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幼い姉弟の大冒険1

 水の都市を出発したクロス達。

 シンシアとレオンは出発した最初こそはクローラーに怯えて後室でサリーナにしがみついていたが、姉のシンシアの方は1刻も走ると慣れてきたようで、そうなれば、それまでの怯えは子供らしい興味へと変貌する。


「すごーいっ!どんどん進む!馬車よりも早いよっ」


 荷室の座席の上に立ち、身を乗り出してはしゃぐシンシア。

 弟のレオンの方はまだおっかなびっくりだが、姉と共に外の景色を見る程度には余裕が出てきたようだ。


 都市を出てまだ数刻。

 整備された街道には魔物など殆ど出没することはなく、野盗の類も現れず、昼間であれば商人や旅人も護衛無しで進むことができる地域だ。

 たまにすれ違ったり、追い越したりする人々もクローラーの姿を見てギョッとするが、車上から顔を出して手を振るシンシアとレオンの姿を認めれば笑顔で手を振り返してくれる。

 そして、車内で昼食を取りつつ、少し走れば夕方前には今日の目的地である町に到着した。


 クローラーの能力をもってすればもう1つか、2つ先にある村や集落にまで進むことはできるが、それらの村には宿らしい宿がない。

 旅人や冒険者等に対して宿泊場所を提供している住人はいるが、それは使っていない馬小屋や物置を有償で提供しているだけで、雨風を凌げるだけだ。

 3日目の夜には夜営を予定しているが、それまでは疲労を蓄積しないため、休息はしっかり取る必要がある。


「それじゃあクロスさん、すみませんが、行ってきます」


 町に到着し、町外れにクローラーを停めると、サリーナはシンシア達を連れて町に向かう。

 というのも、宿に泊まるのはシンシアとレオン、そして付き添いのサリーナの3人で、クロスはクローラーで車中泊だ。   


 聞けば、シンシアもレオンも親元を離れて旅をするのは初めてではなく、アドラーの引率で1泊の旅行には行ったことがあるらしい。

 この町は比較的大きな町で治安もよく、投宿する宿も貴族の宿泊にも対応できる高級宿だ。

 サービスもセキュリティも万全で、シンシアとレオンの2人だけでも問題ないが、そこはそれ、クロス達は2人の護衛も担っているので、サリーナが2人に同行し、クロスはクローラーに残って万が一の事態に備えることにするのである。


 そうはいっても、何もなければクロスもすることはない。

 町の中にいるので、施錠をしっかりしておけば夜通しの警戒は必要なく、座り慣れた運転席で朝までしっかりと眠ることができる。

 クロスにしてみれば下手な高級宿のフカフカのベッドよりもよほどゆっくり眠ることができるというわけだ。


 日も暮れて、町の浴場で汗と汚れを流したクロスがクローラーに戻ってみれば、サリーナがクロスを待っていた。


「クロスさん、宿の食堂で夕食をもらってきました」


 クローラーに乗り込むのもすっかり慣れたもので、料理が入ったバスケットを片手にスルスルとよじ登り、クロスの横の席に座るとバスケットの中のサンドイッチを差し出してくる。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。いただきます」


 一口食べてみれば沢山の肉や野菜が挟み込まれており独特の風味のソースがそれらをまとめ上げている。

 ピリ辛でとても美味い。


「クロスさんは辛いのが苦手だったと思うのですが、どうですか?」


 何やら不安げに覗き込んでくるサリーナ。


「いや、あまり激辛なのは無理ですが、これは美味しいですね」


 クロスの感想を聞いて表情がパッと明るくなる。


「よかった!そのソース、香辛料に秘訣があるんですよ!」


 サリーナはまるで自分が褒められたかのように喜ぶ。

 その後は上機嫌でクロスが食事をするを眺めている。


「そういえば、2人はどうしていますか?」

「2人とも疲れていたのか食事の後にベッドに入ったら直ぐに寝ちゃいました。あの様子だと朝までぐっすりですよ」


 聞けば、シンシアの方は初めての姉弟2人での旅を純粋に楽しんでいたようで、弟のレオンも不安ではあるものの、シンシアと一緒ならと少しずつではあるが、楽しんでいたらしい。


「しかし、サリーナさんは気遣いもそうですが、子供の扱いも上手ですね」


 急に褒められて耳を倒して顔を真っ赤にするサリーナ。


「えっ?・・あっ、いえっ、そんな、大したことないです。神官の修行時代に孤児院が併設された教会に勤務したことがあるので・・・。あのっ、お役に立てたならば・・・よかったです」

「今回の仕事は私だけでは絶対に無理でしたから、サリーナさんが同行してくれて本当に助かっていますよ」


 尻尾をパタパタと振りながら恥ずかしがるサリーナ。

 やがて、その雰囲気に耐えられなくなったのか、クロスが食事を終えるのを見届けるとまるで逃げるようにクローラーから飛び降りる。


「じゃあクロスさん、そろそろ宿に戻りますね。明日も朝ご飯を作っ・・・もらってきますから」


 サリーナは言い残すと宿屋へと走っていった。



 翌日、ぐっすりと休んだシンシアは元気一杯でクローラーに乗り込んできた。

 レオンの方も慣れてきたようで、シンシアと手を繋いでいながらもニコニコとしている。


「それでは、出発しますか」


 クロスはクローラーのエンジンを掛けると次の町に向けて走り出した。


 2日目の行程。

 ささやかな事件が起きるのは出発して暫くのことだった。

今年最後の投稿になります。

今年は拙作の「大宇宙でも職業選択の自由」のコミカライズの連載が始まり、電子版の単行本が発売されたりと、私にとって激動の1年間でした。

最近は仕事の忙しさもあり投稿ペースが落ちていますが、これからも自分のペースで少しずつ書き続けていきたいと思います。

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― 新着の感想 ―
サラマンダーより速いとか言われなくて良かった(ヨヨ)
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