襲われた町に急げ!
魔物に襲われた町を救うべく水の都市の冒険者ギルドから向かうのはクロスと2つの冒険者パーティー。
「チッ!仕方ないとはいえ、お前と一緒じゃ嫌になるぜ!」
1つはザリードのパーティーで、相変わらずクロスを見下して悪態をつくザリードだが、冒険者ギルドがクロスのクローラーで派遣する冒険者を募った際に真っ先に名乗りをあげたのはザリード自身だ。
「まあそう言うな。私達も一度乗せてもらってみたが、このクローラー、なかなかいいじゃないか。尤も、私の精霊魔法とクロスの銃の相性は最悪だけどな。銃声と火薬の匂いで精霊達の機嫌が悪くなってしまう・・・」
もう一方はハイエルフの女性、精霊騎士レディアが率いるパーティー。
大盾に重厚なメイスを持つドワーフの戦士ゴックスに、ハーフエルフのミリとホビットのククルの2人は弓士。
4人中3人が女性で、リーダーのレディアはサーベルを装備しているものの、3人共に弓が主装備という歪なパーティーである。
それでも上位冒険者である銅等級にまでのし上がった実力は本物だ。
ギルドの要請を受けて名乗りをあげたザリードとレディアのパーティーは実力も実績も申し分ない。
他にも優秀なパーティーは数多くあるが、緊急事態であり、他の優秀なパーティーが不在だったり、諸事情により直ちに動けない中、この2つのパーティーが都市にいたというのは僥倖だった。
「まあ、クロスはどうでもいいが、こいつは便利だからな」
クローラーに持てるだけの荷物を積み込むザリード達。
そんなクロスのクローラーもドム親方が作り出した新装備を取り付けたばかりだ。
「ほれ、取り敢えず作ってあるだけ持ってきたが、数は30しかないから考えて使えよ。それから、こいつは作るのが面倒な代物だから、可能な限り回収してきてくれ」
そう言いながらドム親方が運転席の横に木箱を乗せる。
「分かりました」
運転席で準備をするクロスも万全の装備だ。
ライフルの5発入り弾倉20個の他にドム親方が作ってくれた10発入り弾倉が5個で弾丸は150発。
さらに予備の弾丸を200発。
とてもではないが1人で持ち運べる量ではないが、今回はクローラーを駆使する前提なので問題はない筈だ。
ザリードもレディアのパーティーも実力のある冒険者で、戦闘力も申し分ないのだが、気がついてみたらどちらにも回復系の後衛職がいない。
そう思っていたところに冒険者ギルドのフィオナとティアが獣人の神官、サリーナを連れてきた。
「間に合ってよかった。私も一緒に行きます」
初級上位である茶等級の冒険者で、祈りの力も決して強くはないと自分で話していたサリーナだが、それを自覚した上でのことか、両肩に提げた雑嚢の中に回復薬等の医薬品を持てるだけ持っている。
実力的には幾分心許ないが、回復役がいないよりはずっといい。
クローラーの後部にも積めるだけの物資を積んでいるので、万全の備えとまでは言えなくとも、まあ十分だろう。
これで準備は整った。
「それでは出発します」
クローラーのエンジンを掛けるクロス。
運転席の横にはサリーナが乗っている。
「またよろしくお願いしますね、クロスさん」
そんなことを言いながら、運転席横の席の前に新たに取り付けられた新装備が収納されている頑丈なケースを興味深げに見ながらクンクンと匂いを嗅いだりしているが、流石に勝手に触るようなことはしない。
「皆さん、気をつけて行ってきてください」
いつもどおり無表示ながら、精一杯の声を出すフィオナ。
その背後ではティアが泣きそうな笑顔で両手を振っている。
「なんだか戦の出陣か、死地に赴くみたいだな」
「そう言うな。こうして見送られるのも悪くないじゃないか」
「・・・まあ、そうだな」
肩を竦めるザリードにレディアが笑いかける。
クロスもフィオナ達に無言で頷いてみせるとクローラーを発車させた。
本当ならばクローラー上部の車外にあと5、6人の冒険者を乗せられるのだが、今回はスピード重視で、可及的速やかに目的地まで走る必要がある。
高速でクローラーを走らせては車外に乗っている冒険者を振り落としてしまうかもしれない。
ゆえに、今回クローラーに乗り込むのはザリードのパーティー4人と、レディアのパーティー4人、そしてクロスとサリーナの計10人。
目的の町まではクローラーの速度なら数刻、夕暮れ前には到着できる筈だ。




