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幼い姉弟の大冒険3

 旅の3日目は何事もなく終わった。

 というのも、最終4日目の大森林突破に備えて森林の手前で野営する必要があるのだが、そこに至る行程は比較的短距離であるため、昼前に出発して、夕暮れ前には野営に適した平原に到着したからだ。


「さて、ここで夜を明かしますが、シンシアとレオンは後室で休んでください。念の為、上部装甲を閉じますが、ランプを灯しますから、暗くはありません。サリーナさんは2人についていてあげてください。見張りは私が引き受けますから」


 夕食を食べながら話すクロス。

 因みに今日の食事もサリーナが買ってきたサンドイッチだ。

 違う町で違う店で買ってきて、具材も違うのに前に食べたものと味が良く似ておりピリ辛で美味しい。


「この味付けは最近の流行りなんですかね?」


 クロスが素朴な疑問を口にする。


「えっ?このサンドイッチはサリーナお姉・・モガモガッ!」


 何かを言いかけたレオンの口をサリーナが塞ぐ。


「あっ、いえっ、あのっ、流行りというわけではありませんよ。どこにでもある味ですよ。アハッ、アハハハッ。・・・そういえば、夜の見張りはクロスさんだけに任せるわけにはいきません。私も手伝いますよ」


 何かを誤魔化すサリーナ。

 

 話題を変えるように見張りを名乗り出たサリーナだが、シンシアとレオンがクローラーの後室に2人だけで寝ることを怖がったため、サリーナは2人と一緒に後室で休むことになり、クロスが1人で見張りを引き受けたのだが、結果的には魔物等の襲撃もないまま夜明けを迎えることができた。



 いよいよ最終日。

 早急に大森林を抜けたいクロスは夜明けと共に出発して大森林に進入した。

 装甲は閉じたままの後室にはシンシアとレオンの2人のみで、前席にクロスとサリーナが乗り込む。

 本来ならばサリーナは後室で2人と一緒にいてほしいところだが、道があるとはいえ、視界が遮られる森の中ではサリーナの鋭い感覚が頼りだ。


 大森林に入って数時間。

 日は天頂にまで近づいている頃合いだが、深い木々に囲まれていて周囲は薄暗い。

 ここに至るまでに数回、魔物との遭遇があったが、クローラーに驚いて相手の方が逃げていったり、襲撃を受けても装甲で跳ね返しつつ振り切ったりと、戦闘の機会は無かった。

 シンシアとレオンとはいうと、装甲が閉じられた室内で周囲の様子を見ることができないので、魔物に遭遇していること自体に気付いておらず、大人しくしている。


 それが起きたのは更に数刻が経過した頃だ。


「クロスさんっ、前っ!」


 サリーナの声と同時にクローラーの前に何かが飛び出してきた。


「っと、何だっ?」


 クローラーを止めてみれば飛び出してきたのは3人の若者。

 冒険者だろうか、その中の1人、軽鎧を着た若者は大怪我をしているようで、ローブを着て杖を持つ若者と、皮鎧に弓を背負った女性、こちらはエルフのようだが、2人に支えられている。


 クロスはライフルに弾丸を装填すると、運転席から身を乗り出した。


「冒険者か?どうしたんだっ?」


 声を掛けるが、油断はしない。

 盗賊の可能性もあるからだ。

 サリーナも耳をピコピコと動かしながら周辺の様子を探っている。


「僕達は森の都市の冒険者です。魔物に襲われた!助けてください!」


 ローブの若者とエルフが青色の認識票を見せてくる。


「・・・クロスさん、他に人の気配はありません」


 サリーナの耳打ちを聞いたクロスは小さく頷くとライフルに銃剣を装着してクローラーを降りた。


「その場を動かずに、先ずは武器を下に置いて欲しい」


 クロスの呼び掛けに従い、3人は武器を足下に置く。


 クロスは3人に近づくとその様子を窺う。

 軽鎧の若者の怪我が酷い。

 頭部からの出血にに加え、毒か何かの影響か、右腕が広範囲に爛れている。

 右足も不自然に曲がっており、骨折しているのだろう。


「サリーナさん、負傷者を収容します、診てあげてください」


 クロスは3人をクローラーの後室に案内する。

 シンシア達に見せたくないが、緊急事態だから仕方ない。


「ちょっと見せてください。・・・頭部の裂傷、出血が多いですね。右腕は、焼け爛れみたいに見えますけど、火傷とは違いますね・・・」


 サリーナは若者の様子を見ながら頭部と右腕を清潔な水で洗い流す。

 意識が混濁してきているのか、若者は暴れたりしない。


「何があった?何に襲われた?」


 クロスの問いにエルフが答える。

 彼等は森の都市の冒険者ギルドに所属する青等級の冒険者で、軽鎧の若者がリーダーのキース。

 ローブを着た若者が魔術士のロイ、エルフの弓士がシスルと名乗った。


「私達は薬品の素材採取の依頼を受けて森に入っていたんですが、いつの間にかキノコの化け物に囲まれてしまって、キースが・・・」

「キノコの?・・・マタンゴか」

  

 マタンゴとは人型をしたキノコの魔物だ。

 吐き出す胞子は有害であり、吸い込めば麻痺を起こして動けなくなり、皮膚に付着すれば火傷したように爛れてしまう。 


 死体を苗床にする性質を持ち、危険な魔物だが、動きは鈍く、剣や弓、魔法でも容易に討伐することができ、対処法を知っていれば、新米冒険者でも対処は可能だ。

 しかし、たちが悪いのは森の枯れ木や枯れ葉の下や、木の根元に潜んでおり、獲物がテリトリーに入ると集団で包囲して襲ってくるのだ。

 不意を打たれ、その数によっては中級以上の冒険者でも犠牲になることもある。


 文字どおり不意打ちをくらったキースは重傷だが、ロイとシスルに大きな怪我はなさそうだ。


「大丈夫。怪我は酷いけど、直ぐに命に関わるような状態ではありません。とりあえず応急処置をしておきます。クロスさん、急いで街に向かいましょう!」

「すみません、まだ仲間が1人、イリスが、森の中に・・・」


 シスルが言ったその時。


『イヤあっ!助けてっ!助けてっ!』


 森の中から助けを求める声が聞こえた。

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