というものらしい。
1人突っ走ったリリーはまだ見えない。彼らの往路はもう少しだけ続く。
「……ありゃ、誰も来ない?」
当のリリーは、誰とも違う場所にマボーグを停めて大まかな“アタリ”としていた。
「じゃあ、不毛の地のオタカラ!このあたしが見つけてやる!」
「クロウ、もしかして何か知ってるの?」
「いや、やり方に予想は付くってぐらい」
マジックスキル、そしてクリエイトスキル。もっと言えばバスターの使う魔法。
それらは特定のポージングも呪文も必要無く感覚で全てが制御される。
その上で名前が、種類があるということは、魔法という“感覚という層におけるあらゆる動作”の中から特定の一つを選ぶためのフィルターであるとも言える。
「特定のスキルじゃない。無いなら創る!今ここでの用途に合致したマナの操作!」
「マナを消耗はするゴリ押しだけど、それが一番手っ取り早い」
偶然か否か、その2人が至った結論は同一であった。
「固めたマナで薙ぎ払っちゃえ!!」
「“ただのマナで薙ぎ払う”」
2振りの刃が、荒野の上で交錯する。
「え?」
「ん?」
魔法として特異な力を発揮する前の、“この世界に溢れる”ごく微細な粒子。
蒼白に光る巨大な剣は、何者もを傷つけない。もう一方の剣先すら挫かず、殆どの物質をすり抜ける。
しかし振り抜いた刀身は一部の光が大きく薄れている。
「え、何?攻撃!?わぁぁぁぁぁっ!」
マナの集まりは威力を持たない、しかし暴風のようであった。
広大な地平その裏側を手っ取り早く観測するための只々巨大な剣にして、円の動きで断面を切り出すスキャナー。その衝撃はナノハを彼方へ吹き飛ばしてしまいそうなほどであった。
「な、何!?攻撃!?って、あー!お付きの人ー!!」
だが、クロウとナノハを見張っていた男は耐え切れずにどこかへと飛ばされてしまった。
「お、おのれ~~名前知らないけどなにがしかの人を…!」
「でもこれで手間が省けた。待ってて、行ってくる」
「うえ!?え、ちょ、あの人処すつもりだったのー!?」
クロウはもうここでやることは無いと言わんばかりに馬を走らせ引き返していった。
「……探す、かぁ……」
残されたナノハは放置を素直に守るものでもないと、そして行方不明のまま放置するのも気が引けたので、吹き飛ばされた男を探すことにした。
「うーん、もう一人いる……?」
リリーはこの力強い金属探知機を自分以外にもう1つ使われたことを感じた。
少し遠い場所に、その長く太い“ただのマナ”の集まりが消えかけているのを見かけた。
「変な偶然もあるモンだ。さて……」
だが突っ走る彼女は止められない。先ほど自分が放った大量のマナの塊に欠けた部分を見つけ、同時にある瞬間の手応えの変化を感じ取った。
「あの辺かぁっ」
再びマボーグに乗り込むと、己が求める宝の場所へ、最高速度で駆け抜ける。
「……よし、いたいた」
そして、ガサキはその派手な移動をウインドウ・マップで補足することに成功した。
「お嬢ちゃん、見つかったかい?」
「付いてくるんなら止めませんよ、保安官」
ウインドウには他にも多くの点が映っている。
光のもとに集う、雑多な群れ。リリーの往く道は、黄金郷へと繋がる線なのか。
彼女のブロンドの長髪を金脈に幻視したガズーも、抱いていた夢を思い出し乱暴に馬を走らせた。
「全く誰も突っ走るんだから……」
「……そうだな」
ロジャースは遠くを見るように、そう頷いた。
「さぁて掘るぞーっ!」
リリーは早速地面に掌を向け、魔法で掘削しようとする。
……が、そのための材料は先ほどつぎ込んでしまった。
出てきたのはせいぜいポワンと浮かんでそのまま弾ける小さな球体ぐらいだ。
「…………」
数秒の硬直。
意気揚々とした出鼻を挫かれた彼女は、渋々ウインドウを開き、地面を掘るための道具を取り出した。
このバトルゲームの世界でいつどうやって手に入れたのか、何の変哲もないただのスコップで覇気無く地道に硬い大地を掘り返し始めた。
「よーぅしお前らここだ!この辺を掘れ!」
一方で、後追いの人々は光の柱を目印に挙って掘り始めた。
例えそこに目指す輝きがあったとしても、どれだけの深さにあるか分からない。ニアミスして永遠の平行線となるかもしれない。
だがそんなことは関係無い。そういうことではない。
微かにでも思い出した精神は冒険心だけでは表せず、無鉄砲とも蛮勇とも言える乱暴さの方が似合う者もいた。
底から這い上がる足掻き、巨大な一発に賭ける浅はかな欲、何れにせよ安寧とは程遠い思考まで含まれては善き背中とは決して言えないだろう。
「なんか出たか?」
「まだに決まってる。そんなことよりも掘れ!」
それでも、まだ見ぬ世界を切り拓き成功を収めるにはまず一歩を踏み出さねばならない。
動機が何であれ彼らもまたこの世界を生き、戦っている冒険者であった。
呪文も踊りもいらないって便利そうっすよねほんと・・・(実は詠唱考えるのまぁまぁ苦手)
その分技名を叫ぶのをやらせ辛いしヤバいことしてる感を呪文に込められない短所はあるけど。
一応そこら辺の参考はそれこそウルトラマンがフェッ!ヘァーッ!!って唐突に繰り出すその場限りレベルの新技。あの感じ好きなの




